89式和製ビッグレッド   作:ディア

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・後書きのような活動報告
≫本編及び番外編の後書きの活動報告のURL(https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=314260&uid=22654
≫まあここに要望なども記載出来ますのでよろしくお願いします

・本作品のメジロルイスの扱い
≫史実に比べてかなり好待遇。史実は1995年に種牡馬引退しましたが2002年末に種牡馬引退し、その後は去勢してメジロ牧場で過ごしています

・ジーガリレイ
≫オリジナル馬だが時々名前が登場するので解説。父サドラーズウェルズ、母母アングレッタ、母父サードプレジデントを持つ種牡馬。分かりやすく述べるとガリレオの同父の従兄弟
≫フルハートが南米でリーディングサイアーとなったがその数年後にジーガリレイが南米に輸入されてリーディングサイアーの座を奪ったという描写があるとおり種牡馬としてはとても優れていたが肝心の競走馬としてはBCターフで2着という成績を残しただけに留まる良血馬だった。

・サード達のゲーム内でのSP
≫ウイニングポストでは強さの指標にSP所謂スピードがあるが79が史実馬の最高値、45が最低値となっている。ゲームの初期設定内におけるスピードの数値によってその馬を手に入れるお守りが変わってくる(その為エディットでSPを動かしてもお守りは変わらない)
≫参考までに2025年3月初句時点でウマ娘化された中でいくとシンボリルドルフ、ナリタブライアン、エルコンドルパサーは77、オグリキャップ、タマモクロス、トウカイテイオー、タイキシャトル、グラスワンダー、テイエムオペラオー、アグネスタキオン、オルフェーヴル、キタサンブラックは76、マルゼンスキー、メジロマックイーン、ミホノブルボン、サクラバクシンオー、サクラローレル、フジキセキ、マヤノトップガン、サイレンススズカ、スペシャルウィーク、ブエナビスタ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイは75となっている。ちなみにウマ娘に登場していないがエフフォーリアも一時期75になったことからウイポ陣営もかなり高く評価していることがわかる
≫その為、ウマ娘のアプリを最初にやった際77のエルコンドルパサー、76のアグネスタキオン、グラスワンダー、75のサクラバクシンオーとマヤノトップガンが育成の低レアで出た時はかなり驚いた。特にアグネスタキオンを高く評価している筆者にとっては信じ難いことであった
≫ちなみに78以上は日本馬に存在せず実質海外馬専用ともいえる。78はこの小説でライバル馬として登場した馬だけ紹介するとシガーとパントレセレブル、ドバイミレニアム。79はセクレタリアト、ダンシングブレーヴ、フランケル、アメリカンファラオとなる
≫肝心のサードプレジデントは79、ナインティギアは77、クラフトボーイは75、フルハートは78、フジミキセキは78となっており、主役級以外の架空馬の77以上の馬はザファイナル(79)、コンコルドオフィス(78)、サードミステリアス(77)、インパクトブレス(77)となる
≫サードプレジデントが79な理由はお察しであり、78族のフルハートはシガーに並んだ強さを持っていたし、フジミキセキは日本馬として初の無敗で欧州三冠制覇となっているので問答無用でつけられた。ナインティギアが77な理由は秋古馬三冠連覇を成し遂げた上にKGⅥ&QESを制したことが挙げられる。クラフトボーイが75な理由はマイル戦無敗というのが余りにも大きい
≫ちなみに本小説でも示したがサクラローレルが出走しようとした97年の凱旋門賞の勝者はパントレセレブルであり、SPの数値から考慮するとサクラローレルはパントレセレブルに絶対に勝てないという見解であったと考察できる。


第113話

 時は遡り2003年、夏。某所にて

 

 

 

「おう創也、また酒飲まないのか?」

 

 創也の同期の一人がそう聞くと創也は苦笑しながら答える。

 

「ああ。今は酒に溺れたくないんでな」

 

「それならちょっとだけいいじゃないか!」

 

「ダメだ。これから先人に会いに行く約束があるんだ」

 

「先人? あー……お前まだ引き摺っているのか?」

 

「自分に対する戒めみたいなものだからな。こればかりは譲れないし、譲る気もない」

 

「はぁ……お前も頑固だよな。お前酒にアホほど強いからバレりゃしないと思うけどな。まあいいや、行ってこいよ」

 

「ああ行ってくる」

 

 創也は同期と別れて、その先人達に会いに向かうとそこにいたのは人ではなく写真だった。

 

 

 

「……」

 

 創也はその写真を見、手を合わせる。それは落馬などによる事故によってそのまま早逝してしまった騎手達の写真であり、その中には創也の同期も人物もおり、創也は彼らが若くして亡くなったことを忘れずにこうして時々やって来ては手を合わせ冥福を祈る。

 

「(丘先輩、間違いなく貴方は胤先輩に迫れる器だった。もし貴方がいたなら競馬界は更に発展していたでしょう)」

 

 その中でも印象に残っているのが創也の1期上にあたる騎手だった丘。僅か5年で200勝という記録を叩き出した彼は将来を期待されていた騎手であったが、落馬によってその若い命を散らせてしまう。あの時のことは未だに創也の心に暗い影を落としていた。

 

「(あれから俺はナインティギア、いやそれだけじゃない。クラフトボーイやフルハート、他にも多くの馬の体調をより一層気遣うように神経質になりました。丘先輩、貴方が落馬しなかったら俺はナインティやフルハートを壊していたでしょう)」

 

 ──だが感謝するのはその一点だけだ。

 

「失ったものが多すぎるんですよ、丘先輩、久雄、玉入」

 

 そう呟くと共に創也は手を合わせ、その場を後にし、メジロ牧場へと向かった。

 

 

 

「あれからもう10年も経つのか」

 

 創也はそう呟きながら見学許可が下りた引退馬──メジロルイスに近寄り、その頭を撫でる。

 

「お前が引退してもう10年だ。早いものだ」

 

 10年前、秋の天皇賞を制したメジロルイスは競走馬としての寿命を全うした。そしてリアルシャダイの後継種牡馬として活動していたのだが、サンデーサイレンス、サードプレジデントといった種牡馬が立ち塞がり、思うように活躍出来ず種牡馬引退し生まれ故郷であるメジロ牧場でのんびりと余生を過ごしていた。

 

「ええ、そうですね。早いものです」

 

 メジロルイスの近くにいた人物──北乃実夜が創也に声をかけると創也が笑みを浮かべた。

 

「実夜さん、いつの間に」

 

「ついさっきですよ。それよりも菊花賞でナインティギアにやられた時はもう悔しくて悔しくて。思わず憤死しそうで仕方なかった」

 

「当時でも今でも貴女が言うとシャレになりませんって。それにマックイーンが勝ったんですから良いでしょうに」

 

 創也が呆れながら実夜に言うと、彼女は「それでもです」ときっぱり断る。

 

 そう、実夜は菊花賞で勝って欲しかったのはメジロルイスであり、それを妨害された創也に怒っていた。結果こそメジロマックイーンが勝ったもののナインティギアがいなければ勝っていたのはメジロルイスの方であったと推測するくらいには実夜は入れ込んでいた。

 

「まああの菊花賞の敗北のおかげで月城創也という騎手を取り込もうという発想が生まれたので感謝はしていますけどね」

 

「そのおかげでメジロルイスに騎乗出来てスランプも治り、しかもあの一族以外で秋の盾まで勝たせてくれた。本当に感謝していますよ」

 

「いえ貴方の騎乗がなければルイスは秋天を勝てなかったでしょうし、ルイスもここまで恵まれて今のように余生を送ることは出来なかったでしょう」

 

 実夜がメジロルイスの顎を撫でてやると気持ちが良さそうに目を細める。それを見て創也も微笑ましい笑みを浮かべる。

 

「話は変わりますが月城さん、以前私に聞きたいことがあると言っていましたよね?」

 

「牧場経営に関して父が貴女と相談しておきたいことがあると。また落ち着いたらお伺いします」

 

「わかりました。ただ今この場で少しお話ししたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

 

 実夜がそう聞くと創也は頷く。そして二人はメジロルイスから離れて話を始めた。

 

 

 

「さてここならもう大丈夫でしょう。もうお察しだとは思いますが私はもう長くないでしょう」

 

「ハッハッハッ、メジロのおばあさんも冗談が上手い! これだけ動けるのに長くないとはどんな冗談で──っ!?」

 

 創也は笑いながら実夜の言葉を一蹴する。しかし彼女の顔から笑みは消え、真剣な眼差しで創也を見つめる。その目を見て創也は冗談ではないことを察し、黙る。

 

「私の話はルイスのことです。かつて私達(メジロ軍団)は盾をいくつも制し、栄華を極めていました。しかし近年のスピード化について来れず衰退しGⅠ馬ですらメジロブライトとメジロドーベルを最後にいなくなりかつての栄華も見る影もなくなりました」

 

「ルイスと何の関係が?」

 

「このままではメジロ軍団は解散することになります。そこで近い将来メジロ軍団が解散した場合メジロルイスを引き取って貰えないでしょうか?」

 

「そういうことですか」

 

 実夜の言葉の意図を理解し、創也は納得した。メジロルイスを解散後に引き取ることを提案したということはメジロルイスに種牡馬としての才能もなければ他の用途の才能もないということなのだろう。そんな金食い虫ならぬ金食い馬の引き取り先は見つからないと判断し、縁もあり金もある創也に話を持ちかけた。

 

 しかしそれだけではないらしく実夜は続ける。

 

「そしてもう一つあります。とねっこで物凄い雰囲気の子がいるんですが近年の不調もあり私の相馬眼が狂っているのかそれとも正しいのか分からなくなりましてね。もしよろしければ一度そのとねっこを見て頂けませんか?」

 

「わかりました。案内してください」

 

「それは良かった。こちらです」

 

 創也が実夜の頼みを聞き入れると実夜はホッとしたように息を吐き、歩き出した。

 

 

 

 そしてメジロルイスの放牧地から少し歩くと、その雰囲気はどこか気品があるものの近寄り難いものがあり、また覇気も感じ、まるで自分はここにいるぞと言わんばかりに主張している馬がいた。

 

「あれですか。見たところ3P産駒のようですが」

 

「血統表も見ずに馬体を見ただけでよく分かりますね」

 

 実夜がそう驚き、一発で3P産駒と見抜いた創也を見つめると淡々と創也が言い放つ。

 

「いやまあ雰囲気ですよ。3P産駒は大体あんな雰囲気の馬が多いです。それで母の方は?」

 

「母はレールデュタン。メジロブライトの半弟に当たる馬ですよ。それでどう思いますか?」

 

「自分に乗らせて頂ければGⅠ一つくらいは持って帰れますよ。特に中距離GⅠは強そうですし」

 

「あら血統的には長距離でも大丈夫そうですが中距離なのですか?」

 

「実を言うと、現時点のデータでは3P産駒かつバックパサーの奇跡の血量を持つ馬はマイルから中距離が適性で長くても2800までしか持たないことがわかっています」

 

 マイルCSと秋天を勝ったリボルバーマンを始めとしたバックパサーの奇跡の血量を持つ競走馬は概ねそのような傾向になり長距離はそこまで得意ではなかった。

 

「適性が2800m以下ですか。3200でも短いと言われた兄のメジロブライトとは大違いですね」

 

 ちなみにメジロブライトはラジオたんぱ杯3歳S*1なども勝っており、中距離でも勝てない訳ではない。しかし長距離が得意であったことに変わりないメジロブライトを兄に持つ血統のそのとねっこは創也からすれば長距離よりも中距離で輝く馬と評価していた。

 

「ええ。能力が飛び抜けているなら菊花賞や春天も狙えますが、余程のことがない限りは秋天やマイルCS、JCでも狙いに向かったほうが勝率は高いです」

 

「ふむ、わかりました。ではそのように伝えますのでこの子が競走馬になった際は主戦騎手の方約束出来ますか?」

 

「畏まりました。メジロの御婆様」

 

 恭しく頭を下げると実夜は嬉しそうに微笑んだ。

 

 

 

 数年後、香港にて

 

【プライドが逃げる、しかし大外からメジロアイスソード、メジロアイスソードだ! メジロアイスソードがダンシングブレーヴ並の末脚で差し切って悲願のGⅠ制覇! 2着にプライド、3着にアドマイヤムーン!】

 

 託されたとねっこは後にメジロアイスソードと名付けられ、宝塚記念でディープインパクトに迫る2着、そして香港カップで優勝することとなった。

 

 ──メジロの御婆様、やりましたよ

 

 創也が亡き実夜に向けて鞭を天に掲げる。その姿を見た記者の一人が呟く。

 

「今までのメジロアイスソードにはなかったが今回は不思議な力があったように思えた。まるで誰かが後押ししたかのようであった」

 

 そう記者がメジロアイスソードを見るとメジロアイスソードに憑いた老婆が微笑んでいるように見えた。

 

「……見間違いか?」

 

 目をこすり再び見るもその老婆は消えており、記者は首を傾げる。不思議な出来事であったにせよこの時のメジロアイスソードはディープインパクトを超えていたと錯覚させるほどであったのは違いなく、後にファンの間で話題になるが記者は知らぬままであった。

 

 

 

 しかしその数年後豪州ではとんでもないことが起こっていた。

 

 南米でリーディングサイアーを獲ったジーガリレイなどを始め、米国ではサードプレジデント産駒のザファイナルがサードプレジデント系の意地を見せてリーディングを獲得していたが豪州では意外な馬がリーディングサイアーを獲得し続けていた。

 

 豪州でリーディングサイアーとなったのはハイクラフトバン。父メジロルイス、母父クラフトボーイという日本であったなら見向きもされないものであった。

 

 それというのもクラフトボーイとメジロルイスは共に父としても母父としても活躍出来なかった所謂落ちこぼれの血統でありハイクラフトバンも大成したわけではない。そんな彼が輸入された理由は世にも稀な白毛馬であったからだ。

 

 白毛馬は世に出回っている芦毛とは異なり生まれた当初から毛が真っ白に染まった馬でありその数は余りにも少なく優性遺伝であるために両親のうち片割れが白毛でないと生まれず、現在となっては突然変異でしか生まれないとされている。その為非常に白毛馬は貴重な存在であった。

 

 しかしいくら白毛馬が貴重だからといって競走成績が優れるかと言われればまた話は別であり寧ろ白毛馬は身体が弱い傾向にある為に活躍させにくい。故に17戦2勝という結果に終わっている。

 

 しかし母父のクラフトボーイに似たのか愛嬌があり、また白毛馬特有の気品さや美しさを持ち合わせており、その見た目の愛らしさからファンからは人気であり、種牡馬入りも考えられる程になる。2勝しかしていない馬にしては破格の待遇であったのだが、豪州の馬産界がそれよりも遥かに良い条件でオファーをかけ、豪州にて種牡馬入りすることになった。

 

 

 

【これはまさかの勝利だ! 白毛馬が勝ったぞ!】

 

【なんとまたまたハイクラフトバン産駒だ!】

 

【連戦連勝! ハイクラフトバン産駒が止まらない! GⅠすらも制してしまった!】

 

「く、クレイジー……どうやらハイクラフトバンは白毛馬だけでなく名馬を生み出したようだ」

 

 当初は豪州の馬産界もハイクラフトバンの血統には期待などしておらず、白毛を生み出す種牡馬としてとしか期待されていなかったが、初年度産駒からGⅠ馬を多数輩出し、ハイクラフトバンを人気種牡馬へと押し上げた。

 

 一定の確率で白毛馬を輩出するだけでなく、種牡馬の本来の用途としても活躍していたこともあり当初は種付け料5000豪ドル(約45〜50万円)と少額だったのが最終的にはその20倍にまで膨れ、主流血統となる。更に母父クラフトボーイの種牡馬が豪州で活躍し、その結果、日本や米国、そして欧州でサードプレジデントの血が広まるとこのハイクラフトバン系の牝馬が輸入されるようになり、21世紀後半にはクラフトボーイの血量がサードプレジデント達を抜いてしまうこととなった。

*1
現在のホープフルS。中山芝2000mの重賞競走




・豪州での本作オリジナル馬の扱い
≫ハイクラフトバンのみではなく母父クラフトボーイの種牡馬が4頭豪州に輸入されまくり主流血統となるくらいには大成功しています
≫その為クラフトボーイは豪州では種牡馬の母父として名を馳せていますが、日本や米国、欧州では流行らせることは出来ずに母母父がクラフトボーイの段階でようやくその血を活かすことが出来たという感じですね。
≫なんで今更クラフトボーイを?と思うかもしれないが、クラフトボーイが将来的にサードプレジデントやサンデーサイレンス達の血量を超えるにはこれしかないんですよ。かといってハイクラフトバンのみだとメジロルイスの方が強くなり過ぎますし、クラフトボーイには豪州の種牡馬の母父として頑張ってもらうことにしました。
≫ちなみにですがサンデーサイレンスなどの例外はさておき、ほとんどの競走馬は大体三代前か四代前をみれば距離適性やスピードがわかってきます。古臭い血統が走らないのはそれが原因だと思いますね

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