1989年。日本ダービー決戦前、米国ではある2頭の馬が話題になっていた。
片やサンデーサイレンス。父は一度リーディングサイアーに輝いたヘイロー、母は重賞勝ちのあるウィッシングウェルと一見良血に見える血統だが、父も母も気狂いと呼ばれるほどの気性難であったことやファミリーライン*1に母を除いたら4代遡らないと未出走または未勝利しかおらず、重賞勝ちの馬は7代遡らないといないという有様でサンデーサイレンスの母父アンダースタンディングも競走成績よりも丈夫さを買われて種牡馬入りしたような馬で決して良血とは言い難い馬で彼自身も気性難な上に馬体も見栄えが悪く「見るのも不愉快」と酷評される程だった。
もう片やイージーゴア。父は今をときめくリーディングサイアーのアリダー。母はGⅠ競走2勝のリラクシング、母父バックパサーと誰がどう見ても完璧な血統の持ち主で更に付け加えるとファミリーラインもラトロワンヌ系でこのファミリーラインは数多くの重賞競走を制しており超がつくほどの良血であることが伺える。
しかしそれ以上に性格も良く、そして馬体もセクレタリアトを彷彿とさせるような完璧さが備わっている。まるで今年の三冠路線はこの馬で決まりと言わんばかりに生まれたような馬、それがイージーゴアの前評判だった。
出生、性格、馬体、前評判とありとあらゆる境遇が正反対な2頭が初めて激突したのはケンタッキーダービー。1番人気イージーゴア、2番人気サンデーサイレンスといった順でレースが行われた。
この年のケンタッキーダービーは前日に20mm以上の大雨が降ったこともあり史上最悪と言っていいほどの不良馬場でのレースとなった。イージーゴアはスタートから出脚がつかず後方からの競馬を強いられ、サンデーサイレンスもスタートで失敗し他馬に接触したものの先頭集団に取り付くことが出来た。
しかしサンデーサイレンスは直線で観客の歓声と警備員に驚き左右によれてしまい、減速するが追い詰めるイージーゴアを寄せ付けず完勝。
一方のイージーゴアは直線に向いて大外から追い込むもサンデーサイレンスとの差を詰められず、そのまま2着に入線した。
二冠目、プリークネスSではサンデーサイレンスがケンタッキーダービーから体調を崩し病み上がりであることやイージーゴアが不良馬場や小回りが苦手で今回のプリークネスSはそうではないことを踏まえ、ケンタッキーダービーと同じ人気順となった。
レースではまたも後方待機策を取るイージーゴアだったが今回は好位につけていたサンデーサイレンスとの距離を縮めようと早めに動いていく。
その動きに気付いたのかサンデーサイレンスは逃げるようにハナを切るがそれをイージーゴアは追走し最終コーナー手前で並びかけ、先頭に立ちそのまま突き放そうとするがサンデーサイレンスが猛追し、イージーゴアをハナ差で差し切り勝利した。
雑草魂全開のサンデーサイレンス、エリート街道を歩み挫折を味わいつつあるイージーゴア。そんな対称的な2頭だったが2頭の陣営はとあることを耳にする。
「日本にセクレタリアトがいる?」
セクレタリアトは米国の種牡馬として過ごしていてそれは確認されている。だとするとセクレタリアト級の強さを持った馬が日本にいるという意味であり、2人の興味を引くには十分であった。
それから数日後、日本の中央競馬においてセクレタリアトの子供と思しき馬の存在が確認された。しかもその馬は無敗で朝日杯3歳Sと皐月賞を制し、日本ダービーに挑もうとしている。その馬の名前はサードプレジデント。5戦してつけた合計着差は140馬身差とも言われている。
だが米国の競馬関係者が驚いたのはつけた着差よりも、走法だった。セクレタリアトのように馬場状態、距離によって使い分ける等速ストライドを扱え、しかも加速はその比ではない。セクレタリアトの産駒でありながら米国調教馬のような走りをする。まさに異端児だ。
「これは是非とも会いたいものだ」
そう思い、日本へ渡航する米国競馬関係者が絶えることはなかった。
一方その頃、日本ではイナリワンが天皇賞春を勝ちオグリキャップが昨年の有馬記念を勝ったこともあり地方馬の大ブームが来ていたが、それ以上にサードプレジデントという大スターが現れ、人々は興奮していた。
「まさかあのセクレタリアトの血を引いているなんて!」
誰もが信じていなかった。しかしセクレタリアトの子供は確かに存在していたが、セクレタリアトが活躍した米国ならともかくまさか日本でこれほどまでに活躍するとは予想の範疇を超えていた。
「あぁ、米国でセクレタリアトの子孫が活躍するのをいつか見れればって思っていたらまさか日本で見られるとはな」
セクレタリアトを良く知る男性がそう染み染みと語ると隣りにいた女性が話しかける。
「そもそもセクレタリアトってどんな馬なんですか?」
「米国競馬史上最強の競走馬だな。セクレタリアトは米国の三冠馬でそのレースをすべてレコードで勝利しているんだ。しかも未だにそのレコードは破られていないんだ」
「へぇ~そうなんですか……でも私としてはあの馬の方が凄いと思いますけど」
「俺だってそう思う。間違いなく素質で言えばサードプレジデントの方が上だよ」
「ですよね! なんか他の馬と違って独特なオーラがあるんですよ。それにセクレタリアトの仔だからって変に期待せずに見た方がいいかも知れませんよね?」
「そうだな。セクレタリアトの仔ってだけで色眼鏡で見るのはよくないかもしれないな。ただ……」
男性は何かを言いたげに言葉を止める。
「ただ? どうしたのですか?」
女性は男性の言葉の続きを聞こうとするが、男性は首を横に振る。
「いや、何でもない。そろそろ仕事に戻るぞ」
「えっ!? サードプレジデントのレース見ないんですかーっ!? ちょっと待ってくださいよー!!」
2人が競馬場を出て行くがそれを気に留める者は誰もおらず代わりに気を引いたのはサードプレジデントという大スターであった。
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