89式和製ビッグレッド   作:ディア

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注意!今回は2話更新していますが前話は閑話ですのでスキップしても問題ありません


第13話

 日本ダービー当日。東京競馬場にて、ある一頭の馬が注目されていた。それは無敗で朝日杯、そして弥生賞、皐月賞と勝ち上がり続けたサードプレジデントだった。

 

 和製ビッグレッドと名高い彼に騎乗するのはつい昨年朝日杯を制するまでGⅠどころか重賞未勝利だった大ベテランでもなければ新馬戦からの相棒という訳でもない。見習騎手の月城創也だった。

 

 

 

 観客や他の関係者は何故経験の少ない創也を騎乗させたのか困惑していた。ましてや他のGⅠ競走とは違いダービーであり、そのプレッシャーは他の競走よりも遥かに重圧だ。しかもそれまで上手くいっていた騎手を下ろしてまで乗せる価値があるのかと言われれば、ないと断言出来る程度には批判されていた。

 

「……なんであの新人が乗ってるんだ?」

 

「さあ。まあ俺としてはあんな若造よりもっと相応しい騎手がいると思うけどね」

 

「確かに」

 

 そんなことを言われても創也は気にしなかった。何故なら創也はサードプレジデントに乗るためだけにここまでやって来た。

 

 馬主である美亜にしても菊花賞トライアルレースまで創也の成長を見守るつもりだったが、現段階で一流ジョッキーと同等の技術を備えており、創也を乗せることに決めた。不安要素があるとするなら経験が少ないことだろうが、創也以上にサードプレジデントをよく知り、巧みに手綱を捌けるのはいなかった。

 

「創也、大丈夫か? もし駄目そうなら俺が代わってやるぞ?」

 

 そう声をかけるのはそれまでサードプレジデントに騎乗していた先輩にあたる騎手だった。だが創也は首を横に振る。

 

「いえ、大丈夫です。ただサードプレジデントを少しでも楽に走らせるために色々やってきましたから」

 

「……そうか」

 

「はい。ですから今日はサードプレジデントの完璧な姿見ていて下さい」

 

「おう、あんまり張り切って落馬しないでくれよ。俺のサードプレジデントに傷がつくからさ」

 

 そう先輩騎手が心配しながら、見送ろうとするがそれを止めた。

 

「いや待て、創也。お前緊張しているな?」

 

「まさか、そんな訳──」

 

「よし、一回全身に力を込めてみろ」

 

「えっ?」

 

「ほら早くやる!」

 

「ハイッ!」

 

「そしたら脱力しろ」

 

 創也が指示された通りにするとそれまで創也が感じていた震えがなくなり筋肉が柔らかくなっていた。

 

「どうだ? 少しは解れただろう。後はお前次第だ」

 

「ありがとうございます!」

 

 そう言って彼はサードプレジデントの元に向かった。

 

「サードプレジデント、行くぞ!」

 

 ──ようやくお前と走れるな、相棒。

 

 サードプレジデントがそう声を出したかのように聞こえ、創也が笑顔を見せる。

 

 

 

【さあいよいよ各馬ゲートに入り体制整いました】

 

【日本ダービースタート! さあ、まず先頭に立ったのはなんと、サードプレジデントが一気にハナを奪って先頭に立っています!】

 

 サードプレジデントのレーススタイルといえば後方一気で、間違っても逃げるような馬ではない。しかしそれはそれまで騎手がどれだけ押したとしても動かないからそうなっただけであり、サードプレジデントがその気になれば逃げでも十分通用する。

 

「いいぞ、サードプレジデント! そのまま行けー!!」

 

 その言葉に応えるようにサードプレジデントはぐんぐん加速していく。

 

【これは速い! あっと言う間に後続を引き離す!】

 

 その光景を見て観客は皆驚きの声をあげる。それもそのはずでこれまでサードプレジデントが加速した時は一気に爆発したかのように加速するが今回の加速はゆっくりと長持ちするように加速する。

 

【これは凄いペースだ! このまま最後まで持つのか!?】

 

 レースが中盤に差し掛かる頃、サードプレジデントが僅かにスピードを落とした。それを見た他の騎手達はサードプレジデントを捉えようと鞭を入れ、加速するとそれと同時にサードプレジデントも加速した。

 

「なんだ? 何をしたんだ??」

 

「サードプレジデントが勝手に動いたのか!?」

 

「いや、それにしては……」

 

 サードプレジデントが明らかに自分で判断し、動き出したように見えたがサードプレジデントが急に動く理由がないのだ。

 

 だが驚くべきことにサードプレジデントよりも控えていた筈の馬達のスタミナが尽きてしまい、徐々に減速していく。

 

「くそっ、やっぱりスタミナが切れてきたか」

 

「だけど辛いのはお前だけじゃないんだ、あいつもじきに落ち──」

 

【サードプレジデントまた加速ーっ! もがく後方を置き去りにするーっ!】

 

 サードプレジデントが力尽きると予想していたが、再び加速し、まだ余裕がありそうだった。

 

「おいおい、嘘だろ? まだこんなに余力が残っていたなんて」

 

「一体どこからそんな体力が出てくるんだよ」

 

 サードプレジデントが走り続け、最後の直線に入るとサードプレジデントは更に加速し、後続を大きく引き離した。そしてゴール板を駆け抜ける。

 

 

 

【サードプレジデント、圧勝、痛快、衝撃のスーパーレコード勝利です! トキノミノル、コダマ、シンボリルドルフに続いて無敗の二冠馬の誕生です! これはもう秋は貰ったと言わんばかりの圧勝でした! 2着にウィナーズサークルが入りました】

 

「も、モンスターだよ……いやこの場合UMAか? ははっ、どっちにしても笑うしかねえや」

 

 そうぼやく創也以外の騎手達。それというのも今回の勝ち時計は2分22秒3と世界レコードを更新したからだ。4歳ながらにして世界レコードを更新出来るのはセクレタリアト並の実力を持った馬だけであり、それを実現してしまったのがサードプレジデントだった。そんな化け物と同じ世代に生まれてしまった馬達に同情すらしてしまう。

 

 

 

「サードプレジデントお疲れ様、よく頑張ってくれた」

 

 そう言いながら創也はサードプレジデントの首を撫でる。するとサードプレジデントはまるで誇らしげに「走っている俺の背中の景色はどんなもんだい?」と尋ねているようだった。

 

「最高だったよ」

 

 一言そう告げるとサードプレジデントは何も語らず口取り式へ向かっていった。

 

 

 

『サードプレジデント』

・馬主 星崎美亜

・生産牧場 月夜牧場

・調教師 旭川誠

・性別 牡馬

・毛色 栗毛

・年齢 4歳

・戦績 6戦6勝

・朝日杯3歳S、皐月賞、東京優駿




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尚、次回更新は本日18時です

番外編は何が見たいか

  • サードプレジデント産駒の活躍
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