≫観客がサードプレジデントをサードプレデーターと叫んでいますがあれはわざとですのでご理解の方お願いいたします
サードプレジデントが世界レコードを更新し、明らかにダート適性があることを示したトラヴァースS。
日本だけでなく米国の競馬関係者からもサードプレジデントは米国最高峰のGⅠ競走、BCクラシックへ向かうと予想していた。
「今後のレースですが今回のレース結果を受け、菊花賞に出走を決意しました」
しかし旭川から出た言葉は予想を遥かに超えるものだった。
「菊花賞といいますと、日本のセントレジャー?」
「はい。サードプレジデントは無敗で二冠を制していますが、日本ダービーで世界レコードを大幅に更新しており三冠を望む声が大きいことや今回のタイムが予想していたものよりも0.5秒ほど遅いことなど芝よりもダートが不向きであること、またBCクラシックは来年出走可能であるが菊花賞はそうでないことなど多数のことを考慮し、菊花賞へ出走することを決意しました」
「わかりました。では旭川さん、その次のレースについてお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「菊花賞の次はJCか有馬記念を予定しています。尤も、サンデーサイレンスやイージーゴアのうち1頭以上がJCに出走するのであれば優先順位はJCの方が高まりますが」
「なるほど。ではこの2頭がJCには出られないとして、残りの馬の中だと誰が有力視されますか?」
「そうですね。まずはオグリキャップ、イナリワン、スーパークリークの3頭が名前に上がります。特にオグリキャップとイナリワンは馬場を選びませんから適応性の高さはかなり高いですね」
「日本以外の馬の中で注目しているのは?」
「出走登録している中だと昨年のJC馬ペイザバトラーが怖いですね。というよりかペイザバトラー陣営が怖いと言っておきましょうか。確かに馬自身は今年に入って勝てていませんが昨年は凱旋門賞馬よりもオグリキャップやタマモクロスが上位に来ることを予測していて、ありとあらゆる対策を立ててJCを勝利しています。並の馬──というか日本を代表する2頭相手に勝ってしまう作戦組立能力は間違いなく有力候補といっていいです」
「他には?」
「サンクルー大賞を勝ったシェリフズスター、イタリアGⅠ馬アサティスくらいですね。他にも警戒すべき馬はいるでしょうが今実績があって出走登録している中ではその2頭が外国馬として注目しています」
記者会見を終え、サードプレジデント陣営はその場をさっさと撤収し日本へと帰国していった。
11月。夏は終わりを迎え、秋の訪れを感じる。秋といえば食欲の季節であるが、競馬界にとって最も盛り上がるのはやはりJC。日本のみならず世界各国から名だたる優駿が集まり、その頂点を決める戦いが行われる。
そして今日はサードプレジデントの三冠をかけたレース、菊花賞が行われようとしていた。
菊花賞の起源は英国三冠レースの最終レース英セントレジャーにあり、芝3000mの超長距離レースで当時の英ダービーにも匹敵するほどの名誉のあるレースだった。
しかしニジンスキーが英国三冠を制したのを最後に英国三冠に挑む陣営はほぼいなくなってしまった。それというのも英セントレジャーと凱旋門賞のローテーションが狭く、凱旋門賞を勝つ為には英セントレジャーを無視する必要があった。無視せず凱旋門賞に出走したニジンスキーは2着に破れ欧州三冠*1を逃している。
そんな歴史のあるセントレジャーを参考にして作られた菊花賞だが未だに日本では「最も強い馬が勝つ」と言われるほど価値のあるレースであり、先日京都大賞典と天皇賞秋を連勝したスーパークリークを始め菊花賞馬が活躍することは珍しくなく、歴史を振り返っても菊花賞馬が活躍していることを証明している。
菊花賞、ましてやシンボリルドルフ以来無敗の三冠をかけた重要なレース、オグリキャップやサードプレジデント自身によって作り上げられた競馬ブームにより京都競馬場は満席、競馬番組の視聴率が30%を超える異常事態が発生していた。
こうなってはサードプレジデントの単勝オッズが1.0倍の元返しは当然のことだが、支持率9割超えというサードプレジデントの為のレースだと世間はそう認識していた。
「こりゃ凄いな……」
妬み嫉み、ありとあらゆる感情を混じえた視線が創也に突き刺さる。するとサードプレジデントが創也にアイコンタクトを取る。
──あの人間共の視線が気になるのか? だけど俺達のやることは変わらないぜ
「そうだったな、ありがとうキャロ」
サードプレジデントは創也の言葉に反応するように軽く鳴いた。
ファンファーレが鳴ると同時にゲートインした各馬、最後にサードプレジデントが入ると一斉にスタートした。
【前走トラヴァースSを制し世界最強馬サードプレジデントは今日は中団に位置しています】
「これは……ヤバいっ!」
創也が早々に焦った理由、それはレース展開の話ではない。サードプレジデントの位置だった。
「先輩方そこまでやるか!?」
「てめえに三冠馬のジョッキーは渡さねえ!」
「勝つ為ならなんだってやるさ!」
サードプレジデントを包囲した騎手達に対して創也が抗議するも聞き入れられず、そのままレースが進む。
──おいおい、困っているのか? なら無理やり突っ込むぜ
サードプレジデントが前に突っ込もうとすると他の馬はそれを妨害する。そう、サードプレジデントは包囲網を敷かれていた。
「くっそ! お前らやりすぎだろ!!」
【おおっと、どうしたことでしょうか。サードプレジデントが囲まれています。まさかこんなことが起きてしまうとは誰が予想できたのでしょう。そしてサードプレジデントは大丈夫なのか】
「巫山戯るなーっ!」
「真面目にやれ!」
観客達からブーイングが殺到し、今すぐにでも暴動が起きそうな雰囲気である。
しかしその程度で手を緩める騎手達でなかった。騎手達にも意地があり、成人もしていないひよっこ相手に負けたくないという気持ちが芽生え始めていたのだ。
【さあここから淀の坂、ゆっくり上ってゆっくり下らなければなりません。各馬慎重にゆっくり上ってゆっくり下ります】
一度目の淀の坂を越え、創也は覚悟を決めた。
「仕方ねえ……サードプレジデント、俺はお前が最強だと信じている。だから俺を信頼してくれ!」
創也がそういい、サードプレジデントを前に突っ込んでは減速し、減速しては前に突っ込む。それを二度目の淀の坂まで何度も繰り返した。
「だから何度やっても……!?」
そして淀の坂の前でサードプレジデントの壁となっていた馬に異変が起こった。
サードプレジデントの煽りは本馬の体格が大きいこともあり、余りにも威圧的だ。車でいうなら10トントラックが普通の乗用車に煽り運転をするようなものであり、それを何度も繰り返しては煽られた馬の精神面が持たなくなり、身体に影響する。その結果ズルズルと後方へと下がっていった。
【あっと故障発生か? いや大丈夫です。なんとかレースを続けています。サードプレジデントが包囲網を突破して淀の坂の上りで加速していきます!】
淀の坂の鉄則──それはゆっくり上りゆっくり下る。それが出来ければ馬のスタミナを無駄に消耗し、ゴール手前では疲れ果て失速してしまう。
しかしサードプレジデントはそんなセオリーを無視して、サードプレジデントが先頭に立って走るような形になりながら淀の坂を駆け上がっていく。
その光景を見て観客達は興奮するどころか呆気に取られ、静まり返っていた。
【サードプレジデントは淀の坂を一気に駆け上がり、そして下りました。淀の坂の鉄則を破り、サードプレジデントが今、先頭に立ちました!】
「よし、このまま逃げ切れ!」
創也がそう叫ぶとサードプレジデントもそれに応えるようにどんどんと後続を引き離す。
「うおぉぉぉ!!!」
「サードプデーターぁぁ!! 頑張れぇぇ!!」
そんな時観客席から大歓声が上がった。淀の坂の鉄則を破って菊花賞を勝利したのは前例があり、実際にその目で見ていた観客は再び興奮していた。
その馬の名前はミスターシービー、史上3頭目の三冠馬、シンザン以来19年振りの三冠馬の誕生に脳が焼かれた観客達はサードプレジデントにも脳を焼かれていた
【大地が弾んでサードプレジデント! 大地を揺らしてサードプレジデント! 独走だ、独走だ、もがく後方を置き去りにしてサードプレジデント! 世界レコードだサードプレジデント! 今、無敗三冠馬の誕生だーっ!】
「やったぞ! サードプレジデント!」
創也は手綱を強く握りしめ、喜びのあまり涙を流していた。
──おいおい泣くなよ、いつも通り前に誰もいない景色を見せただけだぜ?
「そうだな、これからもよろしく頼むよ」
サードプレジデントが嘶き、創也はその首を撫でると、サードプレジデントは嬉しそうに鳴いた。
『サードプレジデント』
・馬主 星崎美亜
・生産牧場 月夜牧場
・調教師 旭川誠
・性別 牡馬
・毛色 栗毛
・年齢 4歳
・戦績 8戦8勝
・朝日杯3歳S、三冠、トラヴァースS
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尚、次回更新は本日18時です
番外編は何が見たいか
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サードプレジデント産駒の活躍
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サードプレジデントのその後
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ナインティギアとクラフトボーイの活躍
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ウマ娘サードプレジデント転生者疑惑
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アニメ版ウマ娘世界のサード達
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アプリ版ウマ娘世界のサード達