89式和製ビッグレッド   作:ディア

19 / 113
ストックが切れました。死ぬ気で正月分まで書き上げます


ウマ娘6

「な、なんて奴だ……」

 

「私一人ならまだ理解出来るが生徒会全員でも敵わないとは……」

 

 息を荒くしたウマ娘──シンボリルドルフ達がそう呟く。彼女達か息を荒げている理由、それは1時間前の出来事が原因だった。

 

 

 

 遡ること1時間前、シンボリルドルフはサードプレジデントを生徒会室に呼び出した。内容は至ってシンプル。【生徒会に役員にならないか?】という勧誘だった。

 

「会長さん、私が生徒会の役員になったとしてどのようなメリットがありますの?」

 

「まずは学園内での地位の向上、そして学園内での発言権が与えられる」

 

「それで? 他には? 他に何もありませんの? 例えば副会長とか書記などの役職は?」

 

「君の実力なら副会長の座どころか会長の座も狙えるだろう。だがそれ以上に君にメリットのある話がある」

 

「何ですの?」

 

「君がより一層お嬢様らしく見える、ということだ」

 

「なななななな、何のことですの!? 私がごちそうに週に一回ふりかけしか食べたことがない貧民だと言いたいんですの!!」

 

「いや、米国の有名なウマ娘の令嬢ではあるものの、母子共にエンゲル係数が高く貧乏生活を強いられたと聞いていたんだが、そこまで貧乏だったのか?」

 

「……う、はい」

 

 サードプレジデントが渋々そう頷くとシンボリルドルフが口を開いた。

 

「そうか、では何故お嬢様らしく立ち振る舞っているのか教えて貰えないか?」

 

「母が偉大なウマ娘だからですわ。どれだけ走ろうがどれだけ努力しようが母と比べられますわ。それならいっそ『流石あの母の娘』だと言われるように努力しています。お嬢様らしい立ち振る舞いは母や私がだらしないウマ娘だとバレないようにしていますの」

 

「そうか、そんな理由だったか……」

 

「はい。ところで会長さん、この情報は一体誰からですの?」

 

「君の妹のナインティギアだ」

 

 その瞬間、何かがキレるような音が響いたがサードプレジデントは笑っており、怒っているようには見えなかった。

 

「そうですか、ナインティがね。それで会長さん。条件つきでそれを引き受けます」

 

「それは良かった。その条件とはなんだ?」

 

「私の妹──ナインティギアのチームと生徒会役員チームがケイドロで勝負してナインティに勝ったら生徒会役員の話引き受けましょう。負けたら私の秘密を口外しないようお願いいたしますわ」

 

「そんなことでいいのか? それに別に勝っても秘密は口外しないつもりなのだが」

 

 サードプレジデントが出した条件は生徒会役員になる為の条件としてはあまりにも軽すぎるものだった。

 

「妹を甘く見ていると死にますわよ?」

 

「っ!」

 

 トレーナーである創也の事以外であそこまで殺気を放ったサードプレジデントにシンボリルドルフが思わず身震いする。

 

「くくくっ、どうやら君は我々を嘗めているらしい」

 

「さてどうでしょう? 何せ名門シンボリ家の会長さんとは違って私は似非お嬢様故に解りかねますわ」

 

「ほう、ならば確かめてみようか」

 

 こうしてサードプレジデント立会人、ナインティギアのチームと生徒会チームによるケイドロが始まった。

 

 

 

 当初警察側は生徒会チームで僅か数分でナインティギアと一緒に編成されたシリウスシンボリ等のウマ娘達を引っ捕まえ、ナインティギアのみを制限時間内に捕まえれば勝利となる。

 

 だがナインティギアの動きは余りにも柔らかく某アメフト漫画に出てくる選手のように生徒会のメンバーを抜き去り、捕まったシリウスシンボリらを開放して立ち去っていく。

 

「怯むな! まずシリウス達を捕まえろ! そうすればナインティギアはやってくる!」

 

 それで怯む生徒会メンバーではなくシンボリルドルフの鼓舞によりシリウスシンボリ等を捕まえ、再び状況が戻される。

 

「そりゃ少し悠長ってものだよ、会長さんよ」

 

 ナインティギアがそれを2度ほど繰り返すと生徒会メンバーは作戦を切り替え、ナインティギアに集中することにした。

 

「それは愚行ですわよ、会長さん」

 

 立会人という名の第三者であるサードプレジデントがそう呟く。瞬発力が凄まじく捕まえられないのなら長期戦に持ち込んでスタミナを削るやり方は確かに理に適うが、ナインティギアはそれは通じない。ケイドロといった制限のある勝負ではナインティギアに勝てなかった。例えそれが本格化したサードプレジデントであってもだ。

 

 トゥインクルシリーズから退いた生徒会メンバーなら尚更捉えるのは不可能であり、後一歩というところですり抜け捕まえらなかった。

 

 そして現在に至る。

 

 

 

【攻守交代〜っ! 次は生徒会チームがドロボウになります! 次のスタートまで休憩して下さいー!】

 

 アナウンスが流れ、休憩時間を取る2チームにサードプレジデントが生理水を渡すとシンボリルドルフが口を開いた。

 

「サードプレジデント。一つ聞いていいか?」

 

「なんでしょうか?」

 

「ナインティギアは本当に走るのが嫌いなのか? とてもそうには見えない」

 

「いえ、ナインティは普通に走るのは嫌いでしてよ? ナインティがあそこまでケイドロに強いのは身体の柔らかさと距離感覚、類まれなる瞬発力と頭脳の持ち主だからですわ」

 

「そうなのか……あれでもまだ本気じゃないということか……」

 

「とはいえ走るのを極端に嫌う為レースに本気で取り組めないからレースの才能はないのですが。もし取り組めたなら私に匹敵し得る存在となっていたでしょう。少なくともケイドロや鬼ごっこといった走りを交えた遊びで彼女に勝てた試しがありませんわ」

 

「なっ……未来の無敗の三冠ウマ娘相手に遊びとはいえ全勝しているのか?!」

 

 サードプレジデントの言葉を聞き、シンボリルドルフは驚きの声を上げる。サードプレジデントと言えば日本史上最強ウマ娘として知れ渡っており、これからも無敗記録を伸ばし続けていくだろうと言われている。そんな彼女が遊びとはいえ走力が関係するもので勝てない相手がナインティギアで彼女の舞台で勝負している。もはや生徒会チームの敗北は決まっていた。

 

「ええ、そのとおりですわ会長さん。私が味わった屈辱、貴女達にも味わって貰いますわよ?」

 

 その後、5分で決着がつきケイドロの勝利チームはナインティギアのチームとなった。

 

 

 

 それ以降、トレセン学園では生徒会主催したこともありケイドロが大ブームとなった。

 

「ナインティギアさん、是非ともうちのチームに!」

 

「いや私だ! 私のケイドロチームに所属して下さい!」

 

「イヤだ! 私はケイドロをするためにトレセン学園に来た訳じゃない! そんなにケイドロが好きなら自分達だけでやれ!」

 

 またナインティギアはケイドロ最強ウマ娘として知られ本人が鬱陶しく思えるほど引っ張りダコになり、サードプレジデントの復讐は成功したと言えるだろう。

 

「織田がつき羽柴がこねし天下餅、座りしままに食うは徳川。といったところですわね」

 

 サードプレジデントが一人勝ちの状況にそう呟き微笑む。




このお話をお楽しみ頂けた、あるいはこの小説自体をお楽しみ頂けたならお気に入り登録や高評価、感想の方を宜しくお願いいたします。

また感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。

尚、次回更新は本日18時です

番外編は何が見たいか

  • サードプレジデント産駒の活躍
  • サードプレジデントのその後
  • ナインティギアとクラフトボーイの活躍
  • ウマ娘サードプレジデント転生者疑惑
  • アニメ版ウマ娘世界のサード達
  • アプリ版ウマ娘世界のサード達
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。