89式和製ビッグレッド   作:ディア

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新年明けましておめでとうございます
作者の年末は時間ギリギリまで書いてました。本当なら有馬記念まで書きましたが次のウマ娘回を早めに出したかった事情でギリギリまで引き伸ばしました
とりあえず本日分は有馬記念までで終わります

2025/05/22追記
・ミスターシービーとクラフトボーイの毛色について
≫本作ではミスターシービーはへテロ鹿毛となっていますが、史実の彼はホモ鹿毛であり産駒から栗毛は生まれないことが判明しました。なので本来であればクラフトボーイは栗毛ではなくナインティギア同様に黒鹿毛になるのですが、完結し終わってから気づいたのでその都合上栗毛のままにします。ディープの時といいまさかこんな罠が仕組まれているなんて予想が出来るだろうか……


第22話

 時は流れ、朝日杯3歳S当日。

 

 昨年度の覇者サードプレジデントの半弟ナインティギアが朝日杯3歳Sに出走登録し、危うく弾かれかけたが無事登録することが出来た。しかしそんなギリギリの状況だったにも関わらずナインティギアは高く評価されていた。

 

 まず世間を賑わせている1頭サードプレジデントの弟であること。サードプレジデント自身も人気が高いがその身内も相乗効果により人気が高まっていた。

 

 そしてもう一つがナインティ自身が強い競馬をしたこと。新馬戦で囲まれ絶望的な状況から差し切り、着差以上の強さを見せていたことから馬券は売れまくり一番人気になっていた。

 

 そのナインティギアがゲートに入ると、他の馬たちも次々とゲートに入っていく。

 

 

 

【さあ全馬がゲートに入りました。スタートです!】

 

 ゲートが開き一斉に飛び出していくと2頭が飛び出し、先行するとナインティギアはいつもの如くやる気のない走りを見せていた。しかもナインティギアは舌を舐め回し、どこからどう見ても舐め腐っていて、これがレースだという緊張感は全く感じられなかった。

 

 

 

「おい、あいつ何やってんだ?」

 

「あんなに舐めてたら他の馬に負けるぞ」

 

「やっぱダメだな、兄貴が凄すぎたんだよ」

 

 

 

 スタンドからは落胆の声が上がり、実況も呆れたような声で【ナインティギアはやる気ナインティの追込】とダジャレを言う始末。

 

 その一方で逃げ馬の2頭、サクラサエズリとアイネスフウジンは互いに競りかけて1000m56秒9で通過するほどの超ハイペースでレースが進む。後ろの馬にとってはかなり有利に思えたが、ある一人の男は違った。

 

 

 

「くそっ、動いてくれよ!」

 

 その男こそ、ナインティギアに騎乗している創也であり、このペースを是としていなかった。それというのも先日サードプレジデントが制したJCはハイペースであったにも関わらず後ろの馬が追い込めないという意味不明な状況が起きていた。そしてそれは今回も同じことが起きるかもしれないという危惧を抱き、ハイペースの割には速い脚を使っている。

 

「頼む、ナインティ……っ!」

 

 ──仕方ねえな、あいつをおちょくる為にもやるかね

 

 創也はそう願った瞬間、ナインティギアが加速し始めた。それは今までの緩慢な動きではなく、サードプレジデントを彷彿させるような急加速。徐々に上がっていき、アイネスフウジンとサクラサエズリの射程圏内まで入った。

 

 

 

「よしいいぞ! そのまま行け!」

 

【おおっと! ここでナインティギアが上がってきた!】

 

【これは良い上がりっぷりですね】

 

【しかしサクラサエズリとアイネスフウジンも負けじと加速していく! 先頭はサクラサエズリ、サクラサエズリが粘る! アイネスフウジンだ、アイネスフウジンが先頭に変わった! アイネスだ!】

 

 サクラサエズリからアイネスフウジンに先頭が変わり、ナインティギアはそれを追い詰める。

 

 ──おらぁぁぁっ! 

 

【ナインティギアが交わした交わした交わした! ナインティギアだ、ナインティギアだ!】

 

「よし、このまま行ってくれ!」

 

 残り200mでナインティギアがアイネスフウジンを差し、創也がガッツポーズを取るとナインティギアが斜行した。

 

 ──飽きた、降りろオラッ! 

 

 首や身体をひねり、創也を無理やり降ろそうとし、減速する。その隙を逃すはずもなく、アイネスフウジンが差し返した所でゴールした。

 

【アイネスフウジンが差し返して一着! 二着にナインティギア、三着に牝馬のサクラサエズリです】

 

「巫山戯るなーっ!」

 

「金返せバカヤロー!」

 

 当然ナインティギアに罵詈雑言の声が響き渡る。そんな中、創也は旭川調教師の下へ向かう。

 

 

 

「すみませんテキ、まさかこんなことになるなんて……」

 

「確かに予想外だったが、あれは事故だ。むしろ創也だったから落馬せずに済んだんだ。もし創也でなければ落馬して命を落としていたかもしれない。今回は無事で何よりだ」

 

「温かいお言葉ありがとうございます。今度からソラを使わせない*1ようにレースしますので今後もよろしくお願いいたします」

 

「創也、何を当たり前のことを言っているんだ? 他の馬は他の騎手でも代わりは効くけどサードプレジデントとナインティギアはそうじゃない。少なくともこの2頭に関しては2頭が同じレースを使わない限り両方乗って貰うつもりだ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「とにかく今回はお前に非がある訳じゃないし、ナインティギアの気性の荒さもオーナー*2は知っている。流石に何度もやられたら実力云々以前に相性が絶望的なまでに悪いから別の騎手を探すだろうが、基本的にはあれを扱えるのはお前しかいないんだ」

 

 あれ扱いされるナインティギアに創也は苦笑いしか出来ず、とりあえずはナインティギアを労うことにして厩舎へ戻って行った。

 

 

 

 翌日

 

「ナインティギアの次の出走レースはどうしますか?」

 

「共同通信杯だ」

 

 共同通信杯──正式名称共同通信杯4歳S、副称トキノミノル記念と呼ばれるレース。格はGⅢの重賞競走でGⅠ競走である朝日杯に比べたら一歩どころか二歩劣るレースだがクラシックを占うレースの一つでありかなり重要な競走の一つ。

 

 このレースに勝った馬はクラシックのうち一つは堅いとまで言われるほど出世する確率が高いレースでもあり、1990年以前はカブヤラオーなどが有名であるが2012年以降はゴールドシップやリアルスティールなど特に素晴らしい成績を修めている。

 

「わかりました、それじゃあナインティギアの調整をしてきます」

 

「ああ、頼んだよ」

 

 創也はナインティギアを連れて調教コースへと向かう。

 

 その頃、アイネスフウジン陣営も共同通信杯に出走登録し朝日杯3歳Sのワンツーが再び相まみえることとなるのだがそれを知るのはしばらく後となる。

 

 

 

 ナインティギアが馬房に戻ると同時にサードプレジデントが顔を出す。

 

 ──その様子だとあいつに乗って負けたみたいだな

 

 サードプレジデントがそう言いたげに創也に目線を送ると、創也は何も言わずにサードプレジデントに乗り替わり調教コースへと向かう。

 

 ──相棒、あいつに構うの結構だが、俺の事も忘れないでくれよ? 

 

「わかっているさ、意外にお前は寂しがり屋だ。俺がいなかったらレースをめちゃくちゃにしてしまうほどのな。それでもナインティに比べたらかわいいもんだよ」

 

 ──そりゃそうだ! 俺はナインとは違う

 

「はいはい、わかったから行くぞ」

 

 そんなやり取りをしながら、創也はナインティギアとサードプレジデントの二頭を調教していく。

 

 

 

 そんな日々を過ごしていると美亜が顔を出してきた。

 

「おはようございます旭川さん」

 

「美亜さん、おはようございます。今日はサードプレジデントの様子を見に来たんですか? それなら電話を下さればお迎え出来ましたのに」

 

「それもありますが、もう一つ用件がありますの。実はサードプレジデントとナインティギアの半弟について相談に来ました」

 

「弟って……ナインティギアのように凶暴な奴じゃないですよね?」

 

「いえ、そんな物騒なものではありませんしサードプレジデントやナインティギアよりも大人しくてかわいい子ですわ」

 

「参考までにお伺いますが、その父親は?」

 

「ミスターシービー。史上3頭目の三冠馬ですわ」

 

 ミスターシービーと言えばシンザン以来19年振りに現れた三冠馬であり、下の世代の三冠馬シンボリルドルフに一度も勝てず騎手の腕が良かった悪かっただのと評価は分かれるが、皐月賞、日本ダービー、菊花賞、天皇賞秋を制した紛れもない名馬。その血を引いているというだけでもかなりの期待が持てる。

 

「ミスターシービーですか。パーソロン系やノーザンダンサー系でないのはナインティギアの反省からですか?」

 

 パーソロン系、パーソロン自身の産駒や前述したシンボリルドルフ、3200m時代の天皇賞秋を制したメジロティターン、ダービー馬サクラショウリといったパーソロンの血を継ぐ馬達の子孫のことで、ノーザンダンサー系は20世紀が誇る大種牡馬でその血を繋ぐ馬達で日本ではノーザンテースト、マルゼンスキー、ヤマニンスキー、モガミと言った馬達が有名だ。

 

 その馬達は総じて気性難の産駒を生みやすく、特にパーソロンとモガミの産駒は気性難であることが多い。

 

 比較的大人しく生まれるはずのアンバーシャダイが父でもナインティギアのような気性難が生まれたのだ。気性難である要素──パーソロンやノーザンダンサーを含まず、しかもかなりの名馬であること。その条件を満たすのがミスターシービーだった。

 

「私は直接生産に関わっていないので生産に至った経緯は不明ですが、おそらくそうです。事実その仔は気性は兄達よりも素直で、非常に大人しいですよ。お陰で競り落とすのに苦労しました」

 

「うーむ、確かにそれはいいニュースですね」

 

「それで、この子を預かることは可能でしょうか? 引き分けられないというのなら他の厩舎にお願いするしかありませんが……」

 

「もちろんです。誠心誠意対応させて頂きます!」

 

「ありがとうございます。それではよろしくお願いしますわ。旭川さんに調教助手と厩務員の皆さん、創也さん」

 

「ええ、美亜さん。今度の有馬記念、楽しみにしてて下さい」

 

「ふふっ、創也さん。期待していますわ。それと先程話した子ですがクラフトボーイと名付けていますので、そちらの方もお願い致します」

 

 美亜はそう言って頭を下げてから厩舎を後にして行った。

*1
ソラ使う、つまり手を抜くこと。今回は手を抜かせないようにすること

*2
星崎父のこと




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尚、次回更新は本日18時です

番外編は何が見たいか

  • サードプレジデント産駒の活躍
  • サードプレジデントのその後
  • ナインティギアとクラフトボーイの活躍
  • ウマ娘サードプレジデント転生者疑惑
  • アニメ版ウマ娘世界のサード達
  • アプリ版ウマ娘世界のサード達
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