読者の皆様はお年玉はもらえたかな?ウマ娘の正月ボイスは回収したかな?作者は執筆活動が忙しくてそれどころじゃありませんでした。
朝日杯FSのウイニングライブ後にて、ナインティギアはアイネスフウジンに詰められていた。
「なんでなの!? なんであそこで手を抜いたの!?」
「走る気が失せた。それだけだよ」
アイネスフウジンがナインティギアを問い詰めている理由、それは朝日杯FSでナインティギアが先頭に立った後、手を抜いてしまったからだ。もしあれがなければアイネスフウジンは勝てなかっただろうし、本人もそれを自覚している。それ故にアイネスフウジンは手を抜いたナインティギアを許せなかった。
「答えになってないの! ちゃんと答えてなの!」
「……本気で走るのは疲れるだけだし、何よりもレースは嫌いなんだ。だから先頭に立てばもういいかなぁって思っただけ」
「ふざけてるの!?」
「別に。ウマ娘の中には私のようにレースが嫌いって奴もいる。無理やり走って怪我するくらいなら走らない方がマシだし、勝つために全力を出すなんて面倒くさい。そう思わないかい?」
「そんなの言い訳なの! 仮にもGIでしょ!」
「レースの格は関係ないよ。私はただ走っただけで、その結果2着で負けた。ただそれだけのことさ。それに私に勝った上にあのマルゼンスキー先輩と同じタイムで走れたんだからいいじゃないか」
「良くないの! こんな侮辱は生まれて初めてなの!」
「こんな〜レースははーじめて〜」
ナインティギアが煽り、アイネスフウジンがキレ、殴ろうとした瞬間、甲高い声が響いた。
「停止! 速やかに止めよ!」
そこに現れたのはトレセン学園理事長、秋川やよいであった。
「判明、事情はわかった。だが暴力沙汰は感心しないなアイネスフウジン」
「うぅ、ごめんなさいなの……」
「ナインティギア、君も悪い。君とは違ってウマ娘の大半はレース好きなんだ。それを侮蔑することはウマ娘を侮蔑することと思え!」
「はい」
「判決! 二人共【赤い悪魔襲来日】に食堂に向かい、そこで一日スタッフの手伝いをせよ!」
トレセン学園が出す軽処罰としては尤も重いものだろう。この【赤い悪魔襲来日】はサードプレジデント母子が食堂にやってくる日で、その日は戦場すら生ぬるい激務となる。つまりは地獄のような忙しさであり、その罰は最も重かった。
「(これは困ったな)」
ナインティギアは内心では困り果てていた。確かに自分が悪かったが、あの程度のことでここまで怒るとは予想外だったのだ。
「(まあ仕方ないか)」
とはいえ既に決まってしまった以上は受け入れるしかない。そうして二人は【赤い悪魔襲来日】に食堂で働き始めた。
「お待たせしました、こちらになりますの!」
アイネスフウジンが愛想良くやる中、ナインティギアは無言で皿洗いをしていた。皿洗いと言ってもあの【赤い悪魔】二人が食べる量は余りにも多く、ウェイトレスのアイネスフウジンよりも仕事量が多い。
「お代わりですわ」
「まだ食べられるノ?」
「ええ、勿論ですわ。ですがお母様は無理なさらずに」
「OK、じゃあ次はこっちを食べてみようカ」
「ええ、お願い致します」
「(止めろ、これ以上仕事を増やさないでくれ。確かにコイツラは【赤い悪魔】だ)」
ナインティギアが心の中で呟きながら、二人の暴食は続いていく。
「やっぱり美味しい物はいいネ」
「ええ、本当に」
「(こいつらを止めるにはどうすればいいんだ? いや、あれがあった)」
ナインティギアがふと二人を止めるアイディアを思いつき、料理長に許可を貰い実行に移す。
「おや、これは……?」
「箸休めのアイスパフェです。お腹がいっぱいでも口直しに食べれますし、何よりデザートとして甘い物を食べるのは問題ありませんよね?」
「Oh、ナイスアイデアね。これならいくらでも食べられそうだヨ」
二人が食べていき、しばらくするとサードプレジデントが頭を抱えるようになる。それはアイスクリーム頭痛と呼ばれるもので冷たい物を急に食べると起きる頭痛である。
サードプレジデントの母は現役時代にその経験があり、頭痛が起きないギリギリのタイミングを知っていたがサードプレジデントはそれを知らず、思わず手が止まってしまう。
「大丈夫?」
「あ、はい。少し頭が痛くなっただけです」
「ほら、姉さん。ゆっくり食べな」
ナインティギアが水をサードプレジデントに差し出す。
「ナインティ、ありがとうございます」
「いえ、当然のことをしたまでですよ」
ナインティギアが立ち去り、サードプレジデントが再びアイスクリームを食べていくと頭痛が起き、その度に手が止まる。
「流石、あの二人の親戚なだけあって【赤い悪魔】の片割れの手を止めやがった!」
「いや、もう一人が止まらないぞ!」
サードプレジデントの母が止まらず、悲鳴を上げるスタッフ達。まさしく米国史上最強ウマ娘の貫禄だった。
「キャロ、急いで食べなければ頭痛は起きないネ。ゆっくりと食べるヨ」
「はい、お母様」
アイスクリーム頭痛を乗り越え、アイスクリームを食べていき、次の食べ物へと移る。
「ナインティ、次は何を出すべきだ?」
料理長がナインティギアにそう尋ねる。あの二人を止めた実績は余りにも大きいからだ。
「次は霜降り肉。それもA5ランクの奴を惜しみなく!」
「よし来た!」
そして出されたのは分厚いステーキで、それを二人は幸せそうな顔で食べ続ける。
「ん、もう終わりデスか。では最後は……キャロどうしたノ?」
「いえ、胸焼けが……」
「そうネ、じゃあ次で終わりましょウ」
サードプレジデントの胸焼けの原因は脂の多い霜降り肉が身体を受け付けていないからであり、サードプレジデントの母自身も多少なりとも胸焼けを起こしていた。その為、次のメニューで終わる事にした。
「お待たせしました。カツ丼です」
「おぉ!」
「おいしそー!」
「(まさか一番キツイメニューだと思うまい)」
最後のメニューはカツ丼、それもつゆだくのもので、時間が過ぎる程につゆが米を吸い取り、胃袋に収まる頃にはとんでもない満腹感に襲われる。
「では頂きましょう」
サードプレジデント母娘がカツ丼を食べていくと、二人共次第に手が止まっていく。サードプレジデント自身はこれまで手を止めてしまい満腹感が出てきたこと、母親は娘ほどではないにせよ満腹感が襲ってきた上にカツ丼の米を同時に食べられず具のみを食べてから米にたどり着いてしまいつゆを吸い取った米に苦戦していた。
「いいぞ、いいぞ。あの大食らい共が食べ物で苦しむ姿を見るのは爽快だ!」
ナインティギアが笑う中、スタッフ達は複雑な心境だった。これまではあの【赤い悪魔】達を満足させられるまで食べさせることが出来ず、どうすれば満足するかと頭を悩ませていたが、今回はその【赤い悪魔】達が苦しみ、自分達の食事に不満があるのではないかという不安が出てきている。
「(だがこれでようやく終わった)」
ナインティギアの読み通り、二人が食べ終わって食堂の従業員全員に平穏が訪れる。
「あの【赤い悪魔】二人をこんな方法で撃退するとは……見事だナインティギア」
「いえ、私はただ提案しただけです」
「謙遜することはない。さて、罰も与えたことだし今日は休んでいいよ。もちろんアイネスフウジンもね」
「はい、失礼します」
「失礼しますの!」
こうしてナインティギアとアイネスフウジンはスタッフ達の好感度を上げ、一日を終える。
そして翌日。
「是非ともうちのスタッフに!」
「いや私の所でバイトをしないか? 給料は時給4千円だそう!」
トレセン学園の食堂や外部の飲食店からナインティギアはスカウトされまくっていた。
「(うわぁ、やっぱりこうなった)」
どんなに時給が高くともあの二人が来店する飲食店でバイトなどしたら命の危機である。
「えっと、申し訳ありませんが私にはやりたいことがありまして」
「そう言わずに! 我が店の給料はこちらになります」
その給料明細を見ると夢破れたウマ娘どころか大卒の給料を上回る待遇であり、二人に関わる飲食店でなければ真っ先にくらいついていた。
「すみません、お金よりも大事な夢がありまして」
「レース嫌いの癖に何を言っていますの? ナインティ」
「姉さん、余計なことを言わないで!」
「なるほど、やはり貴方は素晴らしい逸材ですね。ウチに来てください!」
結局、ナインティギアはどの職場のスカウトを断ったが、それでも将来有望だということが知れ渡り飲食店から毎日のようにスカウトメールが届くことになる。
「絶対行かないから!」
「しかし金に困ったナインティギアは背に腹は代えられず泣く泣く飲食店で奴隷の如く働くのでありました。目出度し目出度し」
サードプレジデントの茶々にナインティギアが顔を赤くして否定する。
「そんなことは絶対にない! そんなんやるんだったら自衛隊だの、警察だのと公務員にでもなってやる!」
公務員になれるかは不明だがナインティギアの将来は少なくとも飲食店で働くことはなくなった。
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尚、次回更新は本日21時です
番外編は何が見たいか
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サードプレジデント産駒の活躍
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サードプレジデントのその後
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ナインティギアとクラフトボーイの活躍
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ウマ娘サードプレジデント転生者疑惑
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