≫オグリキャップ陣営がオグリキャップを1989年一杯で引退表明した話は作者が考えたオリジナル展開ではなく史実に基づいています。サードプレジデントがオグリキャップ引退表明に多少ながらも関わっていたので前回などで掘り下げました
・エルプス
≫前回の話しで名前のみ登場したエルプスはGⅠ競走を勝ち、泳ぎがかなり得意な馬でした。ウマ娘9にて彼女の名前と某水泳選手の名前からついた渾名が【マイケル・エルプス】というだけです
弥生賞を勝ち皐月賞に向けナインティギアが引き運動している最中、サードプレジデントはというとプール施設で調教を受けていた。
「サード、もうおしまいだおしまい!」
──断る! 誰が何と言おうが俺が満足するまでプールは俺の物だ!
創也がプール調教を止めようとするがサードプレジデントはそれを拒否。かれこれ6時間も泳いでいた。
「おい、いつまでやってるつもりだよ。いい加減止めてくれ」
──今までこの気持ち良い水に浸かれなかった分取り戻しているんだ。それを邪魔するということはどういうことかわかるな?
「はいはいわかったわかった。好きにしな」
──わかれば良い。さて、もう少し泳ぐとするか
「全く一日貸切にして正解だったよ。こんな調子じゃ他の馬が使えないからな」
サードプレジデントのプール好きに頭を抱える創也。サードプレジデントのプール好きが始まったのはサードプレジデントの入厩からしばらくした時だった。
サードプレジデントは入厩されるまで厳格に管理されていたが入厩してからというものの、オグリキャップ以上に大食らいな為に出されたものは全部食べた上におかわりを催促しては食べ尽くす。そんなことを繰り返していくうちに体重は60kg増加。明らかに太り気味でありとあらゆる手を尽くした結論は水泳だった。
プールなら足の負担が少ない上に体脂肪を燃焼させ、食欲が満たされるという一石二鳥なトレーニングが出来る。
最初こそサードプレジデントは乗り気ではなかったがいざ入ってみるとこの通り。今ではすっかり虜になっていた。更に付け加えるなら入厩当初創也が騎手課程で不在だったこともあり、ほとんどの調教を手を抜いていたがプールだけは別で旭川はとにかくプールに連れていき、毎日のように泳がせ、体重を理想的なものに仕上げた。
そんな事情もありサードプレジデントのプール好きは各関係者に伝わっていてプール一日貸切の理由も納得していた。
「ほら、帰るぞ」
──ちっ、今日はここまでか
「明日また来てやるからそれまで我慢しろ」
──本当か? 約束だからな?
「ああ、もちろんだとも」
──ならば仕方がないな。帰ろう
「よし、帰るぞ」
サードプレジデントを馬房へ戻し、創也はある記事を目にしていた。
【メジロルイス4馬身差で圧勝! 次走はダービートライアルNHK杯*1へ!】
それはメジロ軍団のエース、メジロルイスが新馬戦を勝ち上がった記事だった。本来ならメジロルイスが新馬戦を勝ったとしても記事にされることはないのだが、馬主や騎手、調教師といった関係者がメジロライアンよりも上と評判高く、注目度が高い。無論それだけでなくメジロルイス自身も新馬戦を圧勝したこともあって関係者はメジロライアンよりもメジロルイスの方に期待していた。
創也や旭川もその動向に注目し、需要は少なからずそこにあった。
「テキ。メジロルイス、勝ち上がりましたね」
「ああ、NHK杯を勝ち上がったらダービーの有力候補になるだろうな」
「メジロライアンよりも格上の存在ですからね。よほどのことがない限りダービー出走権は得られるでしょう。それよりも問題は……」
「ハクタイセイだろ?」
「えぇ、そうです」
ハクタイセイは4歳馬の中では創也達の中で一番注目している馬ではあるが世間の評価は決して最高評価ではない。むしろナインティギアやアイネスフウジンに比べると一歩劣り、3番人気辺りが妥当であろう。
だがそれでもハクタイセイを注目しているのには理由があり、ナインティギアは当然だがアイネスフウジンやメジロライアンといった有力候補達と一度も対戦経験がなく未知数な部分があるからだ。しかも連勝し続けているのだから尚更その存在は強く見えてしまう。
それ故に不気味な存在と言え、その実力を測れるのはハクタイセイ自身しかいない。そしてそのハクタイセイは皐月賞に出走する。
「ハクタイセイ……どんな馬なんでしょうか」
「まぁ雑誌を見てみる限りじゃ【白いハイセイコー】だのと呼ばれているが、まだ底を見せていない。油断出来ない相手であることは間違いないな」
「テキ、ハクタイセイはどのくらいの強さだと思いますか?」
「血統を見ている限りだと1600mから2000mの距離適性だがその距離ならメジロライアンよりも上かもしれない」
「そうなんですか!?」
「あぁ、そうだ。皐月賞ではアイネスフウジンが逃げ損ねたらハクタイセイにマークを切り替えるべきだ。メジロライアンに切り替えてもハクタイセイに負ける」
「わかりました。肝に命じておきます」
「おう、頼むぜ」
そして皐月賞当日、その事件は起こった。
──ぶっ殺す! 蹴り殺す! 俺、大将!
【あーっとナインティギア落馬ぁっ!?】
1番人気で本番を迎えたナインティギアがまさかのスタートで落馬。これによりナインティギアが放馬され、競走中止。
ナインティギアは創也を置き去りにしてゲートから飛び出し、そのままレースをしていき、ハクタイセイ、アイネスフウジン、メジロライアンなどの強豪を纏めて差し切り5馬身差をつけてゴールしたが肝心の鞍上がおらず勝者とは認められず、ナインティギアの次にゴールしたハクタイセイが皐月賞の勝者となった。
これには創也も旭川も唖然としてしまい、オーナーである星崎も頭を抱えていた。
「すみません、テキ、星崎さん」
とにかく創也は平謝り。それもそのはず落馬せずにいたら圧勝していたレースを取りこぼし、更には地力で劣るはずのハクタイセイが皐月賞を制したことに対して何も言えなかったのだ。
「あれは事故だから気にするな。それよりも身体の方は大丈夫なのか?」
「ええ、自分はなんとか受け身を取れましたから身体の方は大丈夫です」
「一度ナインティギアに乗ったことがあるがあれは人間が制御出来るものではない。寧ろ今まで落馬せずに済んだのか不思議なくらいだよ。やってしまったものは仕方ないから切り替えて次にいこう創也君」
本来なら罵詈雑言されても仕方ないものだが旭川も星崎もナインティギアの気性難は理解しており、創也に非はなく寧ろ気遣われ、戸惑う。
「そうですね、ありがとうございます」
「無理はしないでくれよ……本当に。お前がいなくなったら春天誰がサードプレジデントに乗るんだ? ナインティギアもお前以外制御出来るとは思えないしな」
「ええ、わかっています。サードプレジデントの背中から見る景色は誰にも譲りませんし、ナインティギアの背中も譲る訳にもいきませんよ」
「それだけ元気なら大丈夫なようだな……オーナー、次のナインティギアのレースですがダービートライアルレースのNHK杯に出走してみてはどうでしょうか?」
「このままだとダービー出走は難しいか?」
「ええ。賞金額の面で弾かれる可能性がありますから。それにNHK杯に出走するメジロルイスの様子を見るにあたっては悪くはないかと」
「確かに一理ある。創也君、任せたよ」
「はい!」
こうしてナインティギアはNHK杯へと駒を進めていった。
このお話をお楽しみ頂けた、あるいはこの小説自体をお楽しみ頂けたならお気に入り登録や高評価、感想の方を宜しくお願いいたします。
また感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。
尚、次回更新は明日0時です
番外編は何が見たいか
-
サードプレジデント産駒の活躍
-
サードプレジデントのその後
-
ナインティギアとクラフトボーイの活躍
-
ウマ娘サードプレジデント転生者疑惑
-
アニメ版ウマ娘世界のサード達
-
アプリ版ウマ娘世界のサード達