89式和製ビッグレッド   作:ディア

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・作者が感想を多く要望する理由
≫読者の皆様がどう思おうと感想を書いてくれている読者様の意見にしか言葉は届かない。その為感想が少ないとその小説が感想を書いた読者様に合わせてしまう可能性があり、不安に思うから
≫そんな声を無視すればいいじゃん、等と思ってはいけない。割りとこういった意見は的を得ている場合があり、無視出来ない場合の方が多い
≫結論からいうとお気に入り数といった数字だけでなく、意見を取り入れることでより良い作品を作る為なので是非とも感想を書いていって下さいますようお願い致します。

・ナインティギアの人気
≫意外にも人気なナインティギア。ただ無双するサードプレジデントよりも気性難が災いするなどの欠点があって負けが多いナインティギアの方が余程主人公らしいからか?

・ダイヤモンドジュビリー
≫気性難が多いセントサイモン産駒の中でもトップクラスの気性難で、セントサイモンよりか少しマシか同じレベル。別名【悪魔の子】とも。どのくらい荒いかというとレースを遅らせる、パドックに蹴りを入れる、落馬が当たり前、薬を飲ませる為に近づけば手が無くなる為棒に薬を塗り噛みつかせて対処させるしかない、脱走した挙げ句行く手を阻んだら逆ギレし突撃する、乗った騎手は踏み殺されそうになったりしたために二度と乗りたくないと匙を投げられるなどとんでもない馬。
≫気性難が災いし無敗とはいかなかったが厩務員自身が騎手となることで走れるようになり英国三冠馬となることが出来た屈指の名馬。それでも父親の方が競走馬としても種牡馬としても優秀で気性難の度合いも上なんだよな……セントサイモンェ……


第35話

 そして迎えた宝塚記念当日。昨年イナリワンが制したこの舞台でナインティギアは気合い充分といった様子であり、ナインティギアに跨った創也は手綱越しでもわかる程にナインティギアの気合を感じていた。

 

 だが入れ込み過ぎでもなく、冷静さがそこにあり、メンタル面では最高のものとなっていた。

 

「(成長したなナインティ)」

 

 心の中でそう呟く創也。

 

 米国のサンデーサイレンス、日本のナインティギアと呼ばれるくらいにはナインティギアの気性難が知れ渡っており、創也ですら頭を抱え、他のジョッキーからは同情されるほどである。去勢して気性難を改善しようにも様々な事情から去勢出来ず断念。その結果最悪と言っていいほどに荒れた馬になり、日本ダービーでは荒れに荒れまくりスタッフや観客に危害を加えた上に放馬ということまでやっている。欧州史上最悪に近い気性難のダイヤモンドジュビリー*1ですらそこまで一度にやりたい放題していないのだから、世界屈指の気性難である。

 

 そんな我儘ボーイことナインティギアが観客の声に全く動じず、むしろその声援に応えるかのように首を上げ、胸を張って歩いているのだ。

 

 

 

 ──目標はあいつらか

 

 パドックを周回し、ナインティギアがオグリキャップとイナリワンを睨みつけるとオグリキャップこそ動じなかったがイナリワンが耳を絞り込み、ナインティギアの前に立ち塞がる。

 

 ──てめえか? オイラにガンつけたのは? 

 

 ──だとしたら? 

 

 ──おうおうおう! オイラを誰だと思っている! オイラはなぁ! 泣く子も黙るイナリワンだ! オマエみたいなひよっこが舐めた真似してっとぶっ飛ばすからな! 

 

 ──各馬気をつけぃっ! 

 

 ナインティギアが吠えると出走馬達が固まり、そして一斉にナインティギアに頭を下げ身体を向ける。それはまるで自衛隊における国旗に対する国旗掲揚のようだった。

 

 ──泣く子も黙るとはこういうことを言うのだ。貴様のような似非ボスが嘗めた口を聞いても誰も聞かんぞ? ん? 

 

 ──んだとてめぇ!? 

 

 ──年を重ねただけの老いぼれと若くカリスマもある俺とでは格が違う。それすらもわからんとは哀れな存在だ。

 

 ──誰が老いぼれだと? 

 

 ──老いぼれだろう。もう既にここにいなくてもおかしくない年齢の癖に何を寝ぼけたことを言っている? 

 

 ──うるせえ! まだまだ現役だ! 

 

 ──どちらにせよしばらくすれば貴様が否応なしに老いぼれだというのに自覚することになる。その時を楽しみにしているがいい。

 

 ナインティギアはそう話を切り上げるとイナリワンの抗議を無視し、パドックを周回する。

 

「……貫禄あり過ぎだろう」

 

 それを見た競馬関係者が思わずそう呟いた。それは間違いではなくナインティギアはボス気質であり、貫禄を見せつけた。野生であればいくつもの群れを束ねる馬となり伝説となっていただろう。しかし悲しいことに馬の序列社会と人間がつける格差とは比例関係になく、人間がつける格差はレースの強さのみで決まるのだが。

 

 

 

【さあいよいよ本馬場入場です】

 

 そのアナウンスとともに各馬が本馬場入場していくと大歓声が湧き上がる。

 

 その原因はオグリキャップとイナリワン。この2頭については知らないものはいないと思うが、2頭ともに地方から中央に移籍してきたアイドルホース達であり、このレースの主役達でもある。ナインティギアはあくまで脇役の中では1番主役に近い立場にあるだけでこの2頭に比べたら大したものではない。

 

「オグリ! オグリ! オグリ!」

 

「イナリ! イナリ! イナリ!」

 

 オグリコールとイナリコールが鳴り響く中、ナインティギアは全く動じず堂々とした態度で歩いていた。

 

「流石としか言いようがないな」

 

 オグリキャップ達の人気か、それともナインティギアの動じない姿を見てか、そう星崎が呟く。ナインティギアはまさに孤高の存在。周りを気にせず、ただ前を見据えていた。

 

「ええ、お父様。この時ばかりはあの子を手放してしまったことを後悔していますわ」

 

 美亜がそういうと星崎が微笑む。

 

「美亜、それは欲張りすぎというものだ。第一お前にはサードプレジデントがいるじゃないか」

 

「それはそうですが、やはり私としては……」

 

「それにな、私にも一度くらい惚れた馬が稼ぐ姿を見てもいいじゃないか。お前のサードプレジデントのようにな。それともサードプレジデントとナインティギアの馬主の名義を交換するか?」

 

「い、いえ! サードプレジデントは私のものですわ! お父様であろうとも渡しません!」

 

「そういうことだ。さあ、そろそろ始まるぞ」

 

 ナインティギアがゲートインすると係員が離れていく。

 

【さあいよいよです。日本ダービーの中1週*2挟んで4歳馬が挑みます】

 

 

 

 そして全員が位置につくとスタートが切られ、各馬一斉にスタートする。

 

【スタートしました。まず飛び出していったのはシンウインドがハナに立ちました。そして2番手にはオサイチジョージが走ります。そして注目のオグリキャップは4番手、そしてその後ろにホクトヘリオス、ヤエノムテキ。イナリワンとバンブーメモリーが上がってまいりました。ナインティギアは後方からといったところです】

 

 先行争いが激しくなる中、先頭集団を見ながら5、6馬身ほど後方に位置していた。

 

 「(少し早いか?)」

 

 創也はそう思いながらナインティギアの手綱を握りしめる。

 

【早くも第2コーナのカーブに差し掛かりました】

 

「(早いっ……!が行くなら今しかない。これ以上は手遅れになる)」

 

 コーナーに入りナインティギアが徐々にスピードを上げていくと一気に加速し、前にいる差し馬をどんどん抜き去り、先行馬達をマークするようについていく。

 

【まだシンウインドが先頭に立っています。オサイチジョージ2番手、オグリキャップは相変わらず4番手の位置にいます。そしてその後ろに上がって来ました! ナインティギアとイナリワンがここにいます!】

 

 ──誰が老いぼれだオラァっ!? 

 

 ──いるいる、そういう風に老いぼれと認めない奴

 

【ちょっと掛かっていますね。これはどうでしょうか】

 

 解説がナインティギアとイナリワンの上がり方に不安に思ったのかそう呟く。

 

「(この勝負、見えてきた。このまま順調にいけばナインティギアはオグリキャップに3馬身差の圧勝。昨年の覇者イナリワンも場所が悪い。俺ならもう少しいいポジションにつかせて闘争心を煽るが、そうも言ってられないか?)」

 

 ナインティギアの影に隠れがちだがイナリワンも気性難で有名で、特に掛かりやすくスタート直後から宥めながら乗る必要がある程だ。しかし折り合いがつけばその力は凄まじい物で平成三強に相応しい能力を見せつける。

 

 今のイナリワンは前者、つまりかなり掛かり放しで走っている状態であり制御が難しい。創也が乗ったとしてもこの状態のイナリワンを勝たせるのは無理だろう。事実掛かり過ぎてしまい早めのスパートをせざるを得なくなり、イナリワンがオグリキャップとの差を半馬身程まで縮めて迫ってしまう。

 

「(さて、どうなるかな)」

 

 ナインティギアは後続を引き離しつつ、オグリキャップを見つめる。

 

【さあ、最後の直線に入って参りました! オサイチジョージが抜けて先頭に立ちました! オグリキャップがここで仕掛けてきました!】

 

 残り200メートルを切り、オグリキャップがオサイチジョージを仕留めようと末脚を爆発させイナリワン達後続を突き放していく。

 

 そしてオグリキャップの標的はオサイチジョージのみとなった。

 

【さあここでオグリキャップのスパート! オサイチジョージ逃げる、オグリキャップが追い詰める、オグリ追い詰める!】

 

 1秒、2秒と時とゴールとの距離が迫るのに対してオサイチジョージとオグリキャップの距離は全く縮まらず、オグリキャップ鞍上の丘騎手が焦りもう一発鞭を振るう。

 

【オグリキャップが伸びない! イナリワン、ヤエノムテキも苦しい! オサイチジョージ逃げ切るか!?】

 

 オサイチジョージが平成三強の2頭を封じ込めて逃げ切り勝ち──誰も誰もそう思い、オサイチジョージ以外の単勝馬券を握っていたものは投げ捨て始める。だがすぐにとある馬券を握っていたものは慌てて回収する。

 

【いや、ナインティだ! ナインティギアがオグリ、イナリワンを撫で斬った! 残るはオサイチジョージのみだ!】

 

 それはナインティギアが次元の違う速度で加速してきたからだ。ナインティギアの加速はオグリキャップヤイナリワン、ヤエノムテキ達をも飲み込み、オサイチジョージを捕らえ先頭に立った

 

【それ行け、鞭などいらぬ! ナインティギアよ、無冠の帝王の名を返上だ!】

 

 その姿を見た実況がかつて貴公子と呼ばれた競走馬テンポイントを重ね合わせ、感極まり涙を流す。

 

【あーっとナインティギア失速!】

 

 誰もがナインティギアの勝ちを確信した瞬間、ナインティギアが失速しオサイチジョージが加速した。

 

 

 

「(やはり来てしまったか……)」

 

 創也が恐れていたことが起きてしまった。ナインティギアが伸びなかった要因の一つにローテーションがあまりにもキツいからという理由があり、中1週というオグリキャップよりも疲労が残った状態でレースをしてきた。その証拠に他の馬に比べて筋肉量が落ちており、体力不足で伸び切らない。寧ろこれだけ健闘したのだから上出来と言えるだろう。

 

「(やはり無理だったか。だがもしNHK杯の後、ダービーではなく宝塚記念に直行していたなら勝っていたのはナインティギアだろう)」

 

 オサイチジョージ鞍上の巌山騎手はそう思いながらオサイチジョージをゴールまで導き、ナインティギアを差す。

 

【内からオサイチジョージ、内からオサイチジョージ!】

 

 丁度その位置こそがゴール板であり、2頭は横並びのままゴールイン。だが誰の目にもオサイチジョージが差した後で止まったように見えた。

 

【オサイチジョージです……勝ったのはオサイチジョージです】

 

 実況が唖然とそうアナウンスする。確かに写真判定が必要な程並んでいたが、そのアナウンス通りオサイチジョージが差し切り1着、ナインティギアが2着となった。

 

 

 

【勝ったのは地方の怪物達でも90式スナイパーでもありません! 勝ったのはオサイチジョージ!】

 

 騒然とする阪神競馬場、人気の3頭がまとめてオサイチジョージに負けたことで馬券が紙くずとなり泣き崩れるファン達。中には全財産突っ込んだ者もおり阿鼻叫喚地獄となっていた。

 

「ふざけるな! 金返せ!」

 

 そんな罵詈雑言と共にナインティギアに缶が投げつけられる。

 

 ──ぶち殺す

 

「おいナインティ──ぐあっ!?」

 

 そしてナインティギアに缶が当たった瞬間にナインティギアが創也を振り落とし、観客席に乗り込み、大暴れ。係員達が止めに入るもナインティギアは止まらず、観客達に襲い掛かる。

 

 ──粋がるな雑魚ども! 貴様らは所詮カスに過ぎん! 

 

「た、助けてくれーっ!!」

 

「うぎゃぁっ!?」

 

「痛い痛いっ! 止めろ! 止めろぉぉぉっ!」

 

 蹴り、殴り、噛みつき、ありとあらゆる傷害を加え最終的には重傷者1名、軽傷者28名を出し、最後は満足したのか馬運車へと帰っていった。因みにその重傷者1名こそ缶を投げた犯人であり、ナインティギアを暴れさせた元凶であり、ナインティギア陣営を訴えたが逆に損害賠償請求をされ、破産すらさせてもらえず借金地獄になる。感情のままに動いた大馬鹿者の自業自得としか言いようがない。

*1
別名悪魔の子。セントサイモンの気性難を1番受け継いでしまった馬。レースを遅らせたり、パドックで観客に蹴りを入れたり、放馬したり、落馬が日常茶飯事というとんでもねえ馬

*2
前走から2週間。現在は1ヶ月前後間が開くが当時は中1週だった




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尚、次回更新は本日21時です

番外編は何が見たいか

  • サードプレジデント産駒の活躍
  • サードプレジデントのその後
  • ナインティギアとクラフトボーイの活躍
  • ウマ娘サードプレジデント転生者疑惑
  • アニメ版ウマ娘世界のサード達
  • アプリ版ウマ娘世界のサード達
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