89式和製ビッグレッド   作:ディア

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・レーティング
≫ワールドホースベストレースランキングに用いられる競走馬達の強さの基準みたいなもので重賞競走の格付けにも用いられる。しかしこの小説において公式名称は省いてレーティングと略し、もう一つの指標であるタイムフォームをタイムレーティングと略す
≫そのレースにおいて4着までの平均レーティングが105以上ならGⅢ競走、110以上ならGⅡ競走、115以上ならGⅠ競走相当のレースとなる
≫1980年代最強馬ダンシングブレーヴは141(当時の記録。後に138に引き下げられる)とかなり高く引き下げられなかったらフランケル(欧州マイルのアタオカ)やフライトライン(米国ダートのアタオカ)よりも高い。
≫しかしながらこのレーティングは欧州のレースで走った時、圧勝すればするほど高くなる傾向があり、逆に着差が小さいと過小評価する傾向にあり、無敗で欧州三冠を制したラムタラや同じく無敗で米国三冠馬となったジャスティファイは過小評価されている。……もっとも馬場状態を無視して相手関係や着差等を見ている関係上高く評価出来ないのが主な理由だろうが。

・シャム
≫ゴドルフィンアラビアンとセクレタリアトと同期の競走馬の2頭がいるが後者の概要説明する
≫セクレタリアトがいなければ二冠馬となっていたであろう馬でベルモントSでセクレタリアトと競り合う形で追走していたがスタミナ切れを起こしズルズルと最下位へと沈んだ。その潰した張本人ことセクレタリアトは2着に31馬身差をつけて勝利し、セクレタリアトの影に隠れてしまった名馬
≫ちなみに心臓が18ポンドもありセクレタリアトの22ポンドには劣るものの通常の倍近い値であるが、シャムの心臓を計測した博士が「セクレタリアトはシャムよりも4ポンド重いという感覚だった」ということ記述であるのに対してシャムのは正確に計測されていることからセクレタリアトの心臓がシャムと並ぶか、22ポンドよりも重いかは今となっては不明である


第36話

 激闘の宝塚記念を終えたナインティギアはクラフトボーイと厩舎で過ごすことになる。本来であれば放牧して休ませるべきであるのだが、クラフトボーイそのものがナインティギアにとって癒しであり放牧するよりか遥かに効果的であったのと、サードプレジデントが海外遠征で不在となりそこにナインティギアも不在となればクラフトボーイが全厩舎の牡馬の足を止まらせることになる。

 

 そんなことになれば各厩舎から泣きつかれるだけでなく、クラフトボーイ自身にも悪い影響が出る可能性もあった為、ナインティギアはサードプレジデントが帰国するまでの間クラフトボーイの面倒を見るために留まることとなった。

 

 

 

 閑話休題。

 

 ナインティギアとクラフトボーイを留守番にするサードプレジデントが挑んだレース、KGⅥ&QES。英国最高峰のレースであり、欧州三大レースの一つにも数えられる名誉あるレースだ。

 

 

 

 このレースは距離が2400mで争われるが、日本馬の優勝は無い。しかしサードプレジデントは日本馬として初の米国のGⅠ競走トラヴァースSを制しただけでなく、JC等を制し世界レコードをいくつも更新し世界最強馬と評判が良い。またこのレースでサードプレジデント以外にこれといった馬はいない。その証拠に単勝オッズは1.2倍、他が5倍以上とサードプレジデント一強状態となっていた。

 

 

 

「サード、お前が最強だってさ」

 

 ──そうだろうな。だが俺達のやることは変わらない。いつも通り先頭でゴールするだけだ。

 

「そうだね。いつも通り先頭でゴールしよう」

 

 創也はサードプレジデントの言葉に答えながらサードプレジデントが穏やかな顔をし、緊張していないことに安心し、これから戦う相手を考える。

 

「(さて考えることは一つあるけどこのレース、俺以外にも日本人がいるのか。だとしたらサードプレジデントの攻略法も思いついているのか?)」

 

 創也と同じ日本人──柴太は、日本ではイナリワンの鞍上を務め気性難の取り扱いが上手な騎手でもある。そんな彼はアサティスという古馬の鞍上でサードプレジデントに挑む。

 

「(とはいえ注目すべきはベルメッツ。愛ダービーでこそ負けているが、英ダービーの有力候補だった上にそれ以前は3連勝。4歳での出走で斤量も他の馬よりも5.5kgも軽い。油断は出来ない)」

 

 

 

 創也が気にしていたのは柴太が鞍上のアサティスではない。ベルメッツという馬だった。

 

 それというのも創也の相馬眼が優れていたのと同時に創也の父がバックパサー信者だったからだ。

 

 バックパサーを母父に持つマルゼンスキー等が活躍したのを見た父は母父バックパサーの馬について研究し、ノーザンダンサー系とバックパサー肌馬をかけ合わせることで最強馬が生まれると結論している。その研究の最中で創也も巻き添えをくらいマルゼンスキーやエルグランセニョールといった母父バックパサーの名馬について警戒心を持つようになっていた。

 

 ベルメッツはそのエルグランセニョールを父に持つ競走馬であり、ベルメッツよりも良血馬であるはずのアサティスよりも創也は血統面を評価し警戒していた。

 

「(それにもう一頭気になるとすればオールドヴィック。前走こそ敗北したがそれまでは6連勝。愛ダービー、仏ダービーも勝った2カ国ダービー馬。とても距離に不安があるとは思えないサドラーズウェルズ産駒だ)」

 

 後の未来でこそサドラーズウェルズ産駒イコール最高という評価だが、この時点での評価はそこまで高くなく競走成績の割に大活躍しているの評価だった。

 

 

 

 ──確かに絶不調なら負けかねないが今の俺はそうじゃない。相棒、俺を信じろ

 

 不安がる創也に対し、サードプレジデントは優しく微笑みかける。

 

 そんな時、スタンドから歓声が上がった。

 

 ──いよいよ始まるな。

 

 ゲート入りが始まり、全員が入っていく。そしてスタートが切られると一斉に馬が駆け出した。

 

 

 

【さあKGⅥ&QESスタート! まず飛び出していったのは、サードプレジデント! 前走とうってかわってサードプレジデントがハナを切って先頭に立っています!】

 

 サードプレジデントが選択したのは逃げ。それも最初から飛ばしていく逃げ切りではなく、ある程度脚を使って後続を引き離す先行に近い逃げを取った。

 

「(これが俺達の本当の本気だ)」

 

 セクレタリアトのベルモントS、そしてサードプレジデントの日本ダービー。どちらも今と同じような競馬をした。

 

 それは何故か? 

 

 双方ともに絶好調であり、この競馬が1番合理的かつ、勝てる可能性が高いと判断したからである。

 

 セクレタリアトとサードプレジデントは双方ともに並外れた巨大な心臓の持ち主であり、スタミナにおいては世界史上最高とすら言われている。

 

 その為スタミナに物を言わせて他の馬を潰すレーススタイルが1番得意と言えるだろう。

 

 しかし2頭のスピードがないかと言われるとそうではない。寧ろスピードはあり、ともに世界レコードを更新している。セクレタリアトは未来永劫更新出来ないであろうダート2400mのレコード保持者、サードプレジデントはダート2000mだけでなく芝2400mに至っては2度も更新している。

 

 セクレタリアトとサードプレジデントの違いはステイヤーであるかどうかの違いである。セクレタリアトがステイヤーであるのに対してサードプレジデントはそうではない。確かに天皇賞春でレコードを更新したが、セクレタリアトにスタミナで勝てるかと言われば否である。サードプレジデントの最大の強みはスピードそのもので、加速、最高速の高さはサードプレジデントの方が上となる。その為セクレタリアトとサードプレジデントが共に全盛期の状態で同じレースで走るとしたらセクレタリアトが先行しその後ろにサードプレジデントが控える形となるだろう。

 

 とはいえどちらも互いに比較したらの話しであり、最高峰であることに違いはなく、サードプレジデントがスタミナ任せで逃げても強いことに変わりなく、また逃げ以外の戦法で勝つことも可能だ。

 

 

 

 それでも逃げにしたのには理由はあり、KGⅥ&QESはアスコット競馬場で行われ、その地形の特質上最もスタミナを要する競馬場である。故にこの競馬場で走る競走馬達はスタミナ切れしやすいとも言え、消耗戦になりがちだ。最もスタミナのあるサードプレジデントが逃げることで否応なく消耗戦に持込み、更に消耗させる。それが創也達サードプレジデント陣営が選んだ作戦だった。

 

 

 

【さあサードプレジデントが先頭に立ったまま最初のコーナーを回ります!】

 

 日本の競馬場とは違い、アスコット競馬場は正三角形のようなコースの形状でありコーナーが急である。その為日本の京都競馬場の淀の坂以上にゆっくり曲がらないと曲がりきれず外ラチへ一直線してしまう。アスコット競馬場でタイムが出ないのはそういう事情もある。

 

 いくら淀の坂の鉄則を無視し続けたサードプレジデントと言えど流石にペースを落としてからコーナーを曲がり切る。そこから加速し一気に後続を引き離そうとしていく。

 

「くそっ、早めに動かないとヤバいっ!」

 

 アサティス鞍上の柴太がそう呟き、アサティスを動かす。すると他の馬も動き出し、サードプレジデントを捉えようという動きに変わり2番手を追走していたオールドヴィックも動こうとするが動けなかった。

 

【さあ最初のコーナーを曲がったところで各馬一斉に動き出していきました。サードプレジデントを逃さんと加速していきますが、やはりこの馬速い早い!! 早くもサードプレジデントが後続を大きく引き離していきます】

 

 創也の予想通り、いやそれ以上の展開となった。

 

 創也が考える限り、このレースで最も重要なファクターは持久力である。

 

 何故ならこのレースは先にスタミナが尽きた方が負ける消耗戦。そのスタミナの消費量は菊花賞よりも多く、長距離レースよりも短い距離で行われる。つまり体力勝負とも言えるレースなのだ。

 

 更にいうならサードプレジデントは一日中プールで泳ぐこともある程のプール狂いであり、その心肺機能は非常に高い。対して他の出走馬はどうか? 確かに世界最高レベルの名馬揃いだが、サードプレジデントに心肺機能で勝てるかと言われたら無理だろう。創也の知る限りプールで一日中泳げるようなスタミナを持つ馬は世界でもサードプレジデントくらいしかいない。歴代の競走馬を含めてもいないだろう。

 

 そんなサードプレジデントに消耗戦で勝てる手段があるのかと言われたらまず無理だろう。スピードによるゴリ押しもサードプレジデントはそれ以上に加速出来る。はっきり言って無理としか言いようがない。それを証明するようにオールドヴィックが無謀にも追走した結果スタミナ切れとなり、ズルズルと順位を下げていった。

 

【さあ最終コーナーを曲がり先頭は変わらずサードプレジデント! リードは30馬身程! 他の馬はもう動けないのか!?】

 

 実況のアナウンス通り最終コーナーを曲がる頃にはサードプレジデント以外バテバテになり、どんどんと失速していた。中にはスタミナが切れていない馬もいたが、サードプレジデントが加速した時点でスタミナを使い果たしてしまったのだろう。

 

「よし、もうお前の判断に任せるぞ」

 

 ──それじゃ軽く流しておくぜ

 

【もう追う必要はない! もう追う必要はない! 藻掻く後方を置き去りだ! 楽勝だ、豪快に逃げるサードプレジデント!】

 

 そして最後の直線に入る直前、サードプレジデントは少しだけスピードを上げる。それだけで後方の馬達の心が折れ、差がより一層広がっていく。

 

【サードプレジデント圧勝! クリフジを超え12戦12勝! 中央調教馬史上最多勝利を飾りました! そしてタイムは……!?】

 

 そして実況がタイムをみると唖然とし、しばらくの間硬直しベルメッツとアサティスがなだれ込む。

 

【た、タイムはなんと2分24秒0! 時計はレコード、時計はレコード! 2秒以上もレコードを塗り替えました!】

 

 その差は40馬身差というもので国際GⅠ競走でここまで差を着けて勝利した例はなく、セクレタリアトのベルモントSですら31馬身差であることから圧倒的なものであることが分かる。

 

 これをレースの結果、サードプレジデントのレーティングは144にまで引き上げられそれまで歴代最高だったダンシングブレーヴを抜いた。

 

「全く……お前、いやお前達は生まれた時代が悪すぎたよ」

 

 柴太は自分が乗っているアサティスだけでなく最下位になってしまったオールドヴィックを見てそのあまりの次元の違いにただそう呟くしかなかった。

 

 

 

『サードプレジデント』

・馬主 星崎美亜

・生産牧場 月夜牧場

・調教師 旭川誠

・性別 牡馬

・毛色 栗毛

・年齢 5歳

・戦績 12戦12勝

・朝日杯3歳S、三冠、トラヴァースS、JC、有馬記念、天皇賞春、KGⅥ&QES




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尚、次回更新は明日0時です

番外編は何が見たいか

  • サードプレジデント産駒の活躍
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