89式和製ビッグレッド   作:ディア

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第50話

 JC勝者、ナインティギア。米国の英雄サンデーサイレンスをも食らい、悲願のGⅠ競走制覇を果たした。

 

【兄弟JC制覇! 見ているかサードプレジデント、お前の弟がお前の作ったレコードを更新して勝ったぞ!】

 

 しかも世界レコードのおまけ付きの勝利を飾り、ポスト・サードプレジデントとして君臨することになったが流石にサンデーサイレンスを打ち負かすのに体力を使い切りナインティギアは有馬記念は出走回避することになる。

 

【オグリ来た【ライアン!】オグリ来た【ライアン!】ライアン来たライアン来た! オグリキャップ、メジロライアンを凌いでゴールイン! オグリ一着、オグリ一着、オグリキャップです!】

 

 因みにその有馬記念はオグリキャップが奇跡の勝利を果たし、オグリキャップもサードプレジデント同様に有終の美を飾る事が出来た。

 

 

 

 そして年末を終え、表彰式が行われる。

 

【さあいよいよ今年の日本中央競馬委員会による賞を発表します!】

 

 

 

・最優秀3歳牡馬 クラフトボーイ

・最優秀4歳牡馬 ナインティギア

・最優秀5歳以上牡馬 サードプレジデント

・最優秀父内国産馬 ナインティギア

・最優秀ダートホース サードプレジデント

・年度代表馬 サードプレジデント

 

 

 

 と創也の実家である牧場出身の3頭がタイトルを獲得し、サードプレジデントは昨年、一昨年を含めて7冠を達成。その圧倒的強さは誰もが認めるところであった。

 

 

 

 しかしこの中で物議を醸し出したのは最優秀4歳牡馬の受賞だった。本来であればナインティギアではなくダービーを勝ったアイネスフウジンが取るべきであるとの声が多かったからだ。

 

 しかしナインティギアは、今年ダービーを勝っただけで他は全敗しているアイネスフウジンと異なり勝ったJCの他に宝塚記念や菊花賞にも出走し、連対している。またアイネスフウジンに共同通信杯や弥生賞で勝ったことが評価されていた為に受賞出来たと言っていい。

 

 他の面子もメジロライアンが有馬記念で2着と好走してはいるが、それだけでありナインティギアのようにインパクトがない。菊花賞馬メジロマックイーンも菊花賞以降なにも出走しなかったことで評価が低い。皐月賞馬ハクタイセイも似たようなものである。

 

 故にナインティギアが最優秀4歳牡馬を受賞するに相応しい理由であったが、流石に満票とはならず僅差での受賞となった。

 

 

 

「なあ、来年のクラシック路線はどうなると思う?」

 

「まだわからないが、少なくともクラフトボーイがクラシック路線の有力候補であることに違いないよ。朝日杯で1分32秒8、サードプレジデントに次いで歴代2位の記録を出したんだから間違いなく強いよ」

 

「でもシンボリルドルフ産駒のトウカイテイオーもかなりの素質の持ち主らしい」

 

「そう言えばそんな馬が話題になっていたな。とりあえず本命クラフトボーイってことには違いなさそうだよ」

 

「そういうもんか、古馬の方は?」

 

「ナインティギアじゃない? サードプレジデントも引退してしまったし、少なくとも中長距離路線はそれでいこうかな。ただ長距離はメジロマックイーンでも悪くないかも」

 

 この結果を受け既に来年のクラシック路線や古馬中長距離路線を占う者も現れ始めていた。そしてそれは競馬関係者だけでなく一般の人達も同様だ。

 

 

 

【さあトウカイテイオー来た、トウカイテイオーだトウカイテイオー、若駒Sを制したのはトウカイテイオー! 文句なしに強い!】

 

【クラフトボーイが他馬を寄せ付けず圧勝! 皐月賞に向けて一点の曇りなし!】

 

【菊の仇は阪神で討つ! ナインティギア差した差した差し切った! メジロマックイーンは2着! 阪神大賞典を制したのはナインティギア! 天皇賞春が楽しみになりました!】

 

【メジロルイスが強い強い、日経賞を完勝! やはりメジロ軍団のエースといったところ!】

 

 それぞれクラシック路線と古馬路線の有力馬達が勝ち上がり、名を挙げていく。

 

 そして次の世代を担う新たなる世代の幕開けとなる。

 

 

 

 そんな盛り上がりを見せている一方でサードプレジデントはというと、育成牧場にて若駒達の併走相手になっていた。

 

「流石だなキャロ、GⅠ競走11勝は伊達じゃない」

 

 若駒達の全力も馬なりで突き放し、余裕の表情を浮かべていた。ここで心が折れる馬がいくらかいたが、サードプレジデントの走りについていける馬も少なからずおり、そういった馬は重賞を必ず勝ち中にはGⅠ競走を勝つことになることになる。サードプレジデントは重賞を勝つ馬達を見抜く目安となり、育成牧場では重宝された。

 

 

 

「よーし、サードここまでだ」

 

 そんなサードプレジデントに騎乗しているのは現役時代の相棒である創也。毎日は無理だがこうして週に一度育成牧場でサードプレジデントに騎乗している。

 

「サード、今日もお疲れ様。しかし相変わらず凄い馬体だな。本当に種馬とは思えないほどだ」

 

 ──まあな。それよりもプールに行こうか

 

「プールに行こうだって? わかったわかったから引っ張るなって」

 

 サードプレジデントが創也の肩を甘噛みし、プールへ促すとサードプレジデントがプールに入り泳ぐ。

 

「間違いなく競泳馬としても最強になれたよお前は」

 

 通常であれば栗東のプールで4周すれば良いトレーニングとなるのだがこの育成牧場のプールはそれよりも長く1周あたりが栗東のプールの1.5倍ほどあり、3周もすればプールに関しては重賞勝ち出来る素質の持ち主であると言える。事実この育成牧場で育った重賞馬は最低でも2周、ナインティギアやクラフトボーイなどのGⅠ制覇する競走馬は4周もこなしたこともある。

 

 だがサードプレジデントはそれを6周する。それだけスタミナがあるということでもあるし、何よりスタミナをつけることだけが目的ではない。

 

 骨と筋肉を密にすることが出来、故障や病気のリスクを減らせるというメリットがある。種馬になってから現役期間で致命的な屈腱炎などの心配はないが病に倒れることはある。プールトレーニングを重ねることで抵抗力を増すことで病気のリスクを減らしていた。

 

 

 

「しかしいつ見ても凄いな。お前が引退してから半年以上経つのに、未だに衰えないどころかさらに磨きがかかったんじゃないか?」

 

 ──当たり前だろう。まだ現役のつもりなんだから

 

 故にサードプレジデントの馬体は絵画に出てくる名馬が更に美化されて飛び出してきたような馬体をしており、毛艶は赤く光り輝いていて美しさを際立たせている。

 

 

 

 そんなサードプレジデントを一目見ようと訪れる観光客も多く、育成牧場ではサードプレジデントがプールで泳いでいる姿などを写生する画家などが多くいるほどである。

 

「赤兎馬が現代に生きていたらこんな感じなんだろうな」

 

 そう呟く写生する画家がいたりして、その絵は高く売れたりする。

 

 

 

 しかしサードプレジデントが育成牧場から月夜牧場へと移動することになる。理由は至極単純に種付けシーズンが来たからだ。

 

 ──んっ……あーっ……気持ち良かった。ねえ貴方、もう一度ヤリませんか? 

 

 ──勿論だ。いくぞ! 

 

「こらこら、そんなにやるなって!」

 

 サードプレジデントとサルサビルが一回戦どころか二回戦もやろうとしたことや2頭が中々離れようとしなかったこと以外は順調で、無事に100頭交配を終えることが出来た。

 

「ハッハッハッ。全く本当にサルサビルのことが好きなんだな、サードは」

 

「笑い事じゃありませんよ、危うく蹴り殺されそうになったんですからね!?」

 

「まさしく恋路を邪魔する者は蹴り殺されるということだな」

 

 創也の父と月夜牧場のスタッフがその時あったエピソードを話していくと、スタッフ達は笑う。

 

「でもサルサビルはこれからどうなるんですか? 一応美亜さんが賭けに勝って出産までこちらで預かることになりましたが、その後についてはなにも聞かされてませんよ?」

 

「サルサビルは日本で仔馬を産んだ後は一度ナシュワンの血を取り入れる為に故郷の牧場へ戻すらしい」

 

「乳離れも済ませる前にですか!?」

 

「そうだ。幸いにもシルキークラフトはクラフトボーイを産んでからは不受胎が続いている上に歳だ。これからはこういった仔馬の乳母として活躍させてもらう」

 

「成程、それなら安心ですね」

 

「ああ。話は変わりますが、あの時蹴られてたら死んでいたかも知れなかったんだよな……」

 

「それはそうですよ。もしそうなっていたら俺達の命だって危うかったですから」

 

「まさかあんなに強いとは思わなかった。気性難だなんて聞いていなかったしな」

 

「いや普段サードは大人しいんだ。観光客に触られても嫌がらないし、愛想もいい。なんなら他の牡馬達とも喧嘩せずに仲がいい。我儘だってプールに行かせろって催促だけだし、それにしても甘噛のレベルだ」

 

「……ということは何かの拍子で暴れるということですか」

 

「多分な。ナインティギアにしか喧嘩は売らないし、サルサビルとの交流を邪魔したら暴れるんだろう。だがそれでもサルサビルのことを好き過ぎるだけだと思うがな」

 

「今度からサードがサルサビルと種付けするときは自由にさせますか?」

 

「いやそれは駄目だろう。それで双子とか生まれたら面倒だ」

 

 競走馬に双子はタブーとされている。何故なら双子は母体に負担がかかるだけでなく1頭あたりにかかる栄養素が少なくなってしまい大成しなくなるからだ。その為双子のうち片割れを潰して一頭の競走馬*1として活躍させるのが常識となっている。

 

 因みに後に双子のエピソードにアイネスフウジンの下の兄弟が双子の状態で競走馬としてデビューを果たし話題になったが2戦0勝と大成することはなかった。

 

「まあとにかく今後気を付ければいいだけの話さ」

 

 創也の父がそう注意を促し、話を終えるとスタッフが話題を変える。

 

 

 

「そういえば、クラフトボーイの皐月賞もうそろそろですね。サードプレジデントの弟でミスターシービーの子供なんですから期待できますね」

 

「ああ。クラフトボーイには期待しているよ。あいつは既にGⅠを勝っているし、怖いのは出遅れとトウカイテイオーだけだ」

 

「あのシンボリルドルフ産駒の!」

 

「全くあの皇帝はとんでもねえな。種牡馬としても完璧とかどうなってやがる」

 

 かつて皇帝と呼ばれたシンボリルドルフはトウカイテイオー達の世代が初年度産駒となり、その翌年にもアイルトンシンボリなど多数の有力馬を輩出している。少なくともクラシックの有力候補を初年度から輩出するというのは種牡馬として優秀な証拠でもある。競走馬としてもほぼ完璧で種牡馬としても優秀、付け入る隙が全くないと創也の父だけでなく他のスタッフもそう思わざるを得なかった。

 

「場長、クラフトボーイを信じてあげましょうよ。僕たちが信頼せずに誰が信頼するんですか」

 

「それもそうだな。よし! 皆、クラフトボーイを応援しよう! 皐月賞の勝利を願って乾杯!!」

 

『おお!!』

 

 こうしてスタッフ達はクラフトボーイへの声援を送る準備をし、皐月賞が始まる。

*1
アドマイヤベガはこれの典型例




・前回の後書きに引き続き……
≫もし良ければサードプレジデントに種付けしたら活躍しそうな繁殖牝馬(史実架空問わず)がいたら名前を挙げてメッセージボックスの方に投稿してください。架空馬の場合は血統や出来れば競走成績なども記載お願い致します

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尚、次回更新は未定です
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