89式和製ビッグレッド   作:ディア

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・サードプレジデント産駒の募集
≫たくさんの応募ありがとうございました。応募した中から吟味して登場します。また応募した中で作者が閃き、考えた配合相手の産駒も登場しますのでよろしくお願いいたします

・ツンデレ
≫ツンデレの概念自体は天照大神、かぐや姫といった人物が挙げられ古来からあったらしいがツンデレという言葉が初めて認知されたのは【君が望む永遠】の大空寺あゆ。
≫とはいえ作者は【君が望む永遠】も大空寺あゆも知らんので、それよりも古いキャラクターを紹介する
≫【らんま1/2】の天道あかねはその典型例であり、主人公こと乱馬に素直になれない、暴力を振るってしまうといった描写がある。しかし乱馬もツンデレそのものであかねに素直になれずつい暴言を吐く描写がありあかねに暴力を振るわれるのもそれが原因で、彼がファーストコンタクト時に反抗せず優しくしていたらあかねもツンデレになることはなかった。むしろはじめから素直になれない彼こそがツンデレなのではないだろうか?


第55話

【ナインティギア宝塚記念無念の回避!】

 

【原因は鞍上か!?】

 

 

 

「……どこもかしこも俺を叩いてやがるな」

 

 新聞を見て思わずそう呟かざるを得ない創也。今まで順調だったが故に襲ってきた挫折があまりにも大きく、そのようなネガティブな発言をしてしまう。

 

 そんな時だった。

 

 ──何見てるのー? 

 

 無垢な瞳でクラフトボーイが創也を見つめる。まるで自分のことを見ているようだと、その目を覗き込んで思う。

 

「クラ……」

 

 ──元気出してよ! 

 

 クラフトボーイが創也の頭を舐めはじめグルーミングを始める。

 

 それを見た他の馬達は微笑ましそうな表情を浮かべるが、創也は少し戸惑ってしまう。

 

「ちょ、止めろって。お前は大人しくしてろって」

 

 ──いいじゃん、減るもんじゃないし

 

「全く仕方ないな……」

 

 ブラシを取り出し、クラフトボーイにブラッシングをし始めると創也の心が穏やかになり、いつの間にか笑みが零れていた。

 

「よし、こんなものだろ」

 

 ──ありがとうね! お陰でスッキリしたよ! 

 

 クラフトボーイがお礼と言わんばかりに顔を舐める。舐め終わる頃には顔はベチャベチャになっていたがどこかスッキリとしていた。

 

「さてと、そこの不機嫌な黒王様にもやってやるかね」

 

 ──誰が不機嫌だって? 

 

 ナインティギアの方に振り向き、ブラシを向けるとナインティギアが不満げに鼻息を出しながらこちらに寄ってくる。

 

 ──ニンゲン、どうしてもというのなら貴様にブラッシングを許す。俺としてはどちらでもいいからな

 

「はいはい照れ隠し*1がかわいい奴だな」

 

 ──やるならさっさとやれ! 

 

 こうしてナインティギアのブラッシングをし、ナインティギアもご満悦といった様子だった。ただしその様子も僅かにしか見せていないが。

 

 

 

 そんなこんなでブラッシングを終えると電話が鳴り響いた。

 

「もしもし、月夜牧場ですが」

 

「こちら有限会社メジロ牧場の北乃実夜と申します。月城創也騎手はいますか?」

 

「私が月城創也ですが、一体何のご用件でしょうか?」

 

「今度の高松宮杯*2、メジロルイスに騎乗して貰えませんか?」

 

「お、お受けすることはまだ考えさせて下さい。本日中には返答致します」

 

 創也が動揺し、そう答える。まず創也の一存ではどうしようもないことだからだ。基本的に旭川はフリー活動を許しているが高松宮杯には旭川厩舎の馬も出ている。騎手こそ現時点で未定であるが、創也のスランプが始まる前は騎手の名前に創也の名前があった。つまり旭川は創也に騎乗を任せようとする可能性もあり、事前に相談する必要がある。

 

「わかりました。連絡先だけ教えますのでそちらの方にご連絡して下さいね」

 

 実夜が電話番号を教え、電話を切ると創也はすぐさま旭川に電話をかけ、それまであった経緯を話すと旭川が納得し、すぐに実夜の連絡先に電話をかける。

 

「もしもし有限会社メジロ牧場です」

 

「もしもし、月城です。実夜代表をお願い致します」

 

「畏まりました」

 

 実夜に電話が代わり、創也が引き受けることを伝えると喜色の声が響く。

 

「月城騎手、ありがとうございます。ではメジロルイスの厩舎の方には伝えて置きますのでよろしくお願いします」

 

「わかりました。当日までには仕上げておきます」

 

「期待しています。それでは失礼しました」

 

 通話を終え、受話器を置く。

 

 

 

 そしてナインティギアのいない宝塚記念では波乱が起きていた。

 

【メジロライアン先頭だ、後ホワイトストーン2番手、メジロマックイーンは現在3番手、賢明に差を詰めてきました! メジロマックイーン来ましたが、しかしメジロライアンが突き抜けた! メジロマックイーン来るがメジロライアンだ、メジロライアンがメジロライアン圧勝ゴールイン!】

 

 それまで勝ち星から遠ざかっていたメジロライアンが宝塚記念を制し、秋前のGⅠ競走が終わる。

 

 

 

 そんな表舞台とは裏腹に創也がスランプに陥り、創也はまたも勝てなかった。かつてサードプレジデントの相棒だったとは思えないほどの落差であり天才と呼ばれた騎手の姿はそこにはなかった。

 

 勿論その低評価はマスコミだけじゃない。各厩舎からもバッシングを受けるほどには低迷していてメジロルイスを預かっている厩舎からも「オーナーの頼みでなければ乗せない」と豪語していた。

 

「さていくか」

 

 絶対に失敗は許されない。

 

 宝塚記念でメジロライアンが圧勝したこともあり、メジロルイスは休み明けとはいえ勝利を求められていた。

 

 それにも関わらずスランプ状態の創也に騎乗依頼をしたオーナーの気持ちが厩舎側に理解出来ない。それならば他のジョッキーに任せればいいだけのこと。それでも実夜は創也を指名したのだ。

 

 その理由を創也は聞かされていないが、創也に何かしら期待しているのだろう。

 

 

 

 創也がレース前に顔を合わせてしまったのは妻であり得意先の美亜だ。この高松宮杯には美亜の馬も出走し、創也はそれを蹴ってメジロルイスに騎乗する。つまり馬主の美亜からしてみれば裏切り者としか言いようがない。

 

「貴方……」

 

「美亜さん、これもレースだ。悪く思わないでくれ」

 

「いえ、今の貴方が私の馬に乗らないで良かった。スランプの貴方に乗ったところで負けるのは目に見えていますから」

 

 美亜が軽く挑発し、創也を奮い立たせる。これは美亜なりに創也を思いやっての言葉だ。美亜としても菊花賞入るまでにクラフトボーイに万全を期した状態で騎乗してほしいことに変わりない。その為ならこの高松宮杯で美亜の馬が負けたとしても痛手にならない。

 

「そう見えるならそう思っているといい。何せ今日のメジロルイスは強いよ」

 

 創也がそう吐き捨ててメジロルイスの元へ向かっていった。

 

 

 

【さあ高松宮杯、今スタートが切られました!】

 

 メジロルイスの得意とするレースは先行、それも逃げに近い先行であり、2番手の位置につきダイタクヘリオスとともにそのまま後続を引き離す。

 

「(抜群の先行力、そして類まれなる持久力。流石メジロ軍団のエースと期待されていただけのことはある。何故今までGⅠを勝てないのか不思議なくらいだ。いやナインティがいるからか……)」

 

 創也がそんなことを考えながら体内時計のタイムを計る。1Fの平均ラップ11.7秒と概ね平均ペースと言える。

 

「(普通なら平均ペースなんだろうが前にいるダイタクヘリオスがな……)」

 

 メジロルイスの前にいるダイタクヘリオスという馬はとにかく逃げて逃げまくる馬で、こういう馬がいるとレース展開がハイペースになりがちでメジロルイスと言った先行馬のスタミナが切れてしまい不利になる。

 

 だからといって持ち味を活かさないということにはさせない。この馬の持ち味は抜群の先行力とそれを持続する能力である。

 

 後ろの馬よりもダイタクヘリオスの逃げ切りの方が恐ろしいと考えた創也はダイタクヘリオスをマークし、2番手のままレースを進めさせる。

 

 どんな馬であっても逃げを打つ以上息を入れるタイミングというのはあり、その隙を見計らって創也はメジロルイスに鞭を入れる。

 

「行け!」

 

 創也の声に反応し、メジロルイスが一気に加速して先頭に出る。

 

「よしっ、このまま押し切るぞ」

 

 その声にメジロルイスが応えるようにさらにスピードを上げる。

 

【メジロルイス来たメジロルイス来た! ダイタクヘリオス頑張る、ヘリオス頑張る!】

 

 ダイタクヘリオスと並びかけ、鍔迫り合い染みた競り合いが始まる。

 

「こいつ、まだこんな力があるのか!」

 

 ダイタクヘリオスと創也の力比べが始まる。ここで創也が気合を入れなければメジロルイスの脚が鈍ってしまう。

 

「負けるかぁー!!」

 

 創也が叫ぶと同時に腕の力を使ってメジロルイスの首を下げさせるとメジロルイスの速度が更に上がる。

 

【さあ、半馬身抜けてメジロルイスだ! メジロルイスだ! そのまま2頭並んでゴールイン! メジロルイスも月城騎手も復活! ダブル復活となりました!】

 

 メジロルイスの故障明けのレースも、創也の久々の勝利もこのレースに終わり、満面の笑みを浮かべる。

 

「おめでとうございます月城騎手! 久々の勝利ですね」

 

「ありがとうございます。これでなんとかスランプ脱却の目処が立ちました。メジロの御婆様には感謝してもしきれません。普段は妻や義父が馬主の競走馬を優先しますがこれからはメジロの競走馬も出来る限り優先したいと思います」

 

「それは良かったです。今後ともよろしくお願いします」

 

 実夜には恩義がある。それに美亜にも借りを作ってしまった。ならば美亜の愛馬を勝たせることでその分はチャラにしてもらいたいものだ。

 

 

 

 それからの創也は一度スランプを脱出したお陰で視界がよりクリアになりゾーンのようなものが何回も継続し、勝利をより一層重ねていく。

 

【京都大賞典連覇達成っ! メジロマックイーンを迎えて勝ったのはナインティギア!】

 

【逃げるクラフトボーイ、これは強い強い! 5馬身突き放して圧勝ゴールイン! 菊花賞に向けて一点の曇りなし!】

 

 ともに創也が鞍上で勝ち取り、いよいよ秋の天皇賞とクラシック最後の冠を手に入れる時が来た。

*1
ツンデレという言葉はまだこの当時にはなかった

*2
春のスプリントGⅠ高松宮記念の前身のレースだが高松宮杯は7月初句に行われるGⅡ競走かつ芝2000m




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