89式和製ビッグレッド   作:ディア

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・トウカイテイオー
≫アニメ2期でネタバレしているのと史実と異なる動きをし始めているで記載
≫史実ではGⅠ4勝、無敗で春二冠を制したものの骨折により菊花賞を断念。その後は産経大阪杯を勝ち春天でメジロマックイーンに挑むが5着に破れ、その後また骨折。復帰初戦の秋天では7着に破れ、JCで全てを取り返したかと思われたが有馬記念で2桁順位に破れまた骨折。復帰は宝塚記念かと思われたが長引き有馬記念になる。一年越しとなる挑戦で勝つのは不可能と思われたが見事に勝利しラストランとなった。
≫ウマ娘2期ではあたかも有終の美を飾ったかのようになっているが史実はそうではない。実はその後も現役を続行しており、大阪杯や春天に向けて調教していたが回避しその後の目標に立てていた宝塚記念も秋天もなんやかんやで回避し結局引退することになった。結果的に復活の有馬記念がラストランとなっただけで有終の美とは言えないのが悲しいものである。
≫因みにウマ娘ではどのウマ娘も美人な為か、余り強調されないが史実の彼はグッドルッキングホースであり、ウマ娘でモデルをしていたゴールドシチーは当然歴代の名馬を含めても彼が1番という声が多い。しかし馬にモテたのはトウカイテイオーではなくダイタクヘリオスである

・レガシーワールド
≫史実の93年のJC馬。ミホノブルボンと同厩舎でセン馬であるがゆえにクラシックに出走出来なかったがその素質はミホノブルボンに次いで高く92年のJCでも4着、有馬記念でも2着と善戦している
≫残念ながらこの小説ではとにかく不遇で名前すら登場しない。なんでかって?去勢されたセン馬だから。作者は産駒を生み出せないならシガー(セン馬ではないが無精子病)くらい活躍しないとセン馬は不遇にしている


第58話

 その頃米国では1年リリースでやってきたサードプレジデントに種付けするべく生産者達が殺到していた。世界の伝説的名馬が種付け料無料となればそれはもう殺到するのは当たり前だが、日本にいた時の比ではなく300頭も申し込まれていた。

 

「いや流石に無理でしょ」

 

 通常種牡馬が1年で種付けする数は50から100あたりで多くても200以下である。それ以上種付けすれば寿命が縮まってしまう。300頭なんてのは到底不可能である。

 

 一気に数を減らす為に各牧場にサードプレジデントの種付け相手を1〜3頭選んで貰うことにして調整した。その結果余裕が生まれ、なんとか100頭に絞ることに成功した。これでもかなり努力した方で中には数を超えて「この繁殖牝馬達に種付けしてくれ! 生産者は私や管理している牧場でなくてもいいから! 生まれた産駒も言い値で売るから!」と叫ぶ者もいた程だ。

 

 そんなサードプレジデントの種付け相手は牧場が誇る名牝から零細牧場の牝馬まで様々である。

 

 

 

 例を挙げるならグレードレディエム。この馬はGⅠ競走11勝したレディースシークレットというセクレタリアト産駒の名馬を生み出した名牝であり、ボールドルーラー系との相性は良い。高齢であるのがネックだがそれを抜きにしてもリターンが大きく牧場はサードプレジデントを種付け相手に選んだ。その結果受胎し、来年芦毛の産駒が生まれる。

 

 他にはダララ。この馬はヴェルメイユ賞を勝鞍に持っていることから察せられるが欧州の名馬である。サードプレジデントはトラヴァースSやBCクラシック等を勝ち米国で活躍したがそれ以上に40馬身差をつけたKGⅥ&QESや凱旋門賞など欧州で活躍したこともあり、わざわざダララの牧場側が渡米して種付けにやってきた。昨年日本でも種付けをしたが受胎せず、再び種付けする為にこうしてはるばるとサードプレジデントがいる地までやってきた。その決断は間違いではなく受胎し、ダララが身籠り来年に誕生した。

 

 

 

 この2頭の産駒はそれぞれの国でダービー馬となり、サードプレジデントが種牡馬として凄まじい結果を出すことになる。

 

 他にも多くの繁殖牝馬達が種付けされ、その仔達は無事に生まれ、順調に成長し、そして競走馬としてデビューしていった。

 

 

 

 そしてもう一方、日本ではサルサビルの間に生まれたサルサビル92がサードプレジデント達の母シルキークラフトの手によってすくすくと育ち、ポテンシャルの高さを見せる。

 

「あっ、おいこらっ、待てーっ!」

 

 柵を飛び越え脱走。散々スタッフ達から逃げ回った挙げ句ある程度時間が立つと元に戻りスタッフ達は骨折り損のくたびれ儲けとなる。

 

「(あの柵を飛び越えるなんてとんでもない素質の持ち主だ。やはりサードプレジデントとサルサビルとの間の仔なだけある)」

 

 それを見た場長こと創也の父が感心し、馬主である美亜もその話しを聞き大いに期待し、無難な競走馬名をつけるつもりだったが両親の名を名前の由来にしてセカンドサルサビルと名付けられた。

 

 

 

 そして宝塚記念当日、メジロマックイーンも左第1指節種子骨骨折を発症し、宝塚記念を回避。四強で唯一ナインティギアのみが出走することになった。

 

 

 

【メジロパーマー逃げる、しかしナインティギア余裕の差し切り! ナインティギアまだ余裕がある、余裕があるぞ! 勝ったのはナインティギア! 2着にメジロパーマー! 3着にメジロルイス。昨年に引き続きまたしてもメジロが連対に入りました!】

 

 メジロパーマーが粘るもナインティギアが馬なりで差し切り、宝塚記念を制した。勿論創也が鞍上で、加東を鞍上にしても腰を痛めている為に使い物にならなかった為である。

 

 ──降りろオラっ! 時間だ! 

 

「ほいほいっ」

 

 流れるように降り、腰を打つのを回避する創也。加東の腰の仇と言わんばかりの見事な動きだった。

 

 

 

 

 

 その後、加東も腰の痛みが引き復帰し、前哨戦に挑む2頭。ナインティギアに不安要素はなかったがクラフトボーイは怪我明けということもあり、オッズがやや高めの状態で挑むことになる。

 

【オールカマーを勝ったのはクラフトボーイ! やはり強い! 本当に強い! 影さえも踏ませませんでした!】

 

【京都大賞典三連覇達成っ! 京都大賞典マイスターは俺だ! ナインティギア!】

 

 前哨戦を無事に勝ち上がり不安要素を消した2頭は次のGⅠ競走に向けて調整が始まった。

 

 

 

 天皇賞秋の前週最終追いきりの為に馬場を走るナインティギアとクラフトボーイ。共に気合の入った声を出しながら走る。

 

「やっぱ速いなあ……」

 

「ナインティも負けちゃいないんですがどうにも冴えませんね。こればかりは馬自身のモチベーションの問題ですからね」

 

 二人を見て苦笑いする加東に同じく見ていた創也が返す。

 

 そう、ナインティギアはクラフトボーイに着いて行けていないのだ。何故春天でクラフトボーイに先着出来たのか不思議なくらいに。

 

 そんな会話をしているとナインティギアが暴れ出した。

 

 ──降りろオラっ! 無駄話するんじゃねえよ! 

 

「おっと……前は油断したけど今回はそうはいかないっ!」

 

 ──下手なニンゲンの癖に生意気な! 

 

 加東の言葉に反発するように、今度は全力で走り出す。

 

「おわっとと!?」

 

「クラフトボーイ、止めろ」

 

 ──勿論! 

 

 クラフトボーイが暴れ出したナインティギアに近づき、正面に立つ。

 

 ──兄さん、ニンゲンさんを乱暴にしたら駄目だよ! 

 

 ──あ? ニンゲンが乗ると鬱陶しくてたまらないんだ。邪魔になったら引きずり降ろす! それが俺の信条だ

 

 ──だとしたら伏せるなりなんなりすれば心配して勝手に降りるよ! 一々暴れたら疲れるだけだよ! 

 

 ──天才か、お前。

 

 それからナインティギアは暴れることはなくなり、伏せて降ろすようになった。

 

 

 

 そして迎えた秋の天皇賞。クラフトボーイはJC一本に集中する為、メジロマックイーンは怪我の為に出走せずにいたが代わりに怪我明けのトウカイテイオーが出走してきた。

 

 春の天皇賞ではスタミナ切れで手も足も出なかったが今回は芝2000mの条件下で行われる。つまりトウカイテイオーの得意距離であり、クラフトボーイすらも凌ぎ、ナインティギアを脅かす唯一無二の存在といえるだろう。

 

 しかしナインティギアもこの距離は得意距離であり、皐月賞こそ敗北したがあれは落馬によるもので落馬さえしていなければ圧勝しており2000mは実質的には無敗を誇っている。

 

 更にトウカイテイオーは9月に厩舎に戻ったにも関わらず京都大賞典といったステップレースを使わず直接天皇賞秋に出走しているが、この理由は半ば頃に38℃を超える発熱を起こし、ろくに調教が出来なかったからである。そんな状態でまともに動けるわけもなく、ほぼぶっつけ本番で挑むことになる。

 

 

 

【さあメジロパーマーとダイタクヘリオスが沈んでトウカイテイオーだトウカイテイオーだ!】

 

 最後の直線、メジロパーマーとダイタクヘリオスが逃げまくったせいで超がつくほどのハイペースとなった天皇賞秋、その後ろで3番手でレースをしていたトウカイテイオーがあっさりと2頭を差して突き抜けていく。

 

「(くっ、早すぎる……しょうがないか。ルドルフみたいに賢い訳じゃないしな……)」

 

 トウカイテイオー鞍上の刑部はこの時点で諦めていた。それというのも刑部はもっと後ろの集団でレースをするつもりだった。しかしトウカイテイオーが前の2頭をマークするように先行集団に飛び出していき抑えることは出来なかった。そんなことをすれば返って体力を消耗してしまうことになり何も出来ずに終わっていただろう。これがシンボリルドルフなら地力の差で粘ることも出来たがトウカイテイオーはそうではない。

 

 長く使える脚も一瞬の切れも持っているオールマイティーなシンボリルドルフとは異なりトウカイテイオーは完全に一瞬の切れで勝負するタイプである。皐月賞やダービーでクラフトボーイを差せたのはこの切れが発揮出来たことが起因している。

 

 その上体調不良による調整不足もありトウカイテイオーは沈んでいくと思われた。

 

【トウカイテイオーだ、トウカイテイオーが他馬を寄せ付けない、ムービースターとレッツゴーターキンが来ているがトウカイテイオーがまだ先頭だ!】

 

「なっ……なんて馬だ!」

 

 この展開には騎乗している刑部も驚きの声を上げる。そして刑部は覚悟を決めた。どうせなら勝って復活してやろうと。

 

 刑部の鞭が入りトウカイテイオーがムービースター達を突き放す。

 

【トウカイテイオーだ、トウカイテイオー! トウカイテイオー復活なるか!?】

 

 その瞬間だった。ムービースターもレッツゴーターキンすらも一瞬で置き去りにし、昨年後続を千切ったメジロマックイーン相手に更にぶっちぎった黒い弾丸がトウカイテイオーを襲った。

 

【大外からナインティギア! 大外からナインティギア! ナインティギアが纏めてかわした!】

 

「(嘘だろう!? レース展開が不利とはいえ、直線が長いとはいえ、直線だけで最後方からここまで差し切ったのか!?)」

 

 刑部がナインティギアを二度見し、驚愕する中ナインティギアが1着でゴールインした。

 

 

 

【あっと、ナインティギアに故障発生か? 不動の姿勢を取り、伏せました】

 

 ウイニングランをするかと思われたがナインティギアがその場に止まり伏せると創也が降りる。そして降りると立ち上がり、口取り式へと向かっていく。

 

【ああ大丈夫です、故障ではないようです。おっとここで日本中央競馬委員会から新情報です】

 

【ナインティギア号はレースを終えた後に騎手を振り落とす為、それを旭川調教師以下が改善しようとした結果騎手を安全に降ろすように伏せるようになり、日本中央競馬委員会もナインティギア号に対してレース終了後に騎手が速やかに降りることを認めている】

 

【──とのことです。つまり故障でもなんでもないのでナインティギア号のファンの皆様、ご安心下さい!】

 

 実況アナウンサーの説明に観客達が納得すると拍手が巻き起こる。ナインティギアをよくそこまで安全化させたと感心する声が多数だった。

 

 とはいえそれが面白くない競馬民もいる。

 

「何が認めているだ! そんなの普通じゃねえよ! 特別扱いすんなっ! 特別扱いするから風紀が乱れるんだ!」

 

 そして例の如く、空き缶を投げつけるとナインティギアが激昂し、その競馬民に蹴りを入れシメる。肋骨骨折だけで済ませるあたりナインティギアも気性難が軟化したと言えるが、それでも気性難であることには違いなかった。ナメて来そうな相手は殺すの精神の平安武士がナメたらシメるの精神の暴力団員になったくらいの違いである。

 

 

 

【さあ今度は3頭の争いになった、もう言葉はいらない、もう言葉はいらない! やっぱりナインティギア差し切ったーっ! 2着にクラフトボーイ、3着にトウカイテイオー! やりました、日本馬上位独占だ! そしてナインティギアはJCを三連覇です! これほどまでに強い馬は世界にいるのでしょうか!?】

 

 続くJCでは再びクラフトボーイが逃げまくり、ハイペースな展開となったがクラフトボーイが最後の10mまで粘りを見せる。最後の最後でナインティギアに差し切られてしまうがトウカイテイオーに先着し、4歳時の先着を取り返した。しかしクラフトボーイがトウカイテイオーに先着するレースは全て敗北しており、特にナインティギアに一度も先着していないのが創也にとって気がかりだった。

 

 

 

【トウカイテイオーが伸びない、トウカイテイオーが伸びない! メジロパーマーがまだ粘る粘る! ナイスネイチャが2番手に上がって来るがナインティギアだナインティギアが大外からやってくる! 鞭を使わずあっさりとナイスネイチャとメジロパーマーをかわした! トウカイテイオーとライスシャワーがようやく上がってくるが4着争い! 世界のホースマンよこれが日本競馬の結晶だ! 先頭はナインティギア!トウカイテイオーは何とか4着に粘りました】

 

 ナインティギアが有馬記念連覇を果たし、GⅠ競走8勝目を飾る。この時点でナインティギアの顕彰馬入りはほぼ確定となる。後の世は芝のGⅠ競走7勝がほぼ必須となっているが、この時点での顕彰馬はGⅠ競走を勝てる者はおらず4勝以上すればほぼ確定となる。高い連対率に加えGⅠ競走8勝、しかもシンボリルドルフですら成し遂げなかったグランプリ連覇やJC連覇や秋古馬三冠。その秋古馬三冠も連覇という記録である。これで顕彰馬入りを反対するものがいるとするなら余程のナインティギアアンチである。

 

 

 

 閑話休題(それはともかく)。この時のレース内容を見ても分かる通り、この時点のナインティギアはまだまだ底を見せていない。

 

 現役を続行させ世界に飛び出すか、それともキリが良いところで引退か。星崎に決断は委ねられた。




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尚、次回更新は未定です
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