89式和製ビッグレッド   作:ディア

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・今日更新の理由
≫本来なら日曜日に更新しますが、この話しを投稿出来ずに今日更新することになりました。因みに次回や次々回の方が早く書き終わっているという事実……

・ここすき機能
≫実は作者もそこまでわかっていないがここすきをされるとどの文章が好きかわかるので貰えると嬉しい。

・ナメる奴シリーズ
≫ここすきで何故か好評だったので記載。
≫鎌倉武士をテーマにした某なろう小説であった例えの一つ。「ナメたらシメる」が鎌倉武士の最初の段階らしく、「ナメたら殺す」が立派な鎌倉武士の気性らしい。それ以上に気性難になると「ナメて来そうな奴はナメられる前に殺す」、「ナメちゃいないけど目についたから殺す」という四段階まであるが最後の段階まで進化すると鎌倉武士でも処罰されるレベル。いずれにせよ関わらない方が良いので鎌倉武士に遭遇したら目があう前に上手く逃げることをオススメする。
≫因みに史実と照らし合わせるとナメちゃいないけど目についたから殺すのがセントサイモンである。実際猫を天井に叩きつけて殺しているし……

・オースミサンデー
≫今回の話しの犠牲者。97世代の良血馬であり、弥生賞で2着とこれからというときに皐月賞で予後ってしまった未完の大器。もし予後ならければ重賞の1つや2つは軽く取れていただろう
≫この小説では存在自体がなかったことに。ウイポで史実馬が予後不良になるなら父親を変えてしまえば架空馬になって予後ることはなくなるでしょ?という無茶苦茶な理屈である。

追記
・入厩
≫入厩するのは2歳(旧3歳)頃からであり1歳(旧2歳)から入厩することはあり得ない。あり得ないのだが何故か95世代のサードプレジデント産駒が93年に入厩することになっていました。勿論訂正しました。
≫因みにそのまま間違えた認識で書き続けた結果セカンドサルサビル達とナインティギアが厩舎で出会うことになっていたりもしました。その時にナインティギアやクラフトボーイの好みもはっきりと記載していただけに残念でした……


第59話

「お父様、ナインティギアに関してですがどうなさりますの?」

 

「無論、現役続行だ」

 

「それはどうしてですの?」

 

 美亜が星崎にそう尋ねると星崎はとある格言を口にする。

 

「ノーザンテースト産駒は三度成長する。かつてナインティギアの父のアンバーシャダイやギャロップダイナといった名馬も昔は無名の馬だった。しかし彼らがGⅠ競走を勝った途端急激に成長し始め、屈指の名馬となった。ノーザンテースト産駒ではないが、その血を継いでいるナインティギアもそうだ。まだ成長過程にある。もしこのまま引退したら間違いなく後悔することになるだろう」

 

「しかし既にGⅠ競走8勝、秋古馬三冠を2回もしていますが、これ以上強くなるんですか? いくらなんでも限界があるんじゃないんでしょうか? 怪我も心配ですし……」

 

「確かにな。だからナインティギアが負けた瞬間に引退させるし、今年で終わらせる。だが私は信じている。ナインティギアが成長し続けて勝ち続けることを」

 

「……」

 

「それにサードプレジデントの馬体を見てわかると思うが種牡馬になって3年目だというのに未だに馬体が磨かれている。血統的な背景から言っても成長力に関してはナインティギアの右に出る馬はいないと確信している」

 

「……なるほど、分かりましたわ。そこまで言うのならナインティギアの馬主であるお父様に口出し致しません。しかしレースのローテーションだけ教えて下さいませんか?」

 

 

 

 美亜は納得すると星崎にナインティギアの今後のレースの予定を教えてもらった。

 

 

 

 数日後、星崎からナインティギアの現役続行とローテーションを伝えられた旭川達が話し合う。

 

「オーナーも上手く考えやがったな……」

 

 ナインティギアのローテーションは阪神大賞典、天皇賞春、KGⅥ&QES、凱旋門賞、BCターフ

 

 クラフトボーイのローテーションは日経賞、安田記念、宝塚記念、JC。いずれも創也が騎乗可能なレースとなり、ダブルブッキングが起こらないようになっていた。

 

 

 

「まあ加東さんは乗れこそしますがナインティギアの走りを十分に引き出せていませんからね。クラフトボーイと出走が被ったらナインティギアは加東さんになりますし、避けるのは当然かと」

 

「とはいえ春天には2頭厄介なのがいる」

 

「メジロマックイーンとライスシャワーですね」

 

 メジロマックイーンは昨年、一昨年と春天を制した春天の鬼で超長距離に関してはナインティギアすらも凌ぐ最強ステイヤー。一昨年の春天とは異なり昨年は完全に実力でナインティギアをねじ伏せたことから大いに春天三連覇を期待されている。

 

 そしてもう1頭の強豪、ライスシャワー。昨年、有馬記念こそ掲示板から外れてしまう結果となったがその前走で菊花賞でミホノブルボンの三冠を阻止し、馬体から見てもゴリゴリのステイヤーである。

 

 この2頭はナインティギアを除いた特に今年の春天の最有力候補であり、打倒ナインティギアを掲げてくる可能性は極めて高かった。

 

「まあこの2頭さえいなければ貰ったも当然だ」

 

「ですね。メジロマックイーンもライスシャワーも阪神大賞典に出走しませんし、縁起が良過ぎます」

 

 天皇賞春のステップレースはいくつかあるがその中で最も相性が良いのは阪神大賞典である。阪神大賞典出走組の勝率は日経賞出走組や産経大阪杯出走組に比べて高い。サードプレジデントの前の天皇賞春の覇者であるタマモクロスやイナリワンも阪神大賞典出走組であり、メジロマックイーンも阪神大賞典出走組である。

 

 何故そこまで阪神大賞典出走組が春天を勝てるのかというと阪神大賞典の距離が他の2つのレースに比べて長く、より春天に近いレースと言えるからだ。

 

【やはり強い強い! メジロパーマーをぶっちぎりゴールイン! 今年もナインティギアが阪神大賞典を勝ちました! 阪神大賞典マイスターもこの馬でした!】

 

 

 

 しかし他の2つのレースをステップレースにして勝てないかと言われるとそうではない。地力が違えば産経大阪杯だろうが日経賞だろうが関係なく勝ててしまう。シンボリルドルフは日経賞を勝ち春天を勝てた。つまり地力があれば関係ないのだ。

 

 この理論の下、メジロマックイーン陣営は産経大阪杯に出走することを決意する。

 

 しかしメジロマックイーン陣営の本音はそこではない。陣営の本音はメジロマックイーンの調整不足だった。

 

 昨年までメジロマックイーンは坂路調教を導入しておらず、平地での調教で、それを今年になってから初めて導入したが、坂路を嫌がり時には30分以上立ち往生する有様。

 

 ナインティギアを彷彿とさせる嫌がり方で何とか乗り越えても渋る。こんな状態では阪神大賞典に挑める立場ではなくなり距離の短い産経大阪杯に出走することに決めた。

 

【メジロマックイーン、メジロマックイーンだ、メジロマックイーン圧勝! やっぱり強かったメジロマックイーン!】

 

 その決断は間違いではなくメジロマックイーンは産経大阪杯を圧勝、打倒ナインティギアを掲げる。

 

 

 

【クラフトボーイかライスシャワーか! クラフトボーイが逃げ切ったっ! 2着にライスシャワー! 菊花賞馬対決を制したのはクラフトボーイ!】

 

 一方、日経賞出走組で有力な競走馬はライスシャワー。有馬記念で5着、目黒記念で2着と連敗続きではあるがこの馬の脅威はメジロマックイーン以上に超長距離特化型の競走馬であることだ。昨年無敗で春クラシック二冠を制したミホノブルボンを菊花賞で打ち破った実績があり長距離の適性のみならば天皇賞春出走登録馬中随一と言っていいほどだ。

 

 

 

「(このままじゃ勝てないな……運があったとはいえ春天連覇のメジロマックイーン、逆に運がなかった最強馬ナインティギア……こっちが万全を期したとしても勝てるか?)」

 

 ライスシャワーの調教師井伊勝が不安に駆られる。

 

 ライスシャワーは菊花賞をメジロマックイーン達を上回る好タイムで走ったとはいえ、菊花賞の勝利はフロック視されており、そこまで評価されている訳ではない。また菊花賞レコードを更新したクラフトボーイが昨年の春天に挑んでもこの2頭には届かなかった以上、万全を期した状態であってもライスシャワーに勝ち目はない。

 

「(だからといって回避する訳にはいかない。あの無敗の二冠馬ミホノブルボンを菊花賞で破ったんだ。ここで回避したらミホノブルボンにも申し訳ない)」

 

 ライスシャワー陣営はメジロマックイーンとナインティギアに勝つためにこのレースに挑むことを決意。

 

「(確かに万全を期した状態じゃライスシャワーはメジロマックイーンにもナインティギアにも勝てない。なら命を削ってでも仕上げる必要がある)」

 

 井伊勝が決意を固めて仕上げた方法は極限まで身体を削ぎ落とし、無駄を一切なくす。確かに仕上がりは良好に近づくがこんなことをすれば故障のリスクが高まり、レースを走った後も消耗が激しくなる。諸刃の剣当然の調教そのものでそれを見た競馬関係者が「やり過ぎだ」と警告を入れるほどである。

 

「(だが仕上がりはもう調教師人生において二度とお目にかかれないレベルの仕上がりだ。今のライスシャワーを評価するなら……そう、まるで鬼が宿っているかのようだ)」

 

 そんな危険な調教を乗り越えたライスシャワー陣営は、春天制覇への期待を高めた。

 

 

 

 

 

 一方その頃。月夜牧場にて揉め事が起きていた

 

「どうかお願い致します!」

 

「そうは言ってもねぇ……もうサードプレジデントの繁殖相手は決まっているんです。発情期を逃すからって理由は理由にならないんです」

 

 その揉め事の内容はとある繁殖牝馬の種付け相手にサードプレジデントを選んだ牧場側と、サードプレジデントの体調を考慮して種付けを断る月夜牧場の揉め事だった。

 

「そこをどうか、どうかお願い致します!」

 

「確かに場長の好きそうな配合ですけどねぇ……」

 

 その繁殖牝馬は父にミスワキを持ち、サードプレジデントと交わればその子供はバックパサーの3×4の血を持つ、奇跡の血量の馬となる。バックパサー信者である創也の父からすれば大好物としか言いようがないものである。

 

「それなら! 尚更……!」

 

「でも駄目なものは駄目です」

 

「そ、そうですか……」

 

 これ以上はどんなにゴネてもサードプレジデントが種付けをすることはないと肩を落として諦める。するとスタッフからこんな提案を受けた。

 

「その代わりと言ってはなんですが、サンデーサイレンスが空いていますよ?」

 

 サンデーサイレンスと言えばサードプレジデントの生涯のライバルで唯一無二並んだ存在でもある。種牡馬としてもリーディングサイアー獲得など大活躍するが現時点ではまだ新馬戦が始まっておらず、その実力はサードプレジデントと同様に未知数である。

 

 それにも関わらず牧場側がサードプレジデントを選んだのには理由がある。

 

 一つ目がバックパサーの奇跡の血量持ちになること。奇跡の血量はトキノミノルやコダマといった名馬が活躍しただけでなく世界で見てもこのインブリードで活躍した馬は多く、バックパサーの3×4を持つキャンペンガール92ことリボルバーマンも「これほどの素質馬でGⅠ競走を取れなかったら厩舎がクソ」と比喩されるくらいには高く評価されている。

 

 つまりこの繁殖牝馬の子供を作るに当たってサードプレジデントという種牡馬はかなり都合が良かった。

 

 そしてもう一つ目が各牧場でのサードプレジデント産駒の評判が高かったこと。雄大な馬体は勿論だが素直であることが多く、気性が荒くなく乗りやすいことから評判が良い。

 

 そんな理由でこの牝馬はサードプレジデントとの交配を期待されていたのだが、肝心のサードプレジデントが今日に限って種付け不可能であり、種付けしたくても出来ない状況だった。別の日に変えても今度は牝馬の方に問題があり、今日を逃すと発情しなくなってしまいサードプレジデントに限らず別の種牡馬とも繁殖が出来ない。

 

「やむを得ないか……サンデーサイレンスの種付け料を後日お支払いしますのでよろしくお願いいたします」

 

 そう言って牧場側が鹿毛の牝馬にサンデーサイレンスの種付けを申し込む。

 

「サードプレジデントと種付けしないのは残念でしたが、もしかしたらこの配合はとてつもない名馬が生まれるかもしれませんよ」

 

 帰り際に創也の父がそう告げると牧場側の人間は慰めで言っているのかと思ったが、5年後にその理由がわかる。

 

【サイレンススズカ逃げ切ったーっ! 2着にステイゴールド! サンデーサイレンス産駒がワンツーだ!】

 

 その名馬の名前はサイレンススズカ。本来の歴史であればトニービンに種付け予定だったのがサードプレジデントに種付け予定に変わっただけで結局サイレンススズカの母ワキアはサンデーサイレンスと種付けすることになったのである。

 

 

 

 サイレンススズカが過程こそ変わったが別の世界線と同じように誕生した一方でサンデーサイレンスと種付けしなかった繁殖牝馬もいた。

 

 その馬の名前はロジータ。某サイヤ人の王子のような名前でネタ馬にしか思えないが、立派な牝馬でありネタ馬とバカに出来るレベルじゃない実績の持ち主である。

 

 ロジータは地方競馬で最も名誉とされる南関東三冠を制覇しているが、この南関東三冠は牡牝混合レースであり、中央でいう桜花賞、優駿牝馬、エリザベス女王杯*1の牝馬三冠ではなく皐月賞や日本ダービー、菊花賞のクラシック三冠と同じようなものである。中央で例えるなら牝馬が三冠を制したのと同じくらいの価値があり、ロジータはそれを成し遂げた。

 

 

 

 ──あらあの時の素敵な殿方ではありませんか? 

 

 ──あの時? 

 

 ──私が惨敗したから貴方は覚えていないでしょうが私と一緒にレースしたことがあるんですよ

 

 ──思い出した。あの時か

 

 

 

 地方馬代表として1989年のJCにも出走しており、ブービーという結果に終わったがそれでもその年の優駿牝馬つまりオークスよりも速いタイムで駆け抜けておりその実力も確かなものである。

 

 そんな彼女が別の世界線であればオースミサンデーというサンデーサイレンス産駒の子供を生み出していたがこの世界ではサードプレジデントの子を受胎し、産まれた仔はオースミサードと名付けられ長く堅実に勝ち続けることになる。

 

 

 

 育成牧場にて入厩前の仕上げと言わんばかりに2頭の2歳馬とサードプレジデントが併走していた。

 

 ──まだ、まだぁっ! 

 

 ──あのおっさんマジで強いんだけど! 

 

 一方は栗色の牡馬、もう一方は鹿毛の牝馬。共に負けず嫌いな性格なのか同じメニューをこなしているはずなのに競い合いながら走っている。

 

 ──小僧達、俺の動きについて来れるとは大したもんだ。だが戯れはここまでだ! 

 

 一気にサードプレジデントが加速するとその差はあっという間に開いていく。上り3F31秒9というとても種牡馬生活3年目とは思えない程の冴えた動きであり、遅れた2頭も35秒台を叩き出しておりとても2歳馬とは思えないタイムである。

 

「セカンドサルサビルが飛び抜けて強いのは知っていたがリボルバーマンもかなりの素質馬だな……」

 

 鹿毛の牝馬、セカンドサルサビルと栗毛の牡馬、リボルバーマンを見つめるスタッフはそう呟き、そしてこう付け加えた。

 

「この調子ならGⅠ競走は獲れるかもな」

 

 スタッフの呟きは当たり、セカンドサルサビルが無敗で阪神3歳S、桜花賞とエリザベス女王杯を勝ち上がり、リボルバーマンもマイルCSと天皇賞秋を制し、1995年にはサードプレジデントが2世代でリーディング2位と大活躍する。1位はサンデーサイレンスだがサードプレジデントの種付け背景を考えると2位でもサンデーサイレンス以上の活躍をしているといえる。

 

 しかしながらサードプレジデント産駒の活躍の裏にはサードプレジデント自身が併走し、産駒の競走能力を高めていることにある。それというのもサードプレジデント産駒の30頭前後は美亜が引き取っておりサードプレジデント産駒の特徴を育成牧場で掴んでいたからだ。

 

 統計学上ランダムに選択し31個以上のデータがあればその傾向が読み取れるという結果があり、サードプレジデント産駒の特徴を掴む。言わばこの育成牧場はサードプレジデントの現役時代だけでなく、サードプレジデントの種牡馬としての実績をあげる為のものでもあった。

 

「バックパサーのインブリード持ちは末脚を武器にするのか? いやアウトブリードの馬も末脚が武器の馬もいるな」

 

「後パワーが強いのもいいな。ダートでも活躍出来そうだ」

 

「馬体がデカいから仕上がるのは遅くなるのが多いがそれでもお釣りが来る」

 

 育成牧場で取ったデータを元に調教師達が「あーでもない、こーでもない」と話し合い、サードプレジデント産駒の特徴を掴み始めていた。

 

 本来であれば調教師達は同業者でありライバルで他人に情報を渡す真似はしないが美亜の方針により情報を渡さない場合は育成牧場出禁となりサードプレジデント産駒を預からせて貰えなくなる。それなら少しでもサードプレジデント産駒の情報を引き出して話し合う方が調教師達は有益に感じていた。

 

「それにしてもサンデーサイレンス産駒も優秀なのが多いな。少し神経質なのが多いのが玉に瑕だが」

 

 サードプレジデント産駒ほどではないにせよサンデーサイレンス産駒も育成牧場で育てられ、調教師達も見定めていた。

 

 

 

 そしてそんなサードプレジデント産駒やサンデーサイレンス産駒達が育成牧場で鍛えられる日々の中、ついに天皇賞春を迎える。

*1
1989年当時は秋華賞は存在せずエリザベス女王杯が牝馬三冠の一角だった




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尚、次回更新は本日21時です
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