89式和製ビッグレッド   作:ディア

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・ボワルセル
≫セントサイモン系として25年ぶりに英ダービーを制し、英ダービー史上最も強い勝ち方をした競走馬……なのだが、セントサイモン系の中興の祖として有名。それ以上に日本ではシンザンの祖父として有名である。
≫彼の競走成績を見ると3戦2勝とぱっとしないように思えるのも彼が競走馬としてではなく種牡馬として名を馳せる原因なのだが、その2勝目がまさしく伝説を残した英ダービーである。通常であれば届かない距離から差し切るレースはいくらでもあり、皐月賞のナリタタイシンやテイエムオペラオー、ドゥラメンテ、英ダービーのラムタラも通常であれば負けてしまうような位置取りからねじ伏せている。しかしあくまでも差し切ったのはゴール寸前であり、ボワルセルは残り1Fあたりで先頭に躍り出てそのまま独走し4馬身差をつけてゴールするという意味がわからないことをしている。それでも理解出来ないなら動画が上がっているので一度見てもらえばわかる。
≫世界列伝集の編集者曰く英ダービー時点でこのボワルセルに並ぶのは英ダービー史上最大着差をつけたシャーガーのみであり、あのシーバード、ニジンスキー、ラムタラ、ガリレオですらボワルセルよりも衝撃を与えていないとのこと。
≫因みにセントサイモンの4×3の奇跡の血量持ちであり、彼の強さはセントサイモンの強さに由来している可能性があり、そう考えるとセントサイモンの血がどれだけ偉大かわかる。


第62話

【悲願の春の天皇賞制覇! 三度目にしてようやく春の天皇賞を制したのはナインティギアです!】

 

 ナインティギアがライスシャワーに5馬身差をつけ圧勝し、その強さを見せつけた。

 

【ようやくですね。ナインティギアにスタミナがないだのと言っていた自分が恥ずかしいです。脱帽物ですよ。ライスシャワーにしたってメジロマックイーンに4馬身くらい差をつけていますしメンツが弱い訳ではないんですよね。ただナインティギアが強過ぎたと思います。兄サードプレジデントを超える3分13秒4と素晴らしいタイムで勝っていますからね。もしここにサードプレジデントがいたとしてもナインティギアには勝てなかったでしょう】

 

【つまりナインティギアは兄サードプレジデントよりも強いと?】

 

【少なくともこのレースに限れば、負けることはないと思います。ただし月城騎手が分身する必要がありますが】

 

 ドッと笑い声が響き渡る。少なくともナインティギアのもう1人の騎手である加東ではそこまでナインティギアを引き出せるとは思えないし、創也がサードプレジデントに騎乗しないかと言われたら騎乗すると言い張るだろう。

 

【解説ありがとうございました。続きまして──】

 

 

 

 翌日。

 

【ナインティギア、世界レコード更新!】

 

【スタミナ不足を克服し舞台は世界へ!】

 

 競馬新聞の一面はナインティギアのことばかり書かれていた。

 

「ま、当たり前と言えば当たり前か」

 

「お陰で安田記念に出走するクラフトボーイへの負担は減りましたので有り難いんですが」

 

 旭川と創也が話す通り、ナインティギアばかり注目されるお陰でクラフトボーイといった他の競走馬への負担がかからずに済んでいた。

 

「それよりも気になることがあります」

 

「ああ、セカンドサルサビルとリボルバーマンのことだろう?」

 

「ええ、あの調子なら来年の7月に入厩しても8月の新馬戦でも勝ち負け出来ると思いますよ。ただ……」

 

「ただ?」

 

「セカンドサルサビルとリボルバーマンはサードプレジデント産駒らしく馬格も大きいですし、頑丈なイメージがありますがどうも嫌な予感しかしません」

 

「デビュー戦はしばらく後にしたほうが良さそうってことか?」

 

「特にリボルバーマンにその影響があります。早くてもリボルバーマンは10月頃、下手したらその次年の2月まで辛抱する必要があるかもしれません」

 

「3歳馬としてはちょっと遅いデビューになりそうだな」

 

「しかし故障だけに注意すればどちらも相当な大物になると思います。セカンドサルサビルは牝馬クラシック、リボルバーマンはマイルと中距離のGⅠを勝てる逸材ですよ」

 

「お前の眼力を信じよう。今はとにかく怪我だけはしないように見守っていこう」

 

「はい」

 

 こうしてセカンドサルサビルとリボルバーマンの2頭は旭川厩舎で慎重に育てられる方針となる。

 

 

 

【ヤマニンゼファーが来るがクラフトボーイのリードは縮まらないっ、クラフトボーイ圧勝ゴールイン! やはりヤマニンゼファーも強かったがクラフトボーイはそれ以上に強かった!】

 

 安田記念ではクラフトボーイがヤマニンゼファーを寄せ付けず、5馬身差で圧勝。メジロアサマ以来3000m以上の長距離レース勝利者による安田記念制覇*1ということもあり大いに盛り上がり、宝塚記念に向けて大きな一歩を踏み出した。

 

【おっと、ヤマニンゼファー達がクラフトボーイを未だに追走していますね。一体どうしたのでしょうか?】

 

 そしてウイニングランをしようとすると何故かヤマニンゼファーやその他の牡馬がついていく。

 

 ──えっ、まだレース終わっていなかったの!? それじゃクラフトボーイ行きますーっ! 

 

 レースが終わっていないと勘違いしたクラフトボーイが加速し、そのまま走り続けて係員に止められるという珍事が起きるなどもあったりしたが、これは仕方ないことだった。

 

 

 

 クラフトボーイは小柄かつ顔立ちから牝馬にしか見えず牡馬にモテる馬そのものにしか見えない。それまで発情した馬はナインティギアが咎めていたがナインティギアはこの場におらず、レースを終え発情した牡馬達がクラフトボーイを追いかけるのは当然のことだった。

 

 それをクラフトボーイはレースがまだ終わっていないと勘違いしてしまい慌てて逃げてしまう。結局は天性のステイヤーであるクラフトボーイとマイラーな彼らとではスタミナ量が異なりマイラーな彼らの方が先にへばってしまう。

 

 

 

 ──私達を置いてあんな女モドキを追いかけるなんてサイテー! 

 

 ──ねー、あり得ないね! 

 

 クラフトボーイとヤマニンゼファーを除けば牡馬は掲示板に載ることすらなく惨敗した。勿論敗因はモロチンを披露した結果である。

 

 ──あっ、お姉さん達、どうしたの疲れたの? 

 

 ──来ないでよ女モドキ! 

 

 ──体調悪くなったの? ほら元気出して! 

 

 クラフトボーイがグルーミングをすると3着に入った牝馬、イクノディクタスが当初クラフトボーイに噛みつこうとするがクラフトボーイのグルーミングテクニックに耳が伏せリラックスした状態になる。

 

 ──あ゛あ゛ぁーっ……気持ち良い……

 

 ──でしょ? これをすると気分が落ち着くって好評なんだ! 

 

 ──……ねぇ、その娘だけじゃなく私達にもやって貰えない? 

 

 ──良いよ! でも時間もないから少しだけね! 

 

 その後、クラフトボーイのグルーミングを受けた牝馬達がそのあまりの心地好さに虜となり、以降、グルーミングを受けた牝馬達がクラフトボーイのことを慕うことになる。

 

 ──クラフト姐さんの貞操は私達が守るっ! 

 

 ──だから僕男だって! それにほとんどは僕とタメか歳上でしょ!? 

 

 以降、クラフトボーイは牝馬達に守られ、そのお陰で無事? にレースを出走する事ができるようになる。

 

 

 

 翌日

 

【珍事件! 安田記念を制したクラフトボーイに発情する牡馬達!】

 

【牡馬達はクラフトボーイを牝だと思っていた模様】

 

【安田記念第2R(ラウンド)もクラフトボーイの逃げ切り勝ち!】

 

【その一方でクラフトボーイはナンパし、牝馬達も満更でもない様子】

 

 クラフトボーイが安田記念を制したことよりも例の事件が取り上げられ、競馬新聞やスポーツ新聞の記事の1面を飾ることになった。

 

「こりゃまたすごいことに……」

 

「全く……あの事件以降、マスコミが煩くてかまわん。馬に影響がないように正当な手続きをしてくれるだけ有り難いが、アホどもはそうじゃないからな」

 

 旭川がそう言い、例によってナインティギアにシメられた侵入者を見る。

 

「ごめんなさい……本当に反省してますから許してください……」

 

「もう二度としないから!」

 

「……」

 

「何か言ってくれよぉ~っ」

 

「お願いしますぅ」

 

「とりあえずお前達の言う会社に問い合わせたらそんな奴はいないだとよ。サードプレジデントの時のこともあってマスコミも綺麗なイメージにしておきたいってことだからクビにされたんだろうよ。わかったら塀の中で大人しくしておけ」

 

「そ、そんな!」

 

「恨むんなら下手こいた自分達を恨め。ま、もし刑務所から出てきたとしてもサードプレジデントの時みたいにお前らが所属している会社は潰れているだろうけどな」

 

 そして彼らは不法侵入及び器物破損などで逮捕され、刑期を勤め終わる頃には会社も潰れ、頼りにしていた家族や親族達にも見捨てられて行く宛もなく詰んでいた。

*1
ただしメジロアサマは安田記念を制した後に3200m時代の天皇賞秋を制した




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尚、次回更新は本日21時です
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