≫史実の93年の凱旋門賞馬だが、それ以上に大種牡馬ガリレオや凱旋門賞馬シーザスターズの母として有名。また半弟にエイシンフラッシュの父にあたるキングズベストがおりウマ娘からやられた方はそちらの方が馴染みがあると思う
≫アーバンシー自身が栗毛で産駒は必ず栗毛の遺伝子を持つことになり、栗毛と交配した場合は遺伝の法則により全て栗毛となる。しかし彼女の産駒で最も有名な2頭、ガリレオとシーザスターズは共に鹿毛であるがこれは父親が栗毛でない為でちゃんと2頭の子供からは栗毛の馬がいる
≫こいつがいなかったらガリレオもシーザスターズも生まれず、今の欧州競馬界の大多数の競走馬が消えてしまうので歴史的な名牝ともいえる
・グルーヴィー
≫イージーゴアの英語版ウィキペディアを見ていたらこの馬にたどり着いたので記載
≫バックパサーの直系の孫に当たる競走馬。GⅠ競走1勝、26戦12勝とそこまで大したことのない成績に思えるがベイヤースピード指数という米国や加国で行われる特別な評価方法で、任意のレースに対する馬の評価が行われるがその評価でイージーゴアやサンデーサイレンスは当然、あのフライトラインよりも評価を上回っている。
≫ゴーストザッパーという馬もフライトラインよりも評価は高く受けたがそれでも1度きりであり、このグルーヴィーという馬は2つのレースで上回っていてその2つの記録は133と132という数値で共に1位、2位である
≫しかしながらこのベイヤースピード指数は1980年代後半以降の馬を対象にしており、この指標がそれよりも以前の馬を対象にした場合セクレタリアトのベルモントSでは139、カウントフリートのベルモントS(25馬身差勝利)は150という数値を叩き出している。ベルモントSはやはり魔境だ……
そして翌日、凱旋門賞当日となった。幸か不幸か不良馬場であり、不良馬場を得意としているナインティギアだが身体の負担を考慮すると素直に喜べずにはいられない。しかしそれでもナインティギア陣営にとって朗報なのは当日になってナインティギアの病状が全くといっていいほど出なかったことで、創也もそれを実感していた。
「(これならいけるな。後は何もなければ勝てる……が、油断大敵。元々お義父さんはナインティギアが圧勝することを視野に入れていたんだ。それに応える為にも油断は出来ない)」
負担を出来るだけかけさせない、その心積もりを忘れずに創也は気を引き締める。
「(うーん、なんていうかな。エルナンドは微妙かな?)」
そして有力馬達を見渡すと意外にも有力馬とされているエルナンドの動きが悪く見え創也のマークから外れる。
「(それよりも気になるのはあの3頭かな?)」
それよりも不気味に感じたのはKGⅥ&QES組のオペラハウスやホワイトマズル、英オークス馬のイントレピディディ。その3頭が気になっていた。
「(でもな、なんていうか違うんだよな。あの3頭に近いけど、こう……なんていうかあれだ。伏兵の殺気を感じ取っているのに誰だが気付けない。そんな嫌な感じだ。こういう時に限って当たったりするから怖いんだよな)」
創也が感じ取っていたのは妙な殺気。それは誰もが発しているようなものではなく、強者だけが発することができるような、それでいて何処か不気味なもの。
それ故に、嫌な予感しかしなかった。
【さあいよいよ凱旋門賞です。このレースでナインティギアは兄弟凱旋門賞制覇がかかっていますが、果たして勝つことは出来るのでしょうか。それとも別の馬がナインティギアを喰らうのでしょうか。いよいよです! 各馬一斉にスタート!】
凱旋門賞のゲートが開き、各馬がスタートダッシュを決める。
【おっとナインティギアが出遅れましたが大丈夫でしょうか。ハナを切ったのはダリヨーンとユーザーフレンドリー、そしてその後方にボブズリターンが着いていき──】
いきなりスタートダッシュを失敗したナインティギアだが、そのおかげで余計な負担をかけることなく後方につくことが出来、今は落ち着いている。
しかし創也にとってはそれが不安に働く。KGⅥ&QESですらスローペースでナインティギアは自分から上がっていった馬で今はそれよりも遥かに遅い。
「(おいおい大丈夫か? このペースはかなりゆっくり目なのにナインティギアが動かないってことはやはり体調が──)」
──ちっ、ドイツもこいつも……!
ナインティギアが創也の不安を拭うようにペースを上げていく。
──あいにくだがこのペースは遅い方なんでな。さっさとペースを上げるかお前達が下がるかどっちか好きな方を選べぃっ!
──ひぇっ!?
ナインティギアが睨みつけると後方にいる馬達が怯みヨレ、加速する
「(よーやるわ本当に。確かにボス馬としては超一流だよ)」
創也はそれを間近で見て、ナインティギアの凄さを改めて思い知る。
そして、レースは中盤に差し掛かる。
【さあここでいよいよコーナーに差し掛かります!】
ロンシャン競馬場特有の坂、それは2つあり1つ目はこのコーナーの坂で高低差は10mと非常に高い。日本の中山の急坂ですらその半分以下である。故にこの高低差をどう攻略するかがキーポイントとなっている。
「(相変わらず恐ろしい坂だ。一度経験して正解だよ)」
サードプレジデントに騎乗した経験を活かし、ナインティギアをスムーズに走らせる。
──前のコースよりかは走り易いもんだ。これなら行ける!
坂を下っていきペースを上げていくと多数の有力馬達をあっさりの抜き去り、先頭集団を捉えにいった
【ここでナインティギア、ナインティギアが先頭を捉えにいった! やはりサードプレジデントの再来に偽りなし!】
そのスピードから実況も観客も大興奮。だが、その体調を知っている創也からすれば気が気ではない。
そして、そのコーナーを曲がり終えた先は偽りの直線と呼ばれる直線が待っている。
その直線は一見すると最後のコーナーを曲がり終えた普通の直線であるが、最後の直線ではない。その為スパートをここでかけてしまえばスタミナ切れしてしまい、結果失速してしまう。
──ここだ!
そしてナインティギアはその直線に入った瞬間、一気に加速していく。
その加速力は今迄見たことがない程に力強く、KGⅥ&QESの時よりも優れていた。
【ここでナインティギアが大外から先頭集団を一気に抜き去っていくぅっ!】
「あ、危ねえ! 避けろナインティ!」
その瞬間、1頭の馬が大きく外に斜行し、ナインティギアに接触する。
──ぐっ……!
【ここでナインティギアが失速だ! ナインティギアはスタミナ切れしたのか!?】
遂に恐れていたことが起きてしまった。別の馬が大きく斜行したことによりナインティギアが激突し、全身に痺れと激痛を伴い、失速する。落馬しなかったのはナインティギアがそれだけ体幹が強くそして真っ直ぐに走っていた証拠であり、もしこれが普通の馬であれば落馬していただろう。
「(ここまでか……!)」
最後方から20馬身以上も離されて創也が諦めようとした瞬間、ナインティギアと目が遭う。
──何逃げようとしているんだ。付き合ってもらうぞ、ニンゲン!
「えっ!? うわぁぁぁっ!?」
その瞬間、ナインティギアが加速し、暴走する。その加速振りはかつて欧州でその末脚を鳴らしたダンシングブレーヴとも違う、史上最強の追込馬シルキーサリヴァンを彷彿とさせるものだった。
【先頭はボブズリターン、いやオペラハウスかオペラハウスが抜け出した!】
そんな加速を見れない実況は先頭集団からボブズリターンとオペラハウスの名前を出し、他の馬達もそれを打ち負かそうと先頭に躍り出ようとするが、ナインティギアが作り出したハイペースによりスタミナが切れ始める。
そんな先頭争いから負けた馬にナインティギアと創也の威圧が襲いかかってきた。
「どけどけぇぇぇっ!」
ナインティギアに騎乗している創也はまさに鬼気迫るといったところで、それはナインティギアも同じだった。
──邪魔なんだよ雑魚共め!
ナインティギアと創也に怯え、馬達は萎縮していき、先頭に追いつきたいと思っていてもナインティギア達の姿を思い出してしまい加速が出来ない。心を完全に折られてしまった。
【ここでアーバンシーが抜けた抜け出した! オペラハウスとホワイトマズルが2着争いか!?】
残り100m。アーバンシーが抜け出し、ホワイトマズルとオペラハウスが2着争いをする中とんでもないものを見てしまう。
【な、なんとナインティギアだ、ナインティギアがオペラハウスとホワイトマズルを吹き飛ばす!】
それは崩れたはずのナインティギアの姿だった。ナインティギアが2頭をあっさりと抜き去り、アーバンシーに迫る。
「嘘だろう!?」
「ふざけるのもいい加減にしやがれ!」
思わずホワイトマズルとオペラハウスの鞍上がそう叫ぶ。あんな競走中止の状況からここまで這い上がってくるなんて誰が想像出来ようか。
【逃げるアーバンシー、差しに行くナインティギア!】
残り80m。ナインティギアがアーバンシーと並び更に加速するとアーバンシーも負けじと加速する。
「ここまで来たら負けるんじゃねえナインティ!」
「アーバンシー! お前を捨てた奴を見返したいとは思わないのか!」
アーバンシーの鞍上がそう怒鳴りつける。元々アーバンシーの鞍上は今の鞍上とは異なり別の人物である。その人物は2番人気に支持された競走馬エルナンドに騎乗しており、いくらエルナンドが有力馬とはいえアーバンシーからすれば裏切り者以外の何者でもない。その裏切り者を見返す為にアーバンシーが加速する。
【アーバンシーか、ナインティギアか!? 凄まじいデッドヒートだ!】
「(このままじゃ負ける! 頼む、奇跡よ起きろっ!!)」
アーバンシーの鞍上がそう願った瞬間、ナインティギアから鼻血が噴出し、僅かにナインティギアがヨレて減速してしまう。その隙を見逃さずアーバンシーがゴール板を先に通過した。
【アーバンシー、僅かに抜けたところでゴールイン! なんとこれはビックリ、アーバンシー! 2着にナインティギア、後は3馬身遅れてホワイトマズル、オペラハウスが入りました!】
凱旋門賞の結果は伏兵アーバンシーが勝ち、大本命ナインティギアが敗れるという大波乱が起きたのであった。
【ナインティギアが鼻血を出している上に普段と違って振り落とす動作も伏せる動作もしませんが、これは一体大丈夫なんでしょうか?】
実況がナインティギアの様子がおかしなことに気がつき、その場が騒然とすると解説が口を開く。
【今すぐに馬運車を……もう呼んでいたようですね。対応が早いですね素晴らしいと思います】
解説が馬運車を呼ぶように指示するまでもなくナインティギアが運送されていく。
【しかしこれだけ対応が早いとなると陣営はナインティギアの体調不良を見込んでいたのでしょうか?】
【そうですね。恐らく無理を押してでも出走してきたと思いますが、ナインティギア陣営も隠して来ましたから我々が気づかないのは無理もありませんよ。パドックにいた時点でも気づかなかったでしょう?】
【ええ、一時は競走中止かと思えるほど減速もしましたがあれはその病状が出ていたんでしょうか?】
【詳しいことは不明ですが、恐らくは……だからこそ信じられないんですよ。あの状態でナインティギアが上がってきたのは。普通の馬であれば競走中止になりかねないところをナインティギアの凄まじい執念が凱旋門賞2着という結果を引き起こしたのだと思います。何にせよナインティギアの無事を祈りましょう】
【全く以てその通りです。では、ありがとうございました】
数日後、ナインティギアはその後一命は取り留めたものの、今まで出ていた病状に加えて複数の脚に屈腱炎が生じていた。寧ろこれで凱旋門賞2着に粘ったのが奇跡と呼べる程の故障であり、現在は感染症のリスクがないということもあり帰国しようとしていた。
「大丈夫か? ナインティ?」
──問題ない。ただ少し疲れただけだ。
そんな帰国の最中でナインティギアが飛行機に乗ろうとするとふらつき、バランスを崩すが持ちこたえた。この時、ナインティギアには通常であれば耐えられない程の激痛が走っていたがナインティギアはそれを感じさせないように振る舞っていた。だが汗が滝のように流れていたことから痩せ我慢していることがわかる。
「全く大した奴だよ。ゆっくりでもいいから体勢を取れるようにしておいてくれ」
ナインティギアが飛行機に乗り込み、汗をそれまで以上に流す。
しかしナインティギアの病状が和らげるまで帰国を延期出来なかったのかという疑問が湧く。もし激痛に絶えられずナインティギアが暴れてしまったらそれこそ元も子もない。創也も出来る限り努力したが「規則ですので」の一言である。現役のサルサビルのオーナーであるアラブ財務大臣と連絡を取り、欧州で種牡馬入りさせようとしても欧州の生産界の方から断られてしまった以上日本に帰国するしかなかったという事情がある。
しかし幸いというべきかナインティギアは飛行機内で暴れることなく、大人しく過ごしていたこともあり怪我なく無事に帰国することが出来た。
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