≫主戦騎手が諸事情により騎乗出来ない場合別の騎手が騎乗すること。例えば1998年のサイレンススズカの主戦騎手は宝塚記念でエアグルーヴに騎乗する関係で騎乗出来ず、サイレンススズカには別の騎手に乗り替わっている
≫別の例では同年同氏がアドマイヤベガで斜行し処分を受けた為、JCでスペシャルウィークの騎乗騎手が乗り替わっている
≫他にも馬主が我儘をいったりして乗り替わる(シリウスシンボリ)や、試行錯誤して乗り替わる例(トウショウボーイ)もある
≫尚、ささやかなミスで主戦騎手をクビにされることもある
12月の日本のGⅠ競走と言えば有馬記念が挙げられるが、もう2つほど挙げられる。阪神3歳Sと朝日杯3歳Sの2つだ。双方ともにその年の3歳の馬たちの頂点を決めるレースだがその価値は皐月賞と日本ダービーくらいの違いがあり、明らかに後者の方が格上とされている。その為、朝日杯3歳Sは最優秀3歳牡馬の選考対象となる重要なレースでもある。故にサードプレジデント陣営も朝日杯に出走することに決めていた。
「よう、創也。あいつがお前の牧場で育てた馬なんだって?」
創也が朝日杯3歳Sの中継を見ていると騎手過程の同期が絡んでくる。
「そうだ。来年の菊花賞トライアル以降、ヤネ*1を任されているんだ」
「へぇ~。それでどんな馬なんだ?」
「お前、いくら一般家庭出身だからって、それくらいは知っておけよ。新馬戦で18馬身差、レコード勝利した馬だぞ」
「えっ、18馬身!?」
「ああ、俺も驚いた。しかも上がり3Fは29秒つまり30秒を切っていた」
「マジかよ。そんなのどう考えても怪物じゃないか」
「そういうことだ。だからどんな騎手がヤネだとしても勝ててしまうが、致命的な欠点がある。その欠点を見破っていてそれを補えるのは俺だけだ」
「つまりそれを買われて菊花賞トライアル以降は任されたってことか」
「まあな。ところでお前はサードプレジデントに乗る気はないのか?」
「俺は……遠慮しておく。あんな化け物みたいな馬に乗れるほど度胸がないからな」
「そうか……残念だよ。お前とはいい勝負が出来ると思ったんだけどな」
「だけど大丈夫なのか? 菊花賞トライアル──セントライト記念や神戸新聞杯、京都新聞杯*2はGⅠ競走じゃないから騎乗出来るけど、菊花賞はGⅠだ。見習騎手は通算で40勝*3しなきゃどんなに実力があったとしても騎乗出来ないんだぞ?」
見習騎手という立場は斤量の恩恵も受けるがGⅠという舞台においては出走制限がかけられており、一刻も早くサードプレジデントに騎乗したい創也を悩ませている。
「そこがネックなんだがお嬢様の期待に答えるしかねえ。幸いにも平地・障害問わずだからその二つで勝利数を稼ぐしかない」
「頑張れよ。応援しているぜ。もっとも俺のいないレースだけでだが」
「ありがとよ」
【あっと、落馬! これは大丈夫何でしょうか!?】
しかし事件が起こる。創也がサードプレジデントに騎乗するまでの中継ぎの鞍上の騎手が落馬し、サードプレジデントに騎乗出来なくなってしまった。彼以上にサードプレジデントを乗りこなせる騎手は朝日杯に出走する別の馬の鞍上であり、代わりの騎手を手配する時間はなく、ここ4日間*4惨敗していた騎手しか見つからなかった。
「すみません……僕には無理です……」
彼はそう言って逃げようとする。当然の結果だった。いくらサードプレジデントを制御出来たとしても他の馬との折り合いがつかなければ意味がなく、それが失敗すればただの恥さらしになってしまうからだ。しかも年を重ねただけのGⅠ未勝利の底辺騎手だ。あまりにも実力が不足している。
しかしそれにも関わらず美亜は彼を高く評価していた
「サードプレジデントをよく知っている私からアドバイスを上げましょう。サードプレジデントを先行させるように押して、速度が乗ったら後は彼に身を任せなさい」
「はぁ……」
「よろしいですわね?」
「い、イエスマム!」
反論は許さん、と言わんばかりに美亜が騎手に意見を押し通す。確かに騎手人生を燻っている自分よりか素人である美亜の指示の方がマシかもしれない。
「よし、サードプレジデント。よろしくな」
そう思った騎手は美亜の指示通りにサードプレジデントを押し、スピードに乗った瞬間、騎手はサードプレジデントに任せる。
そして騎手学校時代のことを思い出した。彼の人生は悲惨なもので、学校こそ卒業出来たが良い馬に巡りあえず、彼が騎乗した一番の馬が騎手学校にいる馬という有様だった。そのいた馬の加速に驚き、落馬したのは今でも思い出で、それ以降落馬事故を起こすことはなかった。
だがこのサードプレジデントという馬は彼に落馬を思い出させる程に加速し、彼とサードプレジデントの勝負となった。
「ははは……なんでもっと早く来てくれなかったんだ?」
彼が興奮気味にそう呟いたのはサードプレジデントに騎乗出来たからではなく、ゾーンに入ったからだ。
彼自身とサードプレジデントがモノクロ、音はサードプレジデントの足音、そして自分の呼吸だけになり、かつてないほど集中力が増した彼にとって加速したサードプレジデントを制御することは容易く、どの進路を選択すれば良いのかも最適化していた。
【来たぞ来たぞ、サードプレジデント! これはもう大丈夫、世界よ見ているか! これが和製ビッグレッドだ! マルゼンスキーのレコードをあっさりと超えた和製ビッグレッドーっ!】
そしてそのままゴールした。あまりの強さに実況も興奮を隠しきれない様子だった。
「美亜さん、こんな僕でもGⅠジョッキーになれました! もしよろしければ、僕を主戦騎手にして頂けませんでしょうか!?」
「残念ながら主戦騎手はもう決まっていますのでお断りさせて頂きますわ。しかし来年の日本ダービーまでサードプレジデント以外の馬で平地重賞を10勝出来たら日本ダービーに騎乗をお願い出来ますか?」
「はい! もちろんです」
かくして底辺ベテラン騎手だった男はサードプレジデントに騎乗したことにより躍進し、サードプレジデントの皐月賞までに重賞9勝を挙げることとなる。
『サードプレジデント』
・馬主 星崎美亜
・生産牧場 月夜牧場
・調教師 旭川誠
・性別 牡馬
・毛色 栗毛
・年齢 3歳
・戦績 3戦3勝
・朝日杯3歳S
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尚、次回更新は明日0時です
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