89式和製ビッグレッド   作:ディア

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・フルハート編について
≫実はここまで濃く上げる気は一切なかった。ただ書かないとスッキリしないし、色々と突っ込まれるので書いた。多分次回の更新でフルハート編は終わる

・フルハート編が終わったらどうなるか?
≫創也が騎乗する3P産駒やナインティギア産駒、あるいはそれに関わる競走馬でも詳しく書こうかと。確定で書くのは00世代の母父3Pの競走馬のうち1頭を詳しく書こうかと思う


第80話

 

 

 フルハート陣営はドバイWCを鬱憤を晴らすかの如くレースに出走し、フルハートは勝利を重ねる。

 

【フルハート、楽勝! ハンデをものともしない3馬身差! カーターHを勝ったのは俺達のフルハート!】

 

【フルハート一人旅! 千切った千切った千切った! 完勝! ハンデをもっと持って来いと言わんばかりの勝利だ!】

 

【もう手がつけられない! フルハートは俺達の心臓のように止められない! もはや敵なし! 世界最強馬シガーよこれがお前のライバルだ!】

 

 カーターH、スティーヴンフォスターH*1、ホイットニーHを3馬身差、9馬身差、13馬身差と差を広げながら連勝するという離れ業をやってのけた。

 

【シガーついに敗れる! シガーを破ったのは日本のホクトベガだーっ!】

 

 そんな連勝を続ける最中、シガーがパシフィッククラシックSでまさかの敗北。それも3着という結果に終わり、ウッドワードSでフルハートとの対決を前に不安が過る。

 

「流石アルツさんが見込んだ馬で加東さんが騎乗した馬だ。あれに勝てるとしたらうちのフルハートだけだ」

 

 創也が不敵な笑みを浮かべ、フルハートと共にウッドワードSへと挑む。

 

 

 

 片や絶好調のフルハート、連勝する度に差を広げ圧勝した3P(サードプレジデント)産駒にして三冠馬ナリタブライアンの弟でもある超良血馬。

 

 もう片やシガー。サイテーション以来16連勝を飾った怪物であり世界最高峰のダートレース、ドバイWCも制した歴史的名馬。

 

 このウッドワードSを制することでシガーは立て直しを図り、フルハートはシガーにトドメを刺す。シガー陣営にとっては何がなんでも獲らなければならないレースであり、フルハート陣営にとっても重要なレースとなっていた。その重要を嗅ぎつけた記者達は2頭の対決を【世紀の対決】と評するほどに盛り上げていた。

 

 

 

【さあいよいよ世紀の対決となったウッドワードSが始まろうとしています!】

 

 ウッドワードS。元ジョッキークラブ会長の名前から由来したGⅠ競走である。その覇者の中にはケルソ、フォアゴー、シアトルスルー、アファームド、スペクターキュラービット、スルーオゴールド、イージーゴア、サンデーサイレンスと言った名馬が並び、その重要性は高く、昨年はシガーが制しており今年シガーがこのウッドワードSに出走したのは連覇をすることで立て直しその力を示す為でもある。

 

 そしてフルハート陣営がこのレースに出走させた理由はシガーとの決着だけではない。むしろ逆でありホイットニーH、ウッドワードS、ジョッキークラブ金杯の3つのレースにフルハート陣営は出走登録しておりたまたまシガーと遭遇したというのが真実である。この3つのレースはケルソ、スルーオゴールド、イージーゴアと言った名馬が同一年で制しておりケルソとスルーオゴールドは既に殿堂入りしておりイージーゴアも後に殿堂入りすることになる。つまりこの3つのレースを制することで殿堂入りを確実にしておきたいというのがフルハート陣営の考えであった。

 

 

 

【スタートしました! まずここでハナに立つのは──】

 

 フルハートはこれまでとは異なり先行集団に混ざり、前を行く。その後ろで様子見をするシガー。その光景はシガーをマークしてきた今までとは真逆のレース展開となり、騒然とする。

 

「(よし、この調子だ。俺には伝説の永富騎手のようにペース感覚が完璧って訳じゃない。だがナインティギアの領域まで近づいている馬ならどんな騎手が相手でも俺以上に引き出せる騎手はいない。今の状態なら連勝していた頃の全盛期のシガーにも劣らない!)」

 

 創也がしっかりとフルハートの手綱を握ると共に創也の視界がスローかつ鮮明になり始める。

 

「(こいつは……何だ? 気持ち悪い程に何もかもがわかる。俺やフルハートやまだわかるにしてもシガーと言った他の競走馬の位置や身体の情報、そしてこれまでぼんやりとしかわからなかった俺が取るべき最適解。しかしその情報を受け取ってもパンクしない……この感覚を延々と続けていたい)」

 

 レースを進めていくうちに創也はのめり込み、笑みを浮かべていく。その姿はまるで自分自身が馬になったかのような錯覚すら覚える。

 

【さあ早々と先頭に立った! ここで先頭に立った! 前走ホイットニーHで13馬身差で圧勝したフルハートですが今日はどんなレースを見せてくれるんだフルハート!?】

 

「(これだ……これが俺が求めていた感覚なんだ……!)」

 

【さあこのウッドワードSでもフルハートだ、フルハートが行った行った! まだ余裕のリード! 後続勢はシガーが抜け出したが完全にフルハートの勢いは止まらない! 千切る千切る! これはもう決まった! これはもう決まった!】

 

「負けるなシガー! そこからフルハートをなぎ倒せ!」

 

「貴方はここで終わっていい馬じゃない!」

 

 シガーを応援するファンがシガーを応援するもそれに反比例するかのようにフルハートとの差は広がる一方だった。

 

【フルハート圧勝! 強過ぎる! 昨年の覇者であり年度代表馬でもあるシガーすらも子供扱い!】

 

 結果はフルハートがシガーに6馬身差の圧勝。これまでシガーこそが世界最強ダート馬と認めていた者も認識を改めざるを得なかった。

 

 

 

 数週間後

 

【フルハートだ、フルハートだ! 今日も俺の心臓はフルハート! 観客の心を鷲掴みするほど惚れ惚れする走りでした! 2着にスキップアウェイ、3着にシガー!】

 

 ウッドワードSを勝利したことにより、フルハートは更に勢いつけてジョッキークラブ金杯も7馬身差をつけて勝利を収め、イージーゴア以来の快挙を成し遂げる。

 

 その一方でシガーはスキップアウェイにも先着を許してしまい、フルハート陣営の目論見通りフルハートがシガー相手にウッドワードS、ジョッキークラブ金杯を連勝したことにより大半の人間はシガーは終わった馬だと認識されていた。だがそれでも陣営は諦めずにシガーのかつての栄光を取り戻す為にBCクラシックへと出走登録する。そこには宿敵フルハートやシガー転落に追いやったホクトベガの名前もあり、リベンジを果たすには丁度良いレースでもあった。

 

 フルハートとは互いに4戦2勝、ホクトベガとは2戦1勝と負け越している訳ではない。シガーにとっては負けられないレースでもあった。

 

 

 

 BCクラシック。かつてサードプレジデントとサンデーサイレンスが共に世界レコードを更新したレースであり、サードプレジデントは世界制覇の達成、サンデーサイレンスは史上初の連覇がなされた。そのBCクラシックの舞台でシガーはホクトベガとフルハートを相手にリベンジを果たすべく、ホクトベガは日本調教馬として2頭目となる覇者となる為に、そしてフルハートは全ての決着を果たすべく走る。尚、何故か安田記念記念2着と好走した日本調教馬タイキブリザードもいたがほとんど空気のような扱いであった

 

【スタートしました! まず行ったのはアティキャスがハナに立ち、その後ろにフルハート、ルイカトルズ、アルファベットスープ、マウントササフラ、ホクトベガ、そしてシガーはこの位置。少し後ろ気味か?】

 

 レースが進む中、フルハート鞍上の創也はレースに集中しつつも頭の中では別のことを考えていた。

 

「(この感覚だ……この、余計な情報がなく必要な情報を脳が取り込み、必要な情報を出すという身体性フィードバックのような状態を維持することが出来れば俺はどこまでも走れる!)」

 

 創也の視界から得られる情報はスローでありつつ鮮明で、それ故に騎手に取って最も重要だと言えるバランス感覚と折り合いも非常に良くなっていた。

 

 

 

【さあ最終コーナーを曲がってここから一気にペースが上がります! 直線に入ってフルハートが先頭に立ちました!】

 

 フルハートが捲り、先頭に立つ一方でシガーに限らずホクトベガ、アルファベットスープ、ルイカトルズ、マウントササフラと言った面子も互いの馬が並ぶだけで末脚の伸びが足らない。この面子も通常に比べれば確かに伸びてはいるのだがフルハートの末脚が余りにも鋭すぎた。その末脚は上がり3F33秒0という先行している馬とは思えないほどの末脚であり、他の馬が追いつけないのも無理はなかった。

 

【フルハート圧勝! 完璧! 痛快! 1分58秒9とBCクラシック2番目のタイムとなりました! 2着争いにアルファベットスープ、ホクトベガ、ルイカトルズと並んでいます。シガーは遅れて5着!】

 

「(やった……か。もう終わったと落胆すべきなのか、それともシガーに完全勝利したことに喜ぶべきか分からないな)」

 

 創也は複雑な気持ちだった。ゾーンに入り込んでいたところで得られたのはフルハート自身と陣営の名誉、賞金だけでこうもあっさりと勝ってしまったことに創也はどこか不完全燃焼気味になっていた。

 

 

 

 ──どうしたの? ニンゲンさん

 

 それに違和感を覚えたフルハートが創也を見つめると創也がフルハートを撫でる。

 

「お疲れ様、フルハート」

 

 ──ありがと。でもニンゲンさんが物足りないって思うなら僕、走るよ? 

 

「おっと待て待て。全力で走るな。ウイニングランなんだから流しておけ」

 

 ──はーい! 

 

 

 

 フルハートのおかげで気を切り替えることが出来た創也はアルツ達の下へ向かう。

 

「創也、良くやってクレた!」

 

「サンキュー! それよりもこれからフルハートはどうしますか? 引退しますか? ドバイWCに出走させますか?」

 

「世界制覇といこうジャないカ」

 

「世界制覇? 来年も現役続行でKGⅥ&QESや凱旋門賞に出走するつもりですか?」

 

「イエス。サードプレジデントが成し遂げたJC、KGⅥ&QES、凱旋門賞、BCクラシックの4つのレースだけでなくそこにドバイWCも付け加える」

 

「なるほど……現代版世界レース完全制覇ってことですか。BCクラシックはもう制しましたので残るレースはJC、ドバイWC、KGⅥ&QES、凱旋門賞。フルハートの距離適性的にも悪くないと思います」

 

「良いノカ? 遠征が長くなると思うが……」

 

「フルハートの体調が悪くなったら文句もいいたくなりますが、フルハートも身体は丈夫ですし精神面でもサードプレジデントにも劣らないレベルで強いです。なので反対のしようがないんですよ」

 

「それなら早速登録しヨウ!」

 

 かくしてフルハートの遠征が決まり、その遠征に創也も同行することになった。

 

 

 

 その一方、ホクトベガ陣営はというと。ハナ差でアルファベットスープに先着を許し、3着となってしまったことに対して落胆する陣営達。フルハートには遠く及ばなかったがそれでも2着と3着の差は大きかった。

 

「すみません、先生方。2着にも食い込めませんでした」

 

「いやあれでも上出来だよ。何せ衰えたとはいえシガーに勝てたんだ。加東君。騎乗ミスらしいミスもしていないし、降ろすという考えは今の所はない」

 

「ありがとうございます」

 

「とはいえ次のレース、川崎記念で負けるようなことがあれば乗換を検討しなければならない。加東君の腕は良いのは知っているがそれで勝てないのはホクトベガの相性が悪いってことになるからね」

 

 その後、加東は川崎記念前に加東が落馬し、腰を痛め春シーズンを全休する。その代わりに騎乗したリーディング上位の騎手、横浜紀洋が川崎記念、フェブラリーSを大差をつけ圧勝しドバイWCへと挑むことになる。

*1
当時の名称。現在はスティーブンフォスターS




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尚、次回更新は未定です
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