・今年の抱負
≫この小説の抱負はフジミキセキ編はすぐに終わるので収拾をつけること。延々とやりかねないので……とりあえずフジミキセキ編が終わったらwiki風の設定を出して一旦切って別の小説に集中します。なにせこの小説に一年以上集中していたのでそれ以外の更新が出来ていないという状況になったので……ちなみにその中にはこの小説よりもお気に入り数が多い物や平均評価が8というとんでもない物もあるのでそちらに専念します
≫故に筆者個人の抱負はこの小説だけでなく別の小説を完結させること。出来れば苦労しないけど、やるったらやるんだよ!クソッタレめ!
・一周年を迎えて
≫勿論書いていて楽しかった。というか楽しくなければお気に入り数や平均評価が高い小説を半ば放置(一応チマチマと書いてはいる)してまで書かない
≫これから先はフジミキセキ編で一旦終わると思うが仕方ない。続きは自分達で書き上げるなり、AIに仕上げて貰うなり好きにしてほしい。書き上げて投稿したらその手の三次創作なら「盗作だ!」等と騒ぐどころかそこにふれない程度の感想を書くし、お気に入り登録するかもしれない。内容によっては評価もする(評価の基準などは具体的にはこの場で言えない。理由は創作物を依頼する代わりに一定以上の評価を与えるという契約になる為、ユーザーロックされかねない)ので是非とも創作して頂きたい
≫もし筆者ことディアの作品を引用したことで運営に注意された場合は既に許可済で、私の方からも許可を出しているとお答えします
・東京大賞典
≫年末に行われるGⅠ競走級のダートレース。この結果次第では最優秀ダート馬の選出にも選ばれ、過去の勝者にはスマートファルコン、ホッコータルマエ、コパノリッキー、イナリワンがいる
≫ちなみに2023年の勝者はクソみたいな調教をすることで有名なウシュバテソーロ。今年に入ってからBCクラシック以外ダート無敗って相当ヤベーことをしているだけに余計に惜しいことをしている。これで勝っていたら最優秀ダート馬になり得たかもしれないが、今年はレモンポップという馬がいた為に運が悪すぎたとしか言いようがない。しかしダートは大体複数頭強い年が多いので海外GⅠを勝って評価されなくなった今の時代が悪いとしか言いようがない
・ホープフルS
≫旧名ラジオたんぱ杯3歳(2歳)S、ラジオNIKKEI杯2歳S等名称が変わりまくっているレース。過去は牝馬のみのレースだったが1991年〜1999年は牡馬&騙馬、2000年〜2013年は牡馬牝馬騙馬混合、2014以降は牡馬牝馬混合のレースとなる
≫主な勝者はノーザンコンダクト(スプリングSでミホノブルボンを抑え一番人気となった)、ナリタタイシン、メジロブライト、アドマイヤベガ、ラガーレグルス(この小説にも登場しているので記載)、アグネスタキオン、フサイチホウオー(ウオッカの同期でダービーで単勝1.6倍の圧倒的な支持を得る)、ヴィクトワールピサ(後の有馬記念&ドバイWC馬)、エピファネイア(シンボリクリスエスを父に持つ菊花賞馬。デアリングタクトの父でもある)、サートゥルナーリア(エピファネイアの半弟)、コントレイル(史上三頭目の無敗三冠馬)が有名所。
≫そんなホープフルSだが牡馬牝馬混合となってから牝馬が一度も制したことはなかったのだが、2023年レガレイラが牝馬で初めて勝利を収め、歴史的な快挙を達成した
WDT当日。創也はある過去を思い出す
「あれからもう、数年前になるのか」
創也が思い出していた過去、それはサードプレジデント達がトレセン学園に入学する前のことだった。
トレセン学園入学前、サードプレジデントはまだ小学生でありながら類稀なる才能の片鱗を見せていた。だがそれでも地元の住民の間で話題になる程度であり、全国で話題になることはなかった。
「なぁ、キャロ。お前一度も本気で走ったことないよな?」
「それがどうかしましたか? 創也様」
それというのもサードプレジデントが一度も本気で走っていないからだ。サードプレジデントが本気で走らない理由、それは本気を出すまでもなく勝ってしまうからだ。
「本気を出さなくてもお前は全国でトップクラスだ」
「当然ですわ。お母様の血を継ぐ私が全国でトップを狙えるのは当たり前のことですわ」
「でもな、あんな舐めプで虐めていたら可哀想だろ。序盤チンタラ走って後半本気出して差し切るってあれは心折れるぞ」
「知りませんわ、レースの世界は苛烈な世界。私を舐めて途中で手を抜いたのが悪いんですわ」
「対戦相手が途中で手を抜いたって気づいていたのか?」
「ええ、勿論。ですからお仕置きしましたの。──お前の最高速はどうひっくり返っても私の最高速に及ばない。そう身体に教え込ませましたの」
「やっていることが不良のそれだよ。お嬢様とはかけ離れているよ」
「なっ、誰がお嬢様らしくないですって!?」
「俺が知るお嬢様は少なくともそんな真似はしない。もっと優雅にやるもんだよ」
「むきーっ! いいですわ、お嬢様らしく優雅にやってやろうじゃありませんか!」
「(本当のお嬢様ならむきーっ、なんて言わないと思うけどまあキャロだしな)」
そう言って近くにいたウマ娘を捕まえると職員室へと向かっていった。
数日後、授業の一環ということで創也達児童と教師達は近くのトレーニング場に来ていた。
「ナイン姉、離してよーっ! ボクも走りたいんだから!」
「煩いぞクラ。それにしても創也の兄さん、また姉さんが何かしたのか?」
クラフトボーイの首根っこを抑えたナインティギアにそう尋ねられると創也が頭をかかえる。
「お前にはお嬢様らしい優雅さがないって指摘したら逆上してあそこにいる現役のウマ娘とレースをすることになったんだ。授業の一環と言っているが一体全体どうやったんだか」
「それは創也の兄さんが悪い。創也の兄さんも知っているだろ? 普段は大らかな姉さんだけどお嬢様らしくないって指摘すると取り乱すし、場合によってはキレるって」
「まあそうなんだけどさ、どうしてもあの癖は直さないといけないからな」
「全くこっちのことも考えてくれよ。クラを抑えるのに苦労しているんだからさ」
「……すまない」
「とはいえ、他の奴らは姉さんの走りを間近で見る最後のチャンスになるかもしれないんだ。クラも見ておけ。アレが私の偉大な姉なんだとな」
「(偉大な姉? いつもは喧嘩しているのに偉大な姉って……)」
「おいなんだいその目は。私が姉さんのことを毛嫌いしているとは言え、ウマ娘としてのサードプレジデントを評価していない訳じゃない。むしろ逆だよ。姉さんのことを一番評価しているのは私だ」
「でもそれはそれとして?」
「気が合わない……って何を言わせるんだ!?」
「すまんすまん。それよりも今日の相手、只者じゃなさそうだ」
「そうなのか?」
「動きを見ればわかる。とはいえ上澄みの上澄みにあたるGⅠ勝者ではない。GⅠを勝っていたら即座にわかっている」
「じゃあ重賞を勝ったウマ娘じゃないのか?」
「かもしれない。トレーナーを目指している以上、GⅠのウマ娘なら顔はパッと出てくるし近年重賞を勝ったウマ娘も同じだ。見覚えがある顔なのに名前が出てこないってのはあり得ない。となれば昔重賞を勝ったものの近年は掲示板には載るがあと一歩勝てないってところか」
「へぇ~、結構上澄みじゃないか。でも創也の兄さん、そんなウマ娘ならなんでこんなところにいるんだ?」
「理由は二つ。一つは併走相手にマンネリ化したこと。ウマ娘が多くいるトレセン学園といえども数は限られている。同じ併走相手になりがちだ。しかし長い事同じ併走相手と刺激がなくなってしまう。普通なら別のチームに要請したりして併走相手を探すんだがそれすらも出来なくなるほどにマンネリ化してしまったと思われる」
「そういうことか。でもう一つは何だい?」
「もう一つの理由はサードプレジデントが小学生だからだよ」
「姉さんが小学生だからってどういうことなんだ?」
「近年勝てていないとなればウマ娘としてのピークは過ぎ去っている。しかし掲示板に載るほど成績が良いものだからトゥインクルシリーズにいるしかない。引退の時期を逃してしまった。こういうウマ娘には自分より明らかに格下のウマ娘に負けた方が引退示準としてわかり易い」
「その格下のウマ娘こそが姉さんって訳か」
「そうだね。全国大会とかに出なかったこともあってサードプレジデントの名前は無名に近い。知る人ぞ知る名ウマ娘って感じだ。無名なだけにショックも大きくなる」
「でもさ姉さんが負けたら意味なくないか?」
「向こうにとっては勝っても負けても得することになるさ。あのウマ娘はさっきも言った通り負け癖がついている。それを克服する為でもあるからな」
創也達がそんな会話をしている一方、サードプレジデント達は互いに挨拶していた。
「本日はお忙しい中、私達児童のご指導の為にこの様な場を設けていただきありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。今日は交流も兼ねていますのでお互いに楽しくやりましょうね」
サードプレジデントが大人びた言葉で挨拶を交わすと相手の女性トレーナーはそんなサードプレジデントに感心しながら頭を下げる。
「ところでサードプレジデントさん、どこかの名家のウマ娘の出身ですか?」
「名家、という訳ではありませんが母が米国の名バでして、そんな母から手解きを受けたこともあります」
「なるほど。失礼ながらそのお母様のお名前を伺ってもよろしいですか?」
「セクレタリアトですわ」
サードプレジデントが名乗ると相手トレーナーは驚きのあまり固まった。
「驚いた……まさか二代目ビッグレッドの名前をここで聞くなんて……」
「その反応はやはり母をご存知ですのね」
「むしろ知らない方がいないよ。貴女のお母様は──」
「おい、何をやっている。そんなところでくっちゃべってないで準備してくれよトレーナー」
「と、ごめんなさいね、サードプレジデントさん。そういうことだから準備運動して待ってて貰えるかしら」
「ええ。準備が終わり次第声をかけて下さいませ」
サードプレジデントがそう言い、創也の下へ駆け寄っていった。
「創也様、ストレッチをやりますので少し手伝って頂けませんでしょうか?」
サードプレジデントが創也の下へ駆け寄った理由、それはストレッチの手伝いの要請だ。1人でもストレッチは出来ないことはないが、2人いてストレッチをする場合もある。その手伝いがあれば身体もより柔軟に動くことが出来る。
トレーナーを目指している創也なら最も効率よくストレッチを行うことが出来、ストレスなく身体も伸ばさせることが可能となる。
「姉さん、ストレッチなら私が出来るよ」
創也の他にもそのマッサージが出来るナインティギアが申し出る。
「貴女はクラを抑える役目があるでしょう?」
「くっ」
「さあ創也様、その身体で私の身体を堪能して下さいませ」
「姉さん、そんないやらしい言い方をするな。エロだと思われるぞ」
「ムッ、エロなのではなく淑女ですわ。それもお嬢様な淑女!」
「どんな淑女か理解出来ないね。このド助平」
「惨めなものですわ〜。助平にもなれないお子様が何かほざいていますわ〜!」
「あぁっ? やるっていうのか?」
「なんですの? やりますの?」
「止めろお前ら、レース前に何をしている」
「「だってこいつが!」」
サードプレジデントとナインティギアが一触触発の状況に陥り、創也が止めると息を合わせたように抗議する2人。
「クラの教育に悪いとは思わないのか?」
「そーだよ。サー姉、ナイン姉。他所様の前で喧嘩しないでよ」
クラフトボーイがそう言い、隣にいるウマ娘に注目すると2人が困惑した表情で創也を見ていた。
「創也様、その方はどちら様でしょうか? まさか私めを差し置いてその方のトレーナーになると言うのですか?」
サードプレジデントが手を口で覆い、少し涙声に抗議する。
「違う違う。確かに逸材だがこちらにいるのはシンボリ家の御曹子、シンボリルドルフだ」
「シンボリルドルフ。以後お見知り置きを」
シンボリルドルフと名乗った少女を見たサードプレジデントは涙を引っ込めて恭しく、頭を下げる。
「サードプレジデントですわ。創也様の大切な愛バと覚えて下さいませ」
「ナインティギア。クラフトボーイの姉でそこのサードプレジデントの妹だ。よろしくシンボリルドルフさん」
「ナインティ、何故私との関係を後にしたのかしら?」
「さあな? 自分で考えてくれ」
「仲が良いんだな君達は」
「「どこが!?」」
シンボリルドルフの指摘にサードプレジデントとナインティギアが再びハモる。そしてサードプレジデントは猫のように威嚇しナインティギアは唸り声を上げて威嚇する。
「サー姉、ナイン姉、いい加減にしないと怒るよ!」
末妹であるクラフトボーイがそうキレると2人は渋々といった感じで引き下がる。
その様子を見ていたシンボリルドルフはクスリと笑い、創也に話しかける。
「月城君、どうやら君の愛バ達は相当仲が良いみたいだ。羨ましい限りだよ」
「姉妹とは仲が悪いのか?」
「実の姉妹ではないんだが、私の妹のような幼馴染がいるんだ。昔は親猫に連れられる子猫のように私の後ろを着いていく可愛らしかったんだが、とあることをきっかけに口すら効いて貰えていない」
「そんなに仲が悪いのか」
「その通り。だから口喧嘩する2人が羨ましく見えたんだ。すまないなこんな愚痴をこぼして」
「構わないさ」
「あっ、そう言えば姉さん創也の兄さんにストレッチをして貰わなくてもいいのか?」
「貴女が止めたのでしょうが……まあいいですわ、そういう訳ですので創也様、お願い出来ますか?」
「了解。それじゃシンボリルドルフ、ストレッチが終わったらまた話そうか」
創也とサードプレジデントがストレッチをするためにその場から離れるとナインティギアがシンボリルドルフに近寄る。
「シンボリルドルフさん、シンボリ家ってのはどんな飯を食べているんだい?」
「そうだな、朝食はビッフェスタイルで好きな物を好きなだけ食べるからどんな飯と言われても決まっていないんだ」
「ビッ……?」
「ビッフェスタイル。つまりあらかじめ作られた多くの料理を自分で選んで盛り付ける形式のことだ。私達でいうならバイキング形式のイメージだな」
クラフトボーイが頭に疑問符を浮かべるとナインティギアが補足する。
「解説ありがとう。それで昼食については意外に思うかもしれないが三食の中で一番カロリーが高く、そして量も多い食べ物が出される。人参ハンバーグは定番だな。週に2回は出てくる」
「人参ハンバーグを週に2回とは羨ましいもんだ。母さんと姉さんはエンゲル係数が高すぎてそんなものは食べられないくらいに貧乏生活をしている」
「それは大丈夫なのか?」
「まあ姉さんと母さんだし」
「いや君達は一緒の食事をしていないのか? サードプレジデントとその母が無事でも君達が同じ生活をして無事とは思えない」
「する訳ないだろう。姉さんとは半分しか血が同じじゃないし、ましてや母さんと呼ぶウマ娘とは血が繋がっていないんだから」
「そ、そうか複雑な事情があるんだな」
「基本的には私とクラは姉さん達とは別々の場所で暮らしている。幸いなことに……父から送られる養育費は直接受け取ってやりくりしているからな」
「ナインティギア、もうその話はよそう。私が聞いてはいけない」
そう言ってシンボリルドルフが無理やり打ち切らせた。
「まあ何にせよシンボリルドルフさん、私がクラフトボーイを養えなくなったらとかクラフトボーイの就職先に困ったらクラフトボーイをシンボリ家に引き取って欲しい。クラフトボーイも姉さん程じゃないが相当な素質の持ち主だから有益だと思う」
「ナイン姉も本気だせば強いよ! だからボクを引き取るんならナイン姉も引き取ってよ!」
「止めろクラ。私はシンボリ家とかメジロ家とかそういう名門はあまり好きじゃないし、ウマ娘としては致命的な欠点があるから役に立つとは思えない」
「そんなっ」
「それに私は姉さんやクラと違ってトレセン学園に入学する気すらない」
「なっ……!?」
シンボリルドルフが信じられない物を見た顔になり、人生で一番のショックを受ける。
「姉さんから聞いたがトレセン学園に入学できるのは凄いことらしいが、私はその名誉を有難く辞退しようと思う」
「本気……なのか?」
「ああ本気だ」
「入学してクラシック三冠の栄誉を手にしなくてもいいと言うのか!?」
「良いよ。そんなのは別のウマ娘にでもくれてやれば良い。その方が世の中の幸せだ」
「違う! そんなことは君が決めることじゃないっ!」
「かもしれないが、私が三冠を獲ったら必ず不幸になるウマ娘がいる。そして私は不幸になる」
「何故だ、何故そう言い切れる!?」
「私が抱えるウマ娘として致命的な欠点、それはレースが好きじゃないからさ」
「……っ!!」
「考えてもみなよ、ただでさえ三冠ウマ娘と同期になったウマ娘は自分の不甲斐なさに嘆き不幸になる。そして私のようにやる気がないウマ娘が三冠達成しても嬉しくも何ともないし場合によっては罪悪感すらもある。三冠を達成する=幸福とは限らない。少なくとも私はそう」
「だがそれでも、たとえそうだとしても三冠を達成したことを祝う者もいるはずだ! その祝う方々を幸せにすることは出来る!」
「どっちにしてもレースに本気で取り組めないウマ娘がレースをしたところで不幸なだけさ。私はレース欲に欠けている。私が走るとしたらもっと別の動機で走ることになる。そんな悲しいモンスターなんだよ」
この時点でシンボリルドルフは諦めてしまった。今の自分に目の前の少女の人生を良くすることは不可能だ、と。
「(今は無理でもいずれ必ず……!)」
そして同時に、未来の自分にナインティギアを託す。
それから数分後、トレセン学園側の準備が終わり、トレーナーがサードプレジデントに声をかける。
「準備終わりましたのでよろしくお願いします」
「わかりましたわ。よろしくお願いします」
サードプレジデント達が位置につき、模擬レースが始まった。
「ねえシンボリルドルフさん、ちょっと賭けてみない?」
「何を?」
「そりゃ勿論、サー姉が勝つかトレセン学園のウマ娘さんが勝つかだよ」
「それは少し不公平に過ぎないか? 私はサードプレジデントというウマ娘の走りを良く知らないのに対して君達は熟知している」
「トレセンの方は知っているのか?」
「勿論だ。私は一度見た顔は忘れないという特技がある。何度も重賞レースに出ている彼女なら熟知している」
「なら公平じゃん! トレセン学園のウマ娘の方はボク達あまりわからないよ」
「そう結論を急ぐなクラ。それで何か他の理由でもあるのかい?」
「あれが理由だ」
シンボリルドルフが指さした先にはトレセン学園のウマ娘がサードプレジデントに30馬身ほど突き放している姿だ。
「差しウマのウマ娘相手に1000m通過時点であの状態だ。あれでは勝てるものも勝てないよ」
「じゃあシンボリルドルフさんはあのトレセン学園のウマ娘に賭けるってことでいい?」
「む……そうだな」
「じゃあ決まり! サー姉に賭けるよ。サー姉が勝ったらボク達の勝ちだね!」
「おいっ、私を巻き込むなよ……まああの状態の姉さんが負ける訳がないと思うのは一緒だが」
「それはどういう──」
その瞬間、シンボリルドルフは見てしまった。サードプレジデントが物凄い勢いで加速し、残り500mで30馬身あった差が10馬身まで縮んだ姿を。
「何だ、あれは……!?」
「ははっサー姉、やっぱり凄いなーっ!」
「あのバカはどうしていつもああなんだ?」
シンボリルドルフが驚愕する中、クラフトボーイが楽しそうにし、ナインティギアが頭を抱える。
「まさかこれほどとは……」
そして結果は、サードプレジデントが7バ身差で圧勝。デビューする前のウマ娘が重賞勝ちのあるウマ娘につけて良い着差ではなく、トレセン学園のウマ娘は当然だがトレセン学園に所属している関係者、シンボリルドルフの他名家のウマ娘もその着差に驚愕する。
「サー姉、流石だね!」
「無闇矢鱈と差をつける、舐めプをする……創也の兄さんから雷が落とされるぞアレ」
しかしこの姉妹はそれを当たり前のように受け入れていた。そしてシンボリルドルフはすぐにサードプレジデント対策に何をすべきか頭の中で作戦を練っていた。
「(現時点で厄介なのはレース展開を無視して想定外のところからやってくるほど圧倒的な末脚。あれではレース展開を繰り広げて走る私とは相性が悪い。もし彼女と走ることになれば最悪一敗は覚悟しておかないといけない)」
シンボリルドルフがブツブツとつぶやきながら考え込んでいるとサードプレジデントが近づいて来た。
「シンボリルドルフさん、ナインティ達と何を話されていたのですか? とても仲が良さそうでしたけど」
「ふふっ、君達のお姉さんは凄いなと話していただけだよ。まさかあれほどまでに差をつけるなんて思いもしなかったがね」
「評価を改めて頂きありがとうございます。貴女程のウマ娘がそう仰るならトレセン学園に私の名前が響いて入学も間違いなさそうですわね」
「そのようだが、サード。君のトレーナーはもう誰にするか決めているんだろう。入学したところで君が推している月城君とは契約出来ないと思うのだが」
「確かに現状創也様はトレーナーの資格は持っていない以上無理でしょう。しかし私が本格化するのは高等部になってからで創也様の猶予はまだありますわ」
「そうか、ならば楽しみにしているよ。次にレース場で合う時は高みへ」
「あっ、サー姉だけズルいっ! ボクも高みへいくから待ってて!」
「可愛らしいライバルがまた生まれてしまったな。クラフトボーイ、その時を楽しみにしているよ」
シンボリルドルフがそう告げるとクラフトボーイはそれがとても嬉しかったようで、尻尾を大きく振って喜びを表現する。
「良かったですわね、クラ。私も待っていますわ」
「サー姉もナイン姉も高みで待っててよ! でないと暴れるからね!」
「おい何故私まで巻き込む」
さり気なくナインティギアを巻き込んだことに対してナインティギアが抗議する。
それから数年後、サードプレジデント達はWDTの舞台に立っていた。
「よく来たな、サードプレジデント、ナインティギア、クラフトボーイ。この皇帝シンボリルドルフが受けて立とう」
「上等ですわ、皇帝陛下。赤い弾丸を取り込んだ和製ビッグレッドの走りご覧あれ」
「全くようやく身体が治った矢先にこれか。だが皇帝も和製ビッグレッドも所詮は生き物だ。
「こうやって皆で一緒にレースするなんて楽しみだね! でもボクも負けないよ、だってボクはスピード違反常習者なんだからさ!」
互いに高みに達した四人が火花を散らし、その戦いは熾烈を極めることとなるのはまた別の話。
このお話をお楽しみ頂けた、あるいはこの小説自体をお楽しみ頂けたならお気に入り登録や高評価、ここすき、感想の方を宜しくお願いいたします。
また感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。
尚、次回更新は未定です