89式和製ビッグレッド   作:ディア

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第9話

 弥生賞、後に弥生賞ディープインパクト記念と呼ばれることとなるそのレースは皐月賞トライアルの一つであり、日本ダービー馬クライムカイザー、三冠馬ミスターシービーとシンボリルドルフ、二冠馬サクラスターオーなど最も出世するレースとして知られている。

 

 今回の弥生賞は不良馬場と呼ばれる馬場でタイムは出にくくまた、体力を非常に消耗する状態だ。その為多少なりともタイムは落ちるだろうが、それでもサードプレジデントの人気は高く1番人気という大本命であったが、ここでまたしてもトラブルが発生する。

 

 出遅れ癖、騎手の変更、そして今度のトラブルは競走馬にとってかなり致命的なものであった。

 

 

 

「おいおい、落鉄とかマジか……」

 

 落鉄──ようするに馬の足につけている蹄鉄が外れてしまうことで、サードプレジデントは出走前にそれが起きてしまった。落鉄すると出走そのものに響く訳では無いが落鉄した馬のスピードが落ちてしまい敗北に繋がる。後の世では天皇賞秋で2番人気になったミスターブロンズことナイスネイチャが落鉄し15着と惨敗している。またさらに未来の競走馬ドゥラメンテも落鉄により得意の高速芝のドバイシーマCで敗れ、どれだけ落鉄がレースに影響するか理解出来るだろう。

 

 

 

 しかしサードプレジデントならやってくれる。あの惨敗男を立ち直らせただけでなく最強クラスにさせたという実績がある。たかが落鉄如きで負けるはずがない。

 

 そのような空気のおかげでサードプレジデントは単勝オッズを2倍以上に落とすことなく、圧倒的な支持を得ていた。

 

【さあ、中山の直線は短い、先頭に立ったのはサードプレジデント! 後続を引き離す!】

 

「いけぇーっ、サードプレジデントぉっ!!」

 

「頑張れぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」

 

 観客は皆、サードプレジデントを応援し、その声援に応えるかのようにサードプレジデントは加速していく。もはやその速さはレコードタイムを遥かに超える勢いだった。

 

【不良馬場にも関わらずどんどんサードプレジデントが更に突き放す、もう独走だ、独走だ! 後ろからはなーんにも来ない、後ろからはなんにも来ない! 朝日杯2着サクラホクトオーは全く伸びない!】

 

「なんだよこれ……まるで、朝日杯の再現じゃないか」

 

「ああ、もう来るぞ!」

 

「行けえぇっ!」

 

【サードプレジデント最後は流して大差でゴールイン! まずトライアルレースを制したのはサードプレジデントです! 時計はなんと1分59秒1! これでは他の馬が負けても仕方ありません!】

 

 そしてその8秒半後、ようやく2着が決まり、つけた着差は脅威の51馬身差。それまでの弥生賞レコードで走ったとしても大差で負けていたことに変わらず、このレースの出走馬の関係者一同は嘆いてしまう。

 

「ば、化け物だ……落鉄しているのにそんなタイムを出せるのかよ……」

 

 

 

 落鉄、不良馬場とタイムが出せない状態であるにも関わらずレコードタイムで駆け抜けたのだ。

 

 もしそのどちらか、あるいは双方の不安要素がなかったらどれだけ速く駆け抜けたのか、そう観客達は思わざるを得ずサードプレジデントに三冠の夢を与えていたが他の関係者からすれば悪夢そのものとしか言いようがない。

 

 

 

「すみません……僕が不甲斐無いばかりに」

 

 関係者一同、特に騎手の落ち込み様は尋常ではなく、今すぐにでも自殺してしまいそうな表情をしていた。

 

「いいんだ、気にするな。お前はよくやった。ただ相手が悪かっただけだ」

 

「……はい」

 

「相手はあのミスターシービー、シンボリルドルフ、いや本当にセクレタリアトのような化け物だ。1000年かけても二度とお目にかかれないレベルの競走馬だ。せめて他の馬に負けなきゃそれでいいんだ。気楽に行くといい」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「それに今後は距離路線を変えて出来るだけサードプレジデントと遭遇しないようにするだけだ。それで勝てればいい。それでやれるね?」

 

「はい」

 

 

 

【さて、皐月賞トライアルのスプリングSは再来週行われます。注目のサードプレジデントは出られるのでしょうか?】

 

「いや、出ないと思うぜ。皐月賞の前に消耗させるわけにはいかないからな。スプリングSは回避するはずだ」

 

「そうか。まぁ、そうだよな……」

 

【今年の4歳はサードプレジデント一強となりましたが、古馬の方はオグリキャップと同じく地方からやってきたイナリワンが注目を集めていますね。今度の阪神大賞典は期待出来ます】

 

 

 

『サードプレジデント』

・馬主 星崎美亜

・生産牧場 月夜牧場

・調教師 旭川誠

・性別 牡馬

・毛色 栗毛

・年齢 4歳

・戦績 4戦4勝

・朝日杯3歳S、弥生賞




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尚、次回更新は本日18時です

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