≫番外編と本編の話数が並んでしまった。本来ならここで終わらせようとしたがほぼ最終章ということもありフジミキセキ編だけ伸びてしまった。まあこの当時の欧州の情勢を考えると前回の更新から3話程度じゃどう描写しても足りないし、妥当といえる
・永遠の二番手
≫現代において永遠の二番手と言えばマリオシリーズのルイージを彷彿させるだろう。しかし競馬において永遠の二番手は日本ならメイショウドトウ、エピファネイア(皐月賞、日本ダービー、世界レーティング2位)、米国ならシャム(ゴドルフィンアラビアンではなくセクレタリアトの同期の方)、アリダー(米国三冠全て2位)、カントリーグラマー(ドバイWC馬であるがフライトラインにボコボコにされた)が該当する。欧州で有名な永遠の二番手はミンティングとザバード(共に「英ダービーに10回出て9回は勝った」と言わしめるだけの実力馬でありながら同世代にオーモンドというもっとバケモンがいた為に英ダービーを勝てず永遠の二番手となってしまった)、ボワルセル(競走馬としても種牡馬として大成したが同期のネアルコはもっとバケモン)、エクリプス(競走馬としての成績は唯一抜きん出て並ぶもの無しで種牡馬としても大活躍したがヘロドやハイフライヤーとかいうバケモンがいた為にリーディングサイアーになれなかった)、エクセレブレーション(世界史上最強マイラーのフランケルと対戦したレース5回のうち4回2着1回3着)がいる
≫この小説においての永遠の二番手はサンデーサイレンスかナインティギアの2頭になる。サンデーサイレンスはサードプレジデントがいなければJC、凱旋門賞の2つ勝利しているし、ナインティギアはもうまんまルイージ。GⅠ勝利数も10勝で二番手だし、KGⅥ&QESも歴代2位のタイムだし、魔改造サンデーサイレンスを破ったのも二番目。決して兄には及ばないが他の者には負けないというのが本当にルイージみたいになっている
≫ちなみにサードプレジデントは日本国内や欧州の一部地域を除けばリーディングサイアーになっていないが、毎年日本→米国→日本→米国→……と移動した上での成績なので永遠の二番手とは言えない
数週間後、育成牧場にてフジミキセキは2頭の馬と併走を行っていた。その2頭とはフジミキセキの祖父の2頭、サンデーサイレンスとサードプレジデントの2頭である。
この2頭がフジミキセキのことを孫と認識しているせいもあってか、フジミキセキを扱いていた。
──降りろ下手くそめ!
「うわっ!?」
サンデーサイレンスが下手な指示を出した牧場スタッフを振り落とし、走路を外そうとして、その際にフジミキセキと目が合う。
──いいか孫よ、下手くそな人間はこのように〆る。そしてそれでも尚、反抗するようであれば蹴り飛ばせ!
──そんな危ないことしないよーっ!
──そうだぞ。やるにしても突然ではなく警告してからの方が良い。
サードプレジデントが割って入り、サンデーサイレンスを諭す。だがサンデーサイレンスには馬の耳に念仏と言わんばかりに反論する。
──甘い、甘いぞ、宿敵。今反抗の芽を摘み取らないで、将来どうなる?
──俺がいる。問題は無い。
サードプレジデントがサンデーサイレンスに声をかける。するとサンデーサイレンスが牧場スタッフの首根っこを押さえ無理やり立たせる。
──おら、さっさと乗れ。乗らないのならどうなるかわかっているんだろうな?
牧場スタッフにサンデーサイレンスが騎乗するように促すと渋々ながら乗り出す。
「(もうヤダ。なんで俺ばかりサンデーサイレンスなんだ……気性難のサンデーサイレンスならこの人だろうに)」
牧場スタッフが恨めしそうにフジミキセキに騎乗している創也を睨む。サンデーサイレンス程の気性難を扱える人間は数が少なく、減量下手な為に騎手学校を中退したこの牧場スタッフはその1人なのだが、騎乗技術は現役の騎手と比べると下手なこともあり、サンデーサイレンスから嫌われている。
しかし創也がいる間は基本的に創也がサンデーサイレンスに騎乗し、フジミエンペラーが渡米する前の調教もそうであったのだが、渡英する前ということもありフジミエンペラーは既に渡米しフジミキセキの最終調整やサンデーサイレンスに騎乗する理由も薄くなっていたこともあり、牧場スタッフがサンデーサイレンスに騎乗する羽目になった。
またサンデーサイレンスがサードプレジデントやフジミキセキと併走するというイベントに張り切り、荒ぶることも多くその犠牲となる場合も多数あり、次の日にはサンデーサイレンス担当を嫌がり辞職する者や、サンデーサイレンスの気性難によって怪我する者が増え、次第にサンデーサイレンスを扱える者がいなくなっていた。
「フジミキセキ、お前の祖父さん達の走りを見ろ」
創也がサンデーサイレンスとサードプレジデントの走りをフジミキセキに見せにかかっていた。
──うーん、サンデーサイレンスもサードプレジデントもやっぱりすごいね! それでこそ僕のお祖父様だよ!
「サンデーサイレンスとサードプレジデントはな、世界中の競馬ファンから英雄と呼ばれるくらい凄まじい馬だ。だからこそ勉強になる。いいか? まずはサンデーサイレンスのコーナリングについていけ」
創也が合図を出し、サンデーサイレンスのコーナリングの加速にフジミキセキがそれに合わせるように加速する。
──うわっ、凄い速いっ! でも負けないよ!
サンデーサイレンスのコーナリングから来る加速はフジミキセキがこれまで経験したことのない加速であり、錯覚を覚えるほどである。
しかしフジミキセキもコーナリングで負けるわけにはいかず、サンデーサイレンスの加速に追いつくために全速力の加速をかける。
やがてコーナーを曲がり終えるとサンデーサイレンスの加速が終わりそのスピードを維持したまま直線へと入る。
──えっ? まだあの速さで走れるの!?
サンデーサイレンスが伝説的な逃げ馬になった理由、それはコーナーの加速が凄まじく直線とほぼ変わらないスピードで走れるからであり、自然と後続を引き離してしまう為である。フジミキセキが直線に入った時にはサンデーサイレンスに追いつき追い抜くどころか差をつけられてしまっていた。
「(ったく、前々から思っていたがサンデーサイレンスの奴現役の時を超えているんじゃないか? 親父の野郎、いくら米国最強とはいえ種牡馬のサンデーサイレンスをここまで鍛えられるなんて人間辞めてないか? テキが見たらぶっ倒れるぞ)」
創也が自らの父に畏怖しながら、フジミキセキにゆっくりと詰めていくように指示を出す。
──了解!
合図を出されたフジミキセキがサンデーサイレンスに迫るとともに後方の馬を見る。
その後方の馬──創也の父を鞍上にしたサードプレジデントがいつでも狙えると言わんばかりに加速準備を始めているのを見ながらフジミキセキは徐々にスピードを上げる。
やがてサンデーサイレンスが次のコーナーを曲がろうとするとサードプレジデントも加速する。
「(やっぱ速いっ! フジミキセキに乗ってこの迫力だ。サードが現役の時に他の馬に騎乗していたらと思うとぞっとする)」
その加速に創也が戦慄し、フジミキセキを加速させるがコーナリングということもあり加速すればするほどに外に振られてしまい距離をロスする。
──な、なんで僕だけ外に膨らむの!? あっ、もしかしてあの走り方に秘密があるのかな?
フジミキセキが自分の走りに無理があると判断し、サンデーサイレンスの走り方を真似する。それまで歩幅を広くするストライド走法で走っていたものが回転数を増やすピッチ走法に切り替えたことによりコーナリングがスムーズに行われる。
そしてフジミキセキが最終コーナーを曲がると同時にサンデーサイレンスの後方まで詰め寄った。
──よし、ここから……ん? 後ろから来てるのって!?
2頭の後方から猛スピードで迫ってくる赤毛もとい栗毛の巨漢馬が一気に大外から奇襲をかけた。
──よう、宿敵に孫よ。やっぱり勝つのは俺だ
──黙れ老いぼれ、てめえにだけは負けねえ!
──老いぼれはてめえもだろうが。同い年なんだからよっ!
サンデーサイレンスがサードプレジデントの強襲に怯むことなく再加速し、サードプレジデントもそれに負けじとヒートアップする。
──あれだけ加速しまくってまだ加速出来るの!? でも僕だって負けないっ! まだまだ僕も秘策を残しているよ!
フジミキセキが更に加速しサンデーサイレンスに並ぶ。
──ほう、やるじゃねえか! それでこそ俺の孫だ!
サンデーサイレンスが笑みを見せたかのように口元が緩むと同時に、先頭を譲らんと言わんばかりに加速する。
──鞭なんぞいらねえ! しっかりしがみついていろ下手くそめ!
牧場スタッフが見せムチをするとサンデーサイレンスはその鞭を振り落とし、しがみつかせるようにバランスを取らせる。
そしてサードプレジデント、サンデーサイレンス、フジミキセキの順にゴールするとサンデーサイレンスに騎乗していた騎手が振り落とされた。
──ふん、まあ合格だ。だが詰めが甘いな
鼻を鳴らしながらその場を立ち去ろうとするサンデーサイレンス。
「こらこら待て待て。このまま帰ったら危ないから俺が誘導する」
──チッ、余計なことを……
創也が止めたことにサンデーサイレンスがイラつき、創也を睨みつける。
「それにしても流石というか、なんというか現役から全然衰えていないなお前達」
──そうだろう? いつでも相棒と走れるのを待っているんだ。これくらいは当たり前だ
サードプレジデントが鼻を鳴らし、創也と視線を合わせる。
──それに宿敵が隣にいるんだ。こいつがいる限り引退など出来んよ
──気に食わないがそれについては同感だ。1日4回女と交わって疲れたとしても宿敵には負けられねえな
サードプレジデントとサンデーサイレンスが笑みを浮かべながらフジミキセキを見る。
──俺の孫であり
──これだけのことをしたんだ。我が孫であり
サードプレジデントとサンデーサイレンスが共にそう告げたかのようにフジミキセキに背を向ける。フジミキセキもその厳粛な雰囲気に呑まれたのかただ頷くばかりだった。
──お祖父様達、その高みで待っててよ。必ず追いつくから!
その言葉を聞いた2頭は軽く頷き、その場を後にする。
翌日、フジミキセキはとある牝馬と出会っていた。
──あれ? お婆さん、大丈夫?
──ええ。平気よ。心配してくれてありがとうね、坊や
その牝馬はサードプレジデントと同じ真紅の栗毛の馬体が特徴の馬であった。
──お婆さんはなんでここに来たの?
──あの子の走りを間近で見るとね、元気を貰えるの。私の自慢の息子なんだよ
その視線の先をフジミキセキが見るとそこにはサードプレジデントが映り込み、サードプレジデントがそれに気づき、走り終えるとフジミキセキ達に近づいてきた。
──何だいたのかお袋。今日のプール運動は終わったのか?
──もう終わっているよ。相変わらず元気な子だねぇ
──何時までも元気でありたいからな。それよりもこの青いのを紹介するぞ。ほら挨拶しろ
──フジミキセキです、お婆さん改め曾祖母様。お世話になります
──曾祖母様ということは、なんと私のひ孫か! 長生きはするもんだね
──もっと長生きしてくれよ。こいつの子供も見せてやりたいからな
──いつ死ぬかもわからん老馬に無茶を言うね……
──そのくらい大切に思っているってことだよ、お袋
シルキークラフトはかなりの高齢であり、ここに連れて来られた理由はトレーニング施設だけでなく温泉施設がありリフレッシュするには最適の場所である。本来であればそれだけで充分なのだが息子であるサードプレジデントが真面目に走っている姿を見て安心しているのか落ち着いており、牧場スタッフ達も彼女がゆっくり出来るように配慮しサードプレジデントの走りを見学させている。
──ごめんねえ坊や、こんなおばあちゃんの相手をさせてしまって
──いえ、曾祖母様。こうして会話出来るだけでも嬉しいです
──あらあら、お世辞が上手ね。でもありがとうね。こんな私に何か出来ることはないかしら?
──近いうちに遠い場所でレースするんだ。もし元気だったら応援宜しくね
──ええ、その場で応援させて貰うわ
──へへっ、楽しみに待っててね!
シルキークラフトがそうフジミキセキに微笑みかけると、フジミキセキは笑みを浮かべ創也の指示に従いその場を離れた。
「ミキ、お前がキャロやルキ*1と何を話していたのかはわからないが、お前らしく楽しめたようで何よりだ」
──うん、凄く楽しかった! 僕ね、もっとここでトレーニングしたい! だからお祖父様達に追いつけるように頑張るよ
「ああ、楽しみにしているぞ」
そして数日後、サードプレジデント達に見送られたフジミキセキは英国へと旅立ち、現地で調教を受けていった。
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尚、次回更新は未定です