89式和製ビッグレッド   作:ディア

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・ジャイアンツコーズウェイ
≫史実の彼は13戦13連対、セントジェームズパレスSを皮切りにGⅠ競走5連勝というとんでもねえ記録を叩き出した。主にマイル〜中距離路線で活躍しBCクラシックでもダート競走初挑戦にも関わらず2着に食い込んでおりサキーやアグネスデジタル以上に馬場適正問わない変態天才。その実績を買われてシンダーを差し置いてカルティエ賞を受賞つまり欧州の年度代表馬になった
≫父は大種牡馬ストームキャット、母は重賞6勝馬マライアズストーム、母父ラーイ。ストームキャットはシーキングザダイヤの父、キズナ、ロードカナロアの母父、ヘニーヒューズの父父として日本に馴染みがあるが世界ではそれ以上に馴染みのある存在で芝ダート問わない種牡馬として知られ、ノーザンダンサーの直系子孫として初の米国三冠馬ジャスティファイの直系祖先でもある。ラーイについては後述するファンタスティックライトにて解説する
≫そんなジャイアンツコーズウェイだが引退後は種牡馬としてもエイシンアポロンやブリックスアンドモルタル、シャマーダル等世界各国でGⅠ馬を輩出し大成功しており母父としてもBCクラシックなどを制したガンランナー、ドバイターフを3連覇したロードノースを輩出するなど歴史的に残る一頭とも言える

・ファンタスティックライト
≫二カ国の年度代表馬に選ばれた世界的な名馬でもあるが、日本ではそこまで評価が高くない1頭でこれには理由がある。日本で評価が高くない理由の一つにエルコンドルパサーやテイエムオペラオー、メイショウドトウ、ステイゴールドといった日本馬達に先着されまくったのが原因な上に、01年のBCターフ後JCに出走予定であったが陣営がテイエムオペラオーを恐れたのかは不明だがその場で引退したのも大きい。また00年のJCのパドックで外国人ホースマン達がテイエムオペラオーの死角を歩きオペラオーがイラつき万全の状態でない、翌年のドバイSCでステイゴールドも遠征疲れして体調が万全でない等ファンタスティックライトにとって相当有利な状況であったにも関わらず敗北したのもある
≫日本で過小評価されているのはさておき、世界で見ればこのファンタスティックライトという馬は無敗の英ダービー馬ガリレオを唯一芝のレースで破った競走馬で土をつけた愛チャンピオンSでは「この10年間で最も偉大なレースの勝者」と評され、またガリレオ不在のBCターフでもレコードを出し「究極の現代の競走馬」と評されていて相当評価も高い。こんな奴にステイゴールドは勝ったのか……
≫父はラーイ、母父ニジンスキーという血統でありニジンスキーについてはもう触れまくっているので省略する。ラーイについては世界各国で活躍した名種牡馬。2年目からGⅠ11勝したセレナズソングを輩出しその他にも欧州、米国を問わずGⅠ馬を輩出し母父としてもジャイアンツコーズウェイなどを輩出するなど父ブラッシンググルームの後継種牡馬としてふさわしい成績の持ち主であった。ファンタスティックライトはラーイの代表産駒となり後継種牡馬になったかと思いきや全く活躍することが出来ず欧州で一大勢力を挙げたガリレオとは正反対の成績となった。

・ジャスティンミラノ
≫英国のクラシック登録について調べていたらまさか日本馬のジャスティンミラノが英ダービーに登録するというニュースを見かけたので記載
≫2024年3月時点で2戦2勝、主な勝ち鞍は共同通信杯と日本クラシック(ややこしくなるので日本は以下略)の有力候補に相応しい成績ではあるが英国クラシックに登録するほどであるか?と言われれば首を傾げる
≫それというのも英国クラシックに限らず洋芝は日本の芝とは全く異なる為超重馬場だろうがダートだろうがお構い無しに走れる万能型の馬であることが前提条件であること、更に英国クラシックに行くことは遠征のリスク、賞金面、さらに洋芝適正等などハイリスクノーリターン過ぎる。ちなみに英ダービーの賞金総額は1,625,000GBP(1GBP=190円と計算した場合約3.08億円)であり、日本ダービーの1着の本賞金が3億円、5着までの賞金総額は5.7億円。関係ないが1ユーロ163円換算で計算した愛ダービーの賞金総額に至っては約2.03億円である
≫故に遠征して得られるものはほとんどない上に、着差がほとんど無い状態で勝ったとしても得られるのは名誉だけで種牡馬価値に繋がるかと言われるとプラスアルファくらいにはなるだろうが微妙。そこまでするなら日本ダービー等の日本国内で余程走りたくない相手がいるとかじゃないと説明がつかないくらいには遠征する価値はない
≫そんな彼が英国クラシックを勝てるかと言われれば可能性はあるが難しいとしか言えない。上がり3F32秒台ということや朝日杯を無敗で勝ったジャンタルマンタルを2着に打ち負かしたことを考慮すると強いことには強いが世界トップクラスと断言出来るほどではなく、適正を考慮しないとなるとこの時点で世界トップクラスの評価を得ないとかなりキツイ
≫最後にこんな筆者の見解を示しておいてなんだがフジミキセキを欧州遠征させているので説得力は皆無であることは自覚しているし、英ダービーを制したら掌返しもすることになる。


第93話

 エクリプスS当日。フジミキセキは無敗の英ダービー馬ということもありフジミキセキはオッズ2.0倍、圧倒的という程ではないにせよ一番人気に支持され、対抗馬は英ダービーで3着を取ったサキーなど多数いた。

 

「(ダービー馬って言っても所詮は日本馬だ。いくら強くても日本は遅れているし、ましてや英ダービーからエクリプスSを連勝するなんて不可能だ。だから自分達の腕さえあれば勝てる──なんて他の騎手は考えるんだろうな。だがな、こいつにそんな常識は通用しねえ)」

 

 創也は心の中でそう思いつつフジミキセキを見つめる。

 

「(フジミキセキが負けるとしたら競馬もやったことのない素人が騎乗して無理やり止めるか、落馬して失格になるか、故障して競走中止になるかくらいしかない。それほどまでに完璧に仕上げてきたんだ。フジミキセキさえいなければ勝てそうなジャイアンツコーズウェイ、今でこそ無名に近いが後の名馬になるだろうファンタスティックライト、カラニシ、そしてサキー……いずれも運が悪かったと思ってくれよ)」

 

 そして創也がフジミキセキに騎乗し、ゲートの方へ誘導し、ゲートに収まる。

 

 

 

【さあいよいよスタートしました! 日本のフジミキセキがエクリプスSを制するのかそれとも世界の壁に阻まれるのか、おっと、フジミキセキがハナに立ちました。フジミキセキがハナに立ちました! フジミキセキが先頭をとって続く後続勢達はそれを追いかけるように牽制しています】

 

「フジミキセキ、頑張れーっ!」

 

 美亜の娘である美希が応援し、その応援に応えるかのようにフジミキセキは後続を引き離していく。

 

「(これはまさか大逃げ? いやまさか馬至上主義のあの人が?)」

 

 美亜が疑問に感じ、他の騎手達も同様の疑問を浮かべていた。

 

 他の騎手が疑問を浮かべるのは逃げてペースを測る帯同馬つまりラビットという制度が欧州の間では認められており、そのラビットと同じようなことをフジミキセキにやらせたのだ。つまりフジミキセキは負けにいったのだと騎手達が思うのは無理もなく、思考を放棄した者もおりそういった騎手達に限って脱落していった。そう感じなかった騎手達は頭をフル活動させペース配分は当然だがその他諸々出来る限り対処していく。それこそが勝利に繋がるのだと信じて。

 

 しかし美亜が疑問に感じていたのはフジミキセキが勝つ負ける云々ではなく、大逃げという戦法は馬にとって負担が大きい。馬至上主義である創也がそんなリスクのある戦法をとらせるのかという疑問であり、美亜はその真相が知りたかった。少なくとも創也が騎乗した馬で大逃げを許したのはクラフトボーイ以来であり、そのクラフトボーイにしても余りにも強引すぎるからという理由で止むなくさせていただけである。

 

 騎手や関係者、観客全員が創也の真意を探りつつレースを進めていった。

 

 

 

【残り600mを切ってまだ15馬身差、15馬身差をどう縮めていくのか、ここから他の馬達はフジミキセキの暴走を止められるのか!?】

 

「(くっ、どういうことだ!? 全然差が縮まらない!?)」

 

 創也を除いた騎手達が焦り始めたその時、馬群から1頭の馬が飛び出した。

 

「行け! サキー!」

 

 1人の騎手がそう叫ぶとそれに応えるかのようにサキーは加速していく。

 

「(俺達を舐めるナっ! サキーは元々逃げ馬なんダ!)」

 

 フジミキセキとの距離を一気に詰めていき、後少しというところでフジミキセキに並びかけ、そして遂に捉えた。

 

【サキーだ! サキー先頭に変わってリードを広げにかかった! フジミキセキはピンチか!?】

 

 サキーがフジミキセキを捉えリードを広げようとすると後続の馬達も次々に迫っていく。

 

「(後は逃げ切れ、逃げ切ってさえしまえバ──!?)」

 

 その瞬間、止まったようにサキーの脚が鈍り、減速していく。ジャイアンツコーズウェイ、カラニシ、シーヴァに抜かれ最終的には5着と健闘した。

 

 

 

「(さあ次はどいつだ?)」

 

 フジミキセキ鞍上の創也が前を向きながらも後ろを警戒し、そう呟いた。

 

【さあ、続いてはカラニシ、カラニシとシーヴァがフジミキセキに突っ込んで来ます!】

 

「(やるねぇっ! だけどもうフジミキセキと俺は止まらねえ!)」

 

 創也がそう心の中で叫び、鞭を叩くとそれに応えるようにフジミキセキは更に加速していく。

 

「(ば、化け物か、こいつ……!?)」

 

 カラニシ、シーヴァの騎手二人が絶望し、そう心の中で呟き、フジミキセキとの差がみるみる開いていく。

 

「(もっとだ! もっともっと速く!)」

 

 創也のその思いに応えるようにフジミキセキは加速し続け、やがて後続馬達を引き離すどころか突き放していった。

 

 

 

【このまま先頭はフジミキセキ、いや一頭大外からやってきたぞ!】

 

 大外からフジミキセキを差すべくやってきた刺客、ジャイアンツコーズウェイ。まだフジミキセキとの差は5馬身以上あるがそれでもジャイアンツコーズウェイは迫ってくる。

 

「(たかが日本馬、されど日本馬、英ダービーを制した実力馬が弱い訳がない。そう認識しておいて正解だよ)」

 

 ジャイアンツコーズウェイの騎手が鞭を振るい加速させると残り2馬身まで迫る。

 

 ──何故だ、何故、縮まらない!? 

 

 ジャイアンツコーズウェイの心の声か、それとも騎手か、ファンかいずれにしてもフジミキセキとジャイアンツコーズウェイの差はそれ以上縮まることはなかった。

 

「あり得ない、あれだけ逃げたんだ。あんな大逃げで末脚を残しているはずがない!」

 

 ジャイアンツコーズウェイのファン達がそう判断するが騎手は違った。

 

 ──まんまとしてやられたということか。恐ろしい化け物め

 

 

 

 騎手達はフジミキセキのスタミナを甘く見ていたのだ。そしてそれはそのまま敗北に繋がると騎手は確信した。しかしそれこそが間違いだった。

 

 先ほどサキーに迫られた時に減速し、ギリギリのタイミングで加速。それによりサキーの騎手が早仕掛けしたかのように見えてしまった。カラニシとシーヴァの騎手はサキーが減速したかのように勘違いし双方共に実力を見誤った。早仕掛けをしたのはカラニシとシーヴァの騎手二人であり途中で力尽きてしまい、ジャイアンツコーズウェイに抜かれていったのが真相である。

 

 

 

「(だかが一度切りの策が成功したからといって俺達が諦めると思うな! ジャパニーズ!)」

 

 ジャイアンツコーズウェイが残り1馬身まで迫り、フジミキセキに襲い掛かる。

 

 だがその差は余りにもありすぎた。ジャイアンツコーズウェイを剛腕で扱いても何をどうやろうにも到達することはない。

 

 そしてジャイアンツコーズウェイとの差を広げ続ける一方で、遂にエクリプスSのゴール板が見え、通過した。

 

 

 

【フジミキセキ今1着でゴール! 2着にジャイアンツコーズウェイ、3着にカラニシ、4着にシーヴァ、5着にサキーが入りました。連戦連勝! 本当にこの馬は強い! 着差以上の勝ち方をしました、本当に強い!】

 

【素晴らしいですねカブラヤオーを彷彿をさせる見事な逃げ切り勝ちです。当初ハイペースで逃げ、迫ってきた馬を競り潰す、カブラヤオーと同じ走りをしましたね。まるでフジミキセキに乗り移ったかのような逃げでした】

 

 アナウンサーと解説者がそう感想を述べている中、創也は美亜の方を見る。そして美亜は一瞬だけ視線を逸らし、その後もう一度視線を合わせると何事もなかったかのように話し始める。

 

 

 

「馬主として言わせて貰うけど勝ち方をもう少しスマートにして欲しい。あれじゃスタミナ任せに勝っているだけでスピードを感じず種牡馬入りした際にも不都合が出てくるよ」

 

「すまん。KGⅥ&QESで勝てなきゃ元も子もないからあのレース展開になったんだ。KGⅥ&QESは特にスタミナ勝負のレースだからな。これくらいのことをしておかないと後々に響くんだ。それにスタミナがあるのは美亜も知っているだろ?」

 

「それはそうですけど……!」

 

 フジミキセキはエクリプスSで勝った後にKGVI&QESに出走する。そしてそこには世界現役最強馬モンジューがいる。現時点でモンジュー相手に消耗戦を仕掛けるなど愚策以外の何物でもない。しかしその消耗戦にいつなっても良いように今回のレース、エクリプスSであのような大逃げを取ることにし消耗戦に慣れて貰うことにした。

 

「(それでもモンジュー相手だとキツイか。いくらサードの血を引いているとはいえスタミナはそこまでではない。スピードは間違いなくクラフトボーイかナインティギアと同じレベルまで達しているんだがな)」

 

 フジミキセキのスタミナはサードの血を引いているからなのか、それとも他の要因があるのか不明ではあるがかなりのものを持っている。しかしモンジューやテイエムオペラオーといったスタミナを武器とする競走馬達に一歩劣り、どちらかというとスピードでゴリ押しするドバイミレニアムのような馬であった。故に今回の大逃げでスタミナがどれ程あるのか掌握し、スタミナ勝負になった際どのようなレース運びを見せるのかを確かめたのだ。

 

「まあ、結果オーライだ。これでエクリプスSは獲れたんだし」

 

「そうね。でも次はもっとスマートな勝ち方をしてね」

 

 美亜のその言葉に創也が頷くと、美亜が思い出したように告げた。

 

 

 

「そう言えば近々ナインティギアとクラフトボーイの評価のことで取材したい記者が訪れるみたい。私や父の方ではOKを出したけど貴方の方はどうする?」

 

「美亜やお義父さんがOK出したってことはほぼ強制みたいなものでしょ? それは構わないが取材するとしたら日本に帰国してからにして欲しい」

 

「もちろん。そのように手配するわ。今重要なのはフジミキセキと貴方ですもの」

 

 美亜がそう告げると創也は頷き、今日のところはホテルに戻るとした。フジミキセキの次走以降について話すためである。




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尚、次回更新は本日21時です
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