≫今回で初登場なので記載
≫1976年に創設された愛国で行われる芝10FのGⅠ競走。欧州では芝10Fの最強馬を決めるレースとも言え、日本でいう秋天のようなレース。勝者の中にはサドラーズウェルズ、ピルサドスキー、ファンタスティックライト、ハイシャパラル、シーザスターズ、スノーフェアリー、オーギュストロダンなどがおりその知名度は高い
・大逃げ
≫今まで逃げや大逃げについて解説してきたがここでも解説。というか陸上競技などの経験のない読者の皆様が誤解したまま読み終えてしまう為ここで解説して誤解を解いておく必要性がある
≫競馬で最強の戦法は先行、その次に差しとなり逃げと追込が同格、そして最も弱い戦法が大逃げである
≫史実のダスカのように一番前をずっと走っていれば最強というのは理論上間違っていないが、あくまでも理論上の話である。しかし諸君が1500mを走る時に最初の100mをどのくらいの速さで走るかなんてその時のコンディションによるだろうが大体ベストタイムを15で割った数値になるだろう。しかし大逃げの戦法は100m走のベストに近いタイムで駆け抜け、そのまま後続を突き放すということに近い。勿論そんなことをすればどんなにスタミナがある選手でも500mで力尽きるのが目に見えている。馬でも同じことが言え大逃げは一般的に最弱と言えてしまう
≫しかし大逃げで活躍する馬がいないかと言われるとそうではないのは諸君も存じているはずだ。あくまでも大逃げというのは戦法としては最弱なだけでその馬の能力が隔絶していれば話は変わってくる。故にサイレンススズカはGⅠを1勝しかしていないのに最強馬論争に加わるのは当然と言える
・ベストオブザベスツ
≫今回登場するので記載
≫史実の彼はドバイ所有の競走馬であり、イスパーン賞を勝利しているが英ダービー4着、QEⅡS3着1回5着1回、ジャックルマロワ賞3着、愛チャンピオンS3着2回ととにかく善戦マンのそれであり何かの間違いでアニメウマ娘に出てきたら間違いなくカノープス送りにされそうな成績である。一応マクトゥームチャレンジⅡというレースを連覇していることや血統面から見ても成長力はあったと思われる
≫父マキャベリアン、母父ダルシャーンという血統であり父マキャベリアンの競走成績からしてみると早熟馬であったが父としてドバイWC馬を2頭輩出し、母父としてもドバイWC馬を輩出したことから古馬になっても成長し続ける万能種牡馬であった。母父のダルシャーンはサドラーズウェルズと同期で3歳タイムレーティング2位という素晴らしい競走成績の持ち主であったのと同時に父としても優秀でミルリーフ系の血を広めるだけに留まらず母父としても英愛ダービー&BCターフ2連覇と凱旋門賞3着2回のブロンズコレクターのハイシャパラルなど多数の活躍馬を輩出している
≫そんなベストオブザベスツだが現役引退後種牡馬入りしているのは確かではあるが代表産駒がナスノジャムラットという2戦0勝の牝馬しか見つからずWikipediaや名馬列伝、優駿達の蹄跡といった日本のサイトから海外のサイトまで探したがこれ以上に詳しい情報がなかった。まあこれだけ探しても重賞勝ちすら見つからないというのは異常であるのでナイスネイチャのように種牡馬としては失敗に終わったと推測出来る。まあオマハやブリガディアジェラートのように競走成績が良かろうが種牡馬として失敗する馬はいくらでもいるし、成功する方が稀である。手厚くサポートしてようやく土俵に上がれるのだから競走成績がそこまで優れている訳でもない馬が後世に残せなかったのは当たり前と言え、サンデーサイレンスを牧場の関係者達が手放したのも肌馬を集められずとても成功する環境ではなかった為であり、むしろサポートなしで大種牡馬に成り上がったステイゴールドがおかしいだけである
KGⅥ&QESが終わり、一段落したフジミキセキ陣営だがとある陣営から挑戦状を叩きつけられていた。
【フジミキセキ陣営の皆様へ。私達が育て上げたドバイミレニアムとレースをしたい。馬場については芝、ダートどちらも可。距離は2000mの舞台で勝負したい。どちらが世界最強馬であるか決めようではないか】
ドバイミレニアムの陣営からフジミキセキ陣営に届いた挑戦状はそんな内容だった。
「これはまた随分と面白いことになってきたな」
「ええ、とても面白いですね」
そんな挑戦状を送られたフジミキセキ陣営だが特に動揺することもなくむしろ歓迎していた。
「美亜、どのレースにする? 元々こっちはドバイミレニアムと戦うことを想定してBCクラシックに出走すると決めていたんだ。それ以外に決着をつけるのか、それともBCクラシックのみで決着をつけるのか決めて欲しい」
「そうですね……仮に芝2000mのレースをするとしたらどこになると思いますか?」
「愛チャンピオンSだな。それ以外だとセクレタリアトSと香港カップくらいしかないな。秋天で外国馬が出られた*1としてもこっちが万全じゃないし、JCに出走する以上香港カップは諦めるしかない」
「ではこうしましょう。BCクラシックで決着をつけるが、その前哨戦としてこちらは愛チャンピオンS、凱旋門賞に出走すると宣言でもしますか」
「それで行こう」
そして愛チャンピオンS当日。
当初こそドバイミレニアム陣営やモンジュー陣営は参戦を表明していたが、双方ともに体調が良くなく代理の馬を出走させることになった。
「(代理の馬を寄越してきたのはまあいいとして、この2頭に関してはもう格付けが終わっているんだよな)」
その代理の馬──ジャイアンツコーズウェイとベストオブザベスツについては既に格付けが終わっている。
ジャイアンツコーズウェイはエクリプスSでフジミキセキの2着となっているもののその内容は惨敗といってよく、一度きりの対戦だったとはいえジャイアンツコーズウェイがフジミキセキよりも格下であると誰がどう見ても感じ取っていた。
「(ドバイのベストオブザベスツは英ダービーで掲示板に入っているから弱い訳じゃないんだが大きな所を勝っていないし、何よりも英ダービーで格付けは終わっている)」
ベストオブザベスツもフジミキセキと英ダービーの舞台で対戦しており、その差は明らかである。
「(とはいえジャイアンツコーズウェイはこの中でGⅠ競走2連勝と油断出来る相手ではない。フジミキセキさえいなければGⅠ競走4連勝していたはずだ。格付けが終わっているとはいえ油断は出来ない)」
創也が警戒したのはジャイアンツコーズウェイであり、油断出来ない相手だと判断し、このフジミキセキの対抗馬にした。
そんな風に思考しているとフジミキセキが舌を出し、創也を舐め始めた。
「あっ、こらっ!」
──へっへーっ。気持ちいいでしょ?
お茶目なフジミキセキに創也が翻弄されているとゲートインの号令がかかり、ついに愛チャンピオンSが始まった。
【さあ愛チャンピオンSスタート、まず始めにいったのはやはりこの馬、フジミキセキ、今回は2番手に差をつけ、そこそこ突き放す形でハナを切ります】
スタートは互角で先行争いとなったがやはりというかフジミキセキがハナを切り、それに続く形でジャイアンツコーズウェイ陣営が用意した逃げ馬アポロヴィクトリア、そしてその後ろにジャイアンツコーズウェイ、ベストオブザベスツが並んできた。
「(まあこの展開は予想通りだな)」
ジャイアンツコーズウェイ陣営がラビットを用意してきたこと、そしてジャイアンツコーズウェイの後ろにベストオブザベスツがいること、ありとあらゆる展開を予想して創也は対策を立てていた。
「(体内時計は平均より少し速めだが問題ない。何せこいつは──)」
──サンデーサイレンスの孫なんだからな
かつてサードプレジデントの唯一のライバルと評されたサンデーサイレンス。そんなサンデーサイレンスが得意としたレーススタイルは逃げであり、古馬になってからのレースは圧巻としか言いようがなく、BCクラシック連覇という快挙を成し遂げた。
しかしながらその逃げ脚を持った馬は一頭を除き現れずにいた。その一頭こそ影なき逃亡者ことサイレンススズカであり、この馬はサンデーサイレンス産駒でもあった。その為サンデーサイレンスの現役時代を知っていたファンからは「サンデーサイレンスの再来」「栗毛のサンデーサイレンス」などと謳われたほどだ。
「(ススズはサンデーサイレンスからインスピレーションを得て、スピードとスタミナを両立した逃げ馬になったが、フジミキセキは違う)」
サンデーサイレンスを祖父に持つフジミキセキだが、昔はサンデーサイレンスのような逃げ馬にはなっていなかった。それは血統による影響もあるだろうがそれ以上に創也が抑えていたからだ。
基本的に逃げとは先行以下の戦法が取れない馬が取る最弱の戦法として知られている。
それというのも逃げ馬になる馬は何かしらの欠点を抱えていることが多く、カブラヤオーは馬込みが苦手で逃げを選択せざるを得なかったし、ダイタクヘリオスや創也が騎乗したクラフトボーイなどはスピードがありすぎるが故に抑え切れずに逃げ馬となってしまった。
その為か馬群が苦手という馬も多くこれは競馬をするにあたって大きなデメリットとなる。その理由は人間が走った際に余程能力が突出していない限りは大体同じペースで走ることで走る指標となりそれは馬も変わらない。むしろ集団で生活する馬の方が同じペースで走るのはごく当たり前のことであり、馬群が苦手というのは異端児であると言えてしまう。
馬群が苦手でも追込という選択肢が存在するが切れのある末脚がある訳でもない馬に追込をやらせても勝てない。逆に言えば切れる末脚さえあれば追込に転向することが出来るということでもある。
この様に逃げ馬はとにかく欠点が多いし、スピードとスタミナが両立している馬でなければ勝つことは非常に難しい。
しかしながらサンデーサイレンス、サイレンススズカのようにスピードとスタミナが両立した場合、逃げというのは理論上最強の戦法となる。
逃げ馬は馬群に揉まれない、更にマークされても突き放してしまえば問題なく、最後の直線で再加速すれば誰も追いつけない。
そのサンデーサイレンスのスピードとコーナーの加速力、サードプレジデントのスタミナと切れのある末脚を併せ持ったのが互いの孫であるフジミキセキであった。
故になるべくしてなってしまったのが大逃げのフジミキセキであり、意図して作られたものではない。
「(KGⅥ&QESで勝つ為の大逃げがまさかこいつのレーススタイルになるなんてな。まあサンデーサイレンスに乗っているみたいで楽しいといえば楽しいんだがな)」
創也にとってフジミキセキの大逃げのスタイルを確立したのは誤算だった。それまではどこでも対応できる自在脚質が取り柄であったのが、大逃げという戦法に固定されてしまったからだ。
しかし創也はフジミキセキの脚質を固定したことに後悔はしていなかった。
「(この馬には先行や差しといった他の脚質の選択肢はない。クラフトボーイやサイレンススズカのように骨は脆くないし、逃げようと思えればどこまでも逃げ切れる。だからこそ、ゾーンにも入り易い)」
創也がフジミキセキと一体化する感覚を覚えるだけでなく、周囲の景色が自分達を除いてモノクロになり静まり返ると共に僅かな動きも見逃さない。
創也がゾーンに入った瞬間だった。
「(いつ入っても気持ちいいもんだ。サードが現役の時にゾーンに入れたらと思うといつも惜しく思う)」
そして最終直線に入り、フジミキセキが更に突き放しにかかる。
【これはもう完璧だ、フジミキセキが先頭のまま、千切った千切った千切った!】
ジャイアンツコーズウェイ、ベストオブザベスツ以下出走馬達が足掻くがフジミキセキの豪脚になす術なく、いとも簡単に千切られてしまう。
そしてフジミキセキがゴール板を通過すると共に大歓声が響いた。
【完勝、フジミキセキ無敵のGⅠ6連勝! 強すぎる! 今年の英ダービー馬は余りにも強すぎる!】
フジミキセキの11馬身差という圧倒的な大差勝利に観客が湧き、実況も興奮し思わず立ち上がり、解説も言葉が出ない程だ。
「フジミキセキ、やったぞ。お疲れ様」
──ありがとう、人間さん。でも油断せずにいこう
そして創也も興奮し、フジミキセキの勝利を祝うように撫でて褒めるといつものお茶目は鳴りを潜め大人しくしていた。しかしその目は鋭く、次のレースへと向けられているようであった。
「月城騎手、今日のレース愛チャンピオンSについて一言お願いします」
「今回は勝てて当たり前でした。何故ならフジミキセキが万全でしたし、私自身も万全でした。負ける要素がどこにもありませんでしたね。ここまで仕上げてくれた陣営やフジミキセキに感謝の言葉しかありません。以上です」
多くの記者達が創也の謙虚さに感心しながら、その謙虚さに付け込み続けて取材しようとするが既に創也達の姿はなかった。
「(相変わらず謙虚なのに取材が嫌いなのは何故なんだ? あれほど謙虚な姿勢を見せているなら記者や読者達の受けもいいはずなのに……)」
記者がそう疑問に思うのは何ら不思議なことではなく、あれほどの選手ならばもっと傲慢になってもおかしくはなかった。
しかし創也が取材を嫌い、記者達がそれを感じ取るのはこういった時である。インタビューが終わるとそそくさと帰ってしまう為マスメディアを通しての創也の印象は「クールな騎手」として知られている。
実際には自分の名声よりも馬を優先する馬至上主義者であり、ラガーレグルスの再審査が認められた場合は自分のお手馬でもないのに自分のように喜んだりと熱血な部分もあり、また牧場の息子という観点から競走馬達を実際に取り扱う厩舎に敬意を払っている為にそういった馬達がレースを勝つと素直に喜ぶ。
しかし創也がインタビューを簡潔にする理由はマスコミや競馬民に嫌われてもどうとでも思っていないからである。
創也が何故そのような性格になったのかといえば、かつて月夜牧場で育った際に創也が自分で手掛けた素質馬がいたのだが悪意あるマスコミや競馬民によってその競走馬は故障し、日の目を見ること無く引退してしまった。それ以来創也はマスコミや競馬民に対して不信感を持ち塩対応を取るようになり、現在に至る。
そんな創也とフジミキセキが凱旋門賞へと向かう中、愛チャンピオンSに勝利したことで世界中から注目を浴びる存在となった。
その頃日本ではテレビ局が競馬ブームを感じ取り、急遽特番を組むようになっていた。
流石に馬に密着取材などということは出来なかったが、それでも見学不可能であるサンデーサイレンスの映像が流れたり、牧場での映像が流れるなど競馬ファンが見たら絶叫するレベルのお宝映像が毎日のように流れ大きな話題を呼んだ。
そしてその注目度は凱旋門賞が近付くにつれ増していき、遂に日本時間ではその日の夜に凱旋門賞の発走を迎えようとしていた。
このお話をお楽しみ頂けた、あるいはこの小説自体をお楽しみ頂けたならお気に入り登録や高評価、ここすき、感想の方を宜しくお願いいたします。
また感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。
尚、次回更新は明日0時です