「さて……と、これからどうしよう」
憎たらしい程に広く青い空を眺め、くしゃくしゃな千円札をポケットに突っ込みながら、僕こと北白川トウチは考えていた。
いや、半ば呆然としていたという方が正しいかも知れない。
何しろ齢六歳にして家と家族と金を失い、残っているのは返り血に染まった服と貯金箱に貯めてあった一万二千円のお年玉のみ。
多分人生的には詰みに当たるだろう。
しかし、僕はまだ死にたくない。
何がなんでも生き残りたい。ので考えなければならない。
多分もうすぐ公安がこの場所にやって来るだろう。
今ここで出来る最善策は……
「まあ公安に拾ってもらう事だろうな……でもな……」
それが出来ない理由がある。
『まあそれをしたら私はトウチを『つまらない人間』と見なし、殺さなければいけなくなるからな』
「……分かってるよ」
そう、契約違反になってしまう。
僕はコイツを出来るだけ気持ち良く暴れさせなければいけない。
「うーん……まあ取り敢えずこの場から離れるか」
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「どういうことだ……?」
公安退魔特異四課に所属するデビルハンター、早川アキは困惑していた。
なぜなら今回、悪魔発生場所近くの住民の通報を受けてその悪魔の場所まで向かったのだが、肝心の悪魔がもう既に死んでいる上、被害も死者二人に家が一軒崩壊しているだけなのだから。
マキマさんによれば、今回の悪魔は黒光りするアイツへの恐怖から生まれた、『Gの悪魔』だという。
Gの悪魔は、人間が恐怖を抱く生き物としては真っ先に挙げられる存在なので、その辺の悪魔に比べたら別格に強いだろう。しかも、生命力が強いので、そう簡単には死なないだろうと言われ、大人数でその悪魔の駆除に臨んだ。
だから……多少の被害が出ることも覚悟していた。
「……なんか、拍子抜けだね」
と、姫野が言う。
「……そうだな」
同調する。
……拭いきれない不安とモヤモヤはある。でも、それでも、自分達の誰かが犠牲にならなくてよかった。
「……取り敢えず、マキマさんに報告だな……」
肩から力がシュルシュルと抜けていく。
「戦わなくていいのか」と身体中が気付いていく。
「ウッソだろおばちゃん!?なんかの見間違いなんじゃないのか!?」
「!?」
突然の大声に、一瞬身体中が戦闘態勢に入る。
振り返ると、そこには聞き込み調査をしていた荒井とコベニが信じられないという顔で老婆に顔を近付けていた。
少し気が抜けた、だがどうしたのだろう?そう思い、荒井に話を聞きに行く
「どうしたんだ、荒井」
「いや、その……このおばあさんが変な事言うからさ……」
「変な事?なにそれ」
「え、えと……その……」
「いや、でも嘘かもしれないし……」
「なんだ?勿体ぶらずに教えてほしい」
『…………』
「ろ、六歳の男の子が……あ、あの悪魔を蹂躙していたって、言ってます……」
「……は?」
「……え?」
「し、しかも……悪魔を使役していたとか……」
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「……そんな馬鹿な!!」
「しかし、見間違いにしては目撃者の数が多すぎる……!!」
「……たしかに、悪魔同士の争いだったらもっと被害が広がっている筈だけど……だからといって……」
「……まてよ、あの破壊された家は三人家族で、子供が確か……六歳とさっきのおばちゃんから聞いたぞ」
『は!?名前は!!』
「確か……『北白川トウチ』だっけ……」
「北白川トウチ……おい!!迅速にそいつについて調べあげろ!!」
「え、でもその子がそうとは限らないんじゃ……」
「死体がない!!」
「え!?」
「あの家の瓦礫からは死体が2つしか出てきてないんだ!!しかも大人しか!!」
「ええ!?」
くそ、情報量が多すぎて訳がわからない……だが、少なくとも彼は悪魔と契約している。しかもその辺りの悪魔とは比較にならないほど強い悪魔と……なんとしても捕まえなければ……!!
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「バッチカン!!うう……どこかで誰かが僕の噂をしてるのか……?」
『随分変わったくしゃみじゃないか……』
文才を……文才をくだしゃい……