俺は転生していた。
最初の記憶は、
劈くような雨音だった。
次に天井が見えた。
知らない天井だと、
嘯く。
獣の耳のような物を頭につけた異国風の男女が、
顔を赤らめこちらを覗き込んでいた。
でかい。
そう思った時には、
俺はまるで木の葉を持ち上げるが如く軽快な動作で、
体を上げられた。
平静が決壊した。
恐怖が爪先から天辺まで駆け巡る。
次の瞬間耐えきれず泣き叫ぶ。
情けなさが込み上げる。
獣の様な頭飾りを揃ってつけた男女は、赤らめた顔のまま恐怖に駆られ泣き叫ぶ俺をじっと、
見つめ笑みを浮かべ続けた。
泣く事は精神を落ちつけると言う。
なるほどと、
実感した。
落ち着きを取り戻した俺は、
顔をあちらこちらに向けようとしたが頭が動かない、
体が動かない事に気がついた。
SAN値チェックの必要があるな…
しかし、
この時俺の心は平静を維持していた。
と言うのもこの状況を知っているのだ。
例外無く体験した人はいなかった、
けれど大体のオタクが知っている。
知らない天井で、
頭に獣の耳をつけた男女がいて、
体が動かない。
日本のサブカルに詳しい人ならどんなに察しが悪くても気づく、
転生だ。
転生したのならば話は早い、
実際に起こるとは皆決して思わないが、
一度は妄想する事柄だ。
チートをして自分より程度の低い連中を一方的に下す。
人間所詮は、
こういう行いは表面上は自分が格上から同じ行いをされるのが怖くて、
綺麗事やお為ごかしを宣うものだが、
世界中の人々が自分より程度が低くて、
自分に危害を加えれないとなると、
平然とそういう行いを誰もがし始めるだろう。
俺はしたい。
チートでウハウハの生活を送りたいと思っている。
どうせここまでテンプレートどうりならば、
チートの一つや二つは出来てもおかしくない。
俺はそういう行いをしたい。
前世は皆暗黙の了解に縛られていた。
私はあなたに危害を加えませんので、
あなたも私に危害を加えないでくださいねと。
私はあなたに迷惑をかけませんだから、
あなたも私に迷惑をかけないでねと。
破る奴もいたがそいつらはみんななんらかの不都合が降りかかった。
今それがなくなるかもしれない。
正直窮屈だった。
そんなのぶち壊して自由に生きたい。
そのために俺は頑張ろう。チートが出来無くても何にも縛られない存在になろう。
転生したので本気だす。
変な決意をしてしまったが、
赤ちゃん生活は楽しかった。
据え膳下げ膳に泣くとクソの世話まで風呂の世話まで、
王様になった気分だ。
生来猫好きであった為か、
可愛らしいミミやカッコいいミミを見つけニヤニヤする、
という趣味を見つけ退屈もしなかった。
初めての子供なのか、
父や母は、
俺をかまい倒していた。
この気のいい猫耳達を見ていると、
子供が前世を持っている化け物だという事が気の毒に思えて来た。
優しくしてあげようと、
決意した。
何より生まれる前からずっと俺は猫が好きだ。
体が動ける様になったので、
かねてから計画していたチートを試そうと思う。
チートと言っても大した物ではない。
ハイハイだ。
赤子は自分を鍛えようとハイハイするだろうか。
いやしない。
周りに興味を持ち動き回るのだが、
好奇心を満たしたのならばすぐに止まるし、
疲れたら寝るかベソをかく。
ここがチートのしどころだ。
一般の赤ちゃんにはない精神力計画力行動力にて、
計画性のあるハイハイトレーニングを実施しよう。
カサカサと歩き回る。
そんな俺を見て。
両親は度肝を抜かれた顔をした。
それもそうだろう、
今まで手の掛からなくて大人しくしていて病弱なのかなと思いかけたところに、
高速のGもかくやという移動だ。
驚いた時のミミや尻尾は可愛かった。
その後疲れて寝た。
次の朝もカサカサと動き回る。
離乳食を食べて寝る。
来る日も来る日も続けると体は出来ていき、
掴まり立ちができる様になった。
この段階になると柔軟を開始する。
実は前世では体が硬く、運動の前に柔軟をするのだが、
のたうち回る猿みたいと友人によく言われた程だ。
個人的に苦い記憶なので今度こそは柔軟な体に育てようと思う。
柔軟を開始して随分と経った。
掴まらず歩けるし走れる様になった。
母や父の尻尾を追いかけるのは楽しい。
それはさておき柔軟の成果が出てきた、
猫の様に顔の大きさの穴ならば通り抜けれる様になったし、
猫の様に壺に入って液体化に成功した。
すごく落ち着くので猫獣人に生まれ変わったら一度は試してみるのが吉だろう。
お気に入りの場所が増えた。
しかし液状化した俺を見て父母はギョと目を見開き、
お気に入りの壺を壊そうとしてきた。
慌てて出て壺を庇う俺に向かってまたギョロとしたままの目を向けて狼狽を露わにしたが、
何か考える様な仕草を見せたのち、
疲れた様に立ち去った。
猫は液体になれる事は常識であるのでそれ以外だと思うが、
何に対して驚いたのだろうか?
わからない、
今後の課題が増えたなと、
思いながら落ち着く。
壺へと入り液状化した。
父と母は俺に向かってたまに訳のわからない行動をする。
猫耳が生えているので文化や生活が違うというのがわからない最大の理由なのだろうと辺りをつけたので、
親達を観察したり真似をしたりする事に決めた。
先ずは、
父親だ。やましい事は無いので堂々と観察する。
観察はしていなかったのだが大体の父のルーティーンは知っている。
朝早くに起きた父は、
まず俺の柔軟を見る事になる。
子供の遊びと思っているのかいないのか、
一緒にしたりしなかったり、
母にちょっかいをかけたりする。
俺にちょっかいをかけた事があったが、
白けた目を向けてじっと見ていると柔軟の時にちょっかいを俺にかける事がなくなった。
立ち去る父の後ろ姿は、
小さく見えた。
朝ご飯の時間が来ると、
母が作った料理を食べるところに父が並べる。
手伝おうと運ぼうとするとそれとなく母に止められる。
わけがわからない。
父が食べ始めるまで手をつけてはいけないらしく、母にまたそれとなく止められる。
これが朝ご飯の常だ。
朝ご飯の後は父がどこかに剣を持って出かけたり家にいたりと日によって変わる。
家にいる日は飛び跳ね回る俺を見ていたり一緒に跳ね回ったりする。
父の揺れ動く尻尾と耳ははカッコかわいい。
お昼どきになると昼ごはんがでてくる。
昼ごはんは時期によって無かったりあったりする。大体は俺の産まれた時期である、雨が絶え間なく降る頃に
昼ごはんが無くなる。
昼ごはんが終わった後も朝ご飯が終わった後と大体一緒で変わり映えは無い。
そして夜ご飯が用意されて食べて。
動き回って毎日必ず夜にくたくたなっている俺と一緒に柔軟して寝る。
それが父のルーティーンだ。
まあ母も似た様な物だろう。
さて、
本題に入ろう。
父母が俺に向かって訳の分からない行動をするのは
朝ご飯後と昼ごはん後だ。
朝ご飯後と昼ごはん後の行動は一緒だ。
俺に向かってたまに腕を振って変なポーズしたり何事かを言ったりするので、
まあ何してるか分からないので首を傾げたり
にゃんと言って擦り寄ったりすると、
難しそうな表情を浮かべたり苦虫を潰した様な表情を浮かべたり。
果てには、
我慢し切れずといった感じで泣くことすらある。
訳が分からずとも泣いているので擦り寄ったり頭を撫でたり、
するのだが泣きながら抱きついてくる。
どうすればいいのかさっぱりだ。
原因もわからない。
柔軟を始めた時期からそういう事が増え出したのだから、
柔軟が原因だと考えて柔軟をしなかったら
両親はキョトンとしていたので柔軟は原因と違うらしいし八方塞がりである。
まあ未だにそんな感じだが、今回の観察でハッキリとするかもしれないし
観察に専念する事にした。
毎日のルーティーンを続けながら親達を観察する。
絶対に目を離さないのだ。
両親は違和感にすぐに気づいた。
そして俺が見ている事に気がつくと。
母と父は何事かを言い合い俺に向き直って腕を振ったり何かを言った。
俺は柔軟を中止し、
親を注視しながら。
声の真似をしたり腕のポーズを真似したりする。
結果は劇的だった。
父と母は喜び勇み俺に抱きつき跳ね回った。
今日の俺の昼ごはん前の飛び跳ね周り動き回る時間が消えた。
親の声を真似したするだけで親が笑顔になって撫でてくれるのである。
俺は自分のケモ耳から伝わってくる感触の心地よさに嬉しさと充実感を覚えた。
しばらくの間そうしていると電撃が走ったかの様な感覚を感じた。
父と母は、指を俺に向けるポーズをしながら何かを言い続けている。
感覚に任せて自分へと指を向けるポーズをし父母が言っている事を言った。
父と母は先程より大きな声で喜んだ。
そうか!
ピッタリとハマった感覚。
彼らは俺に言葉を教えようとしているのだ。
今までなんてバカな事をしていたのだろう。
猫は喋らずにゃんだけで感情を伝えるが、
今の俺は獣人だ!
必ずしもにゃんだけ喋らずとも良いのだ。
今日初めてにゃん以外喋った甲斐があった。
そう両親の顔を見てしみじみと思った。
次の日、
今までは親の行動に頭を悩ませて生きてきたが、
今日はそれが無いとても心地の良い気分で目覚める事が出来た。
そして昨日の内にわかった事がたくさんある。
固定観念とは怖い物だ。
頻繁に呼ばれる固有名詞すら分からなかったのだから。
まずは俺の名前だ。今までは名前があることすら気づかなかったので
なんか感慨深いものがある。
かなり溜めよう
………………
ギュユスナだ。
自分の名前とはいい物だなとしみじみ思う。
そして俺は、
たくさんの言葉を覚えた。
この頭は物覚えがいいらしく、
半日で歳相応の日常会話程度はおぼつかなくなった。
「とうさん、かあさんおはようギュユスナげんきですにゃ。」
「……!おはよう!ギュユスナ!早速みんなで朝ご飯を食うぞ!」
「ふふふ……おはようギュユスナ。」
父と母との初めてのおはようである。
すごく新鮮な気持ちだ。
「ねぇギャラース」
「なんだい?パーウナ」
「うちの子、天才じゃ無いかしら。」
「……確かに1日でこれだけ言葉を覚えたが、今年で5歳になるのに今の今ままで言葉の存在に気づかなかったんだぞ。」
「ごめんなさい、早とちりね。」
……親が何やら悲しい事を言っているが無視しよう。
今までのせいか、
俺の両親は子供の前で口を憚る事を忘れてしまったらしい。
生活が劇的に変わった。
一番大きかったのは、
外に出してくれる様になった事だ。
今までは気苦労ばかりかけていた様で、
母や父が家にいる時間は半減した。
よって父や母とにゃんにゃん出来なくなった俺は、
外はにゃんにゃんを求めて旅立つ事に決めた。
外で他の猫耳奥さんや犬耳奥さんと洗濯をしている母へ遊びに出かける事を伝えて、
家のある木を飛び降りる。
スリル満点だ。
名探偵兼殺人鬼じゃ無い方の作家でも無い方のフューチャーの方のコナンの様に衝撃を身体中に受け流して着地。
いい出来である。
Vサインを母へと示しクラウチングスタート。山を越え谷を跳び僕らの街へとヘヤウィーゴー。
やややややっふぅー!
順調に体は育ってきてる様子。
計算通りである。
獣人がいる時点でこの世界はすでになろうの系統を継いだファンタジーなのである事は自明。
往々としてこういうファンタジーは
修行したら人外の強さを得る事だろう。
わくわくが止まらないというのも、
前世の中学生の頃足が速い事が自慢だった俺は、
足がもっと速くなりたくて
目標を見つけようと、人間が世界で最も早く走った記録がないかと調べた。
なんと世界一と自分とでは一桁秒しか差がなかったのである。
もっと大きな違いを想像していた俺にとって驚きと落胆をもたらした。
人間そこまで差はなく。
一番と少し足の速い一般人とは差がそれほど生まれず。
極めれば一般人を大きく切り離すのはフィクションの中だけであったのである。
そういう事を経験した前世もあって今すごく楽しい。
伸び代の終わりは見えず、
どこまでも行ける、そんな希望に満ちていた。
その時だった。剣を持ち朝ご飯を食べて家を早々に出かけた父が笑顔でついてくるではないか。
余裕がありそうな顔を浮かべている。
わくわくがコンコンと湧水の様に湧き出て溢れそうになる。
父は自分より遥かにすごい事が分かる。
つい先程かけて回った時のこの村のケモ達は俺について来れなかった。
驚きをあらわにしていた。
俺が子供だから驚いていたのではない様に感じた。
速いから驚いていたと、言葉に気づいた時の直感が教えてくれる。
しかし父はついてきてもなお余裕がある。
嬉しさが溢れて父へと抱きつく。
父は俺を取り落とす事なくヒシッと抱きしめて宙に投げた。
さすが俺の息子だ的な事を大声で叫んでいる父にやがてキャッチされた。
もみくちゃにしてくる父へとVサイン。
今後が晴れやかに健やかに流れていくと俺は確信した。
またしばらくすると変化が訪れた。
父が俺へと向ける期待が膨れ上がっているのは、
拙い言語理解でも確実な程溢れ出てた。
最近は剣を俺に渡し打ち合う様になったし、
聖獣様がなんだのと訓示を垂れ流すbotと化してきた。
父は尊敬できるし目標の一つだが最近鬱陶しくも感じてきた。
悪い意味はなくいい意味でも遠慮がなくなってきたのだろう。
これも言葉のおかげ、
聖獣様より言葉の神様の方を俺は信頼している。
ので宗教の話はNG。
そんな事を伝えたら村八にあってしまうという事を知れたのも言葉のおかげ。
しかし聖獣様より言葉の神様の方を俺は信頼している、
ので宗教の話はNG。
以下無限ループ。
そして、
母は張り詰めていたのがとけた様で、
以前より怠惰な所が目立ってきた。
猫ぽいので気に入ってる。
ちゃんと家事は熟すし今までが迷惑をかけてきたのでモーマンタイと認識している。
親孝行は早めからともいうからね。
と、
まあ色々と語った物の最大の変化は、
村のケモ達の子供と遊ぶ様になった事だ。
嬉しい。
俺、
猫、
大、
好き。
犬も好き。
可愛い盛りの子供だらけで、
暴れん坊から真面目ちゃん不思議ちゃんにおとなしめな子ごっこ遊びが好きな子に剣を振り回す子、
退屈はしないだろう。
特に仲良くなった子がいる。
暴れん坊のギレーヌちゃんだ。
言葉は喋れない所構わず暴れまくると厄介者感満載な子だが、
所詮は子供だ。
ちょっと大人な対応と圧倒的力の差ですぐに仲良くなれた。
後、ギレーヌちゃん猫って感じがして好き。
ギレーヌちゃんは言葉が喋れないが、
俺もかつては言葉を知らなかった身ではあるゆえか、
言葉を使わず感情を伝えるのが大の得意。
伝えたい事ややりたい事は行動で示せるので、
一緒に遊ぶ事が出来た。
俺と遊んでいる間も通常時よりも減ったものの、
色々と問題を起こすので村での厄介者扱いが治る事がなかった。
父もギレーヌと関わるのはよせと言うほど、
ギレーヌは村での居場所がなかったのも一緒に遊ぶ動機になっていたのだろう。
俺も嫌われそうではあるが、
ケモ耳に向かってイライラしたり出来ない性分からか父と一緒に魔物退治に赴き始めたからか、
俺自体はいい奴と認められている。
かもしれない。
酷い事を思っている自覚はあるが、ギレーヌちゃんは
贔屓目に見てもかなり酷い乱暴ぶりだ。
前世と力と猫を愛する心がなければ仲良くなる事はなかっただろう。
ギレーヌとばかり遊んでいるわけではないが、
ギレーヌと遊んだり剣の修行したり魔物を大人達と一緒に倒したり母の料理に舌鼓を打ったりと過ごしている中。
事件が起こった。
昼ごはんが無くなる時期に、
つまり食べ物を獲ることが困難な時期に、
ギレーヌちゃんが食糧庫への強盗を働いたのである。
昼ごはんが無くなる時期はとても大変だ。
雨は鳴るように降り注ぐし、
森は水浸しになるし、
食料生産は落ちるし色々と大変で、みんなで乗り切ろうとしている時期なのだ。
普段偉そうにしている村の人達が集まって裁判が行われた。
そこには
父も俺もいた。
ギレーヌは友達だ。
ギレーヌを擁護しまくった。
俺はこの村ではなぜか、
地位が高い。
時たま決闘を申し込まれるのでそれに勝ち続けていたら
そうなった。
しかし、
今回ばかりは
俺の地位が通じない様だ。
ギレーヌは未だ言葉を喋れない。
ギレーヌは未だ暴れ続ける。
最近のギレーヌは実の兄にも見放されていた。四面楚歌とは正にこの事だろう。
周りの状況に頭を抱えた。
俺は後悔した。
ギレーヌとは遊ぶだけでなく躾をちゃんとするべきだったのだ。
俺のしてきた事は猫を多頭飼いをして周辺近所に被害をもたらしていたに変わらない行いだ。
ギレーヌを対等の友達とは思うべきではなかった。
周りの普段偉そうにしているケモ達の弾糾は俺にそう思わされた。
しかし、それでもギレーヌは友達で遊び仲間だ。
彼女がどれだけ集団生活に向かずともどれだけ他人を蔑ろにするクズやろうでも。
それは変わらないのだ。
改めてギレーヌの恩赦を願った。
その行動が身を結んだ。
ギレーヌは本来裸の状態で檻に入れられて水をかけられる刑罰に処される予定だった。
それはあまりに酷い行いだと俺は知っていた。
ギレーヌは水浴びが大の苦手なのだ。だからいつも臭う。
ギレーヌは水が一番苦手なのだ。
一度一緒に水浴びへ行った時の反応は今でも夢に出る。
ギレーヌにとってその刑罰は地獄の苦しみにも等しいだろう。
流石にその刑罰が最も偉そうなケモから言われた時は、周りもどよめいた。
彼らも知っているのだろう、裸にむかれ冷水をかけられんことへのギレーヌの恐怖心を。
だからといってもギレーヌにはそれくらいしろと思うものが大半であったのがギレーヌの普段の行いを想像させられる。
ギレーヌはまだ子供なのに。
話はそれたが前述した通り恩赦を願った俺の行動は身を結んだ。
その恐ろしい刑罰は俺が真剣に願ったためお流れになった。
しかし罰は与えねばならぬと前置きを言う最も偉そうなケモに嫌な予感がした。
しかし止まれない止まらない。
沙汰は下った。ギレーヌは昼ごはんのでない時期に来てしまっていた旅の剣士に預けて村を追放になった。
旅の剣士は快く受け入れたらしい。
その日友達を1人失う事になる俺は悲しみに暮れた。
追放なのでまた会えるかもしれないが、それが
幸運にも実力にも恵まれてやっと叶う事だとわかっていた。
初めての泣き寝入りだった。
そして思い出した。
何者にも縛られない、そんな者になるためチートをして鍛えていたのだと。
父と魔物退治に赴くうちに忘れてしまっていた。
今の俺の強さは父を越えてこの村では一番だろう。
なので、
向上心がなくなっていた。
楽な魔物退治を続けたせいだ。楽に父を越してしまって慢心したせいだ。
それはチートを行いやっと出来た事だと言うのに。
未だウハウハな生活は送れてなんかいないじゃ無いか。
この村を出よう。
そう決意する事にそう時間は掛からなかった。
昼ごはんのでない時期が過ぎた。
ギレーヌは剣士につられ旅立ち消えた。
今、
俺は村の郊外に居た。
父や偉そうなケモ達が立ちはだかる様にしている。
「父さん、俺は村を出る」
「聖獣様と皆はどうする。ドルディアの戦士は聖獣様と皆を守るのが使命だと教えただろう……」
偉そうなケモ達は黙っている。
「……父さん達が居たら十分さ」
「そうか」
父は剣を一見緩慢に見える動作で引き抜いた。
俺もそれに倣う。
父を越えたと言ったが実際に戦った訳では無い。父の苦戦する魔物を、
俺は苦戦せず瞬殺出来るという事から父を越えたというだけだ。
無言で突っ込んできた。
簡単に対応できる速度だ。
剣を振り抜く一歩手前で、
柄へと下段から振り上げる。
手に傷を負い剣を取り落とし、顎に切先が当たって父の歩みは止まった。
しばらくその状態でいたのち、
離れた。
村の医者が父の怪我を魔術で治す。
「また会う日まで」
そう言う俺を追いかけるものはおらず、
声をかけるものもいなかった。
改行についてのアンケートです。読みやすい方に変えようかなって思ってます。
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一話二話の様な改行がいい。
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三話四話の様な改行がいい。
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どちらの改行も見づらい。
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どちらの改行でも良い。