ドルディアに生まれた転生者   作:キ65

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聖剣街道とミリシオンと親子喧嘩とお兄ちゃんとシーローン王国と妹と龍神

 雨季はあっという間に明けた。あの後も、ルーデウスが魔物の巣ごと村を凍らせたり、聖獣様が誰かの手引きで聖樹を抜け出してルーデウスと密会しに行ったり、ミニトーナとエリスが喧嘩したり事件はあったものの穏やかな三ヶ月間だった。

 

 里帰りとミリス大陸入りを果たせた俺含めたルーデウス一行は、俺がかつて通った聖剣街道をギースをお供に行く事となった。

 

 

 俺一人の時は直ぐに抜けてミリシオンに直行した聖剣街道であったが、パーティを組んで向かうと違うものが見えて来た。

 

 

 道中はルーデウスは食べれる草をとってきて、ギースがうまい料理を出して、ルイジェルドがジジ臭い豆知識を話し、エリスと遊ぶ。

 

 いろいろな事をしながらなので進みをゆっくりとしたものだからか、聖剣街道に物を売りにきた他の獣族達や、定期的にある野宿スペース、眉唾物だが七大列強と言う世界超人番付石などの、新たな気づきを得られた。

 

 この旅は一度までは体験できなかった、たくさんの発見がある聖剣街道での移動になった。楽しいと時間が過ぎるのがあっという間と言うがその通りで、実際は数ヶ月の旅であったが俺の体感三週間くらいで大森林を抜けた。

 

 青竜山脈を貫く聖剣街道なので青竜山脈をもちろん通ったのだが、今回も青竜とは会えなかった。

 

 残念に思っていると、俺にとっては金儲けと贅沢の街、ミリシオンが見えてきた。

 

 あの七つの塔を見ると、ミリシオンの贅沢三昧の日々を思い出してよだれが湧き出る…

 

 

 ミリシオンについて早々、宿屋を確保するとギースが俺たちに別れを告げてどこかに消えた。あいつはそう言う奴だったなと、懐かしく思いながら別れた。

 

 

 

 宿屋の部屋の中に入ると恒例の俺だけ見学、チーム『デッドエンド』の作戦会議が始まった。

 

 ルーデウスと俺のやる気のある拍手と、ルイジェルドとエリスのぞんざいな、拍手が虚しく響いて少しの沈黙の後、会議があらためて始まった。

 

 色々と侃侃諤諤の話し合いが繰り出されたが、この会議で決まったことは明日が休日になったくらいだった。

 

 

 翌日になると、休日なのでみんなバラバラになって街に散っていった。特に今やる事もないのでミリシオン金稼ぎ時代の、知り合い冒険者パーティの家を巡る事にした。

 

 

 久しぶりにあったからか興がのってその冒険者パーティの家で酒盛りをする事になった。帰ろうとしていると、そいつらに呼び止められた。

 

 俺は酒に強い方なのだがやけに少ない酒の量で、呂律が回らなくになるまで酔ってしまった。

 

 その様子を見てかは知らないが、今日はせっかくだから泊まっていけ、とのこと。

 

 しかしすでに、宿をとっていたのと報告も無しに知り合いの家に泊まると後が怖いので、宿に帰る事にしたのだが、なぜか強引に泊まることを強要して来る。

 

 知り合いを振り切って宿に着いた頃には夕陽で白い町が真っ赤に染まっていた。

 

 

 少し経って宿に着き、酔っ払ったまま宿の部屋に入ると、重苦しい雰囲気が漂っていて直ぐに酔いが吹き飛んだ。

 

 ルーデウスの様子がおかしい。

 

 

 少しだけルーデウスと他愛のない話をして、宿を直ぐに出た。

 

 出るとエリスを子猫のように首を摘み持ち上げているルイジェルドがいた。

 

 

 ルイジェルドに事情を聞く。ルイジェルドは少しだけ驚いて事の顛末を教えてくれた。

 

 

 どうやら俺は、パウロを殴らねばならないようだ。

 

 

 親子喧嘩には手を出すな、そう、ルイジェルドに諌められた、だが違うのだルイジェルド。

 

 奴を、パウロを友達として正気に戻してやるのだ。

 

 

 パウロがいると言う場所へ向かおうと歩き出すと、後頭部に衝撃がはしり気絶した。

 

 

 

 起きると知っている天井だった。ミリシオンで確保した宿屋の屋根だ。

 

 

 

 飛び起きて状況を確認すると、ルイジェルドやルーデウスがいた。

 

 彼らの制止を振り切ってパウロのところに行こうとするが、ルーデウスが言う親子喧嘩はもう解決したみたいだ。

 

 

 寝て起きると問題が全て解決していた事に、ごめんなさいこういう時にどんな顔をすればいいかわからないのよ、状態になりつつもひとまずは納得した。

 

 

 しかし解決した事には変わりない。清々しい顔をしたルーデウスに頼もしいものを感じながら、まだ眠かったので二度寝した。

 

 

 

 

 

 パウロとルーデウスが、仲直りした事で色々と回り始めたように感じる。

 

 パウロからの資金提供やらで資金が潤沢になり。この旅の目的である、フィットア領に着いた後の目標も定まったみたいだ。

 

 

 それとルーデウスが、誰もが分かっていて敢えて言わなかった。フィットア領の惨状を語った。

 

 

 曰く、フィットア領はもう無い、フィリップもサウロスもギレーヌだって死んでいるかも、と。

 

 そんなことは分かりきっているはずのみんなに、改めてそう言ったルーデウスに発言の意味を問う前にエリスが話し出した。

 

 

 そのぐらい覚悟していた。ギレーヌは生きてると思うけど、お父様はお祖父様亡くなっていてもおかしく無い。

 

 そう言ったのだ。

 

 

 まだ20歳にもなっていない、エリスの覚悟表明は俺の心に深く刺さった。と共にルーデウスの真意も分かった。

 

 

 覚悟はできているか、そう俺たちに問いを投げかけていたのだ。

 

 

 己の頭の至らなさに情けなさを感じながら、俺も覚悟が出来ているとルーデウスに告げた。

 

 

 ルーデウスはなぜか、少し恥ずかしそうな表情を浮かべて俺たちの覚悟表明を聞いて、切り替えたかの様にキメ顔で鷹揚に頷いた。

 

 

 その後はルイジェルドの渡航費用の事から、ガッシュなるルイジェルドの知り合いの話などに推移して、予定が決まった。

 

 その偉いらしい、優しい王様を目指す魔王候補の一人っぽい名前のルイジェルドの知り合いが、一筆書いてルイジェルドの渡航費用問題が解決した事によって、ミリシオンに長居する必要がなくなったため、一週間後にミリシオンを出発するのだとか。

 

 

 残り一週間なのでミリシオンで出来る事を消化する事にした。

 

 ルーデウスと一緒にパウロが泊まっているという宿に赴いた。

 

 ルーデウスの目的は知らないが、俺の目的はパウロとの旧交を温める事である。

 

 

 旧交を温めるとは言ったが、近くにいると知っていて挨拶をしないのもな、という考えでクズのパウロに会いに行くと、意外な事にパウロは真面目に働いていた。

 

 少し見直して待っていると、ビキニアーマーの奴と魔術師の女の人がやって来た。

 

 

 

 ビキニアーマーってことは、ギレーヌと同じ剣神流かななんて考えていると、ルーデウスがフィリップの様に恭しく礼をした。

 

 真似をして頭を下げる。

 

 

 話すのをルーデウスに任せて、俺はさっき見つけた。ゼニスの娘ノルンと遊ぶ。

 

 彼女もグレイラット家なせいか、それとも子供だからか尻尾で簡単に釣れた。

 

 ルーデウスがなぜかノルンにシカトをこかれていたが、どうせ子供なのを忘れて下世話な話をして嫌われたのだろうと辺りをつけて思考を放棄して遊ぶ事にした。

 

 話し合いは終わり、ルーデウスがハンカチを噛んでこちらに嫉妬するかの様な視線を向けていた事に気づき、今日日そんなことしている奴見た事ねぇよなんて思いながら、ノルンに別れを告げルーデウスを煽りながら近づき顛末を聞く。

 

 

 どうやらパウロは予定がギッシリ詰まっていて今日は会えないみたいなのだ。

 

 日程を改めて会うそうなので、俺もお邪魔させてもらう事にした。

 

 

 

 ルーデウス達が依頼に出かけた。

 

 最近忘れかけている事だが、俺はルイジェルドのスペルド族イメージアップキャンペーンのせいで、デッドエンドにはパーティ加入できていないのだ。

 

 これもかれも、必要以上に俺の名声と知名度をあげた。あの吟遊詩人のせいだなんて思いながら、

 

 ハンカチを噛み遺憾の気持ちを表明する、俺を鼻で嘲笑い煽り散らかしながら依頼にゆくルーデウスを見送りながら、暇なのでまた街をぶらつく。

 

 

 

 パウロにはルーデウス共に会う日の前日になった。

 

 ルーデウスが俺にドレスコードを聞いて来たのだ。

 

 しかし俺はドレスコードなんて知らない。高位の魔物素材を使った猫耳ママン謹製の衣服だから何処へ行っても、それなりの身嗜みをしていると思われるが、実態は母が買って来た服を着るファッションセンス無しの猫耳なのだ俺は。

 

 その事をルーデウスに伝えると、こいつに聞いたのが間違いだったという感じの表情を浮かべて足早に去っていった。

 

 なんだあいつ…

 

 けれど改めて考えてみると、親に服を用意してもらう大人って、なんかアレだな。

 

 

 会食の日。

 

 自分が側からどの様に見えているのか考えながら、ルーデウスとパウロに会いに行く、ノルンも来るみたいだ。

 

 

 レストランに着き名前を告げると、パウロの席に案内された。

 

 一緒に座っていたノルンに手を振って俺とルーデウスが座る。

 

 食事が始まった。

 

 

 

 居辛い…

 

 よく考えてみたら、これって親子の食事じゃ無いか。

 

 今の所ノルンの支持によって事なきを得ているが、パウロの何しに来たんだコイツって目に耐えられない…

 

 実際挨拶しに来ただけだしね!

 

 「に、にゃ…なんだか急に用事を思い出したにゃぁ〜!それじゃあにゃ!」

 

 「行かないで、お兄ちゃん!」

 

 空気が凍る。

 

 主にルーデウスが愕然としている。

 

 子供と仲良くなり易い俺だったが、今だけはその体質を呪った。

 

 「な、なに言っているに、にゃ…… お、おに、君のお兄ちゃんは、そこにいるじゃ無いかにゃ…?ねぇ〜パウロォ〜!」

 

 「お、おうそうだぞ、ノルン、コイツは俺の友達で、お前のお兄ちゃんはこっちのルーデウスだぞ〜。」

 

 「やだ!!ギュユスナお兄ちゃんの方が何倍もいい!」

 

 

 俺、今のルーデウス見れないよ…

 

 必死にルーデウスのある方向から目を背け、逃げ出す。

 

 「俺、兄、ちぎゃう、にゃ、それじゃあ!」

 

 

 

 必死こいて這う体で逃げ出す。

 

 

 

 大魔王からは逃げられない…!

 

 大魔王とかしたルーデウスに、獣族式の土下座。ギュエスがしているのを見て、俺はこうはなるまいと思った土下座であったが、案外早く使ってしまった。

 

 

 

 ルーデウスのなにをして来るでも無くただ見つめて来るだけの、態度にそこはかとしれない恐怖で体を震わしながら、ミリシオン旅立ちの日が来た。

 

 エリスやルイジェルドの慰めの言葉に涙を流していると、パウロとノルンやビキニアーマーさんと魔術師さんがやって来た。

 

 啜り泣く俺を心配するノルンとその横で俺を指差して爆笑するパウロの差に、風邪を引きそうになっていると、ルーデウスがパウロとノルンに別れを告げて。出立した。

 

 ノルンに別れの挨拶をされなかったからって、俺を見ないで欲しいな。

 

 ルーデウスに凝視されながら、ミリシオンを後にした。

 

 

 2ヶ月間のミリス大陸の旅を続けていたら、徐々に時間様が解決してくださった。

 

 ルーデウスも頭では俺が悪く無いと思っていたが、感情が俺を許さなかったとの事。

 

 

 妹を猫耳のチビに寝取られかけた心境は俺には計り知れないが、よっぽどのことだったのだろう。

 

 

 

 話は戻るが2ヶ月間で、ウェストポートについた。が案の定ルイジェルドの渡航について揉めた。

 

 そしてあれやあれよの内に、バクシール・フォン・ヴィーザー公爵という男の前まで俺たちは連れ出された。

 

 豚の様な容貌をした不摂生そうな男のバクシール・フォン・ヴィーザー公爵、はっきり言って、俺たちの邪魔しているのも相待って物語に出て来る悪役みたいだ。

 

 ルイジェルドの知り合いの優しい王様を目指す魔王候補の一人みたいな名前の人物は、ミリスでは有名で偉い奴らしい。

 

 さらに筆無精としても有名であり、そのせいで俺たちが疑われているというわけだ。

 

 

 ルーデウスが色々と説得を始めた。

 

 大筋はこうだ、まず

 俺の役割はほとんどなかったが、エリスがボレアス・グレイラット家である事を使って、豚公爵を説得しようとした時、俺の名声が役に立った。

 

 フィリップが俺とギレーヌが、ボレアス家のお抱えになっている事を他国にまで吹聴したらしく俺がいた事で、エリスがボレアス家である事は信じてくれたのだが、ルイジェルドはどうしても通してくれない模様。

 

 流石のルーデウスも言葉に詰まったが、救世主が現れた。

 

 

 ルーデウスがゼニスと見紛うほど似ている、女性だった。

 

 案の定というか、ルーデウスとの血縁関係があり、彼女にとってルーデウスは甥なのだそうだ。

 

 

 まあ今度も俺の預かり知らぬ所で話はルーデウスの思う様に進んでいき、一行は無料で中央大陸に渡れる様になった。

 

 ルーデウスの勝ち筋を引き寄せる、主人公の様なものを感じながら、ゼニス似の女性事テールズさんとルーデウスの話し合いが終わった。

 

 

 テールズさんの気遣いのおかげで、準備にそう時間を取られずに出航する事ができた。

 

 ルイジェルドは水夫達に睨まれたりしているが、平気そうだ。

 

 

 こうしてミリス大陸を離れた。

 

 

 中央大陸に着いた。

 

 いつも通りにルーデウスの音頭によって、行き先が決まったシーローン王国だ。

 

 

 

 それを聞いた時俺のテンションは馬鹿上がり、ロキシーに会える!

 

 あのジト目がまた見れるなんて!

 

 

 道中は、ルーデウスがいきなり米を炊いて卵かけご飯を食べさせて来たり、前来た時はなかったナナホシ焼きという唐揚げもどきをルーデウスが見つけて来て食べさせられたり、と、美食?を堪能した旅路だった。

 

 

 そして、シーローン王国に着いた。

 

 ここが心の友である。ロキシーのある国か……

 

 

 早速、王宮に赴きロキシーと会ってこようとすると、ルーデウスに止められた。

 

 どうやら、ルーデウスによるとこの国に、パウロの浮気相手とその子供がいるというのだ。

 

 どこでそんな情報を手に入れたかは、知らないがルーデウスが必死になって、慎重に行きたいから落ち着いてくれと頼んできた。

 

 

 断る理由もないので、頷く。

 

 ロキシーにすぐに会えないのは残念だが、ルーデウスの事だ何か考えがあるのだろう。

 

 話を黙って聞く。

 

 ルーデウスの話を要約すると、俺はチビのくせに目立つので宿屋でお留守番してろと言われた。

 

 ピキピキ…

 

 

 

 大人しく留守番をしていると、ルーデウスが泣きじゃくるお漏らししたメイド服を来た幼女を連れて来た。

 

 は?

 

 

 とりあえず、そのままでは可哀想なので洗濯をするために、犯罪者と一緒に服を変えてあげる。

 

 俺の服が一番小さかったので、俺の服を着せる。

 

 

 お漏らしの処理が済むと泣きじゃくる幼女を置いて、濡れた服と共に部屋を出ると犯罪者が俺にコソコソと話しかけて来た。

 

 

 「何か用にゃ?ルーd… 犯罪者。」

 

 「ぎ、ギュユスナ…これには訳があって、彼女は俺の妹で…」

 

 「なるほど。そのまま宿にいてくれにゃ、子供の味方ルイジェルドを呼んでくるにゃ。」

 

 「待って下さいギュユスナ!俺たちは、まだ…ちゃんと…話し合っていないじゃないかぁあああ」

 

 メイド服とパンツを洗濯しながら、ルーデウスと話し合う。

 

 どうやらあれは本当にルーデウスの妹みたいだ、ルーデウスがどこからともなく掴んだ情報は、正しかったらしい。城を抜け出し、パウロに手紙を送ろうとして兵士に捕まったところを助けたらしいのだ。

 

 その途中で彼女がお漏らししてしまったという事らしい。

 

 

 ふーん。

 

 

 話半分に聞いておきながら、ルイジェルド(警察)を呼ぶ準備をする。

 

 

 犯罪者は刺激してはいけないのだ。

 

 

 洗濯がし終わって、ルーデウスの妹を訪ねる。

 

 ルーデウスが妹ことアイシャの前では、なぜかルーデウスのことを飼主と呼ぶ様に俺に厳命した。

 

 幼女の前でそうゆうプレイはちょっと…

 

 そう言って拒否すると、それっぽい理由を捲し立てられて、仕方なくルーデウスを飼主と呼ぶ事にした。

 

 

 アイシャの話を聞くと、目の前のルーデウスを兄として認識してはいないが、確かにルーデウスの妹みたいだ。

 

 ルーデウスの評価を少しだけ持ち直させたが。

 

 

 しかし、彼女の語る母さんから聞いた、私の兄やばいエピソードを聞くたびに、自分のルーデウスへの視線は次第に冷めて行くのがわかった。

 

 コイツロキシーのパンツ、盗んでいたのか…しかも後生大事に保管して。

 

 

 流石にコイツの妹さんの前なので流石に殴りはしなかったが、指数関数的に下がって行くルーデウスへの評価。としっかりしたアイシャへの評価が反する様に上がっていく。

 

 

 性犯罪者がアイシャに苦しい嘘を言うたびにフォローを入れてやっていると、日が落ちてルイジェルドとエリスが帰って来た。

 

 

 今日はそれで終わり、今の所ルーデウスがロキシーに送った手紙の返事を待つという方針が定まった。

 

 

 

 

 翌日の昼時宿から出られないアイシャと、ゲームをして遊んでいるとルーデウスに宮廷にいるロキシーから使いのものが来た。

 

 ルーデウスが一人で赴く様だ。俺も行きたいと普段なら文句を言ってついて行くところだが、最近酷い目にあったルーデウスの妹のアイシャの様子が不安なので宿に残ることにした。

 

 

 

 

 ルーデウスが宮殿に行き少し経った頃、また城の兵士が来た。今度はルイジェルドとエリスが兵士の話を聞いて、出かけるとだけ言って宿に俺とアイシャを置いて出ていった。

 

 

 

 

 すると、ルーデウスがパウロの第二の妻でアイシャの母のリーリャを救い出した。

 

 なにが起こった?

 

 

 俺の預かり知らないところで、物事は順調に進んでいく。代わりが大量にいる社会の歯車の様に自分の存在意義を自分に問うて現実逃避していると、いつの間にやら、シーローン王国を去っていた。

 

 

 アスラを目指して西へ西へと進む内に、懐かしの赤竜山脈が見えて来た。

 

 あの山を今は亡きクリボーと風雲丸を担いで徒歩で登ったことを懐かしく思う。

 

 

 

 

 数日後、赤竜の下顎に着いた。

 

 ここを抜ければ、アスラである。

 

 

 しかし、そいつはアスラ王国の方から、何かに乗るでもなく歩いて来た。

 

 目付きの悪い男だった、その金色双眸は三方が白目になっており、子供に見せると泣き出しそうな、面構えをしていた。

 

 そいつは仮面をつけた長い黒髪の女を連れている。

 

 その男が近づくほどに、ルイジェルドとエリスの様子がおかしくなった。

 

 顔を蒼白、手に必要以上の力を入れて剣や槍をギュッと握り締め、臨戦態勢をとっている。

 

 

 「うん……? お前、もしかしてスペルド族か?」

 

 そう最悪な目つきをした男が、ルイジェルドを見てそう言う。

 

 「知り合いです……か……?」

 

 ルーデウスが振り返りながらそう言ったが途中で、ルイジェルドとエリスの顔を見て辞めた。

 

 

 つられて俺もルイジェルドをみる。

 

 初めてみるルイジェルドの恐怖した姿。

 

 恐怖に塗り潰された声色で、ルイジェルドは俺たちに警告した。

 

 「ギュユスナ、ルーデウス、絶対に動くな、エリスもだ」

 

 

 俺は無言で頷いた。

 

 なにが起こっている?

 

 なぜルイジェルドとエリスがここまで恐怖する?

 

 そしてなぜ、ルーデウスと俺だけがこの男に恐怖を抱いていない?

 

 

 疑問が頭を駆け巡り、行動を起こさない。

 

 攻撃する準備を整える。

 

 この中で一番強いのは俺なのだ…

 

 守らねば…

 

 その男を睨み、闘気練り上げる。

 

 

 「ん? その声、ルイジェルド・スペルディアか。髪が無いから一瞬わからなかったぞ。なぜこんな所にいる?」

 

 ルイジェルドを知っている?

 

 

 無造作に近づいて来る、そいつについにルイジェルドが槍を構える。

 

 俺も剣を抜く。

 

 「お前は見覚えがないな…獣族の子供? ん? その剣どこで手に入れた。確か、海魚族が持っていた筈だが…」

 

 

 怖い。

 

 なんなんだコイツは…?!

 

 なんで知っている?

 

 なにを知っている…ッ!

 

 

 「ん? そっちの赤毛はエリス・ボレアス・グレイラットか。もう一人は……誰だ?まあいいか。なるほど、読めたぞルイジェルド・スペルディア。子供好きの貴様は、例の転移によって魔大陸に飛ばされたこの三人を、ここまで送り届けたということだな」

 

 

 訳知り顔で頷く、気色悪い男。

 

 エリスが叫ぶ。

 

 「な、なんで私の名前を知ってるのよ!」

 

 「貴様は何者だ! なぜ俺の名前を知っている!」

 

 矛先を奴に向けるルイジェルド。

 

 「なんにゃお前…!なんでこの剣が、海魚族のものだと知っているのにゃ…?!」

 

 

 奴の旧友にあったかの様な、ルイジェルドやエリスへの奴の態度が、小骨が喉に刺さった様に感じる。

 

 ルイジェルドやエリスの彼への反応が、違和感を感じさせる。

 

 

 「奇妙なところで会ったが……元気そうだな。ならいい」

 

 

 よくわからない反応をする男に恐怖を感じる。

 

 それを見て、仮面の黒髪長髪女がぽつりと呟く。

 

 「いいの?」

 

 「今の時点では仕方がない。邪魔したな。俺のことは……いずれ分かる。」

 

 

 

 彼がそう言って道の脇を通り抜けて行こうとすると、ルーデウスが奴に話しかけた。

 

 「待って下さい!」

 

 

 少しの問答の後、ヒトガミという言葉が出た瞬間。

 

 この空間に殺意が満ちた。

 

 「そうか、人神の手先だったか」

 

 

 奴がルーデウスを殺そうとしている!

 

 そう理解した。

 

 

 咄嗟に体が動いた。

 

 ルイジェルドを追い越して、ルーデウスの前に飛び出してその勢いのままに、斬りかかる。

 

 

 簡単にいなされた。強い。

 

 

 渾身の剣をいなされた俺を、フォローする様にルイジェルドが槍を奴にふるう。

 

 

 俺にも見せたことない様な、恐ろしい蓮撃を繰り出すルイジェルドだったが直ぐに押され始めた。

 

 技量の差だ。

 

 

 ルイジェルドが地に吸い寄せられる様に倒れたと同時に、俺の闘気は練り上げられた。

 

 剣が瞬間的に、ギレーヌの平宗の様な形に変わり疾る。

 

 「秘剣、赤竜返し」

 

 3本に増えた剣が、奴の腕を切り飛ばす。

 

 が、浅い。

 

 「殺す気だったのに…」

 

 奴の腕を無くしながらも。完璧で隙のない構えに、冷や汗が止まらない。

 

 

 奴が腕を拾いくっつける姿を見ても、動けなかった。

 

 

 治ってしまった…

 

 

 「ルーデウス、エリス、逃げろ!!速く!」

 

 

 少し警戒した様に、奴が喋った。

 

 「今のはなんだ?お前は誰だ。」

 

 「俺は、ギュユスナ・デドルディア、ヒトガミの使徒だ。お前を倒すためここに送られてきた。」

 

 奴の気をルーデウスから逸らすために、そう言う。

 

 「嘘だな。おおかたそこの奴を守ろうとしたか、しかしどこでその力手に入れた?」

 

  

 「ヒトガミから賜った。」

 

 「…死ね。」

 

 

 堪忍袋の尾が切れたのか襲い掛かってきた。

 

 奴の攻撃を闘気を使い全力で防御する。

 

 

 体は貫かれなかったが、吹き飛ばされて谷の対岸に着弾した俺は、そのまま渓谷の底に落ちて気絶した。

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