ドルディアに生まれた転生者   作:キ65

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ギースと約束と決闘とギレーヌとエリスと手紙と旅とルーデウスとオルステッド

 

 

 ギースが来た事によって、ギレーヌは歓迎の獲物を獲りに向かった。

 

 獣族式の歓迎だ。

 

 

 その間俺が酒を飲みながらギースと話す。

 

 「どうしたんにゃ?ギースいきなり訪ねて来て。」

 

 「いいや。近くに来たから訪ねてみただけだ。」

 

 「そうにゃのか…?」

 

 ギースはいつもと何か雰囲気が違ったが、人は変わるものだいつまでも自分の知っているギースというわけにもいかないだろう。

 

 

 雑談や談笑したりした。シャーリアのパウロやゼニス、ルーデウスなどのその後についてや剣ビームの事を話したりして、ギレーヌが来るまで待っていると、ギースが改まった口調で、俺に話変えて来た。

 

 「なあ…ギュユスナぁ、お前悩みがあるだろう?」

 

 「……なんにゃ?いきなり?悩みなんてないにゃ。」

 

 「いいや、あるね。顔に出てる。」

 

 「占い師に転職したのかにゃ?」

 

 かなり胡散臭い事を言い出したギースに若干呆れるが。

 

 「信じないってなら、当てて見せるぜ。今お前はギレーヌと一緒に暮らしていて幸せの絶頂、だが何かが足りない。そうな風に考えてんだろ、ギュユスナ?」

 

 「……才能あるんじゃにゃい?占い師。」

 

 占い師というより詐欺師な感じの、ギースに苦笑しながら話を聞く姿勢をとると、ギースは一瞬だけ真剣な顔を崩した。

 

 

 ギースが掌で人を転がす癖があるのを、俺は知っていたが俺に仕掛けて来ると思っていなかった。

 

 友達だし付き合ってやるか。

 

 

 「ギュユスナ、取引だ。俺がお前の悩みを解決する。その代わりに一回だけ俺のいう事をしてほしいんだ。」

 

 「ずいぶん大きく出たにゃね。」

 

 胡乱げな言葉に、眉を顰める。

 

 

 「もちろん、俺が解決できなかったらこの話はなしでいい。ただし!どんな命令でも聞いて欲しい。何度でも言うぞどんな命令でもだ。例えばパウロを殺せとかでもだ。」

 

 

 さすがに、ギースの様子が気になって来た。

 

 悩みでもあるのだろうか。

 

 「何をさせるつもりだ?俺とお前は、大切な仲間だと思っているにゃ。そんなに切迫詰まっているにゃら、素直に相談すればいいにゃお前が思っているより、お前の仲間は多いぞ、俺らを無礼るにゃよ…!」

 

 凄んでそう言うと。

 

 

 ギースは冷や汗をかいて俺を見つめている。

 

 「済まなかった、ギュユスナ…お前の言う通りさ。けれど、俺は何度でも言うぞ、お前の悩みを解決するその代わりに俺の命令に一度だけ何があっても、どんな内容でも聞いて欲しい。」

 

 

 頭を下げるギース。

 

 ギースのこんな姿は初めてみた。

 

 頭を下げる姿ではない、こんな事を言って俺に真っ直ぐに問いかける姿がだ。

 

 

 「いいだろう…もはや何も聞くまいにゃ。その取引受けた。」

 

 

 

 

 「ありがとう、ギュユスナ。……じゃあ気を取り直して、恋愛相談と行こうぜェ。」

 

 ギースは急にニヤニヤし出して、そんな事を言い出す。ギース。

 

 「はぁ?!恋愛相談にゃ!?」

 

 

 

 …そろそろギレーヌが帰って来る時間帯なのだが、何故か帰ってこなかった。ギレーヌに限って狩を失敗する事は無いだろうし、誰かに絡まれてんのかな?

 

 

 

 まあそのことより、目の前の厄介な奴だ。

 

 いきなり俺の悩みが、ギレーヌに告白できていない事と決めつけ、無理矢理相談になってくるギースにため息が出る。

 

 「はっきり言ってやろう、お前ギレーヌが好きだろ?ラブな方で。」

 

 「……そんな事ないにゃ。ライクの方にゃ。」

 

 ムカつく呆れ顔を披露するギース。

 

 「お前なぁ…今お前の耳と尻尾どんな感じに動いてるか、わかってんのか?」

 

 

 急いで耳と尻尾を手で押さえる。えっちッ!

 

 

 その後もネチネチネチと、事実陳列罪を重ねて俺を虐めるギース。

 

 

 隠そうと思ったがギースにはもう知られているみたいだ。仕方なくギースに打ち明ける。

 

 「早く言えば楽になれるぞぉ…」

 

 そう言うギースの言葉にさらに言い辛くなる。がギースの言う通りだ楽になってしまおう。

 

 「ス……ニャ」

 

 「あんだって…!?」

 

 「ぎ、ギレーヌの事が大好きにゃ……!結婚したいにゃ!!悪いかにゃ!!!!!にゃにニヤケてんにゃ!猿顔!ボケェ!」

 

 目の前の口笛を吹きニヤニヤと向っ腹が立つ顔をするギースを睨む。さっきと打って変わって冷や汗をかく事もなければ、ニヤけ面を崩す事は無かった。

 

 

 「お前がな、何か足りてないって思ってしまうのはギレーヌへの事が好きで好きで大好きで結婚したいのに、気持ちを隠して今の関係に甘んじているからだ。どうせ、今の関係が崩れてしまうかもって考えているんだろ?」

 

 言われてしまった。

 

 「ギレーヌに思いを告げてしまえ!見ていたらわかる。ギレーヌもお前が好きだ!こくっちまえギュユスナ。男だろ!」

 

 ギースの大声を憎い事に性能のいい猫耳は、閉じていてもはっきり聞き取った。

 

 「け、けどにゃ!!」

 

 「アホタレ!バカタレ!ヘタレ!アマッタレ!そんなんだったら一千年の恋も醒めちまうぞ!」

 

 ギースのアホみたいな暴言。しかし俺には効果的面だった。

 

 

 タレがゲシュタルト崩壊を起こし、頭の中で反芻し、ギレーヌに嫌われる想像をしてしまう。

 

 

 「うぉおおお……ぐおぉおぉ……」

 

 頭を抱えて疼くまる。

 

 さすがに心配なのか、自分で追い詰めた癖にギースが声をかけて来た。

 

 「……大丈夫か?」

 

 

 

 …そうだ!

 

 「ギレーヌと、決闘して来る。」

 

 「なんでそうなるんだ!?」

 

 ギースは知らないのだ、獣族は決闘を申し込んで了承したら、結婚して良い、その決闘に勝った方がその家族のボスになる。そんな感じの風習があるらしいのだ。

 

 

 そうつまり俺は、覚悟を決めた。ギレーヌに結婚を申し込むのだ!

 

 ズカズカとギレーヌが居そうな方向へ進む。

 

 

 「今は発情期でもなんでもないだろ……」

 

 最後のギースの呟きは俺には聞こえなかった。

 

 

 

 

 ギレーヌを見つけて即刻叫んだ。

 

 「ギレーヌッ!決闘だ!」

 

 「?…ああ。」

 

 ギレーヌは、即座に剣を構える。

 

 感極まって少し固まってしまう。

 

 

 そしてここは剣の聖地の往来、決闘となると、すぐに人が人を呼び見物人が集まって来た。

 

 

 剣王ギレーヌと、天大陸以外どの大陸にも名を轟かす迷宮狂いの、タイトルマッチは剣神流どもの琴線に触れたのか、ゾロゾロと町中から野次馬が集まって来た。

 

 さらに言うと、エリスや、剣神さんまで集まって来た。

 

 剣神さんは余計な事に勝った方に、剣帝なる称号を与えると言って周りが騒めいた。本当に余計な事しやがって…!

 

 一方エリスは真剣にこちらを観ている。剣術において上昇志向溢れる彼女は俺たちの業を盗もうとしているのだ。

 

 

 もうこの頃になると、周りのテンションが上がっていくに連れて、反比例する様に俺は冷静になる。

 

 すでに、発情期じゃ無いと決闘にそう言った意味があるわけでは無いと、思い出していた。

 

 せっかくの悩みを打ち明け、アドバイスを機会だったのだが、それを自ら棒に振ってしまい、悲しみに暮れる。

 

 

 しかし直ぐに迫る前々から興味があった、ギレーヌとの本気の戦い。

 

 すぐに悲しみを忘れ気分は高揚していく、ギースの野郎の事は忘れて、ギレーヌとは心置きなく戦うのだ。

 

 

 ギレーヌに隙を見せない様に、魔剣を抜く。

 

 

 ギレーヌの後ろにギースが来て見学している様に見えるが気にしない。

 

 

 剣を抜いた瞬間、決闘は始まった。

 

 

 ギレーヌの唐竹を躱す。

 

 そこからはギレーヌの連撃に防戦一方の俺。

 

 やばい……

 

 

 ギレーヌの顔が、恥ずかしくて…

 

 意識してしまって見れない…! 

 

 

 ギレーヌの剣戟は顔を俯いた状態で勝てるほど甘くはない。

 

 

 ギレーヌは俺の舐めプとも取れる行動に、プライドが刺激されたのか、攻撃はさらに強く鋭くそしてほどばしる。

 

 

 俺の剣をすり抜けたかと錯覚する程の切り返しで、剣で横っ面に叩き込まれた。

 

 しかし、剣を受けた側頭部は闘気で防御しており、髪が少しハラリと数本落ちただけで、大事なかった。

 

 

 しかしその衝撃を受けて、脳が震えたのがわかる。

 

 目が覚めた様だ。

 

 ギレーヌを真っ直ぐに見る。

 

 発情期の決闘なんかじゃなくていい。

 

 思いの丈を叫ぶのだ。

 

 

 「ギレーヌ、好きだぁ!!結婚してくれにゃあ!!!」

 

 

 そう言いながら剣を捨てて、飛びかかる。

 

 さすがギレーヌ。動揺を見せずに対処して来た。

 

 

 俺ですら知覚する前に最高速度に到達するギレーヌの剣、俺はギレーヌの剣の柄を咄嗟に掴み。

 

 捻り投げ飛ばす。

 

 

 「ギュユスナ…受け入れよう。お前にボスは取られたな。」

 

 受け身を取れない様に投げた為か、起き上がれないでいるギレーヌが悔しそうにそう言った。

 

 瞬間的理解力だ。

 

 いきなりでムードもへったくれも、ましては発情期ですら無い思いの丈を叫ぶだけの、恋愛なんてした事ない男の告白。

 

 そんなものを断らず、受け入れてくれたギレーヌに感謝しかない。

 

 

 しかしここは踏ん張りどころだ…!

 

 大切な事だ!なあなあでは済まされない!

 

 覚悟を決めろ!

 

 

 「好きだギレーヌ!」

 

 手を貸し起き上がらせながらそう言う。

 

 「ああ、私もだ。」

 

 一見淡白なギレーヌの反応だが彼女の尻尾を見ると、彼女の気持ちは丸わかりだ。

 

 縦横左右に振り回されるギレーヌの尻尾。

 

 喜んでもらえている!

 

 

 俺はやっと結婚したのだ。

 

 そのまま夫婦の様に腕を組んで家に帰ろうとするが、身長差で腕が組めなかったので、恋人の様に手を繋いで帰る事になった。

 

 

 置いてけぼりにさせられた野次馬共のざわめきと、剣神のエリスとその他の弟子への俺たちの決闘の評論は俺たちの耳に届く事は無かった。

 

 

 

 

 互いを好きだと告白し合い。相手の自分への愛を認識した生き物は一気に遠慮がなくなる。

 

 ベタベタとギレーヌとくっつきながら、ギースを歓迎する。

 

 ギレーヌとくっつくのは俺も嬉しいし、きっとギレーヌも俺とくっついて嬉しいのだ。

 

 

 ギレーヌが就寝した頃、俺とギースは話し合っていた。

 

 「発破かけてくれてありがとうにゃ。」

 

 少し照れ臭いが、お酒の力で乗り越えて感謝を告げる。

 

 「いやぁ、どうって事あるな、ヘタレのお前をその気にさせるのは大変だった。発情期でも無いのにギレーヌと決闘しに行くって言った時はもう、肝が冷えたぜ。」

 

 「わかった、わかってるにゃ…!この恩は忘れないにゃ、取引に従うにゃ!……けれどあの発破の掛け方はどうにかにゃらにゃかったのかにゃ…?」

 

 「お前にはなぁ…単純な罵倒が一番効く、パウロだって知ってるぜ。せっかくギレーヌと結婚出来たんだ、過程なんて関係ないだろ?」

 

 「まあそうだにゃ…」

 

 

 発情期でないため、ギレーヌとの、あ、あ、アレは起こらにゃい。

 

 

 それもあるのか、遠慮せずギースは俺たちの拠点に泊まった。

 

 

 朝起きて朝ごはんをギースも交えて食べていると、ギースがもう旅立つと言うのだ。

 

 いきなり来て俺の悩みを取引で解決して一泊泊まって帰っていく猿顔の男。なんか妖怪みたいだ。そんな習性持った妖怪いそう。

 

 本当に近くに来たからやっただけなのだろうか?

 

 

 「約束忘れんなよ〜!」

 

 「わかってるにゃ!パウロが相手でも例えルーデウスでも龍神が相手でもやってやるにゃ!」

 

 「それを聞いて安心したぜ」

 

 

 冗談を交えながらの、別れの挨拶を受け流してギースは去っていった。

 

 

 ギースの後ろ姿が見えなくなるまで見送り、ギレーヌと手を繋いで帰った。

 

 

 

 

 唐突かつヌルッと始まった。結婚生活だが特に何か変わる事もなかった。

 

 同じ事をして、同じ話題で盛り上がって、同じ建物で生活して、同じ食べ物を食べて、同じ布団で寝る。

 

 心のモヤモヤも綺麗さっぱり晴れて、穏やかな時間が流れていった。

 

 

 

 穏やかな日々が数年続く、恐ろしいほど何も起こらない。

 

 ギレーヌとは一緒に寝始めたのだが発情期が来ても、待てど暮らせど事が起こらないのだ。

 

 ギレーヌは俺とそういう気になれないのだろうか…

 

 それとも、俺に勇気がないからこんな事になっているのだろうか…

 

 さらに、行動でも見た目でも身長も相まって、まだまだ若いと言われるが、もう実年齢は二人とも四十を超えている。互いに歳をとりすぎたのだろうか…

 

 若い頃に結婚していればと思うが、後悔先に立たず。

 

 

 早速、裏で立ち込める暗雲。今度は何処からともなく、猿顔の仲人が駆けつける事はないのだ。

 

 

 まあ、不満があるとしたらそんなところで、ギレーヌとの新婚生活を満喫していると、エリスが剣王になったり、俺が剣帝として剣の聖地で認識される様になった。

 

 

 エリスが剣王になったのを気に、ルーデウスに会いにいく事に決まった。

 

 無論俺とギレーヌもついて行く。

 

 準備があるのでエリスと会話をして暇を潰す。

 

 エリスの稽古の邪魔になると剣神に会話と接触を禁じられていた為、剣の聖地について最初に少し話したから初めての会話だ。

 

 

 今までは眺めるだけで、話しかける事は叶わなかったが、エリスはフィリップの忘形見で俺の娘の様なものだ。

 

 どうしてあんなにエリスが頑張っていたかは知らないが、エリスが剣王になれた事を我が事の様に喜び、讃えた。

 

 

 久しぶりに話すエリスとの会話に懐かしさと嬉しさが込み上げながら、旅の準備をする。

 

 見送りに来たエリスの友達?ライバル?とも雑談していると、シャリーアへ向かうための馬を持ってギレーヌがやってきた。

 

 もう準備は完了した。

 

 馬を見て思い出す。クリボーはルーデウス、エリス、ルイジェルドの糧になったが、風雲丸は未だ行方知れず。風雲丸が今幸せに暮らしている事を願いながら、旅路に着こうとすると、ルーデウスからエリスへの手紙が届いた。

 

 エリスが読めなかったので、エリスの字の読める友達が音読する事になった。

 

 

 その手紙は衝撃的で、ツッコミ所が多量にあった。

 

 ルーデウスとエリスがそういう仲になって直ぐ別れたという事と、ルーデウスに妻が二人いるという事と、エリスを三人目の妻に迎えてもいいという事、もう全部の内容が初耳で驚愕に値するものだった。

 

 しかし一番驚いたのは、追記の部分だ。

 

 

 『追伸。私はこれから、龍神オルステッドに戦いを挑みます。勝てるかどうかはわかりません。この手紙が届いた時、私はすでにこの世にはいないかもしれません。もし、生きて帰ってこれたら、話の続きをしましょう』

 

 

 そう書いてあったのだ。

 

 

 俺は自分の顔に笑みが浮かぶのが分かる。

 

 前半の部分はエリスとルーデウスの痴情のもつれといった感じで、幼少期の二人を知っている身からしたら、聞くに耐えないものだったのだが、追記の部分には、流石としか言いようが無い。

 

 ルーデウスはオルステッドに殺されかけ怖がっていたはずなのだ。

 

 それをどんな経緯か知らないが、ルーデウスが倒すと決意したのだ。

 

 手伝わない義理はない。

 

 

 エリスもそう思ったのか馬に飛び乗り、駆け出す。ギレーヌも俺もそれに追従し、シャリーアへ進路をとった。

 

 

 シャリーアへの旅路は困難に満ちたものだった。

 

 主な原因はエリスだ。喧嘩、考えなしのショートカット、魔物の巣に突っ込む。ルーデウスはどうやってエリスを大人しくさせていたのだろう。

 

 フィットア領帰還の旅の時は、仲間はずれを喰らっていたためか、そんなにルーデウスとエリスの絡みに詳しくなかった俺は、俺一人ならば一週間で着くべき旅路を、数ヶ月かけてシャリーアに着くまで、殆ど何もできなかった。

 

 

 シャリーアについてからは、エリスがルーデウス宅に行き。俺は衝撃的な光景を目にした。

 

 ロキシーがルーデウスの第二の妻になっていたのである。

 

 

 結局ルーデウスの家に上がり込んでいたパウロに、煽られるまでは立ち尽くしてしまった。

 

 煽って来たパウロを殴り、驚いたがロキシーに祝福を告げ、穏やかな雰囲気が漂って来た。

 

 

 しかし、俺たちがここに来た理由を鑑みても、長く続く訳も無かった。

 

 エリスのルーデウスは何処にいるのと聞くその言葉に、パウロ以外の空気が固まる。

 

 

 龍神オルステッドの元に向かった。

 

 そう聞いた時、エリスとパウロがなぜ一人で行かせた!と怒鳴った。

 

 パウロお前知らされてなかったのか…

 

 

 しかしルーデウスの妻たちの悔しそうな表情と足手纏いになってしまうしルーデウスに止められたと泣きながらのその言葉に一瞬固まったが、声高らかに自分は足手纏いにならないと叫び、ルーデウス邸宅を後にした。

 

 パウロが付いて来ようとしたがパウロの近接戦能力では龍神に絶対に殺されるので気絶させて、エリスと遠距離で役に立てるルーデウスの妻とロキシーを連れてギレーヌとルーデウスの後を追った。

 

 

 少々遅かった様だ。

 

 ルーデウスは殺されてもいないが、満身創痍。

 

 止める間もなく、オルステッドに飛び込むエリス。

 

 

 ギレーヌがエリスと一緒に飛び出るが、俺は出なかった。

 

 ロキシーとルーデウスの妻にシルフィエットをルーデウスの元は行かせて、潜伏する。

 

 

 ギレーヌに背中を任せてエリスが龍神と戦う。

 

 しかし、程なくして打つ手が無くなったのか一時的に戦いが終わる。

 

 それと同時にルーデウスが妻たちの治療を受けて立ち上がるが、役に立ちそうにない。

 

 

 

 エリスは龍神に勝つ事を諦め、ルーデウスを逃す事に決めた様だ。

 

 

 

 しかし俺はまだ出ない。

 

 魔剣に、全身に、闘気を込める。

 

 

 ギレーヌとエリスがなぜか口論をしている。

 

 

 だけれど、まだ出ない。

 

 

 龍神のルーデウスを呼ぶ叫び声が聞こえた。

 

 

 龍神とルーデウスが何かを話す。

 

 

 ルーデウスが少しして何かを呟き、龍神に向かって頭を下げる。

 

 

 ここだ。

 

 

 

 俺は龍神の首を跳ね飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宙を舞う、気味の悪い目をした生首。

 

 それを俺を除く、5対の双眸が驚愕の表情で固まる龍神の生首を追う。

 

 

 先程の戦闘と比べれば笑ってしまうほどの緩慢な動動きで、生首が地面に落ちた。

 

 

 水気の多い物が地面に落ちたかの様な音を響かせ、バウンドする事なく還るべき地についた。

 

 

 少し転がり前面がこちらへ向く。

 

 

 …!?

 

 目だけを動かしこちらを見るオルステッド。

 

 その魚眼の様になるまで見開いた瞳。

 

 

 そこ知らぬ恐怖が足の先から頭の先まで貫く。

 

 咄嗟に距離を取ろうとするが、後ろから抗えきれない怪力で首根っこを掴まれる。

 

 

 

 掴んでくる腕を切り飛ばし、猫の様に四足で飛び上がりながら、転がりながら、距離を取った。

 

 

 

 振り返り確認すると、首と右腕のない胴体。

 

 それが直立していた。

 

 

 

 不死身という話は聞いていなかったが…

 

 

 

 俺が反撃を試みようとするも、体が急に動かなくなる。

 

 

 足元を見る。

 

 そこには血溜まり。

 

 

 奴の方まで続いている。

 

 

 俺の血だ。

 

 

 背中が寒い。

 

 背中に刺さる。剣を抜く。

 

 

 息が、鼓動が速くなる。

 

 俺にがなりたてる様に聞こえる。体の脈動。

 

 

 

 動けないでいると、いつのまにか5体満足に成った。

 

 オルステッド。

 

 

 

 背中の魔道具で回復しようにも、運の悪い事にヤツに貫かれていた。

 

 

 

 目の前にオルステッドが居るという事を考えると、俺の人生はここまでの様だ。

 

 

 なぜか俺を観察している。オルステッド。

 

 

 まるで教科書を見る様な目で俺を見るオルステッド。

 

 奴はこの後に及んで俺の剣術を学ぼうとしているのだ。

 

 

 俺を戦いの相手とは認めていないのだ。

 

 

 対等とは、

 

 戦うべき相手とは、

 

 自分を殺し得るとは、

 

 

 コイツは、考えていないのだ。

 

 

 

 

 頭が沸騰する。

 

 

 体毛を毛羽立ち、闘気は溢れる。

 

 

 首を切って死なないなら全身を吹き飛ばす。

 

 

 

 

 奴を下さねばならない。

 

 上位者を、生まれてからの目標、最強を殺さねばならない。

 

 

 

 思い出すのは、前世の漫画。

 

 半世紀をこの世界で過ごしても前世の体験の比重は多いらしい。

 

 

 両のかいなに、五指に闘気を一極集中させる。

 

 奴は観察に徹している。

 

 

 それが貴様の敗因だ。

 

 

 俺が初めて体験する速度。

 

 

 俺は龍神のこめかみに五指突き立て。

 

 

 

 めり込ませる。

 

 徐々にめり込む指に焦りを見せ始める。

 

 オルステッド

 

 

 

 しかしこれだけでは無い。

 

 

 この技の真骨頂を見せてやる。

 

 

 

 「メガンテッ!!!」

 

 

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