ドルディアに生まれた転生者   作:キ65

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簀巻きと勘違いとラオウと再会と謝罪と仲間と事件とパウロと長旅と計画と赤毛の幼女

 

 

 

 ギレーヌが他パーティメンバーを魔力の魔眼を使って身を挺して守り、俺のギガブレイクを大負傷を負いながらも逃れた時、粉塵が風で流れ俺が追撃を放つと思ったら、俺は吐瀉物をお口からまろび出しながら、気絶していたらしい。

 

 らしい。と、言うのは俺が気絶していて、気絶後のあらましを目の前の黒狼の牙の面々に教えられたからである。

 

 体育座りの様な姿勢で簀巻きにされて、尻尾と首から上しか出ていない自分の体を見下ろしながら、その話を聞くだけ聞いて俺はダンマリを決め込む。

 

 俺の煮え切らない態度に、苛立っている者もいたし、いきなりおゲロを噴出し気絶した、俺を困惑した目で見つめる様なやつもいた。

 

 

 

 だって何を言えばいいんだよ…?!

 

 黒狼の牙を消し飛ばしかけたのは、ギレーヌの勘違いと、俺がテンパって会話の種として魔剣を抜いて話を理解せずに頷いて、錯乱して必殺技を放つ様な馬鹿だったから、本当は争う必要が無かったって、謝ればいいのか?

 

 舐めんなッ!

 

 そんなんで済んだら警察はいらないんだよ!

 

 

 

 満身創痍な集団が、無傷の獣族のチビを簀巻きにしている。道行く人々全てが二度見しそうな状況が続いて空気に耐えかねた俺が、本当の事を口に出しそうになった時、治癒魔術によって回復したギレーヌがこちらにやって来た。

 

 「なぜ…なぜあそこで追撃しなかった、ギュユスナ。お前がいきなり吐いた事と必殺技は関係ない様に、私は感じたが…」

 

 俺が吐いた事が必殺技のフィードバックでは無いと言うギレーヌの予測に、黒狼の牙の面々が驚く。そして俺はどこか責める口調のギレーヌに、尻尾がビックっと跳ねてしまう。別に嘘をつく必要もないし、勘違いをそのままにして本当の事を言う。

 

 「あれは、俺にとって最強の一撃だったにゃ…それでギレーヌが死んでしまったと思ったら、急に吐き気が込み上がって吐いて気絶してしまったにゃ。」

 

 ギレーヌと黒狼の牙の面々が変な顔をするが、続ける。

 

 「しかしあの一撃を、手傷を負ったにしろ全員生きているのは流石としか言いようがにゃいにゃ。ギレーヌ強くにゃったね…」

 

 ギレーヌが万感の思いを詰め込んだ様な複雑な顔をする。それどうやるの?

 

 「そこの後ろの軽薄そうな人族の男と炭鉱族と人族の女、お前たちの攻撃で攻撃の軸が少しズレ、ギレーヌがつけいる隙を作ったにゃ。いい連携にゃこれからも精進するといいにゃ。」

 

 なんとも言えない表情をギレーヌと黒狼の牙の面々がするが、無視して続ける。

 

 「これから俺をどうするも自由にゃ。煮るなり焼くなり食うなり犯罪者として引き渡すなりすればいいにゃ。」

 

 旅を続けていたせいか、こんなに喋ったのは久しぶりだ。俺の口下手加減に俺自身が呆れたので、もう誤解を解くことは諦めた。

 

 今この場を収めるには、俺が折れるしかないのだ。

 

 「さあ、俺の落とし前はギレーヌ、俺の親友であるお前がやれにゃ!」

 

 叫ぶ、獣族のチビ。

 

 黒狼の牙の面々は動かない。

 

 ギレーヌも、俯いて動かず、表情も見えなかった。

 

 再三に渡り無様に俺が叫び続けた頃。

 

 やっと、ギレーヌが動き出した。俺と、黒狼の牙の奴らがギレーヌを見つめる。俯いたまま、剣に手をかけ、剣を抜きさる、ギレーヌ。

 

 

 ぇ?

 

 落とし前ってそう言うこと?

 

 あのもっと穏便に、兵士とかに引き渡さない?ギレーヌちゃん?

 

 俺のせいなの?

 

 俺が悪いの?

 

 そうなの?

 

 俯いて、表情が見えないし、尻尾も耳も微動だにしない。ギレーヌを見て絶望した。あっこれまじなやつや。簀巻きにされているから動けないし、喋る言葉は見当たらない。

 

 ハイスピードで脳味噌を回すが、直ぐに答えが見つかるはずも無し。ギレーヌが異様に遅いスピードで歩き近づいて来ている。そして答えを猫耳のついた頭が導き出した。

 

 

 逆に考えるんだ。死んじゃってもいいさって。

 

 

 頭が真っ白になった時、自分の言葉ではなく教わった言葉が出る!ならば、ジョースター卿の言葉が出るのは必然も必然、大必然!そして猫耳は考えるのをやめ、猫耳型の石になった。

 

 俺が思うに前世も含め、長く生きすぎたのかも知れない。ファンタジー世界に転生して、強くなって冒険して、親友に殺されるんだ。悔いはないな。ああそうだ。あの言葉を言ってやろう。

 

 

 ギレーヌが剣を大上段に構えた。

 

 今だ!

 

 「我が生涯に一片の悔いなし」

 

 

 

 縄が斬られた。

 

 へ?

 

 「お前は今ここで…ドルディアの戦士ギュユスナ・デドルディアは死んだ。今のお前はただのギュユスナだ!だから…死ぬなんて言わないでくれッ!悔いがないと言うなら私がお前の悔いになる!なってやる!私はお前が死ぬと死ぬ程悲しむぞ!!だから悔いがないなんて言わないでくれぇ…!」

 

 ギレーヌはぼろぼろと大粒の涙を流して、そう言った。

 

 俺は衝撃を受けた。ギレーヌが泣いている姿を初めて見たんだ。最初に会った時は単純な敵意、次は単純で楽しそうな笑顔、別れのよくわかってなさそうな顔、そして再開した時の複雑な思いの詰まった悲しそうな覚悟を決めた顔。

 

 耳の動きだってそうだ、尻尾の動きだってそうだ。あんな悲しみに満ちた揺れと動きを見せる。耳や尻尾を見たことがない。

 

 つられて涙が出てくる。ギレーヌにも負けず劣らずの、大粒の涙だ。

 

 斬られてまとわりつく縄を蹴飛ばして、走ってギレーヌに抱きつく。

 

 10歳の時は俺の方が抱きつかせる側だったのに、今は俺の身長は2メートル近くあるギレーヌの身長の4分の3と半分の、中間当たりしかない。小人族と間違われてブチギレた事もある身長だが、今はそれほど嫌では無かった。

 

 

 多分、この時やっと俺たちは再会したんだ。

 

 

 

 

 落ち着いた頃、迷惑をかけた黒狼の牙のみんなに平謝りする俺の姿が見えた。

 

 軽薄そうな男で剣士でグレイラットで人族のパウロ、治癒術師で人族のゼニス、魔術師で炭鉱族のタルハンド、戦士で耳長族のエリナリーゼ、シーフで魔族のギース、それぞれに殺しそうになってごめんなどの、言われる方からしたら溜まった者ではない冗談を俺は口に出しながらも、雰囲気は険悪では無かった。

 

 ギレーヌの勘違いを信じている彼らは、俺のことを村の掟と友の間で揺れ動く苦悩する戦い強強の猫耳のチビだと、思っているはずだ。一度和解したのだから、対応が悪くなる事はないだろう。最も、勘違いや誤解がはれた際、俺が即刻フクロにされる事も間違い無いだろう。

 

 ギレーヌとの感動の抱擁が聞いたらしく、女性陣にはめっちゃ擁護された。なんか照れる。

 

 

 ギレーヌとは、気恥ずかしさもあるが楽しく会話できた。以前のようにとも行かないが、衝撃的な出来事ばかりで頭から飛んでいた。ギレーヌと言葉で意思疎通ができる喜びを俺は噛み締めていた。

 

 和やかな雰囲気で話し合ってたらギレーヌの村でのエピソードを話したり、冒険者ギレーヌの話を聞いたりとしていると、パウロがいきなり叫んだ。

 

 「あああッ!!俺の剣!?」

 

 そこには横にではなく縦に真っ二つに割れた無惨な姿の、剣が地面に刺さっていた。剣を使う者として剣に愛着がある事はわかるので慰めに行く。

 

 「仕方ないにゃ、パウロ・グレイラット…その剣が仲間全員を守ったのにゃ…」

 

 肩に手を置きながら、そう言うと、パウロキレた!

 

 「お前がやったんだろう?!このヤロウッ!それとなんで俺だけ家名付きで呼ぶんだよ!」

 

 殴りかかってくる、パウロをあしらい。俺の味方になった、黒狼の牙のエリナリーゼにパスしながら、タルハンドやギース、ギレーヌとゼニスが笑う。

 

 

 ああ、ギュエスや村のみんなには悪いがこのまま勘違いをしてもらおう。

 

 

 

 

 そこからはトントン拍子で、黒狼の牙のメンバーに入った。

 

 俺は冒険者ランクはSでランク的にも関係ないし、グレイラット家の事もパウロを見るとそんなに悪い貴族に思えず根伐り計画は頓挫になったし、ギレーヌと一緒に遊びたいし、何より黒狼の牙の居心地が良かった。

 

 リーダーのパウロは噂に違わない、女誑しのクズカスゴミであったが、幼い頃のギレーヌを思い出せばどうって事はなかった。ギレーヌに同意なく行為に及んだり、発情期を利用してたらし込んだりと言った事をすれば、消すがな。

 

 ソロで有名な俺が、パーティに入った事で話題を呼び注目を浴びて、いいのか悪いのか黒狼の牙はさらに有名になった。

 

 

 

 今世で一番楽しい時期を過ごせているのではないだろうか?

 

 好きな迷宮もパーティだと一度により長くより深く潜れる様になり、受けられる依頼の幅が増えてやれる事が増えるし、パーティメンバーとの交流や連携はとても、とっても、楽しかった。心なしかと毛並みもさらに艶やかになっていった気がした。

 

 

 今日も、パーティメンバーとわちゃわちゃ遊びながら冒険をこなす時間が始まった。ギレーヌとパウロと競う様に魔物を殺し、たまにパウロと喧嘩してゼニスにパウロの怪我を治してもらったり、エリナリーゼに誘惑されて鼻の下を伸ばしたり、ギースとギャンブルしたり、なぜかタルハンドに水浴びに誘われたので一緒に水浴びしたりと、仲がさらに深まった。

 

 

 

 

 

 穏やかなで楽しい日々が続く数年が経った頃。

 

 事件が起こった。

 

 パウロがゼニスを孕ませた。下世話な話だが、一発だったらしい。

 

 ゼニスが孕んだ事を知ったパウロはゼニスを連れて、リーダー権限で黒狼の牙の解散を問答無用で言い渡し、パーティ共同資金を持ち逃げした。もちろん追いかけて、パウロと出会い話し合ったが、その時パウロが衝撃的な一言を言い放った。

 

 「気が合いそうだからつるんで他に呼び名がないから仲間と呼んでいただけで、俺の中でお前らはそんなに重くない」

 

 だ、そうだ。

 

 そこで、黒狼の牙は解散。俺とギレーヌは一緒にまだいるとして、タルハンド、エリナリーゼ、ギースは、バラバラに散っていった。

 

 

 

 唐突に平穏が吹っ飛び、楽しい日々が過去という名の、見えるけど触らない遠いところに行ってしまった。

 

 「ギレーヌ。予てから計画していたんだけどにゃ、グレイラット家潰す計画。一緒にヤラない?」

 

 「む。パウロの実家か。いいだろう私はヤルぞ、ギュユスナ」

 

 

 

 歳をとってその俊足に翳りが見えてきた。クリボーと風雲丸をギレーヌと一緒に乗りながら、旅をする。ギレーヌと2人だけの旅は初めてなので、少し緊張する。俺はギレーヌの突発的な行動に目を光らせ、問題を起こした時の弁償料金の額を想像しながら、ギレーヌを見つめ緊張する。

 

 なんだこいつは、てな感じのギレーヌの視線に変顔で返し、グレイラットを潰す理由を話す。

 

 「…パウロがムカつくからではなかったのか?」

 

 失礼な、それもある。

 

 まあ理由はわかったところで、実地調査と行くことにするか。と言う事でアスラ王国内は向かう。

 

 

 ギレーヌとの旅は、意外と穏やかだった。ギレーヌはちゃんと言うことを聞いてくれるから面倒はかからなかった。しかし、旅の知識が異様に少なく、文字も読めないままで、ギレーヌは1人で旅に出してはいけないタイプのダメ人間だ。

 

 黒狼の牙では遠征などは積極的にしていたので、あまりの知識の乏しさに不思議に思い、ギレーヌに理由を聞くと、「全てギースに任せていた。」と言うことらしい。剣王というみんなに認められた称号を手に入れてさらに、冒険者をして自立した様に思えたが、あれは幻影だったらしい。

 

 パーフェクトギレーヌが夢現に、手を振りながら幻影と消える姿の妄想をしながら、ギレーヌに話しかける。

 

 「ギレーヌゥ〜考えてた俺たちのパーティ名、幻影旅団にしない?蜘蛛じゃにゃいけど。」

 

 「蜘蛛?何か理由があるのか?」

 

 「何もにゃい。」

 

 「なら却下だ。」

 

 「えー」

 

 ギレーヌのにべもない返答に苦笑しながら、グレイラット家皆虐殺計画下見の旅をゆっくりと続けるのだった。

 

 

 ここは赤竜の下顎だ。一度だけ通った事があるが、その時は急いでいたからか印象に残らなかったが落石が激しそうな険しい渓谷を眺め、よくあの時は馬で駆けながら行けたななんて、思いながらも馬に乗りながら赤竜の下顎を進む。

 

 

 関門を抜けたどり着いた先は、アスラ王国ウィシル領、何某・エウロス・グレイラットが治る土地だ。ここはスルーだな。

 

 「なんだ、ここのグレイラットでは無いのか…」

 

 「いい質問だにゃ。ギレーヌ。このアスラ王国内には、四つのグレイラット家があってだにゃ。悪い奴は、何某・ボレアス・グレイラットだにゃー!そのボレアスの治める。フィットア領を目指して今行っているにゃ。王都にもボレアスはいるだろうけどにゃ、アスラ貴族はクソばかりだから、大元を潰せば、他は勝手に潰してくれるだろうにゃ。」

 

 「そうなのか…ところでパウロは、何グレイラットなんだ?」

 

 「しらんにゃ。除籍処分を受けている様だけど、どうせボレアスだろうにゃ。あったらフクロにしてやろうにゃ、ギレーヌ。」

 

 「そうだな。トドメは任せろ」

 

 せっかくなので、観光しながら進む。

 

 もう一度言うが、ここはウィルシ領アスラ王国の最南端に位置する領地だ。端っこで戦争の際は真っ先に、矢面に出されるだけあって、兵士の質は並以上と言ったところで、交易の要所であり。ミリス神聖国、王竜王国の品々などさまざまなものが手に入る場所だ。ショッピングにはうってつけなところだね。

 

 ギレーヌは武具にしか興味がない様で、市場では武器を売っている店に釘付けにされた。

 

 アスラの貨幣を持っていなかったので、金稼ぎに冒険者ギルドによるが、さすが世界で最も安全だと言われてる土地だ。冒険者の仕事がほとんどない。あってもSランクAランクなんてものは皆無で、仕事にありつけないな終わりだな。

 

 けれど、貯めててよかったミリス金貨。

 

 冒険者ギルドで両替をしてアスラ金貨を確保して、旅を続ける。

 

 

 次はミルボッツ領だ。ここは何某・ノトス・グレイラットが治めるワインの名産地だよ。以上。

 

 

 

 次はやっと、フィットア領だ。あの憎っくきボレアスのある土地だ。

 

 フィットア領で初めて入った街で、領主のいる街を聞くとすんなり教えてくれたので、道に沿って各町々を観光しながらゆっくり進む。

 

 やっとフィットア領中心都市ロアについた。観光しながら寄り道しまくり、一つの街に時間かけすぎ、だったからか、中央大陸南部のあの事件からからここまで、丸々3年かけてたどり着いた。今までのことを考えると長すぎる様に感じるが、これが普通の旅の感覚らしい。

 

 しかし、さすが世界最大の王国というべきなのか、一地方領地の中心都市と言ってもかなりの規模で城壁を囲っているし、活気に満ちていた。

 

 そして、俺たちの目には、魔王城の様に映る。あの中心にある大豪邸こそが、ボレアスの本拠地であった。

 

 

 

 敵情視察だが、今の所全くやましいところがないので、堂々たる所作、歩きで街に入る。猫耳をピクピク動かしてどんな音も流さない様にして、宿屋を取りとりあえずは初日の視察は終えた。

 

 宿屋でギレーヌと情報共有をする。

 

 「違和感に気づいたか、ギレーヌ。」

 

 「何か変わったところでもあったのか。ギュユスナ」

 

 「なぜかこの街…獣族の奴隷がいにゃくて、いるのは幸せそうな獣族のメイドさんしかいにゃいんです。」

 

 初日でわかったことを、ギレーヌに共有するがギレーヌはキョトン顔だ。

 

 「いいことじゃないか。それがどうかしたのか?」

 

 「ギレーヌ、本来の目的を思い出してくださいにゃ。そもそも、このボレアスグレイラット根切り計画が発動したのは、奴隷として獣族を扱き使う悪い貴族を、パウロのこともあるし、激情に任せにゃぶり殺したいと言った、我々の感情から起因します。しかし、ボレアスグレイラット家が獣族の奴隷を解放して、自らの館で雇うにゃどと言った、獣族の雇用にすら配慮した行いをする様にゃ善の貴族だと、逆に獣族を不幸にしてしまいかねにゃいのですにゃ。」

 

 「なら、ボレアスは襲わず、パウロだけを襲えばいいのではないか。」

 

 「そうですね。パウロは必ずボコスとして、ロアで様子を見てボレアスが正義の貴族だったら、この計画はお蔵入りにしましょうにゃ。」

 

 ギレーヌとの話し合いは直ぐに終わり、大体の方針が決まったところで眠りについた。

 

 

 

 

 雨の降ることなく、晴天となった次の日。住民に聞き込みをする。恙無く書き込みが進んでいたが、突然に事件が起きた。

 

 ギレーヌと近道をしようと、中央のボレアスの館近くの路地裏を歩いていると、後ろからいきなり大声で話しかけられた。

 

 「ねこみみっ!あなたたちねこみみとしっぽがついているわねっ!じゅうぞくなのかしら!?」

 

 振り返ると声しか聞こえず、ギレーヌと一緒に飛び上がる様に驚いた。しかし、まさかと思いゆっくり視線を下すと、なんともまぁ。

 

 こんな裏路地には似合わない。天使の様な容姿でお嬢様の様なおめかしをした真っ赤な赤毛の5歳くらいの子が、仁王立ちしているではありませんか!

 

 ギレーヌと目を合わして、一緒に肩をすくめる。その間もその幼女は、目をキラキラさせて、俺たちのしっぽや耳を目で追ってソワソワしていた。

 

 膝を曲げて視線を合わせて。ゆっくり話す。

 

 「こんにちにゃ!そうにゃよ、俺たちは獣族にゃ。」

 

 「やっぱり!さわっていい!?さわっていい!?」

 

 「いいけど優しくしてにゃ。」

 

 手入れを欠かしていない猫耳としっぽを、赤毛の幼女に触らせているとギレーヌが喋り出した。

 

 「おい、お前どこからきた?ここは子供が立ち行ってはいけない場所だぞ。」

 

 赤毛の幼女がムッとした表情を浮かべ、2メートル近くあるギレーヌを恐れずに見上げて、こう言い放った。

 

 「おまえじゃないわ!えりす、よ!わたしのなまえはえりす、よ!」

 

 「そうかエリス。ここは危ないからとりあえず移動するぞ。」

 

 ギレーヌがそう言った。ギレーヌ意外と面倒見がいいよななんて感想を抱くが、今はエリスちゃんのことだ。

 

 「わかったわ!」

 

 エリスちゃんは、ギレーヌの言うことを理解していない様子だったがこれギレーヌのしっぽに釣られて、結果的に移動することになった。

 

 歩いていると、エリスちゃんがいきなり、俺たちふたりの前に立ち仁王立ちをして、語尾全てにびっくりマークがつく様な喋り方でこう言った。

 

 「みみさわらせてくれたおれいにおしえてあげるわっ!!わたしきょうで、ごさいになったのよ!それでね、いえをこっそりひとりでぬけだしてきたのよ!すごいでしょう!」

 

 「へー!すごいにゃね!けれどお父さんとお母さんが心配しているかもしれないから一緒に帰ろう?言うこと聞いてくれたらもう一回だけ触らして上げるにゃ。」

 

 「わかったわぁっ!!!やくそくよ!ついてきて!」

 

 

 そう言って、エリスちゃんが走って向かった先は、ロアの街で一番目立つ建物領主の館だった。

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