「オーンおじさーん!今日も来たよー!!」
少年は手を振りながら村の鍛冶場へと駆け寄ってくる。火事場の中は熱気で満ちており、中年の男が赤く熱せられた鉄を打っていた。
「来たかいたずら坊主!よくまぁ毎日毎日飽きずに来るもんだ。」
「いいじゃない、あんた。ゲンちゃん、こう見えてもおじさん、あんたが来るのを楽しみにしてるんだよ。」
わざと冷たい態度を取る男を妻と思わしき女性がからかった。
「こ、こら、セジャニ!要らん事を言うんじゃねぇ!」
「もう、そんなことよりさ、今日も聞かせてよ!外の世界のお話し!」
「外の世界の話って...こうも毎日話してちゃあネタが切れちまうぜ。」
「あんた、昔話でもしてやったらどうだい?奴らがこの世界に現れる前の。」
「そうか...坊主、外の怪物どもが出てくる前の話し、知ってるか?」
少年は首を大きく横に振り、目に光をともしながら男が話し始めるのを待った。
男は鉄をジュッと水につけ、大きなキセルを吹かすと、ゆっくりと話し始めた。
この村よりももっと大きな町を建て、仲良く平和に暮らしていたそうだ。
しかしある日、この世のとは思えぬ怪物が姿を現した。
人々は必死に戦ったが、怪物たちには敵わなかった。
残された人間たちは小さな集落を作り、一丸となって生きることを強いられたんだ。
怪物たちは今も外の世界をうろついている。
だが、この山はフレリャ神の恵みに守られて怪物が近寄って来ねぇ。
だから俺たちは安心して暮らしてられるんだ。」
「でもさ、それって昔皆が住んでた場所はまだ残ってる、ってことでしょ?」
「あぁ、そうとも。昔の人間たちが住んでた町から貴重な財宝を持ち帰ること、それが
「いいなぁ...俺もいつかなりたいなぁ...」
オーンはその言葉を聞くなり、いきなり立ち上がると大きく咳払いをした。
「坊主、今日の話しはこれでしまいだ。」
「えぇ~...もっと聞きたいよぉ!」
少年の願いを無視するように、無表情で男は冷やした鉄を釜土に突っ込み、再び熱し始めた。
「ほ、ほらゲンちゃん、おじさん、今は忙しいみたいだから、おばさん家にいらっしゃい!お菓子、出したげる。」
「やったぁ!ありがとう、おばさん!」
嬉しそうに女性の後をついていく少年の背中を、どこか切ない眼差しで男は見守るのだった。
(ロデリゴ...生きてるなら、この子のためにも戻って来てやってくれ...)