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チリ面接官との面接テストは
30分程で終了と相成った。
ありがとうございました、と挨拶をして
退室しようとすると、
『お待ちください。
この後結果発表がございます。
応接間までご案内しますので
そこでお待ちください。』
と言われるがまま、リーグ内の応接間へと案内された。
暫く待つと、ノック音が響く。
「失礼します」と声がかかるのと同時に、
入って来たのはチリ面接官ともう一人。
毛髪の量がえげつない、
何とも神秘的なオーラを纏った女性だった。
なにあれモジャンボの擬人化か何か?
とか失礼な事を考えていると、
こちらに向かってにこりとほほ笑む。
「ようこそ、ポケモンリーグパルデア本部へ。
私は当リーグ代表。
トップチャンピオンのオモダカと
申します。
リーグ総本部代表としてカント―からはるばる
ご苦労様です。」
モジャンボの擬人化と思ったら、
パルデアチャンピオンだったでござる。
大変失礼を致した。
「カントーより視察に来ることは
事前に連絡は受けていましたが、
予定よりも随分と早い御着きのよう
でしたので、対応が遅れてしまいました。
お詫び申し上げます。」
チャンピオンとチリ面接官は頭を下げる。
「カントーリーグ総本部
視察官のアズマです。
トップ自らお越しいただき恐縮
するばかりです。
どうぞお構いなくお願いします。
自分が勝手に予定早めて
挨拶に伺っただけですので。」
私も頭を下げて謝意を表す。
「しかし、出来れば事前に
連絡をしていただければ準備を
させていただいたものを。
何故急な来訪を?」
「ほんまですわ。
チャンピオンテストの面接に
来た時は度肝抜かれましたで。
何度か見間違えかとも
思いましたわ。」
ふむ、疑問はご尤もだし、
予想以上に動揺させてしまった
ようだ。
そこは素直に申し訳ない。
・・・早く仕事を終わらせたかった。
それも多少理由としてあるにはあるが、
他にも理由はある。
「確かに本格的な視察は
一週間後の予定でした。
予定より早く着いてしまったため
挨拶ぐらいは済ませておこうと。
チャンピオンテストを勧められた
時点で素性を明かしても良かったの
ですが・・・、
これもパルデアリーグを知る
いい機会になるのではないか。
そう思いましてね。」
「・・・と、言うと?」
「パルデアリーグとカントーリーグは
遠く離れており、運営状況などの実情を
把握し切れていない部分が多々あります。
故に、十分にリーグとして機能しているか
総本部自ら視察する必要がありました」
言うなればお偉いさんの親族関係であれば
贔屓し、それ以外のトレーナーは
かなり厳しく審査したり、
研鑽を怠り、リーグとしての権威が揺らぎ、
トレーナー達に総じて舐められたり、
侮られたりしていないか、など。
「視察の人間が来たと認識すれば
自然とそれを意識し、
襟元と姿勢を正す物です。
だがその姿だけ見て十分な成果が
得られるかと言えば不十分だ。
視察に対する十分な心構えが
できていない時に敢えて試験に
紛れ込む事で、
本来のパルデアリーグの運営の一部を
見れると、そう考えたのです。
故に、視察といざ知らないリーグ職員に
試験希望を聞かれた際、敢えて
私はチャンピオンテストを受けたのです。」
総本部としては視察に妥協は
許されないからね。
ちょっとばかし意地が悪いとは
思うが、試させて頂いた。
まぁ、あわよくばスケジュールが
それだけ消費されて、
その分観光にしゃれこめると思ったのも
半々あるんですがね。
下心もあるにはあったのよ。
というか大半そうだったし。
結局、自分の詳細な情報を知っていた
チリ面接官にバレてしまったのだが。
「成程。
アズマさんの考えは分かりました。
では、その上でお答え頂きたい。
チャンピオンテストの面接試験を受けて、
いかがでした。」
オモダカさんの言葉に
チリ面接官の面持ちが強張る。
自分がちゃんと仕事が出来ていたのか。
気になって緊張しているようだ。
「面接試験中の待ち時間、
ドアから漏れていた
他の面接希望者の質問と
私との面接の質問に
差異はありませんでした。
全バッジ未収集の者でも
下手に卑下する事無く
適切で丁寧な態度で対応していたと
思います。」
これに関しては申し分ない。
むしろ、四天王に挑みに来ているのに
バッジ0個である者によくここまで
丁寧に接していると感心してしまう。
カント―や他の地方は問答無用で
突っぱねられるからなぁ。
それに比べれば大分優しいと思う。
ただ、
「もう少し厳しめに対応しても
よろしいのではないかとも少なからず
思いました。」
優しすぎるとも思えた。
年少の者には、言葉を選んで
接する必要性はあるだろうが、
冷やかし上等ないい年した大人達にまで
丁寧に接する事はないと思う。
言葉を選びつつ突っぱねても
いいくらいだ。
「巷では
『子供でも楽してチャンピオンになれる』
でしたか。そのような事を口にする者も
街の中にいるようだ。
誰にでも門戸を開くのは美点ですが、
こう言った汚点もある。
少し言動厳しめにして
対応を改めた方が試験を受けに来る
トレーナー達の認識も変化していくのでは
ないか、と私は思います。」
大抵は、ジムチャレンジに失敗した
大人のトレーナー達が撒き散らした悪意のある
噂らしいが。
根も葉もない、ふざけた話である。
カントー民だったらメガガルーラの
破壊光線を浴びせたいくらいだ。
「・・・そうですね。
確かに、その事に関しては以前から
問題視されていました。
これを機に検討するとしましょう。
チリ、今後のチャンピオンテストに関する方針を
今後皆で話し合っていきましょう。」
「・・・えぇ、そうですね。
最近、私もチャンピオンテストの面接方針を
変えた方がええんちゃうか、そう思っとりました。
えぇ機会です。少し早めに面接テスト切り上げて
改善案について煮詰めていきましょか。」
うんうん。
いい傾向に進みつつあるようだ。
他地方とは言え、リーグを甘く見られるのは
不本意だしムカつくからな。
いやー、早速いい仕事をした。
「そうと決まればです。
我々ポケモンリーグだけでなく、
チャンピオンテストの面接方針改善案の
発案者であるアズマさんにもこの件について
ご協力いただきましょうか?」
うんうん。
・・・うん?
「おぉ、そりゃええ考えですなぁ。
発案者のアズマさんがいればより良い
面接形式が出来るやもしれませんし。
ポンポンといいアイデアが浮かぶかもしれない
ですしなぁ。」
はいー?
「え、いや。
私はこうしたいいかなーって。
そう提案はさせていただいただけで
はっきりとした考えや纏まった考えは
ないに等しい――」
「それは皆同じです。
何せこれから考えていくのですから。
さぁ、今日は徹夜になりますよ。
何せ、チャンピオンテストを面接形式を
一から見直していくのですから。」
「言い出しっぺの法則ってな。
カントー民ならこの理屈分かるやろ?」
「ーーそういや私、少々用事があるんでした、
これにて失礼「逃さへんで?」」
踵を返そうとする私の肩をトップと
チリ面接官はがっちりと掴む。
「いや、もう日が暮れているんですが?
そもそも今日私パルデアに着いたばかりで
もう休みた、ちょ力強っ!チリ面接官、
意外と力強い・・・!!
細腕のどっからそんな力ががが」
「ほな行くでーアズマさん」
「ふふ、久しぶりに熱い夜になりそうですね。」
わぁい、これ程拒否りたい女性の誘い文句
聞いた事ねぇや。
嫌でありんす!外国来てまでお泊まり勤務は
嫌でありんす!
「離してクレメンス!!離してクレメンス!!」
「「駄目です(やで)」」
クレメェーンス!!!
アズマはこうしてパルデアリーグの最奥へと消えていったのだった(まる)
その日、パルデアリーグ本部の会議室の電気は消える事がなかったという。
アズマの明日はどっちだ。
主人公アズマ
予定より早めの来訪とチャンピオンテストの内容に率直な意見をそれっぽく言ったらオモダカさんのスイッチを入れてしまった男。あるぇ?仕事終わらせに来たはずなのに仕事が増えた不思議。
オモダカ
パルデアリーグの最高責任者兼トップチャンピオン兼アカデミー理事長とかいう改めて筋書きを見ると兼任する数がマジで凄まじい人。人気ありそうだし、パルデアの報道番組とかCMにも出てそうだから仕事量が半端なさそう。一番の社畜は実はこの人ではなかろうか。
仕事を早く終わらせたいアズマに対して、仕事熱心でリーグ運営に対して熱意のある立派な人物であると気に入った様子。
アズマが立派な社畜になる日は近い。
チリ
チャンピオンテストの面接内容に修正をかけた方がいいのではと、日々感じていたため、アズマの言葉で改善方向に進む事を非常に良く思っている。それはそれとして急な来訪には度肝を抜かれたので、改善案を話し合う人員としてアズマを引き込めたのは趣向返しで多少満足している。