明けたので初投稿です。
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リーグ面接会場
その日、パルデアリーグ本部に
面接テストを受けに来たのは、
バトルの腕に自信のある学生の一人であった。
ジムバッチこそ5個であるが、そんじょそこらの
トレーナーなど目ではないと自負しており、
それはジムリーダーに対してもその限り
ではなかった。
故に、ジムチャレンジ自体に大した意義を
感じ取れず、直接四天王に挑まんと
無謀にもパルデアリーグ本部の門戸を叩いたの
である。
噂では『子供でもチャンピオンになれる』であったか。
流石にそこまで苦労せずに勝てる訳はない。
苦戦は強いられるだろう。
だが、子供でも一次試験のテストを
通過できたのだ。
面接程度、自分に通り抜けられない
道理はない。
「失礼します」
堂々と学生の少年が面接室のドアをノックした後、
入室する。
そこに座っていたのは、
如何にも厳つい様相の男性であった。
筋骨隆々なその身体は、
アカデミーのサワロ教師よりも
屈強なイメージを彷彿とさせ、
額に刻まれた大きな古傷と眉間の皺、
そして鋭い目つきは如何なる者も震えさせるには
十分な程の威圧感を感じさせた。
まるで、ハブネークに睨まれた
グルトンの如く少年の歩は止まりそうになった。
だが、少年は心の中で首を振る。
落ち着け、面接官が何だと言うのだ。
直接、彼と戦う訳でもあるまいに。
彼よりも怖いポケモンなぞいくらでも
出会った事があるだろう。
そう奮い立たせる。
「どうぞ、お座り下さい。」
「失礼します」
強面の面接官に促されるがまま、席へ座った。
「では、これよりチャンピオン第一次試験
面接試験を行います。
さて、まず初めにお互いに自己紹介を
しましょうか。
今回、面接官チリの代理として面接官をさせて
頂いております。アズマと申します。
よろしくお願いします。」
「オレンジ―アカデミー2年のアカシアです。
本日はよろしくお願いします。」
そう少年は頭を下げると、
厳つい顔を緩ませ微笑みを向ける。
まず、第一印象は良いようだ。
『面接時はまず、元気な挨拶から。』
社会人面接マニュアルを事前に購入して
読んでおいて正解だったと
内心思った。
「えぇ、よろしくお願いします。
早速ですが、アカシアさん。
貴方の経歴を見させて頂きます。」
面接官のアズマはデスクに置かれた
パソコンを操作し始める。
「成程、ジムバッチは・・・5個ですか。」
「えぇ、そうです。えと、何か問題でもありますか?」
少年はアズマに聞き返すが、
表情を一切変えることなく、
アズマは首を横に振る。
「いいえ。
確かに、ジムバッチは飽くまで指標。
チャンピオンテストを受けるに当たり、
ジムバッジ8個入手は
前提条件に当てはまらない。
全員が平等に試験を受ける事が可能です。」
「しかし、受けるのは兎も角、
強さの指標たるバッジが少なければ
それだけ一次試験を通過する事が
難しくなるのは、アカデミーの生徒である
アカシアさん。貴方ならご存じの筈。
貴方は、残りの強豪ジムの使い手に
打ち勝った証たるジムバッチに勝る
何かをお持ちでしょうか?」
そら来た、とばかりに少年は
おもむろにスマホロトムを操作する。
普通、面接中はスマホをオフにするだろう
と半ば呆れていたアズマであったが、
まぁ自分の実力に己惚れた学生さんだと
思えばと、敢えてスルーした。
「あ、あった。これです、
ほら、ハッコウシティのリーグ主催の
ジュニアグランプリで二回準優勝しました。
他にも、チャンプルタウン宝食堂杯とかでも
3,4回戦に進出しています!!
ほら、トロフィーの写真とかもあります。」
スマホロトムを通して、
グランプリの入賞杯を
アズマに見せつける少年。
余程、自慢したかったのだろう。
自分の力を示したかったのだろう。
声に喜色が乗っている。
だからだろうか。
彼は気づかなかった。
アズマの表情に感情が消えているのに。
「成程。分りました。
つまり、貴方は
我々ポケモンリーグの看板たる
四天王、ないしトップトレーナー。
チャンピオン オモダカ氏を
街のアマチュア大会、
もしくはアマチュアトレーナーレベル
であると。
そう認識しているという事で
宜しいでしょうか。」
「・・・え?」
少年の表情が固まる。
「貴方は盛大な勘違いをしています。
まず一つ。貴方の軽視している
ジムリーダーについて、ですが・・・。
彼らはアマチュアトレーナーではなく、
正式にポケモンリーグから選抜され
実力が認められたリーグトレーナーです。
それこそ、街規模ではなく
地方全土の実力者同士で犇めき合う
大規模な大会で数々の
優秀な成績を収めているような人物です。
例え、挑戦者のポケモンのレベルが
圧倒的上でもジムリーダー達は
最善を尽くし挑戦者達に立ちはだかる事が
出来る。
貴方も、経験があるのではないでしょうか?」
「う、・・・それは。」
少年には覚えがあった。
レベル差が大きく、
自分が大いに有利である局面。
その中で、決して絶望する事無く、
今出ているポケモンでどのような事が
出来るのか、
戦略を練るジムリーダー達。
特に、チャンプルジムのジムリーダ―と
戦った際、タイプ有利だった
パーモットが麻痺にした
ムクホークにからげんきで落とされたのは
衝撃だった。
「そのジムリーダーよりも
上位に君臨する四天王。
貴方は果たして、対等以上に戦う事が
出来るのでしょうか?」
「―――。」
少年は、先程とは打って変わり
押し黙ってしまう。
「二つ。貴方は自分の視野の狭さに
気付いていない。
貴方は、まるで世界を見てきたかの
ように己の実力を過信しているよう
ですが。
パルデア全域をその足で歩いて、
目で見て来たのでしょうか?」
「・・・全部は、正直自信ないです。
見ては、ないと思います。
でもパルデアのあらゆる所で
トレーナーと勝負をしてきました!!」
「在野のトレーナー達とですか?
確かにあらゆるトレーナー達と戦い
勝ってきたようだ。
各所のポケモンセンターにいる
リーグ職員からは貴方の戦歴の確認は
取れています。」
「だったら――!」
「しかし、それがチャンピオンテストに対して
何の証左となりますか?」
「―――え、と。そ、れは・・・・。」
「在野のトレーナーを軒並み倒せれば
四天王を越え、チャンピオンになれると。
そう、お思いですか?」
「・・・・・。」
「先程も言いましたね。
リーグに選抜されしトレーナーが
ジムリーダーであり、
そんなジムリーダーの更に上にいるのが
四天王であると。
そのジムリーダー達を倒せずして、
何故四天王に到達できますか?」
「うぅ・・・・。」
少年は言葉失ってしまう。
「確かにポケモンリーグ公認の場だけが
ポケモンバトルの全てではありません。
時には、在野のトレーナーと実力を
競い合う事もトレーナーの技量と
ポケモンとの絆を深める機会と
なるでしょう。
だが、周りのトレーナーの力だけで
物事を測り、
全てのポケモンジムに挑まず、
パルデア各地を踏破せず、
あらゆるポケモンと出会わず、戦わず。
自分の実力はリーグに及ぶと過信する。
それは自信ではなくただの驕りでしかない。」
アズマの厳しい言葉に少年はすっかり
意気消沈している。
「驕りは全ての才能を腐らせる。
今まで伸びしろのあった芽が
根腐れを起こし腐っていくように。
驕りという過剰でいらぬ栄養が
自分の芯たる根をグズグズにしていく。
貴方にはそうなっては欲しくない。」
少年の肩に手を置き、再びアズマは微笑む。
「君は今日指摘された事で、
自分の過ちに気付きつつある。
だったら、自分で正しい場所へ
進む事が出来る筈です。」
「出来る、でしょうか。俺に。」
「道を示しました。後どうするかは
君が決めなさい。」
「でも、俺は・・・・。」
不安そうに呟く少年にアズマは問う。
「君は、ポケモンが好きですか?」
「・・・そんなの――」
当たり前です。と
少年はアズマに面と面を向けて
返事する。
「・・・勝負の世界は厳しい。
ですが、諦めず最後まで
その気持ちがあれば
きっとバッジを集められますよ。
何せ、アオキさんを倒す事が
できたのだから。
ジムに挑んで、パルデア地方を
隅々まで踏破して、
色んなポケモンと出会って。
色んな経験をしてから、
またパルデアリーグにおいでなさい。
そして、貴方の経験した全てを
その時に話して下さい。
応援していますよ。」
「・・・はい!!」
にこやかに、そして晴れ晴れとした
表情で退室する少年の後姿を見送った
その数日後。
「件の面接官の方に相談に乗って頂きたくて。
人生相談といいますか。」
「お願いします。どうしても自分が行くべき道に
迷いが生じてしまって。」
「ポケモンの扱いについて悩みがあって。」
「すみませんが、チャンピオンテスト以外での
御来訪はお断りさせていただきたく。
ここは飽くまで試験会場ですのでお引き取りを・・・!」
先の学生から話を聞いたのか。
連日のように面接試験、というよりも
行き詰ったトレーナー達が相談しにくるという
一風変わった風景が見られたという。
一応、体調悪いチリさんの代理を突如
務めただけなのにどうしてこうなった。
チリ「なぁ、アズマさん。面接担当、パルデアいる間だけでえぇから交代せぇへん?」
アズマ「せぇへん。」
以降別枠で、相談用紙と相談箱なる物が設置されたらしく、それに一つ一つ返答する仕事が増えたとかなんとか。
という訳で、面接テストを代理したアズマのお話でした。
そろそろポケモン出してぇなー、俺もな―。
次の話には、ポケモン出て来るかも、ソーナノ。