異形のヒーローになりたくて~シャドウレイダーDT~   作:かつおナルド

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どうして急に下ネタに奔っちゃったの?

悪魔憑きから快復した金髪の美少女エルフ、アルファ(仮名)は、なんというか、そう、逸材だった。

世界を裏から支配し、魔神ディアボロスの復活を目論む秘密結社ディアボロス教団。

俺達が考えた、邪悪な悪い奴らの設定を語ると、彼女は話の途中で食い気味にノって来たのだ。

多分、悪魔憑きの正体が英雄の子孫だって設定がポイントだったんじゃないかな。

彼女の中ではエルフの英雄オリヴィエは自分と同じ顔をしているに違いない。

 

それからの彼女の行動は速かった。

どこからともなく、自身と同じ境遇の少女たちを集めてくると

悪魔憑き被害者互助会兼、スタイリッシュ盗賊スレイサークル『シャドウガーデン』を

本当に立ち上げてしまったのだ。

感性を同じくする少女を何人も集めてきた手腕には驚いたが、まぁどの子も悪魔憑きになって全てを失ったようだし

コードネームを名乗って新しい自分になる、というのはカウンセリングとして、有効だったのかもしれない。

 

シャドウガーデンの主な活動は3つ。

ひとつ、悪魔憑き被害者の保護と治療。

ふたつ、生活費の調達とヒーローごっこのための盗賊のスレイ

みっつ、ディアボロス教団の設定をよりを緻密にするための企画会議である。

今日も盗賊達で実験、もといアルファの治療を行った廃村を整備した住居兼集会所では

シドを除いたシャドウガーデンの幹部が勢揃いしていた。

ちなみにシドはお貴族様なので学校に行っている。

 

「報告会で『七陰』が全員揃うなんて、最近では珍しいですね」

シャドウガーデンの主要メンバーを紹介しよう、まずは黒髪のロングヘアのエルフ、ガンマ。

運動音痴だが、とても頭がよく(ガーデンのメンバーは一人を除いて大体頭がいいのだが)

シドがよくぽろりと零す陰の叡智にも強い関心を寄せていて、その関係で七陰の中では一番会話が多いと思う。

スタイリッシュ盗賊スレイヤーという、肉体労働の極みかつ、非常に不安定な職業(?)に不安を抱いているのか、最近は起業して

安定した金銭収入を得ようとしているしっかり者でもある。

起業計画の相談も何度か受けいているのだが……気のせいかな?その計画の中に俺は含まれてなくない?

とは言え、起業するならガーデンの女の子同士で立ち上げるんだろうし、俺も混ぜてよとはちょっと言いづらい。

ちなみに『七陰』はガーデンの運営メンバーの事ね。陰の叡智は現代日本の知識。やっぱり彼女たちセンスあるよ。

 

 

「……恐らくこれは、七陰全員で、面を合わせて共有しておくべき情報になると思うわ」

ガーデンのリーダー、金髪エルフのアルファ様。

自然と呼ばれてるのか、そう呼ぶように指示したのかは知らないが、皆に様付けされている。

後者だとしたらちょっと引くんだけど、実際この子凄いからね、正直、真の陰の実力者だと思う。

リテラシー意識も非常に高く、サークル活動中はコードネームで呼ぶように徹底したり

みだりにサークルメンバーの過去を詮索しないように明文化したのもこの子だ。

まぁこの世界の文明レベルで身バレにどれほどの意味があるのかと思わなくもないが。

 

「そこまで重要な情報……もしやディアボロス教団の機密事項掴んだのでしょうか?」

銀髪で青眼で泣きぼくろが可愛いエルフ、書記のベータ。

主にガーデンの活動記録というか、リプレイ本を執筆している。

ガーデンの皆は基本シャドウ様が好きなんだが、その中でとくにヤベー子がこのベータだ。

シャドウ様を美化した活動記録はまぁ問題ない。

執筆相談に見せかけた恋愛相談と思わせて本当にただの執筆相談だったのもいい。

それで自分をヒロインにしたシャドウ様との恋愛小説を書くのも構わないんだが、それを人に普通に読ませるのはどうなんだ?

恋は盲目とは言うが、将来正気になった時に死ぬんじゃないか非常に心配になるわ。

 

「教団の主要な目的の一つを掴んだわ……けど、今回アルファ様が重要視しているのは目的自体じゃないわね」

ちょっとあざといツインテールは雑用係のイプシロン。

実際に雑用係と言われている訳では無いのだが、彼女本人は自身が七陰の中でも器用貧乏な事を気にしているようだ。

正直、ちょっと親近感が湧いている……が、本人は気づいているのかいないのか、魔力操作の緻密さにかけては彼女の右に出る物は居ない。

その内、悪魔憑きの治療も出来るようになるのでないのだろうか。

シドとアルファしか治療が出来ない現状、そうなれば彼女はガーデンの中でも重要な人材になるだろう。

 

「教団のアジトがわかったですか?ならすぐに狩りにいくのです!」

犬の獣人のデルタ、バカである。

あんまりバカなので諦めの境地に至って剣の指導をやめたシドの目を見た時の、アルファの何とも言えない顔は忘れられない。

だが彼女の獣殺法は、変身後のキャラ立ての参考になるので、ありがたいと言えばありがたい。

ちなみに自己紹介の第一声が「サラはデルタなのです!」という、コードネームの意味をまるで理解していない内容だった。

おかげでガーデンで唯一、本名を知っている相手でもある。

 

「バカ犬は黙ってて。今回は本当に真面目な話なんだ」

デルタとは犬猫、もとい犬猿の仲なのは猫の獣人ゼータ。

ガーデンのアイディア出し担当で、諜報と称してネタ探しをしながら盗賊のねぐらリストを作ってくれる

文芸面でも実働面でもガーデンの命綱となる子だ。

 

 

「・・・・・・」

そして話を聞いているのか居ないのか、常に眠そうにしているのがイータ。

天才的な才能を持つ天才であり、正直天才以外の形容が思いつかない発明家である。

金と物とネタさえ渡せば一晩で大体の物は作ってくれる天才だ。

もしかして君も転生してない?

 

そして7人の美少女に囲まれているのがこの俺、雑用係(真)である、コードネーム『レイダー』こと、ヒロ・イーギョウである。

そう、俺はガーデンが活動を開始してから数か月、未だに変身ヒーローとしてデビュー出来ずにいた。

本当ならばアルファと出会ったその日に、俺が改造人間である事も伝える予定だったのだが

設定の触りを語った時点で、アルファが食い気味にノって来たため、俺自身の設定を語り損ねたのだ。

その後、ディアボロス教団(という設定の盗賊)と何度か交戦したのだが、相手が弱すぎて、変身するまでもなく勝ててしまうし

そもそも七陰の皆が強すぎる。

一人であっても鎧袖一触だろうに、7人がかりで連携してくるとか、もはや戦いではなく、駆除・虐殺である。

流石に怪人相手にとは言わないが、せめて初変身は魔剣士やアーティファクト使いじゃないと格好がつかないのだが……仮に出てきても

七陰が苦戦する気がしない……

そんな訳で、俺は改造人間設定を披露するタイミングを逃し、ただ左手に包帯を巻いているだけの邪気眼おじさんとして

七陰を相手に、家庭教師の真似事をしながら雑用をこなす日々を送っていた。

 

「これは奴らのアジトの一つから奪ってきた資料よ。これには『一般人への悪魔憑きの細胞の移植』に関する研究について記されているわ」

「!」

 

アルファが紙束を掲げてそう言った瞬間、俺は思わずガタリと椅子を鳴らして、居住まいを正した。

アルファ様、初めて会った時にチラっと言っていた事を覚えていたんですね!そして今回、ようやくそれを掘り下げてくれる気になったのか!

 

「レイダー、もしかして貴方は既に詳細を知っているんじゃないかしら?」

「一般人を悪魔憑きにする研究……?そんな事に何の意味が……」

 

話の続きを促すように、七人の視線が俺に突き刺さる。

 

「そうだな、どこから話した物か……」

 

だがそれならそれで、事前に話を通しておいて欲しい。

そうすればプレゼン用に話を纏めておいたんだが、急に言われても切り出し方に困る。

 

「まず皆に聞きたいんだけど、悪魔憑きの状態から元に戻った時、最初にどう思った?」

「ビックリしたのです!」

「聞きたいのはそういう事じゃないだろ、バカ犬」

「ぅうううう!じゃあメス猫は驚かなったですか!?」

「そりゃ驚いたけど、話の流れから考えて、レイダーが聞きたいのは体の調子がどうだったか、じゃないか?」

 

デルタとゼータの言い争いを背景に、七陰たちは顔を見合わせながら当時を思い返した。

 

「体が軽くなって、痛みや苦しみもなかったわね」

「シャドウ様の治療は完璧でした、完全な健康体になっていたと思います」

「皆似たような感想じゃないかしら……治療してくれたシャドウへの感謝、健康な体への感動、そしてディアボロス教団への怒り」

「なるほど、アルファもそう思ったか。なぁ冷静になってから思い返してみると、その感想はなんというか、実に()()だと思わないか?」

 

瞬間、部屋の音が全て止まった。

悪魔憑きを軽く見られたと思ったのか、アルファが僅かに怒りを覗かせていた。

 

「レイダー、いくら貴方でも言っていい事と悪い事が」

「悪い、今のは言い方が不味かった、暢気と言うか、あるべき反応が無かったんじゃないかという話だ」

「あるべき反応、ですか?」

「あぁ、皆がどうだったのかは知らないが、俺達がアルファを保護してから、シャドウが治療するまでにかかった期間は一か月。

その間、俺達は一度もアルファにメシも水も与えていない。捕まっていた期間を考えれば、もっと長い期間飲まず食わずだったはずだ。

そしてシャドウは悪魔憑きを治療したが、逆に言えば、あいつがしたのはそれだけだ」

「……飢えと、渇き」

 

それまで黙っていたイータがポツリと呟くと、七陰達がハっとした顔をした。

 

「魔力が暴走している間は、飲食が不要になるという事?」

「それに、運動能力も低下しない、治療後にリハビリを必要とした奴が居るという話も聞いてないし。腐った体に虫がたかっていても、悪魔憑き以外の病気も併発してない。

ついでに言えば、多少傷ついてもすぐに傷が塞がる……のは優秀な魔剣士も同じか。多分だけど、暴走した悪魔憑きって意図的に殺されない限り死なないんじゃないか?」

「……それは、つまり」

 

権力者が最後に行きつく欲望、不老不死。

 

「か、どうかは解らんけどな、悪魔憑きの寿命とか調べた訳じゃないし。だが少なくとも、もしメリットだけを取り込めれば

普通の人間より頑丈で長生き出来るだろうってのは間違いないな」

「……ここまでの話は資料と一致していますね」

「ええ、人間に悪魔憑きを変異させる要因……ディアボロス細胞を移植する事で、人を超えた強靭な肉体を作り出す、Diabolos Transfer……DT計画」

 

ん?アルファ様今なんて?

 

「レイダー、貴方さえよければ左手の包帯を取って見せて貰ってもいいかしら?」

「あ、あぁ。構わないけど…」

 

俺は悪魔憑き細胞(仮)改めディアボロス細胞によって黒く変異した左腕を皆の前に晒した。

 

「その手…!私達が見間違えるはずもない!」

「悪魔憑きは女性にしか発現しないはずです、なのになんでレイダーに悪魔憑きの兆候が!?」

 

ベータ達が信じられないと言った顔でこちらを見るが、アルファは、やはりそう言う事かと言いたげな顔で頷いていた。

 

「あの日に見えた左腕、見間違いかとも思っていたけど」

 

その通り、改造人間に悲しき過去。

俺はディアボロス教団の非道な実験によって生まれた改造人間、その名も…

 

「レイダー、貴方はDTなのね」

 

アルファ様、どうして急に下ネタに奔っちゃったの?




ちなみにシド君が行ってる学校は魔剣士学園じゃなくて幼年学校です
まだクレア誘拐事件前
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