「なっ………」
言葉が出なかった。
『過去』と言われて思い当たる節は一つある。
だが、その『過去』から逃げて何が悪いのか。
友人や身内ならともかく、赤の他人からそれを悪く言われる筋合いはない。
などと動揺していると、大淀は再び口を開く。
「あの事件の真相、知りたくないですか?」
「……しん……そう……?」
声が掠れる。
もはや冷静でいることは出来なかった。
「………なんなんだよッ!真相って!!」
「教えろッッ!!!!!!!大淀ッッッ!!!!!!!!!!」
周りなど気にする余裕もなく叫ぶ。しかし、
「ッ…………」
頭痛がしてきた。呼吸も荒い。
「今の話は他言無用で。…良い知らせを待っていますね。」
そんな中で大淀はそう言って去っていった。
「お、おい!待て!」
そう叫ぶも、大淀は振り向くことなく駅へ向かい、人混みに消えていった。
その場で座り込む。
…………なんなんだよ
声にならない心の中でそう呟く。
その頃には周りの寒さなど微塵も感じなかった。
「お前は大淀と組んでいるのか?」
家に帰るなり俺は妖精を問いただす
「オオヨドトハケイジュンオオヨドノコトデスカ?」
「そうだ、黒髪ロングのメガネかけてる大淀だ」
「イヤ、ソンナコトシテナイデス」
本当にそうなのだろうか?
協力関係になければ妖精が見えているということを知っているはずがない。
それとも他に何かその事が分かるような特徴でもあったのだろうか?
兎にも角にも目の前の妖精が嘘をついているようには見えなかった。
などと考えていると
「ナニカアッタノデスカ?」
心配そうに聞いてくる。
案外良いやつなのかもしれない。
「…………いや、なんにもなかったよ」
さっきの事を話そうとも考えたが大淀がどこで繋がっているのかが分からない以上は無闇に話すことはできない。
それにこの妖精とやらもまだ信用できない。
だからこの目で確かめるのだ。真相とやらを。
「………なぁ」
「ハイ」
「俺、海軍行くわ」
たった一言そう告げる。
「ホントウデスカ!」
「アリガトウゴザイマス」
そう言って深々と頭を下げる妖精。
案外礼儀正しい。
そういえば妖精って言っても名前などはあるのだろうか。
ほら、例えばティ○カー・ベルみたいな。
「…………そういえば、お前名前は?」
「ナマエハアリマセン、ゴジユウニオヨビクダサイ」
どうやらないらしい。
ご自由にってもなぁ……
………パンチ強かったからなぁ
「…………井○尚弥」
「フン!」ドゴォ
「ぐぼぁっ」
……ご自由にって言ったやん
いやまぁ少しふざけたのは悪かったけど…
やっぱ良いやつじゃないわ…
そこからはトントン拍子だった。
一応父へ連絡。その後学校にも連絡。
その後採用試験、適合検査も通過して晴れて入隊が来まった。
…………悠はめっちゃ羨ましがってたが。
それでも俺を応援してくれた。本当に良き親友を持ったと思う。
そして『いつか俺もそっちへ行くッ!!』って言ってた。
あれ冗談じゃなかったんだな……。
そして学校を卒業し、家を出る日
「……ここともお別れか」
ふと独り言を言う。
俺は賃貸マンションに住んでいたため今月で解約となる。
「デアイアレバワカレアリデスヨ」
と、ナオが返してきた。
ちなみに井○尚弥はお気に召さなかったようなので、その中から抜き出してナオと名付けた。
どうやらナオは気に入ったらしい。
てかサラッと俺に付いてくることになっていた。
ちなみに家具は置いていくことにした。
大家さんに許可はとってある。
使えるものがあれば使って良いし、もし処理にお金がかかるようなら自分宛に請求するよう言ってある。
「……そろそろ行くか」
そう言ってドアを開ける。
この3年間ほぼ毎日、見てきたこの日常の景色ももう終わり。
マンションの出口では大家さんと会った。
「もう行くのね」
大家さんはとても優しいおばさんだった。
ちなみに今年で63歳になるらしい。
3年間一人暮らしだった俺を気にかけてくれていた。
「アナタハトシウエガタイプナンデスカ?」
………こいつ後でぶっ飛ばす。
もちろん妖精の声は普通の人には聞こえないので鮮やかにスルーする。
「………はい、お世話になりました。」
「オーイ、ムシシナイデクダサイヨ」
深々と頭を下げる。
「いいのよ。頑張ってね」
「はい、頑張ります」
そして大家さんは優しく微笑み
「…もし辛かったら、いつでも帰っていらっしゃい」
「……はい。」
こちらもそう返した。
大家さんの優しさに涙が出そうだ。
「オーイ、キコエテンダロ」
それに引き換えこいつは…
てか急に口悪いなおい。
「……それじゃ」
そう言って俺は駅へと歩を進めた。
その時
「いってらっしゃい!」
そう後ろから声がする。
俺は振り返り、微笑み一言こう返した。
「……行ってきます」
そっから海軍士官学校への入学となり卒業して今に至るわけだ。
あ、ちなみにいまナオはいない。
気づいたらどこにもいなかった。
…………どこいったんだあいつ。
ここでふと気になることがあったので聞いてみることにする。
「なぁ、父さん」
「んー?どうした?」
「大本営に軽巡大淀って所属してる?」
ここまで来るまでには姿は見なかった。
もしかしたらあの一連の会話すべてが悪戯かなにかではないかと思った。
いや、そう思いたい部分もあるのかもしれない。
ここでそんな艦娘はいないと言ってくれればすべてが解決するのだが…
現実はそんな甘くなかった。
「ああ、確か所属していたが…どうしたんだ?急に?」
デスヨネー。
いや、期待してなかったけどね?うん…。
「いや別に、特に何かあるって訳じゃない」
「そうか?何か気になることでもあるんだったら答えられる範囲でなら答えるぞ?」
「いや、本当に大丈夫、ありがとう」
まだ、あの時のことは話していない。裏が取れていない以上は安易に外に漏らしてはいけないと思ったからだ。
「それよりなんで俺を呼んだんだ?」
とりあえず話題を変える。
「む?あぁそれはな……」
そう言うと、いつになく真面目な顔でこう告げた。
「え?」
まさかの言葉に驚きを隠せない。
え、マジで言ってる?俺つい先日士官学校卒業したんだぜ?
これあれだぜ?免許証取って3日でスポーツカー運転しろって言ってるみたいなもんだぜ?
通常ならば士官学校を卒業するとどこかの鎮守府に配属となり、提督補佐もしくは雑務などに就くことが多い。
そしてある程度の期間を経て鎮守府の最高指揮官つまり提督となることがほとんどなのだ。
確かに一部例外もあるそうなのだが、それはごく一部であった。
俺はまだ若い。父は元帥であり、俺に甘いところもあったりするが息子を贔屓して昇進させるような性格ではないことは分かっている。
だからこそ今回のいきなりの江ノ島の最高指揮官就任を言い渡され驚きを隠せなかった。
「……一体どういうつもりだ?」
一度心を落ち着け父に問う。
すると父はさっきまでの真面目な表情を崩しこう言った。
「別に理由もなく最高指揮官にするわけではないさ、ただ江ノ島はここ数年稼働してない状況だったからな。だから江ノ島の状況の把握と復興をするのに俺が一番に信頼をおけるお前を選んだというわけだ。」
なるほど、つまりは面倒事なわけだぁ!
それを息子なら気兼ねなく押しつけられるってことかぁ!
………こんにゃろ。
そもそも卒業後にここに呼び出された時点で嫌な予感はしていたがやはりその予感は的中した。
「あぁ、あと初期艦だがこちらで用意してあるからな!」
などと、ニカっと元気たっぷりで言う父。
………え、初期艦決まってんの?
なんと初期艦は選べると聞いていたがそんな選択権も剥奪されてしまった。
「………それで?その初期艦は?」
………もう何言っても仕方ないな。
と、拒否権がない事を察し、諦めてその初期艦について聞いた。
「それならもうそろそろ 」
コンコンコン
と言ったところでノックが聞こえた。
「お、来たな、入れ」
そう言うと一人の少女が入ってきた。
そしてその少女は敬礼し
と、声高に言った。
「紹介しよう、特型駆逐艦の吹雪くんだよ」
と、紹介された少女 吹雪は見るからに緊張でガチガチになっていた。
「俺は高砂大輝、これからよろしく」
とりあえず自己紹介しとく。
「は、はひ、よ、よろしくくく、おおお願いしましゅ」
カミカミである。可愛い。
吹雪は顔を真っ赤にしてわたわたしていた。
うん。可愛い。
なんて思っていると、父が口を開く。
「では揃ったところで早速だが江ノ島へ向かって欲しい。地図は吹雪くんに渡しておくからな。」
そう言って吹雪に地図を渡す。
だが吹雪は取り損ねて落としてしまう。
………大丈夫かな。
純粋に心配になった。
「はは、そんな固くならなくて良いんだぞ?
……大輝」
「は、はい」
唐突に名前を呼ばれ返事をする。
「……何か困ったことがあったらいつでも連絡してこい。
……頼んだぞ」
「……はっ」
敬礼をし、返事をする。
ここだけは親子としてではなく。
元帥、部下の関係となった。
「じゃあ行こう、……吹雪」
「は、はい!」
吹雪に声をかけ、俺たちは部屋のドアへ向かう。
「 失礼します」
そう言って俺たちは部屋を出た。
部屋を出て出口へ向かう
どうやら駅までは車を出してくれるらしい。
吹雪と共に歩を進める。
……気まずい。
なんか話した方が良いのだろうか。
でもそんなに話に自信はない。
どうしたものか。と考えていると突然声をかけられる。
「 お久しぶりですね。」
その声を聞き、すぐに分かった。
「………久しぶりだな、…………大淀」
と、声の正体の方へ向く。
その姿はあの日と変わっていなかった。
「……まずは士官学校の卒業、そして江ノ島鎮守府への着任おめでとうございます」
と、やはり微笑みながらそう言う。
「例のことはまだ話すことはできません」
「…………」
無言を貫く。
「江ノ島鎮守府に着任した今、私から一つお願いがあります」
「……それが条件か?」
「ええ、江ノ島鎮守府を復興させ、艦娘の皆さんを助けていただきたいのです」
…助ける?そういえばナオも似たようなことを言っていたような気もするが今は気にしないことにした。
「……分かった」
一言そう返した。
これ以上何かを言っても無駄だと思ったからだ。
そして向きを変え出口へ向かう。
もう向こうから声をかけてくることはなかった。
出口への道のりでここまで無言だった吹雪が聞いてくる。
「あ、あの、何かあったんですか?」
少し、不安や恐怖などの感情が混じった声だった。
「……いや、なんでもない。大丈夫だよ。」
なるべく怖がらせないよう微笑みながらそう言った。
それで納得したのかそれ以上追求してくることは無かった。
そして俺らは車に乗り込み江ノ島へ向かった。
空は見れば青空から一変してどんよりとした雲に覆われていた。
「……………なぁ、吹雪」
「は、はい」
「ここだよな?間違ってないよな?」
「は、はい、間違いありません。」
江ノ島に着き地図通りに向かった先にはまるで廃墟のような建物が建っていた。
「……………………まじかよ」
それを見た俺は思わずそう呟くのだった。
どうも!今回もお読みいただきありがとうございます!
今回でやっと鎮守府への着任となります!
いやぁながったなぁ!
と、書いた本人が言っているのですが、想像以上に長くなってしまいました…。
特に家を出るときは「こんなに必要か?」と後から思いましたがもうごり押しでいきます!(笑)
深夜テンションで書いたとこもあるのでおかしな部分あるかもですか…
目をつぶっていただければ幸いです(^^;
さて、今回で二人目の艦娘、初期艦として吹雪が出てきました!
なぜ吹雪か?それは僕の最推しだからです!!!
吹雪は可愛い。異論は認めない。
と言ったところで2話目にして出てきた艦娘が二人といった感じなんですが……。
大丈夫です!次回からは出ます!!
今度は本当です!!信じて下さい!!(土下座)
と言った感じで次回からは本格的に艦娘と関わっていくわけですが…
皆さんご察しの通り、鎮守府復興物語ですね!
今までの2つで一体なんの話なんだと思った方々もたくさんいらっしゃるでしょうが、鎮守府の復興がメインと考えていただければと思います。まぁ、復興以外にもさまざまなことがあるんですが…
いくつか伏線(?)のようなものもありますのでぜひ今後どうなっていくのかを予想して、次の話を待っていただければと思います!
ちなみにですがここで出てきた父(元帥)と息子の関係性はそこそこ良い感じですかね?喧嘩なども滅多にない感じです。父の性格は普段は明るい感じで息子には甘い部分もありますが、仕事には熱心なタイプです。
……これ以上書くと後書きだけで大変なことにならそうですからそろそろ終わりにしたいとおもいます(笑)
ではぜひ次の話も気長にお待ちください!
感想や評価、要望、ここ直した方が良いなどといったご指摘も受け付けておりますので是非よろしくお願いします!!
ではこの辺で!失礼ノシ