俺の日常に平穏が無いのはどう考えてもワンサマが悪い!【完結】 作:秋月月日
先に言っておく。メインヒロインは黒兎さん。でも登場までは地味に長いよね? だから原作ブレイクを一応タグとしてつけておいたよ。やったねタエちゃん!
この作品はどこぞのゲ〇ターロボと同じで、勢いと根性とやる気と叫びと勢い(大事な事だから二度言いました)で構築されています。ついでにコメディ。ああいや、やっぱり九割がコメディ。
そしてこの作品は休憩代わりなんで、更新は不定期です。更新が遅くなったときの犯人はヤス、他はシロ。
「私の邪魔をするという事は死を覚悟したと取って間違いないな?」
突然だが、俺は今、命の危機に瀕している。
世界的にも有名なIS学園の学生寮のど真ん中で、俺こと
壁に背中を押し付け、首を人質に取られた俺は固唾を呑みこみ、全身の毛穴から噴き出る冷や汗に不快感を示しつつも、目の前の女子生徒――
「ちょ、ちょっと落ち着けよ篠ノ之。まずはその竹刀を降ろして落ち着こうぜ? ビークール、冷静なのが一番大事なんだ」
「貴様が私の邪魔をしなければ全てが丸く収まるのだが?」
「ねえそれって丸く収まるのは俺の命だけだよね? 事態の進展と引き換えに俺が犠牲になっちゃうだけだよねぇ!?」
「―――秘剣・延髄斬り」
「喉仏狙っといて本命は延髄なんかいぃぃぃ!」
それって本当に洒落になってねえんだけど! 延髄とか斬られたらもう本当に生きて帰れねえような気がするんだけど!
チャキ、と絶対に竹刀からはしないであろう擬音と共に喉に竹刀が突き立てられる。竹でできているはずの竹刀が今だけは真剣に思えて仕方がない。大体、何で平和な日本の学園で命の危機に瀕しなきゃならんのだ。俺が何か悪い事をしましたか?
…………いや、悪いのは俺じゃない。悪いのは俺じゃなく、俺と同じ『ISを動かした男子』であるあの男こそが悪いんだ。
別にアイツを責めてえ訳じゃないが、流石に今ぐらいはせめても罰は当たらないだろう。「少ない男同士仲良くしてくれよな!」とか言っていたアイツの笑顔をタイムスリップしてぶん殴ってやりたい。
そう。
今、命の花が散ってしまいそうなこの状況だって、元はと言えばアイツがすべて悪いんだ。俺よりも先にIS――インフィニットストラトスを動かすことに成功したあの鈍感ハーレム野郎こそが、全ての悪の根源なんだ。
だから、今だけは少しだけ。
このどうしようもない悲しみをぶつけるために、この言葉を言わせてもらおうと思う。
俺の日常に平穏が無いのは―――
「さぁ、早く私に一夏のルームメイトという立場を譲るんだ、柏木!」
「知るかぁあああああああああああああああああああああああっ!」
―――どう考えてもワンサマが悪い!
☆☆☆
俺の記憶が正しければ、入学式の日に行われた自己紹介こそが全ての元凶だったと思われる。
世界でたった二人のIS適正男子ということで一夏と二人揃って一年一組に入れられた俺は、アイツの真後ろの席で必死に自己紹介を考えていた。クラスの女子たちからの要望で一番最初の自己紹介は一夏からとなり、その次に俺が指名されてしまったからだ。
「え、えっと……織斑一夏です」
とりあえずとばかりに名前だけを言う一夏。因みにだが、俺と一夏は入学式前に顔合わせをしているために既に下の名前で呼び合う仲にまで進展している。やはり男同士というのは気楽なもので、好きな女性のタイプから実家の自室に隠してある秘蔵コレクションのジャンルに至るまで俺たちは隠すことなく話し尽くした――という過去をここで一応暴露しておく。
「彼女とかはいるんですかー?」
「あはは。俺は生まれてこの方モテたことが無いから、独り身だよ」
なんだよその笑顔ぶっ殺すぞ。
窓際の席から熱い視線を送ってきてるあのポニーテールの女子生徒がお前には見えんのか。机の陰で隠してるけどあの子竹刀握ってるからね? お前を睨みつけながら竹刀を抜き放とうとしてるからね? 朴念仁も大概にしとけや!
視界の端に見える修羅に恐怖を覚えつつも、俺は自分の今後のイメージを左右するであろう自己紹介の構成に貧相な思考能力を働かせる。とりあえずは名前を言って、好きな食べ物を……ってそれは流石にベタすぎるか。でもここで好きな女性のタイプとか言うのも恥ずかしすぎるし……一夏みたいに名前だけ言って質問に答えるってスタイルにした方が良いんかな?
そうこう考えている内に一夏の自己紹介のターンが終了――というか、突然現れた女性教諭に頭を出席簿で叩かれる形で強制終了させられていた。
「ち、千冬様!? 千冬様よーっ!」
「あのブリュンヒルデがどうしてこのクラスに!? きゃぁああああああああああっ!」
このクラスはどうやらミーハーが大半を占めているようだ。
「……騒ぐなと言ったんだがな」俺のクラスメートたちに『ブリュンヒルデ』と呼ばれて僅かばかり嫌そうな顔をした女性教諭――
「なんだその間抜け面は。次はお前の自己紹介の番だろうが」
「あ、ああ、そうでしたそうでした。一夏の自己紹介と千冬先生の登場シーンのせいで思考が停止してましたよ」
「つまらん冗談はいいからさっさと自己紹介をせんか馬鹿者」
「分かりました。だからその出席簿を引っ込めてくださいお願いします!」
「チッ」
え、今この人「チッ」って言った? 守るべき教え子相手に不快感を露わにしませんでしたかこのブリュンヒルデ。
ま、まぁ、今のは気のせいだったという事でスルーしておくことにしよう。千冬先生の言う通り、とりあえずは自己紹介をしなきゃだしな。そしてできる事なら空気を元通りにしたいです。こんなミーハー空間耐えられるかコンチクショウ。
俺は椅子から立ち上がり、黒板の方を真っ直ぐと見る。それにしても千冬先生の視線が怖いな。俺が何か悪い事でもしましたか?
湧き上がる恐怖心を根性で抑えこみ、俺は自己紹介を始める。
「え、えーっと。俺の名前は柏――」
「柏木君と織斑君はどういう関係なんですか?」
オイお前どうして俺の名前知ってんだよおかしいだろ。
しかし、こんな事で動揺する俺じゃあない。こんなでも俺は一応世界で注目された二人の内の一人だからな。新聞か何かで俺の存在をあらかじめ知っていたんだろう。うん、きっとそうに違いない。というか、そうじゃないと色々と怖い。事前に調べられてたとかだったら首吊るかもしれん、割とマジで。
引き攣った笑みを抑え込み、深呼吸を一度して返答開始。
「たった二人の男同士として、まぁ仲良くやる事にした――ぐれえの仲だよ」
「仲良くヤる事にした?」
「二人きりの空間で?」
「それぐらいの仲ってこと? きゃーっ!」
どうやら俺は生まれる星を間違ったようだ。
「お、俺と一夏はそんな関係じゃありません。極めてノーマル、普通の親友という関係を目指して頑張って行こうとしているだけです」
「そうは言いつつも本当はそれ以上の関係を望んでいる、とか?」
「極めてノーマル(な愛情を持っている)という事ね……」
もうやだこのクラス移籍したい。
度重なる斜め上軌道の言葉の数々に既に涙目状態の俺。まだ自己紹介を始めて五分と経っていないんだけど……何だこれ、俺は本当にこのクラスでやっていけんのか?
ちら、と千冬先生に助けを求めてみる。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………(ふいっ)」
このアマ窮地に立たされてる教え子を見捨てやがった!
世界のブリュンヒルデのまさかの所業に涙を抑えきれない俺だったが、そんな暇すら許さないとばかりに俺に質問を投げかけてくる女子生徒が現れた。
それは、先ほど竹刀を抜き放たんと睨みを利かせていたポニーテールの女子生徒だった。……いや、実際今も睨みを利かせている。何故か俺に。
何だよあれ、すっげぇ怖いんだけど。なんかもう話しかけただけで首を切り落とされそうなぐらいにこっち睨んでくるんだけど。なに、さっきの女子たちの言葉を本気にしてんの? 嘘だろ冗談だろ。どう考えても現実味帯びてねえじゃんかよ。
い、いや、まだそう判断するのは早計だ。この女子生徒はきっと普通の質問をするだけに決まってる。竹刀を持っているのは剣道部志望か何かだからだろう。絶対に俺の命を刈り取る為ではない――と信じたい。
だらだらだら、と吹き出る汗を感じながらも、俺はポニーテールの女子生徒に出来る限りの笑顔を向ける。
「え、えーっと、質問、ですか……?」
「ああ。一つだけ、貴様に聞いておきたいことがある」
なんでそこで竹刀を向けるの? 聞いておきたいのは遺言とかじゃないよね? 最後の言葉を言い残せ、って展開じゃないよね!?
ポニーテールの女子生徒は竹刀を俺に向けたまま表情をピクリとも変えず、淡々とした口調でこう言った。
「今一番興味があるのは誰だ?」
「うん?」
さて、俺の全ての思考力を結集させる瞬間がやってきました。今この瞬間だけ輝け、俺の小宇宙!
とりあえず、あのポニーテール女が言った質問の内容を理解する事から始めよう。「今一番興味があるのは誰だ?」という質問は、その文章の通りの意味に違いない。つまり、「お前が今の段階で最も興味を持っている奴は誰だ?」という質問をしてきたという事だろう。うん、あんまり予想外の質問って訳でもねえな。これだったらあんまり考えずとも良さそうだ。
そういう訳で俺はにへらっと表情を崩し、
「(同じ男IS乗りだから)一夏、かな」
迷う事無く振り下ろされる竹刀。
「危ねぇえええええええええええええええええ!?」
そして奇跡的に成功した半身回避。
「い、いきなり何すんだこのポニーテール!」
「今の問答で理解した。―――貴様は私の敵だ!」
「展開が急すぎて全く頭が追い付かない! と、とりあえず、俺とお前の間には凄い誤解があると思うんだ! ほ、ほら、一夏も何か言ってやれよ!」
「ん? そうだな……俺が今一番興味があるのは―――」
そう!
その調子でお前の知り合いであろう目の前の女子生徒の名前さえ挙げてくれりゃあ全てが解決するんだよ! 頑張れ一夏、俺の命はお前一人に託されたッ!
「―――颯太、かな(同じ男IS乗りだから)」
笑えねぇんだよ鈍感野郎。
そして何の迷いもなく俺の蟀谷に横薙ぎされる竹刀。
「うぎっ、ぎゃぁあああああああああああっ! やっべぇこれすっげぇ痛い! 生身での竹刀ってすっげぇ痛ぇ!」
「うっ、うぐぐぅっ。一夏のバカぁあああああああああああああああああああっ!」
俺を物理的に討伐したポニーテールの女子生徒は竹刀を放り捨て、号泣しながら教室を飛び出した。「あぁっ、篠ノ之さぁん!?」と眼鏡巨乳の先生が後を追っていったが、とりあえず蟀谷痛い。何か頭が一閃されたような感じの痛みがする。というか事実、先ほど竹刀で一閃された訳なんだけどさ。
「??? どうしたんだ、箒の奴? いきなり泣いて逃げ出したりなんかして…………って、そんなに怖い顔してどうしたんだ、颯太?」
ぷっつーん、と頭の中で何かがトンだ俺は一夏の頭を両手でガッチリとホールド。俺が何をしようとしているのかを瞬時に察知したのだろう。一夏は顔面蒼白に拘束を解こうと暴れるが、怒りに身を任せた俺を振り解けるには至っていない。颯太さんの数少ない地雷原で五十メートル走をしたお前に慈悲など必要ないッ!
「お、落ち着け、落ち着けってば颯太! まずは何があったのかを俺に話してみろって、な? そしてそこからベストな解決策を二人で考えていこ」
「颯太くんスペシャルヘッドバットォォオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
「ふごべぇえええええええええええええっ!?」
これで分かったと思うが、この鈍感ハーレムチャーム野郎の失言と紛らわしい行動のせいで学園中の女子から「一夏×颯太」という最悪な勘違いをされてしまった俺は、この日から毎日のように一夏に思いを寄せる女子たちから様々なアタック(物理も含む)を受けることになる。
そのアタック(ほぼ物理)の大半が専用機持ちという事になる訳だが、この時の俺はまだそんな未来を知る由もなかった。というか、このクラスに専用機持ちが固まるだなんて思いもよらなかったんだ。
だが、こんな時期でも一つだけ言えることがある。
これからの未来と現在状況を鑑みて、一つだけ俺は言わせてもらおう。
俺の日常に平穏が無いのはどう考えてもワンサマが悪い!
――――と。
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次回もお楽しみに!