俺の日常に平穏が無いのはどう考えてもワンサマが悪い!【完結】   作:秋月月日

14 / 18
 二話連続投稿です。
 今回は分け所が難しく、八千字となってしまいました。いつもだったら一話四千字で二話に分けるんだけどな……まぁいっか!
 そういう訳で、普段の二倍ぐらいありますが、是非最後まで読んでくだされば幸いです。



VS.白式&ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ

 学年別トーナメント当日。

 ラウラとのペアでこの学年別トーナメントに出場する事になった俺は、男子が与えられた更衣室で衝撃の光景を目の当たりにしていた。

 

「え…………デュノアって、女だったんかッ!?」

 

「あ、あはは……い、今まで黙ってて、ごめんね……」

 

「い、いや、別に謝らんでもいいけど……」

 

 複雑な表情で頭を下げるデュノアだが、正直言って複雑なのは俺も同じだ。というか、こんないきなり女であることをカミングアウトされても、俺には動揺するしか選択肢がねえ訳で。え、いや、マジで女なの? まぁいや確かに、ずっと女顔だとは思ってたけどさ……。

 明らかに動揺しているであろう俺の肩に一夏は手を置き、

 

「ま、そういう訳だからさ。この事は他の人には内緒な。シャルルの立場も危うくなっちまうしさ」

 

「まぁ別に、わざわざ他言する気はねえけど……面倒臭ぇし」

 

 それで俺にまで飛び火したら、ラウラにも迷惑かけちまうかもだしな。

 と、思っていると、デュノアが突然俺を見ながら「ぷぷっ」と噴き出した。はて、俺が今何か面白い事でも言っただろうか?

 

「ご、ごめんね、いきなり笑ったりなんかして」

 

「別に謝らんで良いけど……どうかしたんか?」

 

「いや、ね。颯太って思った通りの性格なんだなぁ、って思ってさ」

 

「はい?」

 

 思った通りの性格って何だよ、俺が単純ってか!

 

「僕が転校してきた時からそうだけど、颯太ってまず最初に人の事を気遣うよね。口では面倒臭いとか言いつつも、やっぱり最後には他人の為に行動してる。ああ、あれかな。日本文化的に言う『ツンデレ』ってやつなのかな?」

 

「誰がツンデレじゃ誰が! 俺はどこぞの中国女みてえなキャラじゃねえ!」

 

 けど、昔から何故か『ツンデレ』とは言われてました! どうしてだろうね!

 両親や妹とかからは「素直じゃないからじゃね?」って言われてたが、俺ってそんなに素直じゃねえのか? これでも結構、本当の自分を曝け出してる気はするんやが……え、気がしてるだけ? うるせえよ。

 

「あのラウラって子も、颯太のそういうところに惚れちゃったんだろうね」

 

「っつーか俺、何でラウラがいきなり俺に惚れてたのか、微塵も知らねえんだけど。なんか久しぶりに再会したら勝手に俺に惚れてたから、お前どうしたん? って感じなんだが」

 

「あははっ。颯太って意外と鈍感なんだな」

 

「「お前(一夏)が言うなッッ!」」

 

「お、おう。ごめん……」

 

 一夏に鈍感って言われるだなんて、名誉毀損もいいとこだ! 俺は鈍感じゃない、だってラウラからの好意には気づけてるから。篠ノ之やオルコットや凰から向けられてる行為に全く気付けないこいつは、世界一の鈍感と言っても過言じゃないッッ!

 そんな無駄な会話で盛り上がっていると、更衣室のモニターに対戦表が映し出されてきた。去年までは一対一の戦闘形式だったらしく、今年から急にペア形式に変わったことで組み合わせを作るのに無駄に時間がかかってしまっていたらしい。今朝方、生徒達が手作りで抽選のくじを作っていたのは記憶に新しい。っとと、俺も自分の順番を確認しねえとな。

 

「「「――――え?」」」

 

 出てきた文字を見て、俺と一夏とデュノアの三人はほぼ同時に凍りついた。

 何故なら、俺の一回戦目の相手は―――織斑一夏とシャルル・デュノアだったのだから。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 会場に行くと、既にラウラが俺を待っていた。

 既にISを換装しているラウラとは違い、未だにISスーツのままである俺はラウラの肩を優しく叩き、

 

「よっ。今日は互いに頑張ろうな」

 

「………………ああ」

 

 長すぎる沈黙の後に、絞り出されたのはそんなそっけない一言。おそらくは俺の制止を振り切って暴走してしまった自分を悔いているのだろうが、今はそんなのは些細な事だ。コイツが、ラウラ=ボーデヴィッヒがずっと待ち続けてきた復讐の時間が、そろそろ始まる。だというのに、いつまでもそんな調子じゃあ俺の方も困ってしまう。

 だから、俺は行動に出た。

 観衆の目の前だという事は十分に承知だったが、俺は迷う事無くラウラの唇に自分の唇を重ねた。

 

「―――ッ!?」

 

 俺の行動が予想外だったんだろう。ラウラは目を見開いて顔を真っ赤にし、俺を激しく引き離した。

 「な、ななななな」と露骨に動揺しているラウラの頭に手を置き、俺は格好つけることを意識しながら言い放つ。

 

「俺ァ別にお前に怒っちゃいねえよ、ラウラ。お前の行動は許されるような事じゃねえが……まぁ、誰にだって間違いや失敗はある。そんな事をいちいち気にしてたら、これからかなーり苦労する事になっちまうぜ?」

 

「……だ、だが、私は貴様との約束を破ってしまったのだぞっ? それなのに、こんな簡単に許されて良い訳が……」

 

「なんだ、またキスして欲しいんか?」

 

「ち、違っ……誰もそんな事は言っていないだろうッ!? あーもう、貴様と居ると調子が狂うッ!」

 

「いつものお前の方がもっと凄ぇ事言ってっけどな」

 

「う、うるさいッ! 今はそんなこと、どうでも良いだろうッ!?」

 

「ま、これでお相子だから、イーブンイーブンって事で有耶無耶にしようぜ。マイダーリン」

 

「ぐぬぬ……トーナメントが終わったら、覚悟しておけよ貴様……ッ!」

 

 おお、怖い怖い。こりゃあ覚悟を決めとかねえとな。

 とまぁ、そんな感じでラウラを元の調子に戻した後、俺は『シュバルツェア・フォート』を換装。ISの着心地をもう一度確かめ、一夏とデュノアと向き合い、彼らに向かって軽く右手を振った。

 

「っつー訳で、全力で叩き潰すから。お前らも全力でかかってこいよ?」

 

「はっ! それはこっちの台詞だ。動くこともままならない要塞が俺たちに勝てると思うなよ!」

 

 まぁ、これが男同士のやり取りだよな。こういう点から考えるに、やっぱりデュノアは始めから男らしくはなかったわけだ。男との着替えにも恥ずかしがってたし。……って、デュノアと同室だった女子は一体どうしてたんだろうか? ああ、確かデュノアは一人部屋を与えられてたんだったか? ちょうど一部屋余ってたんです~、という山田先生の言葉が記憶の隅っこの方に残ってたわ。

 俺と一夏の軽い会話が終わり、試合開始まで残り数秒となった。

 五、四、三、二、一……――――開始。

 

「「叩きのめす」」

 

 まったく同じ台詞を吐き、ラウラと一夏がほぼ同時のタイミングで攻撃を始めた。

 一夏がとった行動は、彼の十八番である『瞬間加速(イグニッション・ブースト)』。凄まじい速度での行動を可能とするその技は一夏の『白式』を光のように思わせ、文字通り、光の如き速さでラウラへと突っ込んでいく。

 しかし、ラウラはこれを冷静に対処。AIC――アクティブ・イナーシャル・キャンセラーが搭載された右手を一夏に向かって掲げ、試合開始直後に彼のISを完全に拘束した。

 これが、ドイツが誇る第三世代のインフィニット・ストラトス。

 俺の『シュバルツェア・フォート』も一応は第三世代らしいが、ラウラの『シュバルツェア・レーゲン』と比べると、大分見劣りしてしまうのはもう分かってもらえるだろう。男のロマンだけが詰まった機体とか、あんまり重要度は高くねえだろうしな。

 

「考えずとも、私がこれからする事は分かるだろう?」

 

 拘束した一夏の顔面に、ラウラの大型レール砲が向けられる。安全装置は既に解除されていて、ガコン、と初弾が装填される瞬間だった。

 しかし、一夏はこれに慌てず―――背後から飛び出してきたデュノアに迎撃を依存。空中からラウラに六十一口径アサルトカノンによる銃撃を浴びせ、彼女の大型レール砲の攻撃を一夏から大きく逸らす事に成功していた。

 ―――っとと、こんな悠長に観戦してる場合じゃねえ、な!

 

「俺を忘れてもらっちゃ困るな! 舞え、『スプリットミサイル』ッ!」

 

「ちっ……そういう攻撃もできるんだね、見た目に寄らず!」

 

「最後は大きなお世話だっての!」

 

 俺のミサイルを回避するため、デュノアは一旦空中へと飛翔。しかしデュノアに攻撃されたラウラは一夏を取り逃してしまい、悔しそうに顔を歪ませていた。

 

「ラウラ、デュノアを任せた!」

 

「いや、織斑一夏は私が倒すッ!」

 

「お、おい、ラウラッ!?」

 

 機体の相性的に、俺が一夏の相手をするのが望ましい。互いに近接向きのISだから、俺も簡単に攻撃を当てる事が出来るからだ。それは一夏も同じで、ラウラと一夏の戦闘は圧倒的にラウラに分がある。一夏にとってはラウラよりも俺を相手にしたい所だろう。

 しかし、ラウラは俺の頼みを無視し、一夏へと突っ込んでいった。確かに、彼女にはAICがあるから一対一の戦闘においては無敵だ。彼女自身の戦闘力も、一年生の中では最強と言えるぐらいの高さがある。―――だが、これは二対二のタッグ戦。AICが最も苦手とする状況だ。

 そんな俺の予想通り、一夏に迫っていたラウラはデュノアに迎撃されていく。それでも一夏に攻撃を浴びせようとするラウラだが、それを許さないとデュノアがアサルトカノンを連射して彼女の行く手を阻んでいた。このままでは、ラウラのバリアゲージが無くなってしまう。……ちぃっ、しょうがねえ!

 

「『シーズアンカー』ッ! デュノアを取り押さえろ!」

 

 背部のスラスターから発射された、四対のアンカー。俺の唯一の遠距離操作武器である『シーズアンカー』は空中を舞っていたデュノアの『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』をしつこく追い回す。

 

「くっ! しつこい攻撃だね、本当に!」

 

「これぐれえしかできねえんでな!」

 

 アサルトカノンやショットガンを駆使して俺の『シーズアンカー』を撃墜せんとするデュノアだったが、『シュバルツェア・フォート』の装甲と同等の防御力を持つアンカーには通用せず、悲しいかな、数十秒後には俺のアンカーに右足を挟まれてしまった。

 「しまっ……うわぁっ!?」右脚を挟まれたら、もう俺から逃げることは出来ない。残った三つのアンカーはそれぞれ右腰、右腕、左脚をガッチリと挟み込み、デュノアの動きを完全に止めた。――これで、彼女はもう動けない。

 俺はスラスターをフルブーストさせ、『瞬間加速』の姿勢へと移行。二秒ほどのタイムラグの後にデュノアの目の前まで到達し、右腕を思い切り振りかぶった。

 

「とりあえずは一人目。『シュバルツェア・バンカー』ッ!」

 

「ぐ、ぅぅぅぅっ!?」

 

 俺の右手についているパイルバンカーがデュノアの腹に直撃し、彼女のバリアーゲージが急激に減少していく。機動性と引き換えに強大な攻撃力を得たこのISの攻撃を諸に受け、長い時間耐えられるわけがない。

 そう、これでとりあえずはデュノアは撃破。さっさとラウラの援護に回らねえと―――

 ―――そう、気を緩めた時の事だった。

 

「―――なーんてね。油断は禁物だよ、颯太!」

 

 デュノアが何が言いたいのかを俺が理解するよりも先に、彼女の左腕の盾がパージし、六十九口径パイルバンカー『灰色の鱗殻(グレー・スケール)』がその姿を露わにした。

 その武器が持つ名は、俺のパイルバンカーと同じ―――

 

「し、『盾殺し(シールド・ピアーズ)』ッ!?」

 

「パイルバンカーは君だけの専売特許じゃない。そして、この攻撃を通す為に必要な事―――要は防御力が低い場所を狙えばいいだけって事さ!」

 

「し、しまっ――」

 

 デュノアの左腕のパイルバンカーが俺の顔面に直撃する。俺は防御の姿勢を取ろうとするが、機体が無駄にデカすぎるのと動きがノロいのとで彼女の左腕によるラッシュを止める事が出来ない。身体を狙われれば盾による防御ができるというのに、これは予想にもしない失態だ。

 

「し、『シーズアンカー』ッ!」

 

 デュノアを拘束していたアンカーを操作し、俺に攻撃を加えているデュノアのISの装甲を噛み潰す。これで彼女のISは大きく損傷した。ここからなら巻き返せるはず!

 しかし、その攻撃はデュノアにとってプラスに働くことになる。

 

「装甲と引き換えに自由になっちゃえばこっちのものだよ! とりあえず、僕は一夏の援護に行くね!」

 

「あ、こら、待てやデュノアーっ!」

 

 俺の制止の声も虚しく、ぴゅぴゅーんっとデュノアはラウラと一夏の方へと向かってしまった。俺もなるべく早く彼女たちの元へと向かわなければならねえんだが、ここでこのISの鈍重さが裏目に出る。

 ぶっちゃけ、移動速度が非常に遅い。

 スラスターをフルブーストさせ、俺は出せるだけの速度を出してラウラの援護へと向かう。見たところ、ラウラは一夏とデュノアのコンビネーションに圧されてしまっている。このままではラウラは敗北してしまうだろう。そんなこと、俺がさせない!

 

 

 しかし、現実は漫画のようにご都合主義ではない。

 

 

 俺のISの動きがノロすぎることが災いし、ラウラの援護が間に合わない。一夏のアサルトライフルによる攻撃(どうやらデュノアが渡したもののようだ)によってAICの発動を邪魔されたラウラはデュノアの『瞬間加速』を諸に喰らい、壁へと勢いよく激突する。

 この時点で、俺はようやっと一夏の元へと到着。ここから『瞬間加速』を使えばラウラを助けることが可能なはず。そう思い、俺は『瞬間加速』を使用した。

 ――が、それを邪魔する者がいた。

 織斑一夏。

 デュノアから受け取ったアサルトライフルを構えていた一夏は、俺の顔面に向かってアサルトライフルにより銃撃を浴びせかけ始めたのだ。

 

「シャルルの邪魔はさせねえぜ!」

 

「んのっ、邪魔すんなぁあああああああああああああああああッ!」

 

 叫ぶと同時に左腕の盾で銃弾を弾き返し、宙を舞っていた『シーズアンカー』で一夏を拘束。出力は下げてやってるから大怪我をすることはねえが、まぁかなり痛いとは思う。って、そんな事は今はどうでもいいんだ。

 一夏を排除した俺はラウラに攻撃をしかけていたデュノアのISを掴み、後方へと放り投げる。

 しかしその時には既に遅く、ラウラの『シュバルツェア・レーゲン』はIS強制解除の兆候を見せていた。……ちぃっ、これで俺とデュノアの一騎打ちって事か。

 

「上等だ、どっちの攻撃力が高いのか、ここで証明してやるっ!」

 

「同じ武器を持つ者同士、決闘って訳だね!」

 

 一基のパイルバンカーを持つデュノアと、二基のパイルバンカーを持つ俺。数としては俺が優勢だが、速度としてはデュノアの方が優勢。防御力が高い分、速度が遅い俺のISは、防御ができる装甲を狙われなかったらとても不味い事になる。――つまり、盾がついている片腕は防御に回さなければならない。

 これで、互いにパイルバンカーは一基となる。

 速度が勝つか、防御力が勝つか。

 同じ武器だが攻撃力は俺の方が高い。つまり、直撃しさえすれば俺の勝利が確定する。デュノアの攻撃を蹴散らしながらのカウンターだって不可能ではない。さぁっ、最後の攻撃だ!

 

 

 まさに、その瞬間だった。

 

 

 突然の、俺の背部への大ダメージ。

 背部のスラスターは粉々に砕け散り、バリアーを貫通したダメージが俺の背中を襲った。予想もしなかった攻撃に俺はそのまま宙を舞い、こちらに向かってきていたデュノアと真正面から激突した。

 

「く、ぅ……そ、颯太、大丈夫ッ!?」

 

「だ、大丈夫。ちょっと背中が痛ぇだけだ……」

 

 それにしても、今の攻撃は一体なんだ!? 攻撃は後方から来たから、犯人はデュノアじゃないのは分かっている。ISのバリアーゲージが尽きている一夏は端から除外。となると、この攻撃の犯人は―――ラウラ?

 だが、ラウラの『シュバルツェア・レーゲン』は強制解除されていたはずだ。デュノアにバリアーゲージを根こそぎ奪われて粒子化しそうになっていたのは、俺もさっき目撃した。……だったら、どうして?

 そんな俺の疑問に答えるかのように、デュノアは悲鳴のような声を出した。

 

「あ、あれは、何……?」

 

「―――ん、なっ!?」

 

 デュノアの視線を追うように後ろを振り返った俺は、思わず絶句してしまった。

 そこにいたのは、ラウラを黒い粘土で作り上げたかのようなナニカだった。頭にはフルフェイスのアーマーを被り、手足には申し訳程度にアーマーが装備されている。そして、その手に持つのは――

 

「『雪片(ゆきひら)』……」

 

 一夏の力ない呟きが、俺の耳を刺激する。

 そう、目の前の謎の物体が持っていたのは、かつて織斑千冬が振るっていた刀『雪片』だったのだ。その姿は真似だとかそういう次元の話ではなく、まるで複写(トレース)したかのように一緒だった。

 ――直後。

 後方で無意識に『雪片弐型』を構えていた一夏に、『シュバルツェア・レーゲンだったもの』が強襲した。『雪片』を模った刀が一夏の『雪片弐型』を弾き飛ばし、咄嗟に後方回避した一夏の寸前を横薙ぎに斬り払った。

 

「この野郎……ふざけやがって! ぶっとばしてやる!」

 

 ラウラだったものに攻撃された一夏は憤怒の形相に顔を歪め、拳を握り締めながらバカみたいな突撃を始めた。―――おそらく、千冬先生の真似事をしている目の前の存在が気に食わないんだろう。

 一夏は千冬先生に憧れていると同時に、千冬先生を侮辱するような存在は絶対に許さない性格をしている。彼にとっての千冬先生は憧れの姉であり、自分の唯一の肉親だ。だからこそ、彼は千冬先生の存在を愚弄するような存在に激しい怒りを覚える。

 ―――だが、そんな事は俺にとってはどうでもいい。

 ラウラだったものに突撃しようとしていた一夏の腕を掴み、後方へと勢いよく投げ飛ばす。人形のように地面を転がる一夏にデュノアが駆け寄って行くが、俺は見向きもしなかった。

 

「い、いきなり何するんだよ、颯太! 俺の邪魔をするな!」

 

「それはこっちの台詞だ、鈍感野郎。ちょっとは俺の気持ちを察しろや馬鹿」

 

 俺の冷たい声に、一夏とデュノアが息を呑む。ISによる三百六十度の視界で確認したわけだが……ははっ、何だよその顔。俺のこの様子がそんなに意外なのかよ。

 ま、そんな事は後で考えるとしよう。まずは、やらなくちゃならねえことを片付けなくちゃな。

 スラスターが破壊されたことで、俺の『シュバルツェア・フォート』の推進力は失われている。これではただの強固な砦でしかない。

 だから俺は、両腕のパイルバンカー以外の武装を解除し、ラウラだったものの前に躍り出た。

 

「一夏。お前の怒りがどれぐれえのモンかは分かんねえが、ここであえて俺は言わせてもらう」

 

 防御力がねえのは心許ないが……まぁ、当たらなければどうという事はない。

 

「ラウラは俺が止める。お前やデュノア、そして他の誰かが止めるなんて俺が許さない。ラウラの暴走は俺の弱さが招いた結果だ。―――だから、今回の件は俺がけじめをつける」

 

「ふざけんなっ! アイツは、アレは、千冬姉のデータだ! 千冬姉だけのものなんだ! それを……くそっ!」

 

「だが、お前の『白式』はもう動かねえ。お前がアイツをぶん殴りてえのは分からねえでもねえが、ここは俺に任せてほしい。―――いや、俺にやらせろ」

 

「ぐっ……」

 

 悔しそうに歯噛みしつつも、一夏は一歩退いてくれた。……ああ、ごめんな、一夏。この借りは後で絶対に返すわ。

 さて、これで準備は整った。

 あとは、あの馬鹿をあの粘土人形の中から引きずり出してやるだけだ。

 

「なぁラウラ、俺はちょっと浮かれすぎてたみてえだ。お前が俺に惚れてくれてるって現実に、俺は浮かれすぎちまってた」

 

 ザッ、と一歩を踏み出す。

 俺に反応して振り下ろされた刀を、俺は両手の盾でガードする。

 

「っ……だ、だから、俺はあえてお前に言うぜ、ラウラ」

 

 全身の力を駆使して刀を弾き返し、俺はラウラだったものの懐に入り込む。これがISの全身を換装してる普段の俺だったら、こんな芸当は不可能だ。防御を捨て去ったからこそ、俺は自由に動き回る事が出来る。

 ちょこまかと動く俺に刀を向ける粘土人形野郎に睨みを利かせ、俺は右腕を後ろに思い切り振りかぶる。

 

「もう一度始めからやり直そう、ラウラ。お前に最初から常識を叩き込んで、お前との関係を始めからやり直す。そうだな―――まずは俺が告白するところから始めよう」

 

 俺の左腕の装甲が刀によって粉砕されるが、俺はもう止まらない。

 左腕に走る激痛に顔を歪めることも無く、俺はラウラがいるであろう粘土人形の腹部に精一杯の笑顔を向け―――

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ。俺はお前が好きだ。是非―――俺と付き合ってほしい」

 

 ―――直後。

 俺が撃ち込んだパイルバンカーが粉砕した粘土人形野郎の中から紅と金のオッドアイを持つ少女が力なく崩れ落ちて来、俺はその小さな体を優しく且つ強く抱きとめた。

 

 




 感想・批評・評価など、お待ちしております。

 次回もお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。