俺の日常に平穏が無いのはどう考えてもワンサマが悪い!【完結】 作:秋月月日
「それでは、織斑君と柏木君は同じ部屋で過ごしてくださいね」
「二人だけの共同生活って訳だな。これからよろしく、颯太」
「うるせえよわざわざ紛らわしい言い方すんなよ篠ノ之がこっち睨んでんだろうが」
そして安定の竹刀常備でございますよ。どうしましょう。
波乱の自己紹介を終え、授業をそれなりに消化した俺は副担任である
連れてくるようにと言われた一夏を同行させて職員室に向かった俺は、ニコニコ笑顔ながらに緊張しいな山田先生に「寮部屋の話なんですが……」という前振りの後に冒頭のセリフを吐かれたのだった。
「何だよ颯太。俺との相部屋が嫌だっていうのか?」
「そういう訳じゃねえよ。そういう訳じゃねえんだけど……」
ちら、と職員室の扉の方を見てみる。
「…………殺す、斬る、殺す、斬る、殺す、斬る、殺す……」
何とも理不尽な花弁占いをしている剣道少女が爆誕していた。っつーかどっちに転んでも俺に大ダメージなんだけど。良くて重傷悪くて死亡っつー人生最大の選択を迫られてるんですけど。しかも選択するのは加害者側って言うなんとも言えない絶望感!
なんかもう雰囲気がヤバい篠ノ之から目を逸らし、俺は小さく溜め息を吐く。
「一夏との相部屋については了承しました。これからなんだかすっげぇバイオレンスな日常がこんにちはしそうですけど、そこはまぁなんとかしますよ。…………腕一本は覚悟しとくかな」
「あ、あはは……」
「????」
諸悪の根源が首を傾げてるのを見るとイラッとするよね。
鈍感故に俺が置かれている状況を理解していないモテ男の脛を軽く蹴り飛ばし、入学前からずっと気になっていたことを俺は山田先生に問いかける。
「それで先生」
「はい、なんですか?」
「俺と一夏は専用機が貰えるって聞いたんスけど、いつぐらいになるんですか?」
そう。
世界でたった二人の男性ISパイロットである俺と一夏は、ラッキーな事に専用機を貰えることになっているのだ。これは千冬先生から聞かされたことなんだが、どうやら俺と一夏の為に世界各国の開発機関が挙って立候補してきたらしい。まぁ勿論、千冬先生は一夏のISは日本で用意するみてえだが、俺のISの開発国は「後でのお楽しみだ」と伏せられてしまっている状況だ。これで楽しみにするなという方が無理があるだろう。というか、国の代表パイロットしか乗れないはずの専用機がもらえるとか、嬉しいこと限りなしですねハイ。
「あー……えっと、それについてなんですが……」
「なんだ柏木。もう我慢が出来なくなったのか?」
「あ、織斑先生!」
後ろの扉から現れたブリュンヒルデ様を見て、山田先生の目にハートマークが爆誕していた―――しかし俺は華麗にスルー。人には触れて欲しくないところが一つや二つや百個ぐらい存在するものだ。空気が読める男である俺はここでベストな行動をとる事にしよう。どこぞのぼんやり鈍感男とは違うんでね。
――ってか。
「職員室前に静かに怒るバーサーカーがいませんでした? なんかこう、連続斬り裂き魔的なナニカになりつつある女子生徒が」
「ああ、篠ノ之のことか。ちょうど出席簿を持っていたからな。すぐに用は済ませたよ」
何で出席簿があったら用がすぐに済むのかが俺には分からない。
「それで、専用機についての話だったか?」
「あ、はい。流石に貪欲だと自覚はしてるんスけど、やっぱり気になっちまってですね……」
「まぁ、普通ならそうだろうな。私も専用機が貰える前の日は胸を躍らせて夜も眠れなかったぐらいだしな」
「あはは、なに言ってんだよ千冬姉。千冬姉が眠れなかったのは部屋に散らかるゴミのせ―――」
がたんばたんごとん! と一夏がその場に崩れ落ちた。
「「……………………」」
突然の事態に状況が読めず、引き攣った顔のまま凍りつく俺と山田先生。何だ今、一体何が起こった!?
何故か感じる寒気のせいで動く事が出来ない俺と山田先生にニッコリとした笑顔を向けたまま、千冬先生は怪しいハンカチをポケットに仕舞い込んで机の上から書類を取ってってちょっと待て。
「あ、あの、千冬先生? そのハンカチは一体何なのでしょうか……?」
「手品の小道具だ」
そんな言い訳が本当に通じるとでも思ってんのかこのタコ。
「い、いや、手品の小道具じゃねえでしょう、流石に。事実、それで口元を覆われた一夏が顔面蒼白でぶっ倒れてるし……」
「……ふぅ。そうか、どうやら柏木は専用機が要らないというのだな。これは仕方がない。せっかく用意してもらった専用機だが、今回は他の奴に回してもらう事にし」
「千冬先生が持っているのは手品の小道具です! ひゃっほぅ流石はブリュンヒルデ。常にインパクトを忘れない! そこに痺れる憧れるゥ!」
はい、権力と罰に屈しましたけど何か? 一夏は俺の専用機の犠牲になったのだ……。
「わ、私、織斑君を保健室に運んできます!」ようやっと我を取り戻した山田先生(巨乳)が地面に倒れる一夏の肩を抱え、凄い勢いで職員室から出て行った。流石はIS学園の教師、あんな華奢でも結構な怪力なんだな。……何か俺の周りにいる女は全員何かしらの攻撃手段を持っている気がする。どうしてこうなった。
いろいろとあったがようやっと静かになったところで、千冬先生は先ほど手に取っていた書類に目を通しながら俺への説明を開始した。
「一夏の専用機は束の奴がやる気を出したからすぐに開発されたんだが、お前は束のやる気の対象になれなくてな。こちらも全力でお前の為にいろんな開発機関を回って、やっとのことでお前の専用機を作ってもいいという国を見つけたんだ」
「そ、それは本当にご苦労様です」
「まず感謝の言葉を述べんか馬鹿者。それでも日本男子か?」
何だこの理不尽な怒られ方!
「あ、ありがとうございます。……それで、俺の専用機は何処の国が作ってくれるんですか?」
「ドイツだ」
「………………………………Pardon?」
「素晴らしい発音の所悪いが、ドイツの公用語はドイツ語だからな?」
「待って待って待って待って! 何でよりにもよってドイツなんですか!? せめて中国とかロシアとかもうちょっと近い所があったでしょう!?」
「ドイツは日本以外で私のコネが効く唯一の国だからな。私が頭を下げて頼んだら泡を吹いて倒れながらも了承してくれたよ」
「なにその最先端な了承方法。まず病院に運んでやってくださいよ!」
「なーに、その心配は無用だったぞ? なんせ、あそこはドイツ軍基地の中だったからな。病院ぐらい探さずともすぐに手配できる」
「俺どんなところに専用機作られてんの!? なんだよドイツ軍ってもはやバイオレンスな匂いしかしねえよ!」
「あそこには私の手解きを受けたドイツの代表候補性がいる。向こうに行った時には是非仲良くしてやってくれ。因みに、お前の事を話したら『期待して待ってます。弱かったら殺す』というジョークを言っていたぞ?」
「ねえそれ本当にジョークなの? 実はアーミーナイフを握り締めながら言っていたとかいうオチがあるわけじゃないの?」
事実「弱かったら殺す」って言っちゃってるじゃん。なんだよ弱かったら殺すって。普通の一般人がドイツ軍相手に強くなれる訳ねえだろ現実舐めてんのか!
もうなんか、凄く嫌な予感しかしない。何で専用機の話一つでここまで疲弊せにゃならんのか。
―――って、ん? ちょっと待てよ? 『向こうに行った時には是非仲良くしてやってくれ』ってまさかそんなまさか――――――!
「ち、千冬先生? もしかしてとは思いますけど……俺の専用機ってドイツに取りに行かなきゃいけねえって感じじゃねえですよね?」
「その通りだが?」
「ねえそれってどっちの意味の『その通り』!? 俺は行くの行かないの、どっちなの!」
「行くに決まっているだろうが馬鹿者。発注が遅れたせいで開発も遅れてしまってな。まだ完成するまで三日と少しはかかるらしい。―――そういう訳だから、柏木。お前には今すぐドイツに向かってもらう」
願いが一つ叶うなら今すぐこの女をぶっ飛ばしたい。
「ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って!? 何で今から、何で今すぐ!? せめて一週間後とかそういう感じでいいじゃない! そんないきなりドイツ行けとかパスポートも何も用意してないのに!」
「その心配は要らない。ほれ、これがお前のパスポートだ」
そう言って俺の目の前に翳される赤色の手帳。―――本当だ、俺のパスポートだー。
「いやいやいや! だからって今すぐにはおかしいでしょう!? マジで心の準備とかできてな―――ってお前ら誰!? 何で謎の黒づくめ集団に羽交い絞めにされてんの俺!」
「明日までにはお前を連れていくと言ってしまったんだ。大人しく覚悟を決めろ柏木。……力づくでもいいから絶対に連れて行くんだぞ」
「「「御意」」」
「俺を置いてけぼりで勝手に話を進めんなぁああああああああああああッ!」
そして翌日。
俺はドイツの大地に立っていた。
どうしてこうなった!?
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次回もお楽しみに!