俺の日常に平穏が無いのはどう考えてもワンサマが悪い!【完結】 作:秋月月日
「準備は良いか、颯太っ?」
「良くない良くない全然良くないいきなり模擬戦とかマジで意味分からん!」
ドイツ軍基地の演習場にて、俺の悲鳴のような叫びが響き渡る。
ラウラの教えの元、手際良く『シュバルツェア・フォート』の最適化を終了させた俺は、待機状態の『シュバルツェア・フォート』に違和感を感じつつも念願の専用機に若干興奮していた。まだまだ粒子化やら『
そんな、喜び百パーセント状態が悪かったのか。
『なぁ颯太。せっかく専用機を貰ったのだから、ちょっと私と模擬戦をしてみないか?』
『いいぜ、その挑戦乗った!』
過去の自分をパイルバンカーで串刺しにしたい。
そういう経緯があり、俺はラウラに引っ張られる形で演習場へ移動。操作の練習や模擬戦を行っていた女性兵たち(『シュバルツェ・ハーゼ』の隊員たち)をラウラが退かせ、半ば強制的に模擬戦の体裁を作り上げてしまった―――というところで冒頭のセリフに戻る。
元々演習場にいた兵士たちは野次馬という名の観客へと変貌を遂げ、俺とラウラの模擬戦が始まるのを今か今かと待ち続けていた。
『隊長が自分から模擬戦を挑む相手……しかも男!』
『あの「シュバルツェア・フォート」のパイロットなんでしょう? あぁっ、隊長の身体があの男に貫かれてしまうのね!』
『あの男の太くて硬くて大きいモノが、隊長に深く抉り込むのか……ッ!』
どうしよう。相変わらず悪寒が止まらない。
俺はドイツ語なんて微塵も分からねえから、彼女たちが何を言ってるかは理解できねえ。でも、でも、何か不穏な会話が繰り広げられているということぐらいは直感で分かってんだぞ!? どうせまたホモネタだろ? 日本もドイツも滅んじまえッッ!
「颯太! まずは『シュバルツェア・フォート』を装備してみろ」
「あーもーまた勝手に話を進められる!」
覚悟を決めるしかねえって事か。あーもー、ラウラが俺好みじゃなかったら反論してる所だったよ。
ええと、確かラウラの話だと『ISを身に纏っている自分を想像する』んだったな。ISを装備した俺を、イメージ、イメージ、イメージ……………………
「…………あの、装備できねえんだけど」
「あ」
そのリアクションは災いが起きるフラグだと分かる俺はもう末期ですか?
「そういえば言い忘れていたが、貴様のIS『シュバルツェア・フォート』は音声認識システムが搭載されている」
「してその心は?」
「防御と移動は大丈夫だが、攻撃と装備に関しては大声で叫ばなければならないんだ」
「え、なに、これってスーパーロボットなのッ!?」
技名と機体名を叫ぶとか、恥ずかしすぎるわ! 確かに小さい頃はスーパーロボットのパイロットには憧れてたけど、流石にこの歳になってやりたいとは思わねえよ!? 『〇ッターンビィィイイイイイイイムッ!』とか『B〇G-O、ショウタァアーーーーーーイムッ!』とか言いたいとは思わねえよッ!?
「マジで叫ばなきゃいけねえの?」「そういう機体だから……」引き攣った笑顔で返答するラウラに心が凄く傷ついた。なんだよ、せめて開発途中で止めてくれよ……はぁぁ。
ま、まぁ、ラウラは別に悪くねえし、ここは俺の運が無かったと諦めて腹を括ろう。どうせ俺の運なんて神に見捨てられたレベルだしな。
首に装着された漆黒の首輪を指で触れ、俺は叫ぶ。
「チッ。ったく、しょうがねえ。出て来い、『シュバルツェア・フォート』ッッ!」
直後、0.7秒という瞬きレベルの時間を消費し、俺のISが俺の身体を包み込んだ。重量感満載であるはずの『シュバルツェア・フォート』は不思議と軽く、よく見たら俺の身体は地面から数センチほど浮いていた。もともと宇宙開発用であるISは、基本的には空中に浮いているらしい(ラウラ談)。
二基の巨大なパイルバンカーと合計六つの盾がチャームポイントな漆黒の砦(鉄の棺桶とも言う)を装備した俺は、既に『シュバルツェア・レーゲン』を装備していたラウラに苦笑いを向ける。
「やっぱり恥ずかしいな、叫ぶのって」
「そうか? 私は好きだがな、貴様の叫びは」
やべぇなんかキュンときた。ラウラに惚れそう、ていうか惚れてもいいですか?
今思ってみれば、ラウラって性格はイケメンなんだよな。世の女性がラウラを見たら挙って惚れちまうかもしれん。……いや、ラウラは世界の女性には見せない。だって絶対にモテモテになっちゃうからね。ラウラは俺の天使です。
恋する乙女のように盛り上がっている俺には気づかないラウラはメインウェポンである大口径レールカノンを構え、
「それじゃあとりあえず、『シュバルツェア・フォート』の防御力とやらを試させてもらうッ!」
一瞬。
ラウラの通信回線が聞こえたと思った時には、既に彼女の攻撃が俺のISに直撃していた。肉体的には全く衝撃が無かったから気づきにくいが、ISからの機械音声が俺に被弾を教えてくれていた。
――バリアー貫通、ダメージ23。シールドエネルギー残量、617。実体ダメージ、レベル低。
なんか、意味不明なぐらいにバリアー残量が残っていた。いや、流石に600台は高すぎるだろ。普通は500台ぐらいだってラウラが言ってたぞ。
予想を遥かに上回る防御性能を見せつけた『シュバルツェア・フォート』にラウラはヒクヒクと顔を引き攣らせる。
「ま、まさかここまで硬いとはな……これは本気を出さなければならないようだ」
「AICは禁止だからな?」
「…………………………分かってるもん」
俺の天使がこんなに可愛いハズがやっぱり可愛い結婚したい。
まぁとりあえず、ラウラが本気になったようなんで、こっちからも攻撃を仕掛けることにしよう。確か、音声認識システムがあるんだったな……面倒臭い操作をしないで済むだけマシ、か。
「っし、次はこっちから行かせてもらうぜ!」
そう叫び、俺はラウラに向かって突撃す―――って遅ッ!? 動き出すまでのタイムラグ長ッ!? このISマジで超重量級の砦なんかいィィィィ!
と、とりあえず、出来るだけの事をしよう。確認したとおり、技名がカタカナ表記で本当に良かった。ここでドイツ語とか並べ立てられてたら、難解トラップ過ぎて死ねる。というか読めん、それに尽きる。
突撃しながら右手を大きく振り被り、
「撃ち抜け、『シュバルツェア・バンカー』ァァァッ!」
「ッ!?」
一発目はわざと受け止めてくれたのか、大地を二本の脚で踏みしめ、ラウラは両手を交差させて俺の攻撃を防御した。先ほどの防御と同じように予想外すぎる威力だったんだろう。苦悶の表情を浮かべたラウラが徐々に後方に圧されていく。
だが、俺の攻撃はまだ終わらない。
「次、左で行くぜェェェッ!」
「ん、うぅっ!?」
ラウラが怯んでいる隙を突き、左手のパイルバンカーを撃ち込む。うん、今ので分かったが、どうやらこの機体は一度技名を叫んでしまえばその技名は二回も叫ばなくて良いらしい。というか、アンカーとミサイルポッド、それとISを装備するとき以外は掛け声を必要としていないみたいだな。両手のパイルバンカーは俺の肉体の動きに連動して動くから、音声認識システムは関係していないんだろう。
左で撃ち抜き、右で撃ち抜き、もう一度左で撃ち抜く。
『盾殺し』の異名を持つこのパイルバンカー(ラウラ談)での一撃は相当重く、ラウラの機体のバリアーが急激に削られていくのがこっちからでも理解できる。装甲からも火花が散ってるし、相当な衝撃と威力なんだろう。……完全に力押しなんだな、この機体。分かってたけど。
と、その時。
「ええい、いつまでも好きにできると思うなぁあああああああっ!」
咆哮。
額に青筋を浮かべたラウラが俺の攻撃から脱し、右手を俺に向けて掲げた。―――って、これはさっき自慢のように言われた『AIC』じゃね!?
「お、おい、それは禁止だっつっただろ!?」
「うるさいッ! 勝者こそがルールなのだ!」
「なにその極論ッ!?」
一対一の戦闘に置いて反則級の効果を発揮する武器に勝てる訳ねえだろ!
『AIC』―――正式名称【アクティブ・イナーシャル・キャンセラー】の効果を簡単に言うと、相手のISを強制的に停止させる、というなんともチート臭いモノだったりする。このAICの使用には多量の集中力が必要という地味な欠点があるが、複数やビーム兵器を相手にしない限りはほぼ無敵なのであんまり問題じゃない―――というのがラウラによるAICについての説明だ。アンタ軍人なのにそれでいいのか。
まぁとりあえず、ラウラがAICを使用し始めた時点で俺の敗北は決定した。
俺の意志に反して完全に動きを止めた『シュバルツェア・フォート』にラウラは大口径レールカノンの銃口を向け、とてつもなくサディズムな笑顔を浮かべて容赦なく発砲を始めた。
「(ニヤニヤニヤニヤニヤニヤ)」
「怖ぇぇぇぇぇぇっ! 無言でニヤケ笑顔で連射するラウラさんマジで怖ぇぇッ!?」
高すぎる防御力故にすぐに戦闘不能になる事が出来ない俺はバリアー残量がゼロになるまでの長い間、ラウラの嗜虐的な攻撃に無理やり付き合わされることになるのだが……全てを語るまでもないだろう。とりあえず、ラウラは堕天使でした、とだけ言っておく。
☆☆☆
一方その頃、柏木颯太とラウラ・ボーデヴィッヒがなんやかんやで仲良くなっている事など知る由もない、もう一人の男性ISパイロット・織斑一夏はというと。
「いぃぃぃぃぃちぃぃぃぃぃぃかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ご、ごめん! 俺が悪かった、俺が悪かったから許してくれ箒!」
「問答無用! 例え過失とはいえ、私の胸を揉んだ貴様は重罪人ッ。私の竹刀の錆びにしてくれる!」
「竹刀は竹でできているから錆びとかできないような……」
「ええい、いちいち小さい事を指摘するな! めぇ――――――んッ!」
「どぁああああっ!? き、危機一髪で真剣白羽取り成功したぁぁっ!」
「――――――ッ!」
「あ、ちょ、やめて、やめてくれない? 俺が下になってる状態で竹刀を押し付けたらさ、ほら、耐えられなくなって頭に当たっちまうからさ……って、聞いてるか、箒? 聞いてますか、箒さん?」
「私の胸の感触に関する記憶をお前の頭の中から消し去ってやる……ッ!」
「た、助けて颯太ぁぁぁあああああああああああああっ!」
海外に行ってしまった親友への叫びがIS学園に響き渡り、直後に人の頭がぶん殴られるような鈍い音が続く形で鳴り響いた。
「はっはっは! 今回の模擬戦は私の勝利だn―――ひゃっ!?」
「………………」
「ひゃっ、ひゃっ、ダメ、ダメだ、颯太。無言で腋を擽るのはひゃひゃひゃっ、反そくっふぅっ、た、耐えられにゃぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ…………(びくんびくんびくんっ!)」
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次回もお楽しみに!