俺の日常に平穏が無いのはどう考えてもワンサマが悪い!【完結】   作:秋月月日

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 二話連続投稿です。今回はちょっとシリアスです。……ほんとだよ?


え、グラビアモデルみたいって褒め言葉じゃないの?

「セシリア=オルコット? 誰それ、新手のグラビアモデル?」

 

「お前、それ本人に聞かれたらブチ切れられるから絶対に本人の前では言うなよ?」

 

 ――という会話をドイツから帰国してすぐに、ルームメイト兼唯一の男同級生である織斑一夏とした訳なのだが、その翌日の朝、俺はこの話についての記憶を完全に忘却していた。もともと記憶力が良い方ではないし。そもそもそこまで重要な事だと思っちゃいなかったんだ。

 その点を念頭に置いて、俺が朝からやってしまった失態をダイジェストで見て行ってほしい。

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

「はぁ? アンタ誰?」

 

「なっ……こ、このセシリア・オルコットを知らない? イギリスの代表候補生にして、入試主席のわたくしを!?」

 

「せし、セシ――リア……あぁ、知ってる知ってる。昨日一夏から聞かされてたわ」

 

「それは結構。それで、その方から話は聞かされているでしょうけど、クラス代表者を決めるための決闘を申し込」

 

「確か、グラビアモデルの人だったよな?」

 

「ぐらびっ!? あ、貴方、このわたくしを馬鹿にしてますの!?」

 

「へ? 違った? じゃあ、えーっと……ああ、そうだそうだ、思い出した。この間発足したばっかのアイドルグループのメンバーだったよな。いやー、ごめんごめん、すっかり忘れてたわ」

 

「微塵も掠ってないですわよッ!?」

 

「え? 嘘、マジで? ――じゃあ知らん、アンタ誰?」

 

「~~~ッ! け、決闘ですわーっ!」

 

 タイムスリップが可能ならば、過去の自分を千冬先生に捧げたい。

 帰国翌日の朝から最悪な失態を犯してしまった俺は授業の合間の昼休み、IS学園の食堂で唯一の同性同級生である一夏と一緒に昼飯を食いつつ―――

 

「め、面倒臭ぇ事になっちまった……」

 

 ―――過去最大級に顔を青褪めさせていた。

 げっそり、という表現が最適であろう表情の俺に一夏は「あはは……」と乾いた笑いを零し、

 

「だから昨夜言ったじゃん。絶対に言うなよ? って」

 

「うるせえよ忘れてたんだよ文句あっか!」

 

「俺は別に文句はないけど、向こうの方は文句どころか怒り心頭みたいだけどな」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。ラウラの優しさが恋しいわぁぁぁ……」

 

 今頃アイツ、何してんのかな。すぐに私もIS学園に行くから覚悟しておけ、って言うぐれえだし、学園生活に臨むための教育でも受けてんのかな。そんなの俺が直々に教えてやるのに……勿論、手取り足取りですけど何か問題でも?

 ――っと、現実逃避はここまでにしておこう。いつまでも女々しかったらラウラに幻滅されちまうかもだし、ここは男らしく腹を決めて、セシリアだかセガールだかよく分からんイギリスの代表候補生との決闘についての問題を解決していこうじゃねえか。…………マジで面倒臭ぇけど。

 

「っつーか、そういえば一夏も宣戦布告されたんだっけか?」

 

「ああ。でも俺、まだ専用ISとか貰ってないんだよ。だから今は箒と一緒に剣道の修業をしてるんだけど……なかなか上手くいかなくてさぁ」

 

 どうしてISと剣道が繋がるのかが俺にはよく分からない。

 

「え、ISの機動練習とかじゃなくて、剣道の練習してんの? なにそれ、おかしくね? 普通、ISの装置とかそういう知識を頭に叩き込むもんじゃねえの? バカなの死ぬの?」

 

「…………それ、箒に聞かれたら殺されるから絶対に言うなよ?」

 

 人それをフラグと言う。

 

「はぁぁ。まぁ、お前と篠ノ之の意味不明な失敗については目を瞑ってやる。俺は寛大だかんな」

 

「あはは……」

 

 ポン、と胸を叩く俺に一夏は何故か苦笑を向けた。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 ―――そしてその日の夜、俺は一夏が建てたフラグを違う形で回収してしまった。

 

「柏木死ねぇぇぇぇええええええええええええええええっ!」

 

「だーもー、『シュバルツェア・フォート』の右腕部分展開!」

 

 バシィッ! と篠ノ之が振り下ろした竹刀が俺の右腕の盾(パイルバンカーの付属パーツ)に阻まれる。模擬戦後にラウラからISの部分展開について教えてもらっといて本当に良かった。あれが無かったら今頃俺は―――地獄巡りをしている事だろう。

 ぐぐぐ、と押し付けられる竹刀を『シュバルツェア・フォート』の右腕で押し返しながら、俺は篠ノ之に言う。

 

「あのさぁ、篠ノ之。一夏に惚れているんであろうお前に一つ忠告しとくけどさ……もうちょっとその短気な性格を何とかした方が良いと思うぜ?」

 

「よ、余計なお世話だ! そ、それに、私は別に、一夏に惚れてなどいない!」

 

「あー、いいよいいよ、そんな強がんなくて。あんな露骨な態度してたら誰だってすぐに気づくって。事実、俺は初日だけでお前の一夏に対する気持ちに気づいたね、冗談抜きで」

 

「だから違うと言って――」

 

「これはお節介と自覚してるから言うけどさ、篠ノ之。お前、いつまでもそんなんだと他の誰かに一夏を奪われちまうぜ?」

 

「――――ッ!?」

 

 絶句、という表現が最適だろうか。俺の言葉を受けた篠ノ之は全てに絶望するかのような表情を浮かべ、数秒後には竹刀を力なく床へと落下させた。これはあれだ、彼女がすっげぇショックを受けてるって感じだな。……お願いだから泣かないでくれよ、マジで。一夏がキレたら俺じゃ止められんだろうしね。

 俯いたままぷるぷると小刻みに震える篠ノ之に交戦意志がないと判断した俺は『シュバルツェア・フォート』を粒子化し、通路の壁に背中を預ける。

 

「人を好きになる気持ちを強がりで隠す、なーんて事をしても意味なんてねえんだよ。俺もとある奴に恋をしてっけど、自分の気持ちに嘘だけは吐きたくねえと思ってんぜ?」

 

「……お前はアイツの、一夏の事を何も分かっていないから、そんな無責任な事を言えるのだ」

 

「ああ、何も知らないね。――だからどうした? お前は俺がアイツの事を知らなかったらアイツの事を好きになれねえのか?」

 

「ッ!?」

 

 揚げ足を取られた篠ノ之は悔しそうに唇を噛む。

 

「違うよな、だってそれが関係するなんておかしいもんな。お前は一夏が好きだ――それだけで理由としては十分だもんな。わざわざ人からの評価なんて気にしてちゃ、恋なんてやってらんねえよ。自分の思うがままにやり切って、それで駄目でも更に頑張る。自分の恥部を曝け出すぐれえの覚悟がねえと、恋なんてやってても楽しくねえと俺は思うぜ?」

 

「恋が、楽しい訳がないだろう……? アイツの事を想えば想う程、こんなにも胸が苦しくなるのだぞ……?」

 

「それを痛みだと思ってる時点で間違いなんだよ」

 

 あぁ、やっぱりコイツは何も分かっちゃいねえ。無責任で自分勝手な俺が言えるような事じゃねえかもしんねえが、これだけは言っとかねえとコイツの為になんねえ。同じ恋する高校生として、俺はコイツにも頑張ってもらいてえんだ。

 だから、俺はあえて言おう。

 柄でもねえが、口に出すだけでも恥ずかしいような正論を、今この場にて提示しよう。

 

「胸が苦しくなるのは恋をしている事による満足感が原因だ。私はあの人の事が好きだ、あの人の事を想えば想う程胸がいっぱいになってしまう。―――そういう風にポジティブに考えてりゃ、困難な恋も楽しめるってもんだ」

 

「ポジティブに、考える……?」

 

「恋愛は人生だ。好きな奴に振り向いてもらって、ソイツと一緒に子供を作って幸せになりゃあハッピーエンド。俺としちゃあ一緒のタイミングで一緒に死んで一緒の墓に入れてもらえるのがベストだが、それは高望みしすぎだな。……まぁ、俺が言いてえのは、あれだよあれ」

 

 地面に両手を着いた体勢から俺を見上げている篠ノ之に、俺は自分なりの笑顔を向けて――こう言ってやる。

 

「恋を楽しめよ、篠ノ之。アイツの笑顔を見るために努力しろ。色仕掛けでも照れ隠しでも何でも良い。とにかく、アイツが本気で嫌がるようなことはやめて、アイツと自分が楽しめるラブコメディを目指してけよ。そうすりゃ……そうだなぁ。アイツも自ずとお前の存在が大切だと想ってくるだろうさ」

 

 まぁ、ラウラに惚れてからそんなに日が経ってない俺が言えるような事じゃねえんだけどさ。俺も発展途上なんだから、恋がどうとか偉そうに言えるような立場じゃねえんだけどさ。―――だけど、これだけは言わせてもらいたかったんだよ。

 恋が辛いなんて、間違ってる。俺は恋を楽しみながらラウラの心を奪ってみせる、そう決めてんだ。

 さぁ、篠ノ之。お前はどうする? 俺の言葉を振り払って俺を叩きのめすか、それとも、俺の言葉を受け入れて今までの自分を変えるか。どっちを選んでもお前の人生だ、お前の責任にしかならねえぜ?

 篠ノ之はゆらりと幽鬼のように立ち上がり、地面に落としていた竹刀を掴み上げる。

 そして竹刀をゆっくりと上まで振り上げ―――

 

「っ、ぅ!」

 

 ―――勢いよく自分の頭に振り下ろした。

 まさかの行動に驚きを隠せない俺を見て、篠ノ之は僅かながらに口角を吊り上げる。……頭から流れ落ちる血のせいですっげぇ怖いですよ篠ノ之さん。

 

「この私が一夏程度を落とせないとでも思っているのか? これは随分と嘗められたものだな」

 

「と、とりあえず止血したら? そのままじゃぶっ倒れちまうぞ、マジで……」

 

「私が本気を出せば、一夏の一人や二人、余裕で我が物にできるのだ! ふふ、はははは、柏木、お前にこれから私の恐ろしさを思い知らせてやるから覚悟しておけ! まずは一夏に夜這いだな、待ってろ一夏ぁぁーっ!」

 

「あ、ちょっ、篠ノ之さぁん!?」

 

 俺の制止の声も虚しく、篠ノ之は凄まじい速度で俺と一夏の部屋の方へと走って行ってしまった。さ、流石にけし掛け過ぎたと反省してるっつーか、そもそもあの堅物和風少女・篠ノ之箒があそこまでの変貌を遂げるとは予想もしてなかったなぁ……死ぬなよ、一夏。

 で、でもまぁ、自分の恋心を篠ノ之に気づかせるっつー当初の目的は完遂したわけだから、結局はオールオッケーというかなんというか―――

 

『一夏ぁぁーっ!』

 

『うぇぇっ!? い、いきなりどうしたんだ箒――って、どうして俺をベッドに押し倒すんだ!?』

 

『お前に必要なのは度胸と覚悟だ! それはISにも関係する、するったらする。だから、私がその二つの足りないものを全力で埋めてやる! うははははーっ!』

 

『箒お前酔ってるのか!? そ、そんならしくない態度で、放課後の間に一体何があったんだッ!?』

 

『ええい、ゴチャゴチャうるさい! とにかく脱げ、服を脱げ! 話はそれからだ!』

 

『ひぃっ、お代官様それだけは!』

 

『ふっふっふ、よいではないか、よいではないか!』

 

 ―――俺はそっと耳を塞いだ。

 

 

 

 それから数日後、クラス代表者を決定する決闘を終えた一夏が何故かセシリア=オルコットに惚れられて篠ノ之がまた情緒不安定になり、俺によるお説教によって再び彼女が暴走する事になるのだが、詳しくは記さないでおこう。全ては篠ノ之の為だ、我慢して欲しい。

 ……まぁとりあえず、一夏を一発ぶん殴って、俺はセシリア=オルコットとの決闘の為に作戦を練る事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 鈍感ハーレムチャーム野郎ってやっぱり怖ろしいなぁ(震え声)。

 

 

 




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 次回もお楽しみに!
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