クリスマスのために書いた、イタリア重巡、ザラとポーラの心温まるお話です。
pixiv投稿作品です。

ザラとポーラのクリスマスイブ | 暁の瑞雲 #pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18951807

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第1話

「ねえポーラ、今年のクリスマスは、二人でプレゼント交換をしない?」

 鎮守府に着任してから3度目のクリスマスを迎えようとする12月中旬、ザラねえさまから提案を受けたポーラは、嬉しくなってザラねえさまに飛びつきます。

「はい、もちろんです~。えへへ」

 ザラねえさま相変わらずいい匂い。

「なあに、ポーラ」

「ポーラ嬉しいんです~」

 だって鎮守府に来てからずっと鎮守府に馴染む事を優先して、何かしらの行事ではなるべく他の艦娘達と一緒に過ごしてきたから、姉妹二人だけのプレゼント交換なんて嬉しいに決まっています。

「ザラねえさま、何か欲しいものはありますか~?」

「ポーラ、何を贈るか、贈られるかが分からない方が楽しいと思うから、お互い内緒にして選んでみない?」

「えー? ポーラ、上手く選べるか自信がないです~」

「うーんとね、じゃあ雑誌や、鎮守府の皆にも聞きながら選んでみたら? そうしたら色々とアイデアが浮かぶかもしれないし、趣味につながる新しい事への気付きにもなるかも知れない」

「ん~。それでもやっぱり上手く選べるか自信ないです~」

「ポーラがね、一生懸命選んでくれたということが一番なの。だから、ね」

 小首を傾げてウインクして、そんな可愛い顔されたらポーラ断れません。

「分かりました。ポーラ、ザラねえさまのために一生懸命頑張ります~」

 

 こうして、ザラねえさまとポーラは、クリスマスイブに向けて、お互いのプレゼント選びを開始したのでした。

「うーん。雑誌のクリスマス特集は、アクセサリーやコスメばっかりです~。ザラねえさまはアクセサリーをたーくさん持ってますし、コスメもポーラにくれるくらいありますから、他のものがいいですね~」

 そう呟きながら本を見て歩いていると、

「ドンッ!」

「あうっ」

 視界の片隅に白い服が映ります。

「ポーラ、本を見ながら歩いていると危ないぞ」

「あ。てーとく~。ポーラ、今日は酔っていませんよ~」

「いや、そうじゃない。前を見て歩けと言っているんだ。私だったからいいものの、海防艦だったら怪我をさせていたかもしれないぞ」

「あ……。ごめんなさい。てーとく。以後、気をつけます!」

 あたふたと雑誌を閉じて、その場を立ち去ろうとするポーラでしたが、提督に引き留められます。

「そう言えば、ポーラはいつもお酒の瓶を手に歩いているイメージがあるが、今日はどうしたんだ? 随分と真剣な顔をしていたが」

「そうなんです~。今、ポーラは今までにないくらい真剣なんです~」

 せっかく提督とお話する機会を得たのですから、アドバイスを貰おうと、これまでの経緯を簡単に説明します。

「ふーむ。申し訳ないが、私は恋人がいなくてな。特定の女性と付き合ったことがないんだが……。そうだなぁ」

  提督が顎に手を当てているとき、それは作戦中だったり、演習で指示を出すときだったりしますから、真剣に考えてくれているのが良く分かります。

「そうだ! 親愛の証として指輪を贈るなんてのはどうだろう。ペアリングにして同じものを身につければザラとお揃いだ」

「それもいいですね~。てーとく、ありがとうございます。考えてみますね~」

 うん、お揃いのものを身につけるというのは、とてもいい考えだと思います。そうですね。

「ザラねえさまとお揃いの指輪かぁ」

 うん、いいかも! そう思ったら自然と顔がニヤけてきます。二つ買うとなるとお金もそれなりに必要ですから、ポーラの貯金で足りるといいんですが……。

「えいっ!」

 部屋に戻って、お気に入りの豚さん貯金箱を、せーので床に叩きつけると、いくつかの硬貨が転がり出ます。が、これでは全然足りません。

「どうしましょ~」

 部屋を見渡しても、価値のあるものなんてありません。

 提督に言って、お給金を前借りするとか出来ないでしょうか。いえ、そんなことしたら絶対にザラねえさまに叱られます。

「うーん」

 今から鎮守府のお外でバイトしてお金を貯める。いえ、時間がありません。

 あとは、明石さんや、鳳翔さん、間宮さんのお手伝い? うん! ポーラには無理ですね~。

「あ、そういえば!! これならきっとお金になる! これにしましょ~」

 自室のワインセラーにあるとっておきのビンテージワイン。何かの記念日に開けようと、ずっと大切に取っておいたポーラの宝物。これを売れば、まとまったお金が手に入るはずです。

 ワインを大切に布にくるんでバスケットに入れると、すぐさま鎮守府外の質屋さんに向かいます。そのまま宝飾店に行って、ザラねえさまに似合う指輪を買うんだ。

 

「まいどありー」

 質屋さんでの査定結果で、まとまったお金を手に入れたポーラは、早速宝飾店へと向かいます。

「すごいですね~」

 大小様々なショーケースが並ぶ煌びやかな店内には、たくさんのカップルがいます。

「ねぇねぇ、私、あっちのショーケースの方がいいな」

「あっちは高いだろ! こっちでいいよ」

「えー?」

 まだ学生さんかな、彼氏君の背伸びしたお買い物。彼女さんはそれも知っていて仲良く選んでいるんだろうな。

 そう思ったら、指輪を買うならザラねえさまと一緒に選びたいなという考えに変わります。

 じゃあ、どうするの? ザラねえさまに贈りたいもの……。

 せっかくなら常に身につけていてもらいたい。出来ればザラねえさまのお守りになって欲しい。

 ザラねえさまがどんな作戦に参加しても必ず無事に戻ってくるためのお守り。

「あ……」

 思いついたポーラは、宝飾店のカタログだけ貰うと、すぐさま鎮守府に戻ります。

 そう、ザラねえさまにポーラが贈りたいのは……。

 

 クリスマスイブ当日

 ザラねえさまとの二人きりのクリスマスイブ。

「美味しかったわね」

「ザラねえさま、お料理上手ですから~。ポーラご機嫌でーす」

 二人で過ごすクリスマスイブ。

 暖かい部屋、素敵な音楽、そしてザラねえさま自慢の手料理。

 ポーラのワインセラーの在庫はもう間もなく底をつきますが、今日はたーくさん飲んだから、大満足です。

「じゃあ、ポーラ、そろそろプレゼント交換、しましょうか。まずは私からね。はいっ!」

 ザラねえさまから渡されたのは綺麗な包装紙に包まれた二つの箱。小さな小箱と縦長の箱でした。

「ふたつもいいんですか? 何でしょう~。楽しみです」

「ね、ポーラ、先に開けてみて」

 ふふっと微笑むザラねえさまに渡された小箱の包装紙をポーラは丁寧に剥がしていきます。紙も箱も大切に取っておきたいから。

「わあ~。素敵です~」

「それね、ソムリエナイフよ。有名な工房のものなんだけど、ポーラの名前、刻んでもらったの。反対側には私とポーラの主砲の銘板『粘り強く』『どんな事でもやり遂げる』の言葉が刻んであるわ。お守りだからね。常に身につけていて」

「ザラねえさま、ありがと~ございます」

 あ、あれ? 涙?

「ふふ、そんなに嬉しかったの? 私も嬉しいわ」

 ザラねえさまの気持ちが嬉しくってポーラ泣いちゃいました。

「もうひとつ、開けてみて」

「はい、ザラねえさま」

 さっきと同じように丁寧に包装紙を剥がして箱を開けると、

「わ~! ワイングラス! お揃いのやつです~」

 とっても素敵なワイングラスがふたつ、箱の中に入っていました。

「ふふっ。私と飲むときや、仲の良い子を誘って飲む時に使ってね」

「ありがとうございます。ポーラ、大切にします」

 とっておきのビンテージワイン、開けるなら今日だった。取っておけば良かったとちょっぴり後悔しそうになりますが、あれはザラねえさまのプレゼントになったから、ポーラ後悔はしていません。

「ザラねえさま、今度はポーラからですよ~」

 ザラねえさまのように綺麗な包装紙ではなく、無骨な木箱に入っているけれど、ポーラの気持ちを精一杯込めたプレゼント、喜んでくれるといいなぁ。

「何かな-? とっても楽しみ」

 蓋を開けて中を見るザラねえさまに向けて、ポーラは言葉を紡ぎます。

「ザラねえさまが、必ず無事に鎮守府に戻ってこれるように、ポーラ頑張りました~」

 ポーラからザラねえさまへのプレゼント。

 それはFUMOレーダーでした。

 艦だった頃、レーダー能力の差で苦労した戦い。

 艦娘として顕現しても、付与された索敵能力が低い私たち姉妹にとって、とても重要な装備。

「ポーラ、ザラねえさまとずっと一緒にいたいから、これにしたんです。お守りです」

 黙って席を立ったザラねえさまは、ポーラを潤んだ目で見つめた後、優しく抱きしめてくれました。

「こんな貴重なもの……。ありがとう、ポーラ、私は貴女を守るために絶対に沈まないからね。いつまでも一緒よ」

「はい、ザラねえさま」

 こうして、二人きりのクリスマスイブはとてもとても暖かな素敵な時間となったのでした。

 

 工廠にて

「提督、なんかFUMOレーダー出来ちゃったみたいなんですけど!」

「な、なんだと? 明石、プリンツオイゲンが開発出来なかったのにどうしてだ? 誰が開発した?」

「それが、ポーラちゃんなんです」

「それは凄い! で、レシピは?」

「それがですね、覚えていないそうで……。ポーラちゃんがお金出すからって言うんで、まぁ結構な額をいただいたんですよ。だから私も気がおおきくなっちゃって自由に開発させてあげていたんですが、私が酒保に行っている間に、開発上限値を妖精さんに変更してもらったらしくって。それで大量に資材をつぎ込んだ開発で出来ちゃったそうです」

「ちょっとまて! もうすぐ冬の大規模作戦の時期なんだぞ? 資材貯蔵量の上限近くまで備蓄出来ていたのに、いくら使った?」

「それが……。ほぼ底をつきました」

「明石……。君がついていながらなんてことだ」

「だってぇ、こんなに使うなんて思ってもみなかったんです。ポーラちゃんにやり方教えて一人にしたのは確かに悪かったですけど、私だって酒保の面倒もみないといけないのに……。そんなに責めないで下さいよぅ」

 肩を落として、えぐえぐ泣き始める明石に、提督は慌てふためく。

「す、すまない明石、そこまで責めるつもりはなかったんだ」

「ぐすっ」

 ジト目で提督を睨む明石。

「ど、どうすれば許してくれるだろうか?」

「レストランで食事、あとプレゼント下さい!」

「何?」

「明日はクリスマスですよ! それくらいいいでしょう。私、いつも裏方で頑張ってるんですから労って下さい」

「う……。わ、分かった」

「てへ」

「ん?」

「なんでもありません! 約束ですよ!」

 ポーラが大量に使った資材がきっかけで始まるもう一組のクリスマスストーリー。

 提督と明石の未来がどうなるかは、まだ誰も知らない。

 

 完

 

 


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