セイウンスカイをテラの世界に突っ込んだ話 作:アクアリウム
「う~ん……? 朝?」
私が目を覚ましたのはずいぶん大きな音が鳴ったからだった。
「どこ……ここ………?」
私は自室のベッドで寝たはずであり、同室のフラワーにおやすみを言ったところも覚えている。
だが目の前に広がる光景は寮の自室などではなかった。というかそもそも部屋ではなく外に居た。もっと詳しく言うと私が居るのは路地裏のような場所で、かなりザラザラしているコンクリートの壁にもたれながら寝ていて、起き上がったところだった
「これ……夢……かな………?」
なら早く覚めてほしいと思う、さっきから聞こえてくる私を起こしたのであろう爆発音や悲鳴はウマ娘の聴力からして見れば騒音でしかないし、例え小さかったとしても聞きたくはないない音だった
「そういえば夢で寝れば起きることができるんだったっけ」
耳をぺたんと折り畳んで私は呟く、振り返って今まで寝ていたところを見てみるとベッドでも原っぱでもないただただ無骨なコンクリート
さすがに寝るのが好きな私でもこんな場所で寝る気にはならなかった
しょうがないから私は歩く事にした。こういう夢はじっとしてるより何か行動した方が早く覚める
それにしても不思議な夢だ、夢というものは自分が見たことがある景色から出るものだが私はこんな路地裏の景色見たことない。何かしらの映画で見たことがあるのかもしれないが少なくとも記憶にない
それに夢を夢であると認識できるのがおかしいし、夢は三人称で見るものだったと思う、こんなにも見えているところしか見えていない夢もなかなかない
「それに体も思い通りにうごかせるしね~」
そう言って手をグーパー握りしめながら歩いていく、基本的に夢という物は体がうまく動かせないのが常という程なのにこれはまるで夢じゃなくて現実かのような動き心地だった
後から思えば私はもっと慎重に行動するべきだった。夢と呼ぶにはあまりにリアルな景色や体をもう少し疑うべきだった。目が覚めたばかりでまだ深く考えられないでいたのかどうかはわからないが、夢じゃないと気づくまでの私はの行動はあまりに迂闊で危機感が足りなかったのだ
そうやってもう少しで路地を抜けるというところまで来た。そこに近づくにつれて耳障りな喧騒はその大きさを増していて、折り畳んだ耳を通過して私に届いていた
「うわぁ~……これはひどい」
そして路地を抜けたら大通りのような場所に出た。それをバッグに黒の模様がついた白い仮面を着けて怒声をあげながら町を壊している人たちやその人たちから逃げている人たちがいた
「う~ん……あれなんだ」
その中でも目を引くのは逃げている人たちだった。具体的に言うとその頭についている耳だった。丸い形をしているその耳はどうみてもウマ耳ではなく、似ている耳をあげるとしたら熊に近い耳をしていた
私が見つめて居たその人だったが仮面の人と繰り広げている鬼ごっこに決着が付きそうだった、もう少しで追い付く、となったときに仮面の人がてを伸ばして後ろに流れている逃げている人の髪を掴んで引っ張った
転ぶ逃げている人もとい逃げていた人は地面に転がり悲鳴をあげた、そして追いかけていた人はおもむろに剣を取り出した
「剣!?」
私が左手側から見ていたためかその人が右手に持っている剣に気が付かなかった
そして剣をおもむろに振り上げて……
「待っ」
カッ、と音がした
ごうごう燃える町並みやそれらの人以外の悲鳴や怒声だってあるのにその音だけがやけにクリアに聞こえた
一泊遅れて上がる悲鳴はそれより大きく聞こえた
振るわれた剣は肩口から袈裟斬りにしようと入ったが骨か何かに阻まれてその音を鳴らしたようだった
「え………………?」
それを見て私は固まってしまっていた
目の前で人が一人死んだのだ、例えそれが夢であったとしても目の前に映る現実のようなこの光景はとてもリアルでまるで本物のようだった
そんな私を元に戻したのはまた別の怒声だった
「待ちやがれぇ!」
その声の方向を見てみると仮面の人がまた別の、熊のような耳をした女性とその女性が手を引いている子供を追いかけていてそれがこっちに向かってきていた
それを見てさっきの映像がフラッシュバックする
肩から入った刀、鳴る音と倒れ込む人影、流れ出る血
それらが一瞬のように頭を駆け巡って助けなきゃという思いに駆られた
「こ、こっち!」
私は子供の手を引く親の手を引いて走りだした、だが競争ウマ娘である私が本気で走ったら転んでしまい本末転倒なのでかなりスピードを落とさないといけない
なので結局は仮面の人たちをあまり離せないでいた
「お子さん、お借りします!」
このままだとどうしようもないと思い、子供を抱き上げて走り出す。子供一人を抱えて走ることなど私にとってはた易い、一般的な人たちよりかはだいぶ速く走れるだろう
「てめぇら! 待ちやがれ!」
後ろで怒号が聞こえるが足は止めない、逃げウマ娘で私は追いかけられる経験もあるし、その威圧感も知っているはずだが、私に向けられる純粋で、明確な殺意は初めてで、それがただ怖かった
かなり本気で走ったと思う、曲がり角を曲がって、路地裏に入って、土地勘もない初めての道をひたすら走った
「はぁっ、はあっ、はぁっ」
後ろから聞こえる怒号がだんだんと小さくなって、完全になくなった時に足を止めてへたりこんだ
「現実よりリアルな夢ってなんなのさ……」
大きなため息が出た、怒ったグラスよりも怖かった、って言ったらどれくらいか解ると思う。
「だいじょうぶ?」
ふと腕の中から声が聞こえた、顔を下にむけると私を見つめてくる熊耳の少女が居た
そういえば私は熊耳の家族を助けるために走っていたんだった
逃げることに必死になりすぎていて忘れていたことを思い出してから親の人が心配になった、自分が走ることに夢中になって頭から外れていた、急いで後ろを振り返るとこちらに走ってくる親の熊耳の人が見えた
「よ、よかっ「返してください!」」
よかった、と言おうとした私だったが怒声に掻き消された、引ったくる様に子供を奪われた私はただ呆然とするだけだった
「なんなんですかあなたは?! だいたいクランタなんてこのあたりにはいません、あなたも感染者なんですか?!」
ク、クランタ? 感染者?
「助けてくれたことは一応感謝してます。それでは」
そう言って子供の手を引いて去っていった
最後に、子供がこちらを向いてひらひらと手を降っていた
「…………ぇえ?」
後に残ったのは困惑だった
「なんなのさぁ、もう」
知らない場所で目覚めたと思ったら町が燃えてて、どんな種族かもわからない人が目の前で死んで、他の人を助けようと思って手を引いて、殺気向けられても必死に走って、それであの対応だ
とはいえ私に全く非がない訳でもないし、見方を帰れば子供を急に引ったくって逃げ出した誘拐犯にも見えますし……
「早く覚めてよぉ……」
散々な夢だ
「いたぞ! こっちだ!」
………本当に散々な夢だ
また私はあてもなく駆け出した
広場みたいなところを抜けて、燃え盛る町を肌で感じながら、今走っている道が行き止まりじゃないことを願いながら走る
後ろから聞こえる声がまただんだんと小さくなっていく、そろそろ巻けると思いながら私は今走っている路地裏を曲がって………
「うわあぁぁぁ!」
目の前に黒ずくめの不審者が現れた
「大丈夫ですか?! ドクター?!」
「なに?! なに?! だれ?!」
ドクターと呼ばれたその黒ずくめの不審者の後ろからウマ娘?の女の子が現れた
そしてその女の子は手から黒い稲妻のようなものをバチバチと出しているものだからなんだか一周回って冷静になってしまう
「え、え~と……こんにちは~なんて……………にゃはは」
いややっぱり冷静じゃなかったかもしれない
だってしょうがなくない!? あのバチバチしてる腕をずっとこっちに向けてるんだよ!? しかもなんか手首から石生えてるし!? 領域とかそういうものかもしれないけど怖いものは怖いよ!!
「何事だ!? アーミヤ!」
「大丈夫ですドーベルマンさん、一般人です」
そのさらに後ろから現れた強そうな猫耳の人をその少女は片手だ止めた
…………いやこの子そんな偉いの? さっきの人すっごく怖そうだったし年も上そうだったんだけど
っていうか猫耳って何なのさ、ここにウマ娘は居ないの
「こんにちは、私はアーミヤです、あなたの名前はなんですか?」
「セ、セイウンスカイです」
「我々はロドスという鉱石病の治療、感染者の保護を行っている会社です。解っているとは思いますがここチェルノボーグでは今レユニオンによる反乱が起きています」
「は、はい」
正直に何のことかわからないが反乱というのはさっき見た景色のことだろう、そこから推測するにチェルノボーグというのが今私がいる場所の地名であるのだろう
鉱石病というのについてはさっぱりだ
「そしてここでもう少しで天災が起きます」
天災? 天才? いや流れ的に天災の事だろう、大規模な自然災害ということだろうか
「そこで提案です。ロドスに保護されませんか?」
保護というのはさっき見たような景色から私のことを守ってくれるということだろう、それと天災という災害からも
願ってもないことだが一つだけ気になることがある
「な、なんで助けてくれるんですか?」
それだけが心残りだった、感覚として彼女が善意でそれを言ったことは解ったが理由の無い善意というのもそれはそれで怖い
私がそう声をかけるとそのウマ娘のような少女は手首から出ている石をもう一方の手で隠して少しうつむいた
「わ、私たちロドスは……………いえ、私はあなたを助けたいからです」
彼女は途中まで言いかけて言葉を飲み込んだ
たぶんだけど彼女は"ロドスという企業として"ではなく"彼女個人として"その言葉を言うことを選んだ
その美しい覚悟は私がよく知る友人に似ていた気がした
「じゃあ、よろしくね。アーミヤさんだっけ?」
それは私が気兼ね無くその申し出を肯定するのに十分だった
私がそう言うと彼女はうつむいていた顔をパッと明るくさせて笑顔で喜んだ
「ありがとうございます!」
何で彼女が喜ぶのだろうか、私は少し呆れながらその様子を見る
彼女のその花のような底抜けの笑顔はわたしのまた別の親友を思い出させた
これが私とロドスの出会いだった
時系列としては一章のあの親子を助けて拒絶された後くらい
アーミヤCEOがしおらしいのはそのせい
続かない