時々異世界で無双する《取得経験値十倍(球技除く)》の政近さん 作:いしいさくたろう
とあるテスト前、政近が生徒会室でアリサと勉強会をしているとき、突然扉があいた。
「政近君、また催眠術の本を持っていた生徒がこんなものを……」
「え? どれどれ……異世界入門?」
「またそんなくだらない本を……」
微妙に疑ってかかる政近と、端から信じていない様子のアリサに、有希は本を開いて読み上げる。
「次の言葉を唱えれば異世界への扉が開かれる……?」
「へー、我神に祈る、開け異世界への扉、か。厨二病罹患者かよ」
すると眩い光が放たれ、この場にいる全員がキョロキョロと周りを見渡す。
「有希様、政近様、アリサさん、足元にご注意ください」
空気に徹していた綾乃の台詞に、政近が床を見下ろすと、そこには扉が横たわっていた。
「これ、動いたら下の方に向かって扉が開いたりせんよな?」
「ちょっと危険かもしれませんね、政近君」
「ま、政近君? 大丈夫よね?」
アリサが顔を青くして、つい隣にいた政近にしがみつく。
政近は、この扉について注意深く調べながら、アリサに忠告する。
「お、おいアーリャ、動くなって――」
アリサにしがみつかれよろめいた政近が咄嗟に下を見下ろすと、扉が下に向かって開き、扉の先から虹色の光が溢れ出し、政近と有希と綾乃の目が犠牲になった。
政近たちは、扉の先に見える虹色の光の中へと落下していった。
「久世、いるか?」
政近たちが落下し、まだ虹色の光で眩しい生徒会室のドアが開かれると同時に、虹色の光の眩しさに統也は思わず目を瞑った。
「うわっ……」
「統也、どうかした?」
「茅咲、眩しくて何も見えないんだが、そこに何かあるか?」
統也が見えない以上、どう考えても茅咲に見える訳がないのだが、それは常識内でのお話であり、当然この眩しさの中でも茅咲には床と合体しているような扉が見えている。
「まさか久世君たち、この中に入ったわけじゃ……」
「この中? 何があるんだ?」
「なんか床に扉があるんだよね」
すぐには信じられないその事実に、統也は首を傾げた時、後ろから包容力に溢れる声が聞こえてきた。
「茅咲ちゃーん、何してるの~? 眩し~い」
「マーシャちゃん。もしかしたら久世君たちがこの扉の中に……」
「いや、茅咲。九条姉には眩しくて見えないだろう」
「とりあえず入ってみようかしら~」
「「え?」」
流石に高校生3人のみで如何にも怪しい扉に入り込むのは気が引けるのか、統也と茅咲は半身になっているのに対し、マリヤはノリノリで入ろうと近づいていく。……眩しいはずだが、前は見えているのだろうか。