時々異世界で無双する《取得経験値十倍(球技除く)》の政近さん 作:いしいさくたろう
「目が……」
「ま、政近君? 有希さん? 綾乃さん? その……ごめんね? 目潰しみたいになっちゃって」
「いえ、大丈夫ですよ、アーリャさん」
主の安全を守るためか、綾乃は指に銀色の鋭いシャーペンを挟み、警戒しながらキョロキョロと周りを見渡している。
「有希様、政近様、アリサさん。周囲には何も見つかりませんでした」
「分かりました。政近君、アーリャさん、綾乃、ここからどうしましょうか」
政近が見渡した限りであれば、東と南には草原、太陽の位置からして北に山脈、西には鬱蒼とした森が広がっている。
近辺で一番危険なのは恐らく森、草原の奥に見える山脈は森より遠く、そして危険だろう。
現在の状況を確認するのであれば山に登るのが手っ取り早そうではある。草原の奥には何も見えないし、森を越えても何もないかもしれない。
「危険かもしれないが、山に登るのがいいんじゃないか? 登山程度ならできると思うし有希も余裕だろ?」
「そうですね。綾乃も訓練を受けているので登れますが……アリサさんはどうでしょうか?」
ここで政近は有希のやらかしに気づいてしまった。
「もちろん、そのくらい出来るわよ」
アリサにそんな質問をしてしまったら、できないなどと言えないわけがない。そのことにも有希はしっかりと気づいたうえで聞いていたのだが。
『お兄ちゃん様、アーリャさんを庇って自分の強さを見せつけてやれよ~!』
『おいお前、それでアーリャを危険に巻き込むなよ!』
明らかに確信犯で言った妹の恐ろしさに政近は戦慄した。
その途端、後ろの方に人の気配が発生する。それに気づいた綾乃が、シャーペンを構え後ろを向いた。
「久世、周防、君嶋、九条妹! 大丈夫か!」
「剣崎会長!? 更科先輩とマーシャさんも……」
「来ちゃった」
来ちゃった、などというふざけ気味なセリフを発しながらも、何が起こっているのかわからないこの状況下、本の題名からするに異世界であるこの場において、貴重な戦力となる茅咲と統也の存在は大きく……マリヤが来たことでプラマイゼロになった感じも若干あるが、政近たちにとっては非常に嬉しい参戦だ。
「ふた……三人の参戦は嬉しいんですけど、帰れなさそうですよ?」
「後輩がよくわからない場所で野垂れ死んだ方が生徒会としては困るからな」
「そうだよ」
「アーリャちゃんがいなくなったらわたしどうにかなっちゃうわ~」
格好いい先輩としての格を見せつけてくる統也と茅咲。それに対して、マリヤはゆるゆるお姉さんとしての格を見せつけてくる。
「とりあえず山に向かうわよ」
「いや、夜は危険だ……いくら更科先輩がいても。ここで野宿して明日の朝に出発したい」
「政近君、今夜は越せるのですか?」
「あたしと統也がいれば問題ないよ!」
短い? 知らんなそんなこと