2044/5/2 14:13 セレベス海
セレベス海に侵入する深海棲艦の動きを察知したABDA司令部は英、蘭、壕3ケ国の連合艦隊をセレベス海に派遣した。
ダーウィンを出航した私、「パース」率いるオーストラリア艦隊は、バリ海峡を通ってスラバヤでオランダ艦隊と合流し、セレベス海へ向かった。
《こちらイギリス海軍東洋艦隊所属、重巡エクセター。敵艦隊を発見しました。敵は巡洋艦4、駆逐艦4の偵察部隊です》
シンガポールのイギリス海軍東洋艦隊を率いるエクセターから無線が届いた。向こうの旗艦はプリンス・オブ・ウェールズさんだけど、出撃のたびに大怪我をするジレンマのせいで引き籠りがちで、その世話をするレパルスさんも含めて滅多に表に出たがらない。先んじて飛ばしていた偵察機を回収し、報告からタラウド諸島沖を西へ航行する敵艦隊を発見したようだ。
「パース了解。3か月ぶりの共同作戦です。一緒にがんばりましょう」
私は返信する。少し豪州訛りが入ってしまった。イギリス英語をしっかり話すエクセターさんのことだから後で怒られるかもしれない。私も他のオーストラリア軍の艦娘も、元はイギリス生まれなのだが、こっちに来て訛りが板についてしまった。なのでイギリスの艦娘が来るときはやや肩身が狭い。まあ、英語が話せるだけましと言えばましだ。
「○○××▽・・・○□?」
「デ・ロイテルさん、少しは英語を覚える努力をしてください」
私の背後を航行するデ・ロイテルは英語が話せない。史実でもこれが原因でABDAは壊滅している。そして今こうやって艦娘部隊として再びABDAが再編成され、3年にもなるのに、だ。というわけで今のABDAはエクセターが指揮を執ることが多い。
ロイテルとは別の軽巡、ジャワが慌てて通訳する。
「すいません、ロイテルちゃんは、敵の数が多いがヤンキーは来てくれないのか?と言ってます」
「ありがとうジャワさん。確かにセレベス海は米軍が一番近いのに、どうして来ないんでしょうか?」
セレベス海の場所をわかりやすく言うと、フィリピンの真下、ボルネオ島とセレベス島に囲まれた海域だ。
《彼女らはルソン海峡の敵艦隊を迎撃していて来られないそうだ。代わりに航空支援を出してくれるらしい》
「○×▽▽□□」
「それはいい、日本の連中に横取りされる前にやっつけよう。ついでに帰りのタクシーも頼めないか?だそうです」
それはいくらなんでも図々しいでしょ・・・と思うが、正直私もダーウィンから遠征してきたので、楽ができるに越したことはないが。でも空輸されるのもそれはそれで疲れる。
《かわりにダバオのホテルの予約でも取るんだな。さて、君達を確認した。敵艦隊もだ。このまま進めば挟み撃ちにできる。私達が敵の頭を押さえるから、そっちは回り込んで退路を断ってくれ》
遠くに赤い服の一団が見えた。こちらが手を振ると、向こうも返してくる。英国の艦娘は例外もあるがレッドコートが多いので、識別しやすい(発見もされやすいが)。かくいう私もイギリス生まれだが、私は青基調の海軍士官服である(軽巡はこっちの方が多い)。ちなみにズボンではなくスカートを穿いている。正面には灰色の軍団。私達の敵、深海棲艦だ。
「見つけた。ヴァンパイア、準備はいい?」
私は今日の相棒の駆逐艦ヴァンパイアに訊く。鮮血のような赤い瞳と黒髪、時折覗かせるちょっと長めの犬歯はその名の通り吸血鬼のようだ(かわいい)。他の仲間たちは船団護衛に出ていて、今日連れてこられたのは彼女だけだった。
「うん、絶好調だよ!早く食べちゃおう!」
「よし!オランダ組もいいね?」
「(^o^)b!」
「いいよ!だそうです」
オランダ艦隊も大丈夫みたいだ。
「了解!BDA艦隊、作戦開始!」
「臆病な戦艦どもがいなくても、我々が十分に戦えることをやつらに教えてやる」
紅を纏った艦隊、その先頭を行くのはショートのブロンドヘアと戦艦級の眼光を持った凛々しい顔、ナポレオン戦争時代の赤い詰襟の軍服をきっちりと着こなし、頭にシャコ帽、腰にはサーベルを差した出で立ちは、スカートと艦娘の艤装が無ければ美少年に見える。実際に史実でも大西洋を渡って逃げる敵戦艦を自沈するまで追いつめる執念深さと、逆に追い詰められて沈むその時まで敵に屈せず戦い続ける果敢さを兼ね備えた武勲艦である。
「Today's Fox(今日の獲物に)!」
「「「Toast(乾杯)!」」」
エクセターはいつも戦闘に入る前に軽く乾杯する。今日も駆逐艦と共に航行しながら少しのブランデーを含んだ。
重巡エクセターを旗艦にエレクトラ、エンカウンター、ジュピターら三隻の駆逐艦からなるイギリス艦隊は敵艦隊を正面にとらえ、単縦陣で接近した。距離800、先制砲撃をしたのは敵艦隊で、イギリス艦隊の周りに水柱が立つ。
「エクセター、交戦開始する」
エクセターも応射する。敵は挺縦陣を取り、重巡4隻の火力で押し切ろうとした。しかし、射撃はエクセターの方に軍配が上がった。エクセターの砲撃は敵先頭を航行していた重巡に命中し、主砲を損壊させた。相手も負けじと命中弾を与えて、普段はぴっちりと着こなしているエクセターの赤い上着を少しはだけさせ、控えめな胸が見え隠れした。
「くぅ、だがこの程度では屈しない!」
破れた服に少しだけ羞恥を覚えるが、すぐに戦士の顔に戻り戦闘を続ける。
「2時方向に回頭」
エクセターは距離を400まで詰めると、右に回頭し、敵艦隊の頭を押さえる。敵もつられて回頭しようとしたが、単縦陣に戻すのがうまくいかず、隊形が乱れて混乱した。それを見やるとエクセターは好機とばかりに腰のサーベルを抜いた。
「今だ!魚雷発射」
「了解!」
「発射!発射!」
「当たれなのです!」
エクセターの指示のもとエレクトラ、エンカウンター、ジュピターが魚雷を発射した。魚雷によってさらに動揺した敵は隊列を乱す。魚雷はほとんど当たらなかった。しかし、エクセターは焦らない。
「パース、もういいか?」
《ドンピシャよ!》
敵艦隊は迂回していた壕蘭艦隊の射線にかかっていた。魚雷が敵艦隊に殺到し、先ほどの回避で油断していた敵はあっという間に重巡3隻、駆逐艦1隻が食われた。
「主砲一斉射!」
エクセターは敵に容赦なく砲撃を掛ける。駆逐艦の一隻が爆散し、もう一隻が大破した。生き残った敵は撤退を始めるが、その先には壕蘭艦隊が待ち構えて、挟撃された形となった。
「殲滅する。着剣せよ!一隻たりとも逃がすな!!」
エクセターの指示でイギリス艦隊は横隊を組み着剣突撃をする。正面の壕蘭艦隊を突破しようとしていた敗残棲艦は、次々と背中を刺し貫かれて海に沈んでいった。
「消えろロクでなし」
エクセターが最後に残った重巡リ級をサーベルで真っ二つにして、戦闘は終わった。
「んあー!お疲れ様」
ダバオの港に入った私は体を伸ばして深呼吸する。
「ご苦労、皆。よく頑張ってくれた。作戦本部に報告次第、今日は解散する。少し待っててくれ」
エクセターさんが無線を取っている間、私はみんなとこれからの予定を相談する。
「とりあえずホテルどうする?」
「○□××○!」
「この際一番いいところがいい!だそうです」
「でも、あんまり派手に遊びすぎると、司令部に大目玉くらうよ」
艦娘も厳しい海で働く兵士なのだから陸にいる時ぐらい遊びたいのは当然だが、何かと人目に付きやすい存在なので、スキャンダルになっても困る。
「んー、折角来たんだし、ダーウィンのみんなにお土産買ってこうかな?」
そんなことを言っていると、エクセターが何やら蒼い顔をして戻ってきた。
「どうしたのエクセター?そんなに焦って」
「まずい事になってるみたいだ」
「え?」
「ABDA司令部に連絡しようとしたが、無線が混線してて通じなかった。有線もだめだ」
「どういうことなの?」
「無線から拾った情報からわかることを総括すると・・・敵大規模艦隊がフィリピン全土に電撃侵攻、マニラ司令部も大空襲を受けて、ここミンダナオ島もすでに北部は深海棲艦の手に落ちた」
それは、私達の長い苦難の旅の始まりであった。
キャラ解説
エクセター「イギリスにおいて建造された最後の重巡洋艦。それが私、エクセターです。大西洋ではドイツのポケット戦艦との戦いで活躍しました。太平洋でABDA艦隊の一員として戦いましたが、健闘むなしく沈んでしまいました。ですが、降伏勧告を突っぱねて最後まで戦ったことは、今でも私の誇りです」
重要関係艦 雷
パース「ポーツマスで建造された私は、39年にオーストラリアに買い取られて、カリブ海や地中海などを回っていました。ABDAに入って、スラバヤの後は旗艦になったけど、バタビアで欲を出して敵の輸送船団に手を出したのが運のつきだったよ」
重要関係艦 最上(この戦いでFFおこしました) 三隈 名取 吹雪 叢雲(とどめを刺した)
デ・ロイテル「僕がABDAの旗艦をしたデ・ロイテルだよ。僕の写真見るとわかるけど、クルップ社がデザインしたおかげで、見た目はまるでポケット戦艦みたいだね。実際戦艦に見えたらしいけど。僕なりに旗艦として一生懸命頑張ったんだけど、うまくいかなかったよ。どうしてみんなオランダ語で喋らなかったんだろう?うーん」
重要関係艦 那智 羽黒(酸素魚雷発射) 夕立(なんか戦艦っぽい?)