2044/5/4 バターン
マニラ空襲の報を受けてアメリカ軍アジア艦隊が戻った時には、マニラ市街地はすでに陥落し、深海棲艦たちによる市民の虐殺が繰り広げられていた。敵は4個機動部隊を展開させて四方からフィリピン全土を爆撃し指揮系統を混乱させ、湾内に退避する輸送船の貨物に紛れ込んで港に侵入、市街地を攻撃し始めた。他の都市でも同様の事態になっているようだ。マニラ湾の入り口のコレヒドール要塞にも敵空挺部隊が強襲、半日足らずで占領された。これによって第7艦隊は湾内に閉じ込められ、陸軍はバターン半島に本部を移して必死の抵抗を試みていた。
小さな村の小学校に設けられたフィリピン臨時防衛本部は、重苦しい雰囲気に包まれていた。くたびれた校舎には米比両軍の将軍たちに加え、フィリピン政府高官達もそろっている。しかし、突然の空襲と占領によって慌てて非難した閣僚の乗ったヘリが撃墜され、大統領や陸軍大臣を含む政府閣僚たちが軒並み死亡、行方不明になり、行政府に残り米軍に救助されたのは一存で国政を決める立場ではない官僚や議員だけだった。
「リンガエンに敵浮遊要塞上陸!防衛線が突破された模様です。航空支援要請が来ています」
オペレーターから最悪の知らせが入る。敵の本体だろう。主要な空港は民間、軍事問わず攻撃を受けているが、戦闘機は無事で、滑走路を復旧させて現在は何とか制空権を確保していた。
「リンガエンの部隊はもう下げろ、攻撃機隊はルソン島西側の敵機動部隊を叩け。撤退支援に第5ヘリ中隊を向かわせろ」
アジア軍司令官ジミー・マッカーサーは支援要請を突っぱねる。制空権は確保できているといっても、大挙して上陸してくる敵を迎撃するには圧倒的に戦力が足りない。
「おい、ほんとにここは大丈夫だよな?ホワイトハウスは可能な限り援軍を出すと言っていただろ!」
現地政府の議員の一人が言った。マッカーサーはその顔をみて哀れに思うが、隠しても仕方がない。
「いや、来ないだろうな」
「な、なんだと!おい、貴様らにどれだけ高い金を払ったと思っているんだ!我々はどうなるんだ!」
議員たちが動揺して自分に詰め寄るのを見てマッカーサーは苦笑するしかない。マニラが襲撃されれば米比両軍はバターンに逃げ込む予定となっていたが、彼らはそれを自分たちの保身のために使うつもりだったらしい。マニラ市民はそのための犠牲だったようだ。マニラがあっさりと落ちたのも、市民の避難誘導をしないまま軍が撤退して橋を落としたのもそれが原因だろう。愚かなことだとマッカーサーは内心彼らを軽蔑する。
「君たちは歴史の教科書を読んだことがないようだが、私の先祖は本国の言いつけを守って100日間待ったが来なかったぞ。君たちが何年前の条約を根拠に言っているかは知らんが、我々には守れない島は必要ない」
「なんだと!」
議員の一人がマッカーサーに掴みかかる。マッカーサーは表情を変えずにホルスターの拳銃を抜き取り・・・
パン!
乾いた銃声がしたあと、議員は手の力を弱めマッカーサーを開放し、そのまま眠りにつく。
「なっ、何のつもりだ!?」
ほかの議員や閣僚たちが慌てるのを尻目にマッカーサーは次の獲物に銃口を向ける。
「ひぃっ!」
逃げようと振り返る議員たちに他の将軍と米兵たちが銃口を向けて次々と殺していった。議員たちの死体を尻目に、マッカーサーは歩き出した。
「さて、利権と選挙にしか興味のない豚どもはいなくなった。この国に残っているのは、郷土愛あふれる現地人たちと、縁もゆかりもないこの土地で死のうとしている我々だけだ。我々は世界を救うために生き残らねばならない。そして彼らが祖国のために死ぬのはそれは名誉なことだ。我々と彼らの利害は一致しているのではないかね?」
マッカーサーは将軍たち一人一人を見つめる。彼らもマッカーサーと同じ意見のようだ。次の瞬間に会議室の扉が開いて、
「こ、これは一体どういうことです!?」
銃声を聞きつけた比軍の将軍が入ってきた。名前など忘れたが人気があって激情家の人物だったと思う。マッカーサーは心底申し訳のないという表情をつくって彼に応じた。
「ちょうどよかった。彼らは君たちを勇気づけるために決意の自決をしたんだよ。彼らは死ぬ前に、君に全権を委任して市民の救助と山岳地帯でのゲリラ防戦の準備を固めるように伝えてくれと私に言った。死者の意志を無駄にするな。今すぐ準備を始めたまえ」
マッカーサーは将軍の肩を叩いて薫陶した。将軍は感極まって涙を流したが、そのあとすぐに立ち直って議員たちの亡骸に敬礼し、出撃の準備のために立ち去って行った。彼はのちにバターン死の行進と呼ばれる惨劇を経験することとなる。
マッカーサーはその背中を見送ると、彼の部下たちに向かって命令した。
「議員は名誉を守り、将軍は国を守り、我々は世界を守る。アメリカ極東統合作戦司令部司令、ジミー・マッカーサーの権限で命令する。ルソン島に展開している陸軍、第7艦隊及び空軍戦力は、島を放棄しその力を撤退に注力せよ。バターン半島の米軍は比軍が突撃を始めたら海岸へ向かえ。第7艦隊は間もなく到着するアジア艦隊と共に敵に占領されたコレヒドール要塞を無力化して湾内を脱出、バターン半島の陸軍を回収し、南シナ海へ向かう。リンガエン防衛にあたっていた部隊はクラーク飛行場に集結。滑走路修理が終わり次第空路で脱出せよ。使えるものは何でも使え。とにかく一人でも多く脱出する。いいな?」
「了解!」
2044/5/4 17:30 マニラ湾
「全員聞け!マッカーサーから連絡が入った。我々はこれよりマニラ湾の第7艦隊の脱出を援護する。すでにコレヒドール島が落ちたのは知っているだろうが、そっちは第7艦隊が灰にするそうだ。我々の任務はフォート・ドラムを占領することだ。14インチ連装砲2基を持つこのコンクリートの『戦艦』は敵に占領されて、艦隊の脅威となっている。我々は夜陰に乗じでこれを奪還し、反対に敵に向けて要塞砲をありったけ打ち込め!」
「おおー!」
ヒューストンが作戦を説明すると、配下の駆逐艦たちも元気よく声を上げる。すでに日は沈みかけていた。ここへ来るまでに何度か敵艦載機の襲撃を受けたが、損害はなく、作戦には問題ない。しかし、この事態に部隊の動揺は大きく、軽巡マーブルヘッドとボイシも現状をぼやいている。
「まさか4年かけて守りを固めたのが2日で撤退なんて・・・」
「同じマッカーサーでも今回は根性なしだな」
「二人とも、無駄口を叩くな」
ヒューストンが注意する。いつもはヒューストンの補佐として駆逐艦達を束ねている2人だが、今日は自分たちから呟きを口にしてることを、彼女は苦々しく思う。文句を言いたいのは彼女も同じだが、立場上そうはできない。
「ですが、どうして敵は私達に気付かれずにこれだけの兵力を移動させたのでしょう?貨物に紛れ込むなんて搦め手も、今までの奴らの行動ではとうてい考えられません」
眼鏡っ子駆逐艦ポープが首をかしげる。
「奴らの姫型は言葉を解するらしいから、敵にも頭のいいモノが生まれたのか、あるいは・・・」
いや、まさか。ヒューストンは首を振る。フォートドラムの探照灯の光が見えだす。
「お喋りはここまでだ。敵の索敵範囲に入る。探照灯に見つかるな」
敵はまだ撃ってこない。どうやら奴らは電探の使い方を知らないらしい。戦艦の籠マストのような見張り台から照射される探照灯の明かりを回避しつつ、艦隊はフォートドラムへと近づいた。かつて日本軍の進行を食い止めるためにマニラ湾の入り口に建てられたこの砲台は、深海棲艦が発生すると再び要塞化された。皮肉にも、今は湾何の味方を閉じ込める牢の扉と化しているのだが・・・
「おいどん尻!PJ、お前のことだよ!もっと右に寄れ」
戦列をそれかけているポール・ジョーンズをボイジが注意した。その直後にジョーンズの真横に光が横切る。ジョーンズは慌てて戦列に戻った。
「まったく冷や汗ものだね」
ジョーンズは光の線を見て言う。
艦隊はさらに接近し、隔壁扉に取り付いた。扉に爆薬を仕掛ける。
「3・・2・・1・・爆破!」
隔壁扉が爆発し、ヒューストンを先頭に艦隊は砲台に突入する。暗い廊下を探照灯をつけて潜入していく。すぐに廊下の角から敵が飛び出してきた。蜘蛛のような4本足に人の上半身が付いた戦車棲艦だ。敵が発砲する。
「いてて、なんじゃこりゃ?豆鉄砲だな」
アルデンが被弾したが装甲に傷ひとつつかない。戦車棲艦の主砲は47㎜や75㎜であるから艦娘にとっては無力も同然だ。
「んなもんが効くかよ!」
PJが発砲すると戦車棲艦は豆腐のように爆散し、外壁に大穴があいた。
「これはちょっと拙いな・・・」
「弾薬庫に引火する危険があるな。主砲は撃つな。対空機銃で対応しろ」
ヒューストンが厳命した。途端に穴や通路から敵が出てくる。
「ひっ、壁と天井にまで張り付いて気持ち悪いよ!」
「・・・(ズガガガガ)」
ジョン・D・フォードは泣きわめきながら、ジョン・D・エドワーズは無言で応戦する。どっちも同じファーストネームとミドルネームのため、ややこしいことこの上ない。
5分と経たないうちに砲塔以外の掃討は終わった。主砲はまさに発砲中で、時折砲台全体が揺れた。
「主砲塔内部は弾薬がある。誘爆させるなよ」
3、2、1・・ヒューストンがドアをけ破り、マーブルヘッドとペコスが突入する。4発砲声がして、部屋が静まり返った。
「クリア」
ヒューストンが言った。
「こちらヒューストン、砲台の制圧が完了した」
《本部了解、コレヒドールも無力化できたようだ。だが戦艦を含む敵艦隊が接近している。迎撃してくれ》
「了解!駆逐艦たちは砲台を操作して戦艦を迎撃しろ!PJ、お前は探照灯を操作するんだ!マーブルヘッドとボイシは俺と直接迎撃に行く」
すぐに敵の迎撃準備に入った。砲塔を湾内から湾外へと向け直し、探照灯を構えて敵を探す。
「どこにいやがる・・・出て来いクソッタレ。その頭ぶち抜いてやるからよ」
PJは探照灯を操作しながらそんなことを息巻いた。だが正直見つけたくもない。そうして探照灯を適当にいじっていると、光の端に黒い影を捉えた。敵だ!
「見つけた!撃て!撃て!」
ヒューストン達が発砲する。命中したのかいくつか爆炎が上がった。PJが敵のいそうな場所を照射して、ヒューストン達に仕留めてもらう。敵は結構な数がいたが、何とか撃破できた。砲門数の多いブルックリン型のボイシがいたのはありがたいことである。ヒューストンが手信号で方向を指定してきた。PJは向きを変える。戦艦ル級をライトにとらえた。ヒューストン達が撃つが、有効弾は与えられない。
「おい、砲台は何やってんだ!早く撃たねぇとこっちがやられるぞ!」
重い砲塔は操作に時間がかかり、その間にル級がこちらに主砲を向ける。狙う先はPJのいる探照灯だ。
「やべぇ!」
PJは海に飛び込む。敵と砲台の砲声が同時に聞こえ、PJは海に吹っ飛ばされた。
「はっ!?ここは?」
PJが再び目を覚ますと、そこはヘリの中だった。窓の向こうには燃え盛るコレヒドール島と、炎を噴き上げて爆散するフォートドラムが見えた。
「やっと起きたか」
顔に煤の付いたボイジが水のペットボトルを差し出した。他の仲間たちも皆服が焦げたり煤まみれになっているが無事だ。
「で、第7艦隊にはいつ合流できるんです?」
「いや、我々はこれから南部の撤退支援に向かう。通信が途絶して状況が解らないが、可能な限り兵を救い出すんだ」
「・・・」
「吹っ飛ばされたおかげで、お前が一番無事だったんだ。しっかり働けよ」
「やれやれ」
ヘリは暁へ向かって飛ぶ。
那珂「言え!なんでこんな話書いた!(主砲を向けて)」
筆者「ホントはもっとまともにしたかったんだ。私が直感的に小説書いてることぐらい知ってるだろ(椅子に縛り付けられながら)」
那珂「要塞攻略とか艦娘でやる仕事じゃないよね?FPSのやり過ぎじゃないの?特殊部隊にやらせりゃよかったじゃん」
筆者「そうしたらアメリカ艦の紹介ができないから」
那珂「それすらできてないじゃない!読者のことも考えてよね!面倒だからって略称使うのもやめなよ!あと海戦してよ。前回の銃剣突撃と言い、艦これでやる必要あるの?馬鹿なの?死ぬの?」
筆者「これは艦娘の人間としての特徴を押さえて(バンッ)・・・・・・」
那珂「みんなごめんね、ダメ筆者の無駄に細かい妄想に混乱すると思うけれど、那珂ちゃんがしっかり叱っておくから、次回も見てね。きゃは☆。あとは筆者の妄想垂れ流しの解説だよ☆」
キャラ紹介
ヒューストン「ノーザンプトン級重巡5番艦として建造された私は全体的に派手な人生を送ったと思うね。ゴールデンゲートブリッジの落成式に行ったり、大統領を乗せての観艦式や日本への親善訪問もした。アジア艦隊としての任務も楽しかったよ。戦争さえなければね。ABDAでは主力として、バタビアで最後の相棒のパースと力尽きるまで戦ったよ」
マーブルヘッド「オハマ級軽巡の9番艦が私、マーブルヘッドです。ケースメイト砲が古臭い?やめてくださいよ、お気に入りの髪飾りなんです!戦争が始まったときはヒューストンさんと一緒にいたんですけど、ジャワの空襲で損傷して艦隊を抜けました。そのあとは船団護衛に従事したり、地中海の戦いに参加して、戦争を戦い抜きました」
ボイジ「1938年に就役した俺は、初陣になる予定だったパクパリン沖海戦には参加し損ねたが、それからはサボ沖海戦、シチリア上陸作戦、イタリア本土上陸作戦、レイテ海戦、他にもいろいろな戦いに参加して世界中を駆け回ったぜ。戦後は名前を変えてアルゼンチンに移籍したけど、今度はクーデターに巻き込まれて、最後は日本で廃棄されたんだ。いやー忙しい人生だった!」
解説
戦車棲艦:深海棲艦は基本的に内陸に干渉しないが、海上封鎖や資源確保など特定の目的がある場合、浮遊要塞や泊地棲鬼、飛行場棲鬼などが占領活動を行う。この話ではこれらの拠点防衛用に四足歩行の戦車棲艦を登場させた。47㎜砲が主砲の軽戦車、75㎜砲搭載の中、105㎜榴弾砲搭載の重型の3タイプに分けられ、副武装に機銃が搭載されている。攻撃力・防御力もWW2の戦車並みのもので基本的に艦娘の敵ではなく、MBTや対戦車火器でも十分対処可能(軽型はM2で撃ちぬける)だが、数が多く昆虫のように壁に張り付くことができるので、市街地戦では神出鬼没な動きで敵を翻弄する。軽型は艦載機で吊り下げて空挺投入されることがある。