ABDA逃亡記!   作:創生路ハイローラー

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 最終回です。ありがとうございました。


エピローグ

 ロンドンスコープ 5月14日

 

 我らが王子PoW、アジアにて敵総大将を討つ

 

 3日に深海棲艦の大攻勢によって行方不明となっていた国民的戦艦PoWが、7日に無事ダーウィンに帰投した。会見には多くの女性ファンが詰め掛け彼女の生還を喜び、彼女も爽やかな笑顔でファンの歓声にこたえた。会見に臨む彼女の手には大きな箱が抱えられていた。記者が何かと質問すると、彼女は中身を見せてくれた。なんとそれは敵の総大将、憎むべき悪鬼、南方棲戦姫の首であった。

 会場がざわめく中、彼女はその首を手に入れるに至る経緯を滔々と語った。

 敵の襲撃を受けて大混乱のシンガポールで、雲霞のごとくやって来る敵軍の中に悪鬼の存在を確認すると、相棒レパルスとともに敵艦隊の中に分け入り、押し寄せる敵軍を手当たり次第切りつけて、ついに南方棲戦姫と一騎打ちに持ち込んだ。50合もの激しい撃ち合いの末、ついに南方棲戦姫を押し倒して、首を掻き切ったと語り終えた際には、会場中が大歓声に包まれた。

 南方棲戦姫の首は来週にはロンドンへと運ばれ、女王陛下に献上され、宗教諮問委員会の審議を通して、大英博物館で一般公開される予定である。

 

 今回の発表について各界からのコメント。

 

首相 第14代マ―ルバラ公チャーチル「さすがは私のお気に入りのPoWである。今回の戦果は大英帝国の歴史に残る偉大な業績である。彼女の戦果は各地で戦っている国民に希望を与えるものとして全連邦の隅々にまで伝え広めなければならない」

 

海軍卿 ジャック・アレックス・フィッシャー「シンガポールこそ守れなかったものの、敵の総大将を討ったことは戦略に大きな影響を与える事件であり、主力を失ったシンガポールは取り戻したも同然である。すでに増援艦隊を本国で編成中であり、シンガポール奪還の日は近い。チャーチルはPoW押しのようだが、時代は巡洋戦艦であり、おいしいところだけ持っていくニートのPoWと違い、快足を生かして地道に活躍したレパルスの方が断然評価されるべきだ」

 

戦艦 フッド「ええ!?PoWちゃんが!?私も頑張らないと!」

 

戦艦 クイーン・エリザベス「とりあえず無事でいてくれて嬉しいです。ただ、活発な日本の艦娘と触れ合えば少しは根性が治ると思ったのですが、4年間シンガポールでニート状態、仕事もレパルスとエクセターちゃんに任せきりだったと聞いて失望しました。本国に呼び戻してビスマルクとデートさせます」

 

戦艦 キングジョージⅤ世「また妹が大ホラを吹いて申し訳ありません」

 

戦艦 ウォースパイト「はぁ?PoW?あの子は海軍の恥だわ。日本にでも売り払えばいいのよ」

 

巡洋戦艦 レパルス「(また嘘なんでしょという質問に対して)南方棲戦姫を倒したのは事実です。過程は大分盛ってますが・・・。でも、あの子なりに頑張ったんですよ!」

 

 など各界から様々な声が出ているが、そういったところも含めて、彼女の魅力と言えるだろう。

 

 

「・・・・・・・・」

 ベッドの上でエクセターは新聞を読むと、ライターで火をつけて燃やした。

「ちょっと!まだ私読んでないんですよ!」

 パースが慌てて取り返そうとする。

「読まんでもいい、不愉快になるだけだ」

 エクセターはパースに新聞を燃えたまま渡す。パースは新聞を振り回して何とか火を消したが、灰まみれになってしまった。

「また王子がやらかしたんですか?」

 隣のベッドのエンカウンターが言った。全艦大破状態で救出されたABDA艦隊は、日本軍のパラオ泊地で応急修理を受け、シドニーで本修理に入っていた。

「どうせ南方のことを自分一人でやったとか言ったんでしょう?んで、大臣方がほめそやして、戦艦たちが冷たい目で見るんでしょう?」

 エレクトラが言う。こうなることはいつものことだ。フッドと並んで人気(女性からの)が高いPoWは、見栄っ張りな性格もあって積極的にメディアに露出し、そのたびに戦果を大きく盛る傾向にあった。

「奴が首を取ったのは手負いの相手で、日本軍のお膳立てがあってのものだ。こんなに大きな貸を作って一体どうする気だ」

「本人は意外と真剣かもしれませんよ。日米同盟も近いですし、日英同盟も再締結して連合国をまとめたいのかも」

 パースが言った。

「あいつにそんな頭があるか!」

「パース、替えのお水持ってきたよ!」

 ヴァンパイアが水差しを持って入ってきた。行方不明になった彼女だったが、実は艦隊からはぐれた後夜明けを待って無事パリクパパンに引き返したのだ。通信が回復して無事がわかると、パースがすぐ迎えに行くと言って飛び出し、シドニー達に止められたのはいい思い出だ。

「ロイテルちゃんの調子はどうだった?」

「まだちょっとかかるみたい。でも、次の作戦には間に合わせるって言ってたよ」

「よかった」

 今回の戦闘でロイテルとエクセターは特にひどい損害を負った。ロイテルは長期修理が必要とされたが、艤装は突貫で修復してあとは本人の回復を待つだけである。

「エクセターさんも早く全快してくださいよ。もちろんシンガポールにはいくつもりですよね」

「当然だ。日本軍との大事な連携作戦だ。PoWのバカに任してはおけん」

 エクセターは十分なやる気を見せている。

「日本軍に借りは返さないとな、特に雷には2度救われた」

「え?」

 パースが首をかしげる。

「いや、こっちの話だよ。エンカウンター、ちゃんと準備はしてるな」

「はい、一番いいやつを注文しました。来月には勲章と一緒に本国から来る手筈です」

「そうかそうか。中に入れるものも考えないとな。何がいいかな」

 エクセターはエンカウンターと楽しそうに贈り物の相談をする。その時初めて、パースはエクセターの笑顔を見た。

(ずっと怖い人だと思ってたけど、こんな表情もするんだ)

「ん?パース、私の顔に何かついてるのか?」

「い、いえ。その、今のエクセターさん、すごく、可愛かったので・・・」

「・・・・・・(ボンッ)」

 エクセターが真っ赤な顔をして倒れた。こういうのに弱かったとは。パースは今日の2つの大発見を大事に覚えておこうと思った。

 

 

「決めた!うち、起業する!」

 アメリカ艦隊のドッグで、鋼材の山の上に立ってラングレーが宣言した。

「何寝言言ってんだ?」

 PJは艤装の手入れをしながら言った。

「うちらはもう書類上は除隊されとるからな。でも、このまま引退するのも気悪いし、今は陸も海も戦争しとる時代や。海上護衛の仕事くらいいくらでもある。うちらで民間警備会社作って、儲けようっちゅうことや」

 ラングレーはない胸を張っていった。

「うちらって、あたし達も入るのか?」

 ペコスが呆れて言う。

「もちろん来てくれるとうれしいな。引退した艦娘に心当たりはあるけど。マッカーサーに許可もとった。今は何処も手が足りんから民間でも何でも使いたいそうや。日本にもスチュワートが話つけてくれるて。当面はそっち中心になるかもな。あとは・・・」

 ラングレーはとりあえずシンガポールか広州に事務所を開いて、傭兵や商船護衛から始めること。最終的には自分たちの船を買って貿易商社を作り世界に進出したいなど、事業の目標を次々と語った。まだまだ曖昧な理想であったが、皆楽しくなってきてあれやこれやと意見していく。

「・・・そういうことで、皆、ついてきてくれるか?」

 ラングレーが最後の確認を取る。最初に手を挙げたのはホイップルだった。

「HAHAHA!ホントにラングレーは楽しいことを思いつく。これなら軍に残るより楽しそうだ。いいぜ、付き合うよ」

「ホイップル!ありがとうな!」

 ラングレーはホイップルに抱き着いた。

「あの、私もよろしいでしょうか?」

 マーブルヘッドも手を挙げてくれた。

「荒事もあるだろうから歴戦のボイシ様がいなきゃな。スペイン語も話せるし、古馴染みのABCの連中は暇らしいから、引き抜きも任せときな」

「外征続きなら燃料もいるし、私がいなくちゃ話にならないね」

 ボイシとペコスも加わった。この二人がいるのは心強い。

「皆行くなら私も行きます」

「・・・・・・私も」

「俺も行くぜ」

「俺達もだ」

 駆逐艦達も次々と賛同した。後はヒューストンとエドサルだけだ。

「御大将はどうしたい?うちはヒューストンに社長やってほしいねんけど」

「うーん。そうだな、軍にも仕事はあるが、こういう経験も悪くない。私も行こう」

「じゃあ僕も」

 エドサルも手を上げようとした。だが、ラングレーは厳しい顔をした。

「エドサルは帰る場所があるんやから、ちゃんと親孝行せなあかん。無理についてくることないで」

 ラングレーはそういうとエドサルを抱擁して、耳元で言う。

「あんたはうちの命の恩人や。今のうちがあるんはエドサルのおかげやで。もう十分戦ったやろ。あんたみたいな働きもんは家に帰って、お袋さんよろこばせたり。ええ旦那さん見つけて、幸せに暮らすんや。ええな。今までホンマありがとう。大好きやで、エドサル」

 ラングレーはそういってさらに強く抱きしめた。エドサルは肩に冷たいものを感じる。これは涙だ。ラングレーは彼女なりにエドサルを思って別れを決断したんだろう。やがてラングレーが手を放すと、エドサルは泣きながら笑っていた。

「ごめん、ラングレー。それだけは聞けない・・・だって、だって僕、みんなと一緒にいる今より幸せな自分なんて想像できないよ・・・・・・だから、さよならなんて言わないで。僕も一緒に行く」

 エドサルは手を伸ばす。

「繋いで・・・」

 エドサルは恥ずかしそうに言う。ラングレーはその手を取った。

「うん、これからもよろしくな!エドサル」

 笑いあう二人の少女と温かく眼差しを向ける仲間たち。ここに小さな物語が一つ終わり、新しい物語が始まった。

 

 

 

 

 

「そういや資本金の話はしてないけど、あてはあるの?」

「ない」

「は?」

「これから銀行に頭下げに行くつもりやけど、前例のない事業やさかい、どうなることか、まだまだ分からへんなぁ。あっはははは!」

「お前何考えてんだよ!」

「そんなおこんなはんな、何とかなるって」

「そんなどっかに金が転がってるわけでも・・・(バサッ)ってなんだこいつ」

「・・・ふぇぇ、お腹すいた。なんか食わせろ・・・(グッタリ)」

「うちの潜水艦みたいだけど・・・とにかく何か食べさせてあげよう」

「ただでさえ金がないのに・・・まあ、仕方ないか」

 

《少女餌付け中》

 

「あっりがとう!生き返ったよ、あたしはトラウト。トラちゃんって呼んでくれよな!」

「元気になったみたいだね。どこの所属?」

「『輸送隊』ってこと以上は言えないな。マッカーサーに言われて孤立してた味方の補給して回ってたんだ。燃料がやばくなったからこっちに来たんだが、どこも入れる状況じゃなくて、何とかここまでたどり着いたが、倒れちまった」

「一人であそこから?すごいね」

「あんたらも比島から来たんだろ。お互い災難だったな」

「まったくだ。その上今は生活難さ」

「金に困ってるのか?いくらいる?」

「そこらの金持ちでも払えない額だ。行き倒れには払えない・・・って。金塊!?なんで胸の間から」

「いや、バラストが足りなくて、近くに銀行があったから、潜入して代わりに積み込んだ。これじゃ足りない?まだいくらでもあるから、好きなだけ持ってけ!」

「ほら、うちの言った通りやろ(ドヤッ)」

「・・・・・・」

 




提督「おわったー!」
那珂「おわったー!」
提督「皆さま、駆逐艦ありあけ外伝、ABDA逃亡記!最後までご愛読いただきまして、ありがとうございました」
那珂「ありがとー!」
提督「紆余曲折、曲がりに曲がること山々谷々(意味不明)、極端に長い話から短い話まで、ほんとにいろいろあったけど、無事に終わった」
那珂「提督が描いた小説で完結したお話って、これが初めてだよね」
提督「高校で文芸部の幽霊部員で何本か書いてた小説も、途中で投げて何も出さずに終わったし、ありあけもまだ執筆中だからね」
那珂「今回も原案から内容がかなり変わったし、5話完結だったのも6話になったからね。原案のキャラが残ってるのって、ラングレーくらい・・・てか、ラングレーしかキャラ考えてなかったよね」
提督「最初はアメリカ初の空母のラングレーが突然解雇を言い渡されて太平洋を彷徨う話だったんだけど、ありあけとの整合性とか考えて、フィリピン陥落からの米軍の動きを補足する話を書きたいって思ったの。んで、いざ書くって時にABDAについての設定調べていくうちに今の話が出来上がったってわけ」
那珂「なんか行き当たりばったりだね。着の身着のままで弾薬すら足りない第7艦隊に、ペリー達CIAがやってきて煙たがられながらも傭兵や武器商人の情報提供して買い揃えた雑多な武器でシンガポールへ進軍するって展開もおじゃんになったね。トラウトの金塊の話もそこで使うはずだったんでしょ」
提督「まあね。でも、ABDAの子達を調べてる間に、ただのモブにしておくにはもったいないと思って、調べながら書いてるうちにそっちがメインになっちゃった」
那珂「ありあけ第1部を仕上げた時にはほとんど知識ゼロから始まって、ここまで書いたんだよね。エドサルとスチュアート、ボイシはスラバヤ組以外で最初見落としてたけど、後で掘り起こして話にねじ込んだんだよね」
提督「我ながらこれだけ詰め込んでよく完結できたと思うよ。出す予定の無かったPoWとレパルスも出せたし。ただ、前回も言ったけどエクセターのキャラが薄くなったのが残念かな」
那珂「4話でロイテルがイケメンしちゃったからね。エクセターちゃんがちょっと冷たく感じた読者も多いと思う」
提督「とはいえ、ラングレーが民間軍事会社を立てるってのは原案通りだし、一周回って元に戻ったって感じかな」
那珂「ありあけ本編の伏線もいくつか入ったしね。ラングレー達PMCも本編に出しやすくしたってわけだね」
提督「一応、私は考えた設定は全部無駄にしてない。だだ、カメラの置く場所を変えたに過ぎないんだよ」
那珂「今回も剣と拳の艦これだったことについては」
提督「私は実のところ艦隊戦は詳しくないし、こればっかしは仕方ない」
那珂「頭のいろんな部分が中世人並って自称してるからね。仕方ないね」
提督「銃剣突撃はロマンだし、一騎打ちは燃える。処刑、尋問!なんてすばらしい!」
那珂「そんなのだから自信を持って送り出した回に限ってコメントが帰ってこないんだろうけど・・・」
提督「・・・・・・」
那珂「ところで、これも終わったけどどうするの?たしかR-18を書きたいって言ってたけど」
提督「R-18はどうもモチベーションが上がらないからしばらく凍結。本編連載を再開するつもり」
那珂「えー、R-18楽しみにしてたんだけどな~」
提督「息抜き程度のものだし、気の向いた時に書くから。期待しないで待っててください」
那珂「というわけで、ABDAのお話は今回までです。みんなありがとー」
提督「たぶん次はありあけ本編で。ではでは」
那珂・提督「「またね~」」
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