空を駆けるウマ娘になりたくて アグネスフライト育成ストーリー   作:通りすがる傭兵

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第0話 アグネスタキオンのそっくりさん

 

 

「貴様、やっと見つけたぞ!」

「?」

「とぼけるな、証拠は揃っているんだ」

 

 ある日のこと。ちょうど廊下でばったりあった目の前の生徒会副会長エアグルーヴ先輩は心底カンカンに怒っていた。

 

「どう説明をつけるつもりだ?」

「どう、というのは」

「またしらばっくれるつもりか」

 

 全く話怒り心頭といったところ。しかし、ここ1ヶ月ほど行動を振り返ってみても、果たしてエアグルーヴ先輩を怒らせるようなことがあっただろうか。いや、全くない。

 変わったところがあるとすれば、今日は珍しく寝坊して髪の毛を整えるような時間がなかったというところだろうか。母譲りの栗色の癖っ毛がいつもと違い頭の上で跳ねているくらいで......

 

「はぁ、そういう事ですか」

「どういうことだ?」

「エアグルーヴ先輩、申し訳ないんですけれど......私、アグネスタキオンじゃないんです」

 

 手帳型のウマホケースにいつも入れている学生証を取り出して見せる。そこにはちゃんと髪の毛を整えて少し笑った、まだ元気だった頃の私が写っていた。

 

「すみません、姉のアグネスフライトです。妹が常日頃からご迷惑をおかけしています。髪飾り、もっとわかりやすいのにしたほうがいいですか?」

 

 妹と同じ水色の髪飾りを軽く揺らしながら、私は驚いた様子のエアグルーヴ先輩にあははと笑いかけると、先輩は頭を深々と下げた。

 

「......すまなかった。入学早々問題を起こす生徒は初めてだったものでな。つい頭に血が昇ってしまったようだ」

「間違いは誰にだってありますよ。あと、妹の方はこちらから注意はしておきますから、最初でしょうし、穏便に」

「そんなわけにはいかん。学園には学園のルールがある。最初から破って大丈夫だと学べばそれ以上のトラブルになりかねん。最初だからこそ厳しくいかせてもらう。ではな」

 

 放課後も始まったばかりだが急いでいるのか、それなりの速度で駆け出していったエアグルーヴ先輩。彼女が起こした風は小走りでさえかなりの風圧を感じるものだった。

 

さすがG1ウマ娘、彼女を目標に頑張らないと。

 

 ひとつ決意を新たにすれば、誰かが肩を組んでくる。そして最近馴染み深い初めて学園でできた友人の声がした。

 

「よっ、エアグルーヴ先輩に怒られてたけど、どったの?」

「また妹に間違えられちゃって、もう今月で5回目。学園にきてすぐに派手にやってるみたいだね」

「妹さんのこと?」

「紹介しようか?」

「いらないよそんなトラブルメーカー」

「残念。きっと助けになるのに。ちょっと難しい性格なんだけど、根はいい子だからさ」

「根はいい子はトラブル起こさんでしょうが」

 

 呆れた顔でツッコミを入れる友人に思わず苦笑いするが、普段ならすぐ笑顔を浮かべるくらいに明るい友人の顔は渋いままだった。

 

「注意しに行かないの? 私だったらガツンと一言なにか言ってやりたいもんだけどね」

「妹の夢は応援するよ」

「そういうことじゃないんだな、もー! 姉なんでしょ? ダメなことはダメってひとつ言ってやんないといかんでしょ」

「可愛い妹だからどうしても甘くなっちゃってね」

「なら仕方ないかー!」

 

 私は一人っ子だからよくわからんけどね、と言いながら笑う友人に合わせて笑う。友人の言う通り強く自分の気持ちを伝える、それができればどれだけ良かったことだろうか。

 

私はそれすらできない臆病なウマ娘になってしまった。

 

あの時、タキオンと袂をわかってしまったとき一体どうすればよかったのだろう。

 

今でも、その答えを探し続けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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