はるかに遠いエデンにて 作:あるかん
「光栄に思いたまえ。君たちはこれから本当の『神の奇蹟』に立ち会うのだ…」
聖夜、中東某国。創世記以来人類を誑かし堕落させてきた一匹の蛇は神の愛し子たちを前に悠々と語りだす。
チグリス川とユーフラテス川、クシュ地方をことごとく滅ぼすことでクシュ全土という概念を内包させたクシュの土。そしてやっとのこと手に入れた失われしピジョンの黄金の最後の一粒。
条件はそろった。宇宙創生の神話以来繰り広げられてきた蛇の目的はついに達成されるのだ。
「さあ、再臨せよ!
突如としてあたりに広がりだした花園。
その中にはかつて絶滅したはずの植物や動物たちが静かにたたずんでいた。
そしてその奥に蛇の愛した生命の樹が姿を見せる。
あたりに広がりだした楽園を見ながら神の愛し子たちもただ絶望して悪魔が生命の樹に歩み寄るのをを見守るだけだ。
「…あぁ、神よ」
「おいおい、神はこの間滅んだぞ?滑稽な祈りだな!」
蛇は嘲りの笑みを浮かべると、番人のいない地上の楽園をゆっくりと歩く。
…ただ、その場にいる一度も神に祈ったことのない不信仰者の祈りには気づかないまま。
「…神様、助けて」
「ははは!これが!これが生命の樹か…なに?!」
先ほどまであたりに広がっていた花園と目の前の神々しい樹が不意に消失する。
蛇の前に広がっているのは灰色の地下室だけであった。
「神の権能か?しかし神は滅んだはず…」
現代日本、東京。
蛇のつけている腕時計は12月18日という日付をはっきりと指し示していた。
「時間操作…並行世界?いやマルチバースの移動か?いずれにしても神の御業だ…」
そう呟きながら蛇はあたりの空気を嗅ぎ始める。
「だが、いずれにせよ
蛇は狂喜乱舞する。クシュの土の入った瓶を大事に抱えながら、神への祈りを捧げながら。
「このルシフェルが初めて神への祈りを嗅いだ神の子か!とんだ不信仰者だな!最高だ!」
蛇はその黒いスーツから6枚の黒い翼と尻尾を出し、耳まで裂けた笑みを浮かべて嗤う。
「はははははははははははははははは!…そうだ、まずあの忌まわしい
数分後神の愛し子たちが『2週目』に入ったことを理解したとき、その地下室に一発の銃声が鳴り響くと一発の薬莢と一人の死体が転がっただけであとに何も残ることはなかった。
「ははは!…さぁ、強くてニューゲームのお時間だ!」