はるかに遠いエデンにて 作:あるかん
神の子。
『神自身が』寵愛を与えることで神の権能の一部を行使できるようになった最も神に近い人間だ。その権能はまさしく『神の奇蹟』と呼ぶにふさわしいものであり上位聖人の奇蹟すらその権能の前では塵に等しい。
といっても神は16年前に滅び、四大天使もそれより前に滅んだあとであるのでこれから先新たに神の子も聖人も出現することはないが。
「確か『ルルドの聖母』ベルナデッタ・スビルーがガブリエルが最期に愛した聖人だったかな?」
神の愛し子たちの回復手段となっているルルドの泉は憎らしいものだ。
そう言いながら手に持った4枚の写真のうち一枚を燃やす。
「そしてラファエルの寵愛を受けたのがピエトレルチーナのピオ。いや、素晴らしく厄介だったな。」
そう。彼自身も厄介だったが彼が残した『神の愛し子たち』は一、二を争う障害だ。
そう言うと、手に持っている写真は2枚に減った。
残ったのはほかの写真とは明らかに解像度の違うカラー写真。
「残りはウリエルの愛し子、ハインリヒ=オストシルトとミカエルの愛し子、六条美香…さすがに『一回目』と同じ手ではきついか。」
そして蛇は手に持った写真を全て消して代わりに室内に落ちていた石を拾ってパンに変えると食事をし始める。
「…ともかく一度全員呼んでループの記憶があるか確認しなければな。」
ニュースを報じるテレビがあるだけの室内で円卓を囲む7人。
『昨晩連絡が消失したエチオピアに来ています!信じられるでしょうか!この白い平野が、塩の柱が立ち並ぶだけの塩の大地が!かつてのエチオピア首都アジスアベバであったと!』
「彼の持つ神の祝福は何であれ、彼がこの世界線、次元あるいは世界からの移動に祈りを媒介とする必要があるはずだ…」
「…本当に神の祝福なのか?神は16年前に滅んだんだ。祝福を授けるだけの力は残っていないはずだぞ?」
疑り深く蛇に尋ねる細身の男。
『一夜にして!一夜にしてエチオピアが滅んでいます!塩です!見渡す限りの塩です!』
「まぁ、しかしクシュを滅ぼしたあとでよかった!あの模造奇蹟にはかなりの労力を費やしたからな!」
「…塩の柱っておいしそうね。」
舌なめずりをしてテレビに映る塩の大地を見る少女。
『地上ですが、塩の下にところどころ焼け焦げた跡がありますね…』
「神の国は近づいた!実に結構!」
「封印から解いてくれたのは感謝してるのよ?でももったいないっていうか~」
長い髪を手で梳きながら蛇に文句を言う妖艶な女。
『独特の臭気がしますね…まるで硫黄を焼いたような…』
「神に背いたクシュの人々は哀れにも断罪されたのです!アーメン!」
「自分だけに罪を下されるなんて…いいなぁ」
ただ、その一言のみを呟くと元のように沈黙する大男。
『まるで聖書にあった硫黄の火で焼かれたかのような跡ですね。しかもこれが全土で、というのがまた』
「では次の計画に移りましょうか。『黄金』の確保、『2回目』なのでこちらの計画はばれていると考えて…」
「計画を早めるのだな!ぶっひょひょひょ!」
趣味の悪い指輪を大量につけた肥え太った豚のような男
彼らの全員がループを体験していないという確認は取れた。
ゆえに、
…千年王国の顕現は近い!ハレルヤ!
ベルナデッタ・スビルーはルルドの聖母を発見しただけでルルドの聖母じゃないというのは気にしない!イイネ?