いつの間にかロケット団に入っていた件について 作:レイノート
本日はホオズキ君がメインではない回になります。
これに関しては作者の趣味が混じっているのでご了承ください。
どうも諸君、ご機嫌麗しゅう。
本日の主役は残念ながらホオズキ君ではなく、私が務めさせて貰おう。
今回は何時ものロケット団に入ってしまった一般男性シリーズではなく、ちょっとした断章を挟ませてもらうことを言わせて欲しい。
何、作者のちょっとした気まぐれだとも。
私としても作者がいなければ、物語として成立させて貰えない身なのでね。口出しはできない立場だ。
さて、無駄話はここまでとしよう。これよりは断章の物語……ゆっくりと堪能していくといい。
[ホドモエシティ 高台]
ホドモエシティの北側にある高台には教会があるという。
街の人の話では数年前に建てられたらしく、一人の神父が運営しているのだとか。
教会など滅多な事では訪れる場所ではないし、関わることも少ない。
しかし別の住民からはこうも聞いた。
何でも悩みを聞いてくれるそうで、町人や旅人問わずして受け入れてくれると言う。
気にならないと言えば嘘になる。であれば足を運ぶしかないだろう。
◇◇◇◇◇◇
とても静かな場所だ。
教会なのだから騒がしいとは思わないが、余りにも静か過ぎると言うか、ちょっとした寒気がしてくる。
何だが急に怖く見えてきてしまった。
「教会に何用かな?」
背後から聞こえた男性の声。
思わず驚いて声を出してしまう。
振り返った先にいたのは全身黒づくめの神父服を着た男性。
気配も足音も感じなかった。まさか幽霊か?
「おや…これは失敬、驚かせてしまい申し訳ない」
「い、いえこちらこそすみません」
勝手に驚いて腰を抜かしてしまったのに、謝らせてしまって申し訳がない。
砂埃を払い、立ち上がる。
「しかして少女よ、ここに何用かな?」
私は神父さんの噂を聞き、ここに来たことを伝える。
最近は悩む事が多く、友達にも言えない事を話せると思った。
「ふむ……客人とあれば歓迎しよう
立ち話もなんだ、お茶でも入れよう」
神父さんは教会の扉を開けて、快く迎え入れてくれた。
「成程、自分のポケモンを解放すべきか悩んでいると」
「はい……自分でもどうすればいいか分からなくて……
プラズマ団の人達が言ってる事も分からなくもないというか……」
迷っている。
私はポケモンを貰い旅に出た。
共に戦い、共に傷つき、共に寝た。
苦しい時もあれば、楽しいこともあった。
ポケモン達の事は大好きだし、好かれているという自信もある。
だが、先日目にしたある光景が何時までも頭の中から離れない。
◇◇◇◇◇◇
「何してるん……ですか?」
「は?何って……いらないから捨ててるんだろ?」
一人の男性トレーナーが、フカマルというポケモンを杭につけたロープで縛り付けている所を目撃してしまった。
しかも物を捨てるかの如く、ポケモンを平気で捨てている。
なんでそんなことをするのか、思わず聞いてみた。
「俺の理想とする個体じゃないからだ
せっかく卵から孵化させてやったっていうのによ……とんだ無駄骨だぜ」
信じられない答えだった。
自分の勝手な都合でポケモンを育て、理想とするものが出来なければ平気で捨てる。
トレーナーとしてあるまじき外道行為だ。
いやこの人はトレーナー等と呼びたくもない。
「(許せない)」
腸が煮えくり返っている。
こんな人がトレーナーとして平気で呼ばれているのが許せなかった。
このまま放置すれば、あのフカマルのように捨てられるポケモンが出てきてしまう。
奴を許すわけにはいかない。
◇◇◇◇◇◇◇
それから私はジュンサーさんへと通報した。
あのトレーナーの所業を洗いざらい話す。男は流石にやばいと思ったのか、逃げ出そうとしたがすぐにお縄についた。
後に知った事だが、あの男性は悪質なトレーナーとして有名だった。
ポケモンを乱獲しては逃がし、それらを繰り返していた地域ではポケモンがいなくなると言った事案が発生し、警察もマークしていたという。
生態系さえ変えるほどの罪を犯していたのだ。
「私も……そうなるのかな……」
私とてトレーナーの端くれ。
ポケモンバトルには勝ちたいし、強くありたい。
けど…………本当に私は同じにならないと言えるのか。
脳裏に過ぎる途方もない不安と恐怖。
嫌だ……嫌だ! ポケモン達を見捨てることはしたくない。
でも……どうすればいいの……
自分の事なのに、何をしていいかも分からなくなってくる。
友達にもこんなこと聞けないよ……不安で押しつぶされてしまいそう……
私は神父さんに気持ちの全てを打ち明けた。
ただひたすら無言にこちらの話を聞き、深く何かを考えている顔をしている。
こんな酷い内容だ、呆れられても仕方がない。
「成程、話は概ね理解した
であれば君はトレーナーを辞めると言うことかね?」
正直……トレーナーはやめた方がポケモン達のためになるのではないかとは思う。
でも…………苦楽を共にしてきた仲間達との思い出が忘れられない。
「…………」
思わず口篭る。
悩みに悩んでも答えは出ない。いつまでも苦悩し続けるだけだと理解している。
結局の所、半端な覚悟しか抱いていない。
「ふむ…………これは君の為になるかは分からんが、少し私の昔話を聞かせよう」
神父さんの昔話?
興味が無いと言えば嘘になる。
「私も君と同じくらいの年頃に色んな地方へと旅をした
道中では新たな出会いもあり……別れもあり、苦しい時もあれば楽しい時もあった
しかし、それは変わらずいつも近くにあるもののおかげであった事を知ったのだ」
あるもの?
それは一体なんなんだ?
「ポケモンだ
トレーナーと苦楽を共にし、助け合う仲間であり家族だ」
神父さんの言葉で私はハッとした。
何故こんな簡単な事に気づけなかったのか。
そうポケモン達は、いつも私の傍にいてくれた。苦しい時と辛い時も支え合ってきた大切な存在。
ポケモン達を解放すればいいと自分よがりな考えでいた事を悔いる。
仲間達の言葉を聞かずして答えを出そうと焦っていた。
何だがさっきまで考えていたことが、馬鹿馬鹿しく思えてくる。
たった一つのシンプルな答えを持ち続ければいいだけだった。
「ふっ……どうやら答えは出たようだね」
「はい、話を聞いてくれてありがとうございます」
私はやっぱりトレーナーを続けたい。
自分を信じて着いてきてくれたポケモン達と一緒に強くなるんだと改めて誓う。
「気にする必要は無い
悩める者を導くのも神父の務め……心に迷いが生じたならば、またここを訪れればいい」
答えは得た。
この誓いは何があっても破らない。そう自分に言い聞かせるのであった。
◇◇◇◇◇◇◇
「さようなら~」
「君の旅に幸ある事を祈っているよ」
少女は神父に別れを告げて、その場を去っていく。
迷いのない太陽のような眩しい笑顔をしていた。あれならばきっと新たな答えを得られるであろう。
「さて…………いい加減に出てきたらどうかね?
君達の気配には、とうに気づいている」
神父の声に呼応するかのように、物陰からぞろぞろとチェインメイルのような服装をしている集団「プラズマ団」が出てくる。
その傍らには彼らのポケモンと思わしき、ミルホッグやレパルダス、ワルビルやダストダスといったポケモン等が十数匹が戦闘態勢でいた。
「ようやく見つけたぞ、裏切り者め
ゲーチス様からの命令で貴様には消えてもらうぞ」
「これはこれは随分な歓迎だ
気持ちは分かるが、ここは教会だ……静粛に願おうか」
神父を囲むようにして、陣形を作っていく団員達。
見るものが見れば絶対絶命な状況にしか見えないだろう。
しかし、神父の顔は焦りもなければ怯えもない。余裕のある顔でとても追い詰められている人の顔には見えなかった。
「愚かだな、ゲーチス様に反逆さえしなければこんな事にはならずにすんだものを
貴様にはポケモンを出す余裕すらない、大人しくしてれば苦しまずに――」
「ポケモンを出す余裕もない?
おかしな事を言う…………一体いつから、
瞬間、一人の団員が突如として倒れる。
また一人、もう一人と次々に倒れていく。
その顔は苦悶の表情を浮かべ、頭を抑えながらじたばたしていた。
ある者は魂が抜けたかのように、ピクリとも動かない。
それは団員のみならず、ポケモンにも同様な症状が見られた。
「(一体何が起きている!!)」
何かが起きた時の為に隠れていた一人の団員は、仲間達に起きている惨状を目の当たりにしてパニックに陥っていた。
たった一人の神父の始末をするという簡単な仕事のはずが、部隊の大多数が戦闘不能になるという前代未聞のことが起きている。
「(逃げなければまずい)」
一人逃げようと、気配を殺して移動しようとした時であった。
目の前に突如として一体のポケモンが現れる。
男は驚き、腰を抜かすがそのポケモンに見覚えがあった。
確か以前に読んだ本に書かれていた初心者用ポケモンの最終進化体『バクフーン』。
しかし、男が本で見た姿とは全くもって異質な姿。
首周りから妖しく揺らめく紫色の炎を吹き出し、まるで浮遊する魂のように見えた。
ここで命が終わると思った男は、絶望の余り気絶してしまう。
「ご苦労だったな、バクフーン」
遅れて登場する神父。
どうやらあちらも全て片がついたようだ。
よく働いてくれたバクフーンを労うために、頭を撫でる。とても喜んでおり、両者の関係の深さが分かる。
「君はどうするかね?」
バクフーンでは無い、別の存在にそう問いかける。
返答が返ってくるわけでもなく、ただただ静寂が続く。
「相も変わらず無愛想だな……構わんよ、君がそう望むのであれば私も君のあり方を尊重するだけだ
バクフーン、かえるぞ」
神父は教会に向けて歩き出す。
バクフーンもそれに追従して後ろを歩く。
「………………」
その時、神父の影が歪曲するように動く。
それは何を意味する行為なのかは、神父しか知らない。
彼は善と悪も平等に受け入れる。それは人でもポケモンでも同じだ。
この存在もまた神父に救われたもの。故に彼の影として身を守ることを誓っている。
その正体は果たしてなんなのか…………
[to be continued]
この神父はいったい何者なんだ……
とまぁ冗談はさておき、次話からは一般男性シリーズに戻りますのでご安心ください。
アンケートも引き続き行いますので、良かったらご参加ください。