黄泉返りの国家転覆 作:倉庫
『で、私としても、これは予想外だったんだけど?』
「なんだ嫌か?久しぶりに、知人との会話を楽しみたい欲くらい、私にもあるぞ」
『全く嬉しいこと言ってくれるね。ま、どうせそれだけじゃないんでしょ?要件はなに?』
「あぁ、わかってるならそれでいい。…あと1つ。それさえ揃えば、私の目的は達成される」
『へぇ…聞こうか』
午前2時。草木も眠る丑三つ時に、部屋に響く誰かの声。
沖縄のあるリゾートホテル。天元との同化を控え、今もなお徹夜で、ホテルの外で警備を続ける五条とは別に、月明かりに照らされたその一室。
窓から見える月を見ながら、会話を続ける伽藍。彼女は自分の話す声が、他の誰かに聞こえてしまう心配など一切せず、平常のままでいた。
携帯越しの相手…羂索へ、今も隣で寝ている最中の星漿体の少女、天内を見つめながら、話し続ける。
「その前に聞いておくが…お前もこの餓鬼を狙ってるのはわかってる。そしてやけに呪詛師の集まりがいいと思ったんだ、それもお前だろう?いくら甚爾でも、ここまでの数は用意できんはずだからな」
『こっちも必死なんだって、やっと500年経ったっていうのに、折角のリベンジチャンスをこのまま見守るだけなんてさ』
「待て、忘れたとは言わせんぞ。天元と六眼はともかく、星漿体すら因果で守られているだろう?…天元は最も、星漿体の排除すらも意味がないとなると、無意味だ」
『いや、そうとは限らないよ?』
「…なんだと?」
その自信に溢れた様子に、伽藍は待てと反応した。
羂索は2回、天元を手中に収めようと六眼に挑み、敗れた。その話は過去に、伽藍が羂索本人から聞いたこと。一度目は真正面から挑み…敗れ。その反省からか、2回目の羂索は徹底していた。
今度は同化が始まる十数年前から根を回した。六眼も星漿体も全て、生後一月に抹殺した。
それでも彼らは現れた、まるで無意味だと嘲笑うように、星漿体は同化を果たし、六眼はそれを守護した。
彼らは因果で繋がっている。たとえどれだけ足掻こうと、彼らはそれを嘲笑う。
『呪いの因果を絶つ為には、呪いに囚われたままじゃ駄目なんだ。宿儺ならもしかしたら…だけど、それも希望的観測でしかない』
「ならば余計どうするんだ、お前はこっちに強く顔は出せないのだろう?」
『だから彼を利用したのさ、呪いの因果から外れた…呪力が0の彼にね』
「…甚爾か」
その言葉を聞いて、伽藍はようやく羂索の言っていることが理解できた。
天元の作った因果のシステム、それはこの世に存在するあらゆる人間、呪霊に干渉する運命操作だ。
呪力を持ったものは皆、この籠に閉じ込められ、不変永久の安穏を貪るようになる。
だが逆に、呪力がない強者ならば――
しかしそれはあまりにも勝算の少ない博打だ。いくら甚爾がイレギュラーとはいえ、運命に守られた六眼に届くかなど、誰にもわからないのだから。
「全く…相変わらずの博打だな、なんというか…お前らしい」
『言ったろ?1000年生き続けてきたけど、完全に呪力から脱却して、しかも星漿体を狙ってるんだなんて、こんなの必死になるしかない』
「フン。成功したらどうする?どっちにしろ、天元の同化を防いだ後、あいつをどうにかするのは骨が折れそうだ」
『うーん、まぁなんとかなるでしょ。今のところは呪霊操術を考えてるんだけどね』
「おいおい、お前天元を呪霊扱いするつもりか?」
『駄目だった?』
「呪霊の方がマシだ」
『あっははは!それちょっとわかるかも』
同化まであと十数時間。そして現れるのは甚爾、羂索の用意した刺客たち。
その果てに訪れる結末、運命に抗い、そして結果を掴もうとしたその末路がどうなるか。
気になる…が、今の伽藍はそれ以上に、心のどこかに、まるで杭を打ち込まれたような衝撃を感じた。
「そうか、お前はずっと昔から…因果に抗っていたのか」
『え、信じてなかったの?』
「いや、そうじゃない。ただ…そうだな、改めていいと感じたまで」
ある種の諦めがあったことは認める。いくら殺そうと、邪魔しようと、因果はそれを嘲笑って無視をする。
だが羂索は1000年、自分が生得領域で呆けていた間も、ずっと抗っていたのだ。500年ごとに備え、何度も、何度も。
「…さて、話を戻そう。私がお前に頼みたいことだが」
『"頼み"…ねぇ?ぶっちゃけ君が何したいかとか全然わからないんだよね、実際護衛に参加したって聞いた時は本当に驚いたもん』
「それはそれでだ、私には目的がある。その種は撒き終えた…あと残るのは…」
『なんだい?』
「
『――っ!』
呪霊ではない、人間が呪物へと成るのは実質不可能。
そもそも受肉という過程を挟むとはいえ、実質的な不老不死を可能とするこの技術は、あの平安の頃でさえ浸透していなかった。
何故なら誰も、生物に宿る"魂"を知覚することができなかったからからだ。だからこそ伽藍含む、呪物となった術師たちは皆、羂索と契約した。
そして伽藍も、宿儺と同じように、己の魂を指に凝縮し――
「私が求めるのはあの身体。宿儺は魂を20分割したが、私はそうじゃない」
『…だね』
「魂の格が違う、と言ったらそこまでだ。だが違う、私のかつての身体には…あるはずだ、魂の搾りかす…いいや、もう1人の私自身が」
『宿儺が特別なだけで、君の魂はちゃんと凝縮してるって言ったら?』
「抜かせ、私がその程度で終わるものか」
『…ハハッ、よっぽど自信があるみたいだね、自分に』
どこか愉快そうな抑揚、しかしその反応で確かに、羂索は伽藍の問いに是と答えた。
かつての身体、そこに宿る自分の魂。それを何故、今になって求めたのかはわからない、が。
必ず面白いことが起こる。そう羂索は確信した、だからこそ言う。
『じゃあ聞かせて。それで、面白いものは見れる?』
「あぁ、面白いのを見せてやる」
『言質取ったよ』
「あぁ、縛りだ」
伽藍のその言葉に、羂索はやれやれと返した。
あの時代、平安で出会ったこの存在。どこまでも愚直で、けれどどこか愉快な存在。
何十年も変わらなかった、その在り方。彼女が死んで、それから1000年経って、そして復活したとき、何を見せてくれるのか。
あぁでも、きっと。
『期待してるよ』
「…ハハッ、任せろ」
この予兆は、きっと正しいだろう。
羂索はそう確信した。
■■■
ビーーーッ!
「さて、ここが高専結界内だ。高専関係者以外が入ると警報が鳴って…」
「お、おおう…」
ビーーーッ!
「あとは高専内の地下…
「傑」
「本殿に着いたらあとは門を潜って、その後は天元様が…」
ビーーーッ!
「…傑、これもしかしてだけど」
「言うな、私も本気で驚いてるんだって…」
「…羂索、お前マジか?」
pm.14:57
天内理子の懸賞金取り下げまで、
目の前に連なる鳥居を見ながら、辺りに響く大音量に、皆は全く同じ反応を見せて、そして心底呆れた。
五条と夏油はともかく、この状況に一番驚いたのは伽藍だろう。いくら事前に刺客の数を増していたのを知っていたとはいえ、まさかこのレベルだとは思わなかった。
鳴り響くブザーに動じることなく続々と到着、3000万の報酬を目当てに、ギラついた殺意と欲望を隠さず、残された刺客が目の前にやって来た。
「…悟、本当に大丈夫か?」
「問題ないって、傑達は天内優先で、真っすぐ天元様のとこに向かってくれ」
「…油断するなよ」
「誰に言ってんだよ」
いくら高専内とはいえ、全力での無下限術式は避けたい事態だ。
それはあくまでも最終手段、しかし相手は高専内に馬鹿正直に侵入する愚か者たち。引き際を弁えられない中途半端な実力者こそ、ある意味では恐ろしいものだ。
そしてもう誤魔化しの効かなくなってきた疲労。更に求められる術式の精密操作、ハッキリ言って面倒臭い。
が、それでも五条悟が苦戦することなどない。それは客観的な事実であり、変えられない真実だからだ。
「で、どうすんの?誰から先にやる?」
夏油達を先に行かせて、五条はサングラスを外してそう言う。
普段なら問答無用、すぐに"蒼"でも発動して、すぐに相手を潰せばいい話だ。だが今回は制限時間がある、この無駄な会話すらも、今の自分にとっては戦略の1つだ。
目の前の、懸賞金目当てにやってきた呪詛師、およそ10名のリーダー格であろう、一回り身体の大きい男は腕につけた時計を見て、それに返した。
「今のだけで30秒…確かにこのままでは間に合わない…が、簡単なこと」
1人、2人と男が並列で並び、そして先ほど後ろに控えていた、残りの男全員が前へと出た。
ピタリと静止し、肩を並べてこちらを眺める、その息の合った行動に、五条はピクリと眉をひそめて反応した。
「…へぇ、流石にそこまで馬鹿じゃなかったか」
懸賞金の取り下げまであと2分。
このまま律義に潰しあいの、血みどろの混戦を繰り広げ、結局ターゲットの殺害が果たせないのならば、今となりにいる商売敵と手を取り合うことも選ぶ柔軟さ。
ただ金が欲しいだけ、たったそれだけの為に、ここまでできるのは流石というべきか。
その薄汚い生き方に、ある種の関心を示すものの、やはり馬鹿らしいと五条は切り捨てる。
「やっぱ馬鹿だろ、そのやる気をもうちょい別のとこで生かせよ」
「確かに報酬を独り占めできないのは認める…が、それでも1人あたり300万にはなる」
「知っている、お前はずっと術式を解いていない…溜まっているのだろう?疲労が」
「それに貴様は先ほど、別の人間と戦い体力を削られている…今なら確実に倒せるぜ」
「聞いてる?」
五条の呆れた声を無視し、男たちは準備を終えて力を込めた。
品行方正とは無縁のオーラを放ちながら、次々と構えだす男たち。武術のぶもない構えだが、確かに裏付けされた実力は見える。
そして、男たちは一斉に走り出して、叫んだ。
「多勢に無勢だいっけぇ」
ちなみに、勝負は一瞬でついた。
「傑、そっちはどうだ?」
『今から本殿に向かうところだ、悟もすぐに来てくれ』
「あぁ、了解」
pm.14:59
軽い運動を終えた五条の背後で、山のように積まれた男たち。
何の問題もなく、拍子抜けするほど圧倒的に終わったこの戦いは、ある意味では良かったと言えるものだ。
天内理子の懸賞金も、もう取り下げられ、それに本人ももう、既に薨星宮へと向かっている。
「チッ…二度とゴメンだ、ガキのお守は」
pm.15:00
懸賞金が完全に取り下げられ、やっと終わった仕事にため息を吐いて。
五条が術式を解いて、
――トスッ
「………あ?」
五条の背中を、誰かが刀で貫いた。
■■■
薨星宮・本殿
「では、私はここまでだ」
「………なんだって?」
「もう私の勝負は終わった、後は好きにしろ」
目の前にそびえ立つ、巨大な樹木に見とれたのも束の間、突如そう言って立ち去ろうとする伽藍に、夏油は話しかける。
確かに護衛は終わった、後は天内が目の前の門を潜り、天元に会うだけだ。
しかし何故このタイミングなのか、その疑問に答えるように、伽藍は肩を竦める。
「待て、勝負?いやそんなことよりも…」
「悪いが予定がある。この後のことは任せたぞ?お前たちが何をしたがっているのかは、もう知ってるからな」
「……」
「どこへでも逃げるがいいさ、私は賛成だからな。天内を同化させるつもりなど、最初からなかったんだろう?」
「――えっ」
同化をさせるつもりはない。その言葉を聞いて、どこか顔を暗くしていた天内は、突然のことに驚き反応する。
そう、五条と夏油は決めていた。最初から、夜蛾の言った「護衛と抹消」…その言葉に含まれた意味と理由を察して。
――もし星漿体が同化を拒否したら、その時は同化はなしにすると。
「じゃあな、後は勝手にしろ」
自分たちの決意、そして天内を守る意思を固める夏油に背を向け、伽藍はそのまま歩いて去った。
その相変わらずのマイペースさに、やれやれと首を振って、夏油は続けた。
「彼女の言った通りだ。私たちは君が、同化しなくてもいいと思ってる」
「…なん、で」
「うちの担任は脳筋でね、こんな風になっちゃったけど、きっとあの人もそうしろと言うさ」
「…でも」
「君の未来は私たちが保証する、どんな選択をしようともね」
――いつからそう決心したのだろう。
両親はいない、それももう悲しいとも思わない。
自分は特別だと、いつかのためだと大切に扱われて、ろくに外にも出られなかった。
だから、せめて最後までは行きたかった。学校へ、友達に会いに。
「…私ね、昔からあまり外出できなかったんだ」
「うん」
「だから学校が楽しかった、友達と一緒に話せて、嬉しかった」
でも、いつかは終わる。
何故なら自分は
でも自分は大丈夫、両親もいない、だから1人でも大丈夫だと。
そう思っていた、思っていたのに。
「でも…でもね」
「…うん」
「私、やっぱり…っ」
初めてだった。
目に焼き付く白髪、特徴的な黒髪と、傲慢不遜な灰色の髪。
特別だった自分なんて知らないと、"普通"に接してくれるこの3人。
そんな彼らと一緒に、自分を守ってくれた家族。
『――理子様』
大好きだった。
『理子様…どうか…!』
あわよくば、もう1人の
「私…もっとみんなと一緒にいたい…っ!」
沖縄の海、澄んだ青。
初めて食べた料理、それを共有して、一緒に笑いあった1日。
水族館で見た、巨大な生き物の放つ、神秘の美しさ。
今でも忘れられない。記憶の中で、今も青が澄んでいる。
「色んな所に行って…色んなものを見て、もっと…もっと…!」
「大丈夫だよ、理子ちゃん」
その心を聞いて、夏油はより決心を固めて手を差し出した。
前代未聞だ。星漿体と同化を果たせなかったら、天元は進化し日本が終わるかもしれない。
だが、それでも。
「――私たちは、最強なんだ」
そう、
何も怖くない、何も心配ない。
「君の未来は私たちが保証する。だからね」
もう一度、差し出した手を前に突き出して、続ける。
「…帰ろう、理子ちゃん」
その差し出された手を見て、涙で濡れた顔を袖で拭って、天内はそれを握る。
そして優しく、微笑んで頷いた夏油を見て、自分も同じように、笑って頷いて。
「…うん!」
――タンッ
それと同時に、天内の頭を無情にも、弾丸が貫いた。
「………理子ちゃん?」
「ハイお疲れ、解散解散」
ドクドクと血を流し、冷たく倒れる彼女の様子を。
夏油、そして他ならぬ彼女を殺した男…"術師殺し"伏黒甚爾は眺めて、そしてやっと仕事が終わったと言わんばかりに、そう呟いた。
■■■
「で、結局あてはあるの?」
「問題ない、私のことは私が一番理解している。それに天元の結界は変なところで甘い、この程度なら潜り抜けられるさ」
「頼もしいね、じゃあ細かい指示は頼んだよ」
「あぁ」
ギギギ…と、目の前の重厚な鉄製の扉が開かれ、その中にある真っ白な空間が露になる。
その純白の世界に足を踏み入れた2人は、その後一列に並んで歩き出す。1番前を歩くのは、十字の縫い目を頭に残し、魅惑的な雰囲気を醸し出す黒髪の女性。
虎杖香織…もとい、その正体である羂索は、一歩後ろを着いてくる形で歩く女に、やれやれと首を振って話しかける。
「にしても、君に身体のことは言ってなかったし、話題にも出してなかったから驚いたよ、なんでわかったのさ」
「フン。受肉を果たした後、妙な気配をここから感じてな、最初は気のせいかと思ったが…」
「なるほど、センサーみたいなものか」
灰色の髪を片手で弄り、境界のない純白の世界を見渡す女――伽藍はそう言って、目線をある場所で止めて指を差す。
「ここだ」
「了解」
羂索がその壁の前に立ち、そのまま片手をかざして呪力を込める。
そして一瞬。空間に亀裂が走った後に、目の前の壁が、正六角の形で膜が剥がれるように変化する。
カシャア…と、ガラスの砕けるような音が鳴り響き、目の前にある景色が一変した。
「木を隠すなら森の中…宿儺ほどじゃなかったけど、間違いなく君も天元に警戒されていたからね」
「…だからあえてここに置いたのか?」
「そ、宿儺の方はまだ特定できてないけど…君のは無事さ、ほら」
高専内・
宿儺の指、そしてそれに匹敵する危険な呪物を保管する、高専が管理している保管庫。
本来、忌庫そのものの場所やそれに連なる通路は、天元の結界術により高頻度でシャッフルされ場所が特定できない。
しかし今回は
伽藍の感覚を頼りにすれば、隠された近道の扉を見つけることはそう難しいことではない。
「………………」
「どうした?」
そして立ち止まり、目の前に立ち尽くす伽藍に、羂索は首をかしげて話しかける。
2人の目の前には、座禅を組んだ体勢のまま
何か思う所でもあるのか、そう推測する羂索に、伽藍は話す。
「………随分と」
「なんだい?」
「綺麗なままだな、服もあの頃のままだ」
「軽い呪具になってるからね、うん。それにしても本当に懐かしい」
白を基本とした、リネン僧侶を彷彿とさせる独自の服装に、右腕だけ袖を通さない、片肌脱ぎと呼ばれるかつての着こなし。
あれから1000年経ってるというのに、未だ純白のままの、その着物とさらし。
変わっていない、最後に己が死んだあの瞬間から、時が止まったままかのようだ。
「さて、じゃあこれからどうするの?」
「ん?あぁ…こうするつもりだ」
一体かつての身体で何をするのか、疑問に感じる羂索にすぐ答える形で、伽藍は喋りながら腕を振るった。
ゴリッ!と、死蝋の肉体が引きちぎられる鈍い音が響き、伽藍はかつての自分の頭部を口に持ってきて――
「………んあ」
――ガブリ
ズチュ、凝固した血液と肉が割れ、それが啜られ血肉となる音。
バリッ、ガリッと更に何かが削れる音も聞こえ、それが頭蓋骨をかじる音だと気づいた途端、羂索は眉をひそめた。
「………………君さぁ」
「なんだ」
「もう少し戸惑いとかないわけ?てか美味しいの?」
「さぁ…ただビーフジャーキーに似た感じだな、だがあれに千切れ紙を混ぜたような、そして妙にザラザラとした舌ざわりが…」
「あーはいはいそこまで。…君ホント宿儺に似てるよね、そういうとこ」
頭蓋骨、かつての脳味噌を平らげた後は、残る四肢に目標を移す。
右腕を千切り、そして千切り終えた右腕に視線を集中させて、そこにかつて人差し指があったであろう、歪に欠損した右手を眺めたあと、その端から小指を齧って、引っ張る形でそれを食す。
「機会があればとは思っていた、だが別に絶対というほど、これを求めていたわけじゃなかったんだがな」
「ん?じゃあなんで今更?」
「ふむ…魂の補給が丁度良かったからな」
「………ふーん」
ガリッ、ゴリッ、ベキキッ、ズチュッ。
背中を向けて、片指を耳に突っ込む形で問う羂索に、伽藍は身体を食しながら答える。
魂の補給、それが意味することが何なのか、推測を立てながら、平行でパソコンでの作業を続け、そして声を荒げた。
「………あっ!マジか!」
「どうしたいきなり」
「いやさっき連絡来たんだけど、盤星教がやたら大騒ぎしててさ、どうやら成功したみたいだよ?星漿体の暗殺」
「………ほう?」
ごくんっ、残る身体を齧りながらも、器用に会話をして笑う伽藍。
羂索の言った、暗殺の成功。それ即ち、彼の賭け、そして"術師殺し"が因果を破壊したことの証明でもある。
本当に、本当にあのイレギュラーが運命を破壊したのかと、ただただ歓喜に満ちて笑いが止まらない。
「ッハハハ!そうか!ついにとうとう…ざまぁないな天元!」
「で、どうする?君のことだからどうせ…」
「あ?決まってるだろう」
ペロリと、口周りに残った肉片を舐めとって、伽藍は残ったかつての服を手にして、笑いながら言う。
「次の相手はあいつだ、行くぞ」
伽藍の正装はティアキンガノンをイメージしてくれれば。
そしてやっと次回…やっと書きたかったところが書ける…!